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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第三章 それでも彼らは抗う
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第二十五話 不満と不安の少々パーティー


その数週間と数日後。零耶と統軌の怪我が完治し、任務に復帰する頃になると、【AVANOLSアヴァノリス】達全員が【AVANOLS・Revivalレビヴァル】を経験していた。武器との関係が一層強くなったとしても進化した【神穢シンエ】と闘うと怪我を負った。そして、いまだに進化した意図は不明。


「なんかすげぇパーティーになったな」


零耶の落胆と不満が混じったそのセリフに一緒に来ていた左京と右京が笑った。それにまた零耶は不満そうにブスッとした表情になる。


「そんなに不満ですか?」


左京が笑いを堪えながら訊くと零耶はコクンと頷いた。


「だってよー左京の兄貴と右京の兄貴は一緒なのになんで俺は玲御レーミと統軌と離れる訳?」

「しょーがねぇだろ。てか、本当に姉弟と相棒と仲良いな」


ニヒヒと笑いながら右京が茶化すように言うと零耶はキョトンとした後に「姉弟と相棒で、友人で仲間だからな」と当たり前のように言うと、右京は納得しつつも即答したことに少し不満そうに顔を歪めた。それに左京が肘で彼に注意した。

零耶は完治後初の任務に来ていた。今回は何故か姉弟の玲御と相棒の統軌と別れてしまった。解せぬ。零耶にとってはほとんど3人か、どちらか一方と一緒にいたので違和感がありまくりである。


「(早く慣れよ…)」


はぁと何に対してか自分もわかっていないため息をつきながら零耶は思った。

本日の任務は前パーティーの左京と右京、零耶。そしてもう2人いる。ところで何故、パーティーを戻さないのかと云うとやはり【神穢シンエ】の進化に影響されていたが、半分の理由は政府からの圧力だった。"五天王"は仕方なくパーティーを分解して組み直した。が、やはりメンバーの理由や【AVANOLSアヴァノリス】、【AVANOLS・Revivalレビヴァル】のタイプによって構成が難しいため、パーティーを戻す事が決定した。だが、政府の命令があるので今日まで組み直したパーティー。明日からは一時固定パーティーになった構成に戻すと云うーちなみに清守と守光は兄妹揃って遠征チームだー。全く、政府の我が儘には困ったものだ。おかげで"五天王"が過労で倒れてしまい、獅雨と怪我が完治した兄、鳴海が介抱している。


「まぁ、いいんじゃない?明日からまた同じになるんだから。オレにも体験させろっつーの」

「うおっ」


と、突然、零耶の頭に重みが。統軌よりも重く、零耶の前にいる左京が笑ってない笑みで零耶の頭の上に両腕を置いている人物を見ている事からなんとなく誰だかは分かった。


「遊姫の兄貴ー左京の兄貴がやめろって」

「は?なに?オレの勝手なんだからいいでしょ」

「俺がキツイ」


零耶が呆れたように言うと頭に両腕を置いていた人物、遊姫は「面白くないなアンタは」とぶつぶつ呟きながら退いた。そんな彼を零耶は横目で振り返った。いつも着ている白衣を脱ぎ、少し薄めの黒のロングコートを着ている。遊姫はいつも任務に出ると白衣をロングコートに変える。理由は不明だ。黒のロングコートと云えば統軌だが遊姫の中のワイシャツが黒だったら可笑しいほどに服装が似ている状態になる。まぁ、遊姫自身は任務用コートを「灰色」だと断言しているので灰色と云うことになっている。あとたまにロングコートの色が変わる。


「遊姫、キミは零耶よりもヒールで身長が高いんですから気をつけてください」

「はいはい分かってるっつーの!アンタはオレの母親かって」

「ボクはただ!」

「はいはい、左京ストップ」


今にも別の意味での喧嘩が始まりそうだった左京と遊姫を右京が止める。呆れていながらも楽しそうに笑う右京。零耶はそんな光景を見て小さく笑った。


「こら~喧嘩しないのっ」


そう言いながらも楽しさが滲む声に零耶が前を見ると神楽がいつものように露出度高めの格好で薙刀片手に立っていた。神楽は喧嘩腰になっている遊姫とその間に立つ右京、そして扇を口元に当てながら明らかに関係ないと言わんばかりにそっぽを向いている左京を見上げた。


「遊姫くん、左京くんの言葉に反応しない。左京くんも煽るような事言わない。分かった?」


神楽が薙刀を持っていない方の手を腰に当てて言うと遊姫は「うっ」、と図星をつかれて呻き、反省したように項垂れた。だが左京は反省していないらしく、そっぽを向いたままだ。遊姫を煽るようなことを言った自覚がもしかするとないのかもしれない。右京が「左京ー」と苦笑しながら呼ぶと仕方なさそうに頷いた。それに神楽が満足そうによしっと頷いた。と、その時、冷たい風が彼らを襲ったかと思うと感じ慣れた気配が彼らを囲むように広がった。零耶は短刀を構えながら振り返った。他の者達も武器を手に振り返る。そこにいたのは煌めく宝石の瞳を体中に縫い付けた【神穢シンエ】達だった。


「おやま~こんなにいたとは…ちょっとびっくりだね」


薙刀を担ぎ直しながら神楽が愉しそうに口角をあげる。


「"月明かり"、準備なさい」


その言葉に神楽の薙刀が淡い光を放つ。これは彼女の【AVANOLS・Revivalレビヴァル】であった。それを零耶は、人それぞれではあるがその光景を、【AVANOLS・Revivalレビヴァル】を美しいなと思った。武器と使用者が此処まで信頼関係を築ける事も、武器が自分達に力を貸してくれることも嬉しいことこの上なかった。

そして、今回のこのパーティーの隊長である神楽が指示を出した。


「左京くんと右京くんは一緒に右側を片付けてね」

「はい」

「了解」


左京が扇を構え、右京が大太刀を構え、返事を返す。次に神楽は零耶と遊姫を横目に見やり、口を開こうとした。が、その前に遊姫がクスリと妖艶に微笑をこぼして言った。


「オレと零耶が左側って言うんでしょ?」

「正解!んじゃ、2人共、左側OK?」

「任せとけ!」

「了解!」


零耶と遊姫の答えを聞き、神楽はニイと笑った。


「ふふ、いいねいいね。んじゃあたしは、その間を補うから」


そして、彼らと【神穢シンエ】達は敵に向かって大きく跳躍した。


零耶は目の前に躍り出た【神穢シンエ】の足元を刈るように短刀を振った。足元を狙われた敵は一瞬、躓きかけたが態勢を建て直すと手に持つナイフを零耶目掛けて突き刺した。がそれを零耶は短刀で絡めとる。と、【神穢シンエ】の頭に散りばめられていたパールが突然、飛び出した。横目に見ると上に遊姫が。零耶はそのせいで慌てている【神穢シンエ】のナイフを弾くとそのまま黒い腕をナイフを持つ手ごと斬った。違和感。零耶はすぐさま後退する。零耶のサポートをしていたらしい遊姫も小太刀を持ちながら警戒した表情で後退してきた。


「気づいた?」

「嗚呼、今回も、ヤバい」


冷や汗が零耶の額を伝う。目の前で倒しそびれた【神穢シンエ】は、他の【神穢シンエ】数体と合体していた。受けた傷を他の【神穢シンエ】で補い、巨体と大きな力を手にいれていた。今回の敵は全て合体するようで左京と右京、神楽が担当する方向から驚く声が響いている。つまり、倒すべき【神穢シンエ】は合体によって少なくとも3体に減った。これはどちらかと云えば、好機でしかない!


「ま、いいんじゃない?オレはこの機会、存分に使わせてもらうよ。"夢奏"、鑑定準備」


遊姫が口角を無理やりあげて言うと小太刀を片手で構えた。途端に小太刀は淡い光を放つ。彼も【AVANOLS・Revivalレビヴァル】を発動させた。遊姫はそのまま【神穢シンエ】に向かって滑るように駆けた。それを零耶が追う。


「"夢奏"・レ・トール


スゥ…と遊姫が透けた。【神穢シンエ】がいくつもの刃が同化した両腕を遊姫に向かって振った。が、その攻撃は遊姫には当たらない。いや、正確に言えば、通り抜けたのだ。様々な宝石が散った顔がえ?と人間のように呆ける。トン、と軽やかな音に【神穢シンエ】が上を見ると空中に遊姫が小太刀片手に立っていた。してやったりと笑いながら小太刀を突き刺した。【神穢シンエ】がかろうじて避ける。が左肩には大きな切り口が入っていた。遊姫は立ち上がりながら再び笑う。それに【神穢シンエ】が気付き、背後に向かって右腕の刃物を振った。違和感あり。【神穢シンエ】の宝石でまみれた口元が三日月を描く。だが次の瞬間、その笑みが凍りついた。


「あーあ、かすった。まっ、いいか。さっさと仕掛けな、零耶!」

「言われなくてもっ!"小鶴"・鶴ノ姫!」


神穢シンエ】が左腕の刃物を振りながら慌てて振り返るとそこには【神穢シンエ】の頭上よりも高く跳んだ零耶がおり、左の脇腹にさっきの攻撃が当たったのだろう一線があった。が、敵にはそこまで思考が回る状態ではなかった。零耶の背後に美しいベールを頭からすっぽりと身に纏ったこれまた美しい白い肌を持つ女性が現れたからだ。普通の人間の大きさではないから技の効果だと思われる。がそう思っても【神穢シンエ】の足は誘導されているかのようにその美しい女性へと向かう。女性が両腕を広げて【神穢シンエ】を迎える。途端、背中に痛みが走った。【神穢シンエ】はそこで現実に引き戻された。遊姫はなんと言った?「仕掛けな」と言った。それはつまり、これが


「そう、これが罠だ。進化した【神穢おまえ】は普通の技じゃあ倒せない。なら、俺達は」


グルと【神穢シンエ】の背中から短刀を突き刺した零耶は柄を回し、追撃を与えた。【神穢シンエ】が痛みに宝石を歪めた。バサッと目の前の女性がベールをあげてその姿を現す。そこにいたのは遊姫だった。驚く【神穢シンエ】に向かって嗤うと小太刀を切りつけた。そして2人は後退する。傷をつけられ、騙された【神穢シンエ】は怒りを散りばめられた宝石に宿す。両腕をスッと振ると、両腕と同化した刃物がとても鋭利になった。怒る【神穢シンエ】に零耶は冷静に、頭を指先でたたく。


頭脳ここをも使うぜ?」

「さっさと片付けるよ、零耶」


小太刀を指先で軽く撫で、遊姫が言う。相手はやる気のようだ。零耶は短刀を構える事で、遊姫に答える。そして2人は怒れる【神穢シンエ】に向かって駆け出した。


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