表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第三章 それでも彼らは抗う
24/76

第二十四話 錬金術師の博士理論術式



「うっさいなーそんなに叫ばなくてもよくない?」


驚いて叫んだ3人に片耳を押さえながらその人物は呆れたように言った。ハッと、玲御が我に返り、代表して問う。いまだに零耶と統軌は困惑中でもしかして「あれ」かと、小声で不思議そうに会話していた。


「どういう事?」

「どういう事もなにも。統軌と玲御に点検頼まれたからやったら、ちょっと変わってたんだよね。それで進化ってさっき言った。んで」

「「?!」」


その人物はガラスの奥にある鋭い目を小声で会話していた零耶と統軌に向けた。ピクリと2人の体が動いた。


「何があったか説明してくんない?」


笑っていない笑みで言うその人物に統軌は負けたと云うように肩を落とした。チラリと零耶を見ると玲御に言ってもいいのかと戸惑っていた。確かに「あれ」は全員に起こる訳ではきっとない。自分達は「分かった」が他の仲間がどうなるかは不明。けれど、それでこの闘いが有利になるのならば……

統軌が零耶に大丈夫だと小さく微笑むと彼は少し安心したように頷いた。そして2人はその人物と玲御に「あれ」を話した。




結果から云うとその人物と玲御は驚いたようで顔を見合わせていた。


「………分かったか…?」

「まぁ、なんとなく。それで2人は一時的にいつも以上に力を発揮できたんだよな?……っ」


玲御が零耶の問いに答えながら段々と弱々しくなっていく。そして最後にはその瞳から涙がこぼれ落ちた。ギョッとこういう時どうしたらいいのか分からないその人物と統軌が慌てる中、零耶は驚く事なく、玲御が涙をこぼした意味を察した。


「…玲御レーミも、なのか?」

「え?」

玲御レーミも体験したのか?」


玲御の優しい問いかけに彼女は涙を瞳に溜めながら顔をあげた。あげた拍子に涙が数敵こぼれ落ちる。玲御は小さく、コクンと頷き、震える声で話し始めた。


「……うん。今日の任務で、ね。兄さん達を助けたくて、無理に前線に飛び出して行ったら、零耶レーヤと統軌みたいにちょっと目の前が暗くなって時間もゆっくりになった……私はそこで、綺麗な女の人に会った……あとは2人と同じ。私、だけかと思った…悩んでたら零耶が重症で運び込まれるしで、本当、本当……!」

「あーあー、ったく。ほら、俺はこの通り無事だからな?」


零耶がしょうがない、と云うように両腕を広げると既に半泣き状態の玲御が怪我人の零耶の傷を刺激しないように抱きついた。零耶が自分の胸で泣く玲御の頭を優しく撫でた。双子だから、姉弟だから分かる。玲御は怖かったのだ。他の人に「あれ」を言っても大丈夫なのか、影響はないのか。そう悩んでいたところに重症の零耶だ。不安が爆発したのだろう。零耶が玲御を宥める後ろでその人物が「あとで玲御のも点検チェックだなー」と言って前方の呆れた顔の統軌に「あとにしてよ本当に」と釘を刺されていた。


さて、不安が爆発してしまった玲御が落ち着いたところでその人物が「進化」と零耶と統軌の武器をそう捉えた理由を聞くことになった。玲御と統軌が壁側に座り、零耶が横になっているベッドを挟んで廊下側にその人物が立つ。その人物はベッドの上で起き上がっている零耶の膝辺りに2人分の武器を置いて彼に預け、持ってきていたファイルを開いた。深呼吸をする音が静かな空間にやけに大きく響いた。


「"夢奏むそう"・閲覧ラ・リューレ


その人物の手にあるファイルとその人物の腰にある小太刀が淡く光った。と思うと小太刀の光はファイルに吸い込まれ、ファイルの光が3人の、彼らの前に散った。散った光はパソコンの画面に似たようなものをいくつも展開させた。その薄い画面には様々な文やイラストが描かれていた。零耶と玲御が周りに浮かぶそれらを眺めていると統軌がその人物を見据えて言った。


「さすがだね、姫さん?」

「当たり前じゃん。あと、その名前で呼ぶな」

「はーい、らんさん」


統軌はその人物、青年にギロリと睨まれて肩を軽く竦めた。その口元は悪戯っ子のように楽しそうに小さく笑っていた。それに気づいた零耶が小さく呆れたようにため息をついた。

青年の本名は遊姫ゆうき らん。【AVANOLSアヴァノリス】には珍しく2つの名前を連ねて持つ唯一の人物である(以下、名前が連なっているので遊姫とする)。柑子色こうじいろの長髪で首根っこ辺りで一纏めにしている。瞳は少し濃い黄色。銀縁の眼鏡をし、両手の爪に黒のネイルをしている。服は白のワイシャツに緩めた黒のネクタイをし、黒のスキニーの長ズボン。上から白い白衣を着て、靴はヒールがとても高い黒のハイヒール。

腰には小太刀、"夢奏"(以下、小太刀)をさしている。小太刀は、神々しくもあり、禍々しくもある何かを漂わせている。

彼の言う技の言葉は他の【AVANOLSアヴァノリス】とは少し違う。【AVANOLSアヴァノリス】専用の点検係である『錬金術師』なためか否や、彼は技の言葉に"異龍桃語いりゅうとうご"と呼ばれる言葉を使っている。これは彼と同期の【AVANOLSアヴァノリス】達が面白半分で作ったところ、遊姫がえらく気に入って武器に組み入れたと云う。ついでに云えば、遊姫によってヒールの高い靴やネイルが流行ったらしい。


遊姫はファイルにネイルが塗られた爪を当てながら、文章を読みながら「進化」について説明を始めた。


「零耶と統軌の武器を点検チェックしたら、微かに光ってたんだよ。普通は技を使用している時以外は光ったりしないはずなのにね。だから、"夢奏"で調べたんだ……玲御の前の画面やつ見て」


遊姫がそう言うと3人が玲御の前にある画面を見た。そこには零耶の武器である"小鶴"と統軌の武器である"燭"を縮小したイラストが載っており、所々に矢印があり何か細かい字で書き込まれていた。


「なにこれ?」

「武器のイラスト…?」

「聞けって。調べたところ、鞘に納まるまでの数分前まで力が発揮されていた。原因はアンタらが言う『あれ』。それからずっといつも以上に力が発揮されていた、だから『進化』と表した。あと、今でも少し力が発揮されてる」

「例えば、どんな風に?」


玲御の問いに遊姫はニヤリと愉快そうに笑い、ファイルの文章を指でなぞった。

今までになかった現象。嗚呼、震えが止まらない。オレは【彼ら】に少しは近づけた?


「例えば、使用者の体力値、攻撃力、防御力とか全てを上昇したり、奥義を与えたり。その矢印は全部、発揮されてる状態の位置。さっき言った通り、今も発揮状態は続いてるからこれからの戦闘は楽になると思う……でも」

「でも?」


言葉を止めた遊姫に統軌が続けてと云うように首を傾げる。なんとなく、零耶には遊姫が言おうとしていることが分かっていた。この状態がいつまで続くのか、と云うことだろう。


「いつまで続くのかが疑問だね。あと、『あれ』。『あれ』がどういう条件で起きるのか……ハハ、謎がつきないなぁ…まぁ、とりあえず」


パタンとファイルが閉じられるといくつも画面がシュン…と消えた。そして顔を上げた遊姫の顔に全員が固まった。


「全員の武器回収して、聴取しなきゃな」


眼鏡の奥の鋭い瞳が獲物を見つけて愉快そうに細められていた。それに3人はいつまで続くかな……とため息をつきながら肩を落とした。


…*…


獅雨はある部屋に静かに入室した。薄暗い部屋の中で唯一、明かりが灯っている机に向かって遊姫がしきりに腕を動かしていた。


「……遊姫兄ちゃん」

「獅雨。どうだった?」


獅雨に背を向けたまま、遊姫が言う。獅雨は眠たそうな表情をしながら言った。


「遊姫兄ちゃんの思った通り」

「……やっぱりか」


獅雨の答えに遊姫はようやっと顔をあげ、背もたれに体を預けた。

あのあと、"五天王"に報告された発揮状態は零耶達の他にも何人かいた。そこで遊姫は獅雨に彼らのその時の状況と心情を聞いて来てもらった。その結果である獅雨の答えから、あの状態は使用者の【AVANOLSアヴァノリス】が強く力を願った時に起こっている事が確定された。そして、発揮状態になった全員が全員、「周りの時間が止まり、暗くなった」と証言。もうひとつ、人と会話したと。全員が違う人と会話した。つまり、それは武器が使用者である【AVANOLSアヴァノリス】に力を貸した、もしくは与えたと云うこと。発揮状態になった【AVANOLSアヴァノリス】達のその時の状況と言葉から察するに『あれ』で会った人は武器そのもの。そして、自ら力を与えた……興味深い。

遊姫の愉快そうな笑みが明かりで妖艶に浮かび上がる。


「ありがとう獅雨」

「……いいえ…無理、しないでね」

「うん」


再び、机に向かう遊姫を獅雨は心配そうに眺めた後、部屋を出ていった。部屋の外には"白"が待機しており、獅雨は"白"と一緒にそこを後にした。

のちにこの現象は"五天王"に正式に報告され、遊姫によって説明された。


〈強く力を願った時、武器が異空間にて擬人化し、力を与える現象。力は人それぞれ様々だが、統一されているのは初回の発揮状態から鞘に納まった後、数時間は力が継続すると云うこと。その後は使用者の意志によって発揮可能。

この現象を【AVANOLS・Revivalレビヴァル】と命名する。情報が分かり次第、随時、報告する模様。〉



AVANOLSアヴァノリス】は強い武器との関係を一層強くし、【神穢シンエ】に立ち向かう。今日も、同じように。だが、【神穢シンエ】が進化した意図はいまだに不明のままだった。



遊姫が言ってる【彼ら】ってのは彼が敬愛してやまない昔の人達の事です。説明する場所が探したら(後にも今にも)なかったので、此処で説明をさせていただきました!


説明文って難しい……理解できなかったら「こういう事が起きたんだー(棒)」って思っておいてください…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ