表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第三章 それでも彼らは抗う
23/76

第二十三話 "小鶴"と"燭"



襲い来る敵の攻撃に身構えた2人だったが一向に来ない痛みと敵に2人は驚愕して前を見た。そこにいたのは【神穢シンエ】達ではなく、少年2人だった。【神穢シンエ】達は愚か、イラヴィまでもがゆっくりとした動きをしていた。そして明るかったはずなのに何故か、自分達の周りだけ異様に暗い。


「な、に、これ…」


統軌が驚きの声をあげると彼の前に立っていた少年がクスリと笑った。


《僕らが一時的に時間を遅くしたんです》

「……てか、あんたら誰?」


零耶が警戒しながら云うと零耶の前に立つ少年が楽しげに笑った。一人は白い長めの布を頭から被り、もう一人も色が黒い長めの布を頭から被っている。よく見れば、零耶と統軌の前に立つ少年2人は似ているように見える…が布が顔を隠しているためよく分からない。

零耶の前に立つ少年が零耶に向けて手を伸ばした。零耶が警戒で体を固くした。が、伸ばした手は彼の右の頬についた傷を優しく撫でただけだった。零耶も統軌も目を見開いた。零耶は何故か、彼を知っている気がした。いや、自分が少年だと思っているだけでもしかすると少女かもしれない。けれど、零耶は知っている気がした。


《俺達はあんたらがよく知るモノ。仲間のために前線に出るあんたらはカッコいいよ。でも、死ぬんじゃないかって不安だった……!》

《兄弟も仲間も友人もみんなが心配してるんだから、無理、しないでよ》


2人の少年が泣きそうな顔で訴えかける。零耶と統軌の脳裏に大切な兄弟や友人や仲間が浮かぶ。けれど、


「……………だとしても」

《?》

「だとしても僕らは敵を倒さなきゃいけない、守るために、生きるために」

《《!!》》


少年2人が驚いたように目を見開いた。統軌の言葉に零耶は小さく笑い、「そうだな」と同意した。


「俺達には俺達の目的があって闘ってんだ。心配してくれんのはありがたいけどな」


零耶が笑って云うと少年達は呆れた、とでも言うように、それでいて嬉しそうに笑った。統軌が「ところで誰?」と訊く。なんとなく、訊かなくても分かっていた。彼らないし彼女らは、


《《さあ?分かってるなら言わなくても同じ事だろ/でしょ?》》


少年達は再び、零耶と統軌に手を、両手を伸ばす。2人は微動だにせずにそれを受け止める。分かってる、きっと、それは。


《そんな我が主人に力を》

《敵が強くなったなら、こっちだって》

《《強くなったって、主/主人のために闘ったっていいだろう/でしょう?》》

「"小鶴"」

「"燭"」

「「俺達/僕らにその意味を示せ」」


彼らを淡く、温かく、優しい光が包み込んだ。


…*…


「?!」


突然、背中に、いや、背後からした凄まじい力の片鱗の気配にイラヴィは思わず振り返った。


「!?…………ふふふふ、嗚呼、なんてこと……!」


その声色からは驚愕と恐怖、そして焦りがにじんでいた。悔しげに顔を歪める彼女の表情には何故か嬉しさも混ざっていた。片腕や体の半分を失った【神穢シンエ】が宝石の瞳を大きく見開いており、彼らの視線の先には怪我をもろともせずに立つ零耶と統軌がいた。だが、その様子は少し、先程と違っていた。2人が持つ武器はほのかに光輝いており、その瞳には先程よりも強い意志が宿っていた。外見は何も変わっていないように見える、が敵である彼らには分かる。気配でさえ、もう、変わっていると。武器を構える2人を見てイラヴィは嗤う。三日月のように口角をあげて、嗤う。


「素晴らしい…素晴らしいわ!あの方もきっとお喜びになるわ!あははは!」


イラヴィはレッド・ダイヤモンドの髪飾りを揺らしながら、微笑みながら告げる。


「その力、私達に見せてちょうだい!」


途端に【神穢シンエ】達が零耶と統軌に向かって跳躍する。2人は静かに足に力をこめる、と跳躍した。


「統軌、そっち任せた」

「りょーかいっ!」


零耶は片腕をなくした【神穢シンエ】に向かって滑るように移動する。さっきまで傷だらけで動くのもやっとだったのに体がものすごく軽い。まるで背中に翼でもついているかのようだ。零耶は敵の懐に入り込むと短刀を首目掛けて一線した。首がボトリと音を出しながら後方へ落ちていく。だが胴体はまだやる気のようだ。よく見ればその胸元辺りにはアメジストが散りばめられていた。零耶はその体に回し蹴りを放ちながらほのかに光輝く短刀を握り締める。


「"小鶴"・血雪ちゆき


何処からともなく降り注ぐ雪が胴体だけになった【神穢シンエ】を包み込む。が、それが体に当たるたびに焼けるほどの熱さが敵の胴体を外側から、内側から蝕んでいく。地響きのような悲鳴を何処からかあげて【神穢シンエ】は溶けていく。そこに零耶は素早く何度も追撃を与える。雪のようでいて雪ではないものと零耶の雨のような攻撃に【神穢シンエ】は次第に動きを止め、消滅した。

零耶は肩で息をしながら自身の手を見やる。今、自分はどうなっている?傷がないかのように体が軽い。何故だろう。だが、その答えが零耶には分かった気がした。横目に統軌の様子を伺うと彼の方には残党が行っていたのかもう少しで勝ちそうだった。零耶は悠然とこちらを見ているイラヴィに向かって駆け出そうとした。


「っっ!!」


左の脇腹の凄まじい痛みを感じて思わず足を止め、そこを押さえた。押さえた手を見ると血が。零耶は自分の視界が歪んでいることに気づく。嗚呼、限界か。そう思った零耶の歪む視界に和やかに微笑むイラヴィが映った。そして彼女は黒い霧に包まれて消え、それと同時に零耶は意識を闇の中へと受け入れた。


…*…


「………ん」

零耶レーヤ!?零耶レーヤ!」


零耶が深い闇の底から目を覚ますとそこにいたのは心配そうな表情をした双子の姉だった。そして、暖かくも眩しい光が零耶を包む。


玲御レーミ………此処…」

「獅雨の医務室の隣の部屋。任務中に大怪我負って倒れたって聞いたからもう心配で!」


今にも泣き出しそうな表情で玲御は叫ぶ。零耶がゆっくりと起き上がり、自身の体を見ると怪我したところ全てに包帯が巻かれていた。零耶は泣き始めた玲御の頭を優しく安心させるように撫でる。それに彼女は零耶が無事とやっと実感できたのか嬉しそうに笑った。それに零耶も笑い返す。


「あ、統軌達は!?」

「自分よりも僕らの心配?」


思い出した事に零耶が声をあげたと同時にスライド式の扉が開き、包帯を巻いた統軌と絡繰が入って来た。それに零耶はホッと胸を撫で下ろす。


「お前らのおかげで全員無事だ。鈴音丸と律夏は見たこと聞いたこと全部、残りの"五天王"に報告。【AVANOLSアヴァノリス】全員にあのイラヴィって奴の情報が渡った」

「そう……なんだ」

「統軌、零耶に飛び付くなよ」


絡繰が無事な零耶を見て安心したように微笑んだ後、そう安心させるように云う。玲御が弟を此処まで大怪我にさせたイラヴィを思い浮かべ、怒りで拳を握りしめた。それに気づきながらも部屋を出ていこうとする直前、絡繰は統軌にそう言った。統軌は「余計なお世話!」と反発し、少々空気が和んだ。

絡繰が出ていくと統軌が玲御が座る椅子の隣に腰かけた。統軌によれば絡繰は鳴海の方へ見舞いと部屋への同行を兼ねて行くらしい。足を怪我した鳴海は医者である獅雨の影響かはたまた武器の細胞のおかげか足以外は軽症だったらしく、足の怪我を治すために自室で療養するそうだ。足を怪我しているので絡繰が付き添い。

鈴音丸と律夏の怪我も大事には至らなかったらしく、進化した【神穢シンエ】の被害状況を見る限り、明後日から"五天王"が数名、任務に参戦するそうだ。今のところ、彼らの情報から「黒装束とイラヴィには気をつけろ」と全員に警告が行っているようで全員が全員、"五天王"直々の警告とあって任務をおこなう場合は警戒と緊張が走っていると云う。

零耶と統軌は彼らの中で一番怪我が多く、重症よりなのでしばらく療養になった。ちなみにあの任務から緊急撤退ーイラヴィ以外は討伐完了ーしてまだ半日でこれである。【AVANOLSアヴァノリス】の連絡網、すごい。


「そういえば零耶。あれってさ……結局なんだったの?」

「え?なんの話?」


統軌が言っているのは2人が経験したあの、時が止まったかのような「あれ」の事だろう。玲御はなんの事?と首を傾げている。零耶は玲御に言ってもいいのかと少し不安だった。だって「あれ」は実質、零耶と統軌しか体験していないし、どんな効果があったのかもよく分からないのだ。そんな事柄を話しても大丈夫なのだろうか?

そんな零耶の心配を察してか統軌が気まずそうに視線を玲御から外し、傍らの机に置かれているはずの彼の短刀を見る。がそこで統軌はえ?と目を瞬いた。だってそこには零耶の短刀がなかったのだから。自分は自ら点検をお願いしたので行き先が分かっているが先程まで気絶していた零耶のは………?

統軌が考えている事に気づいた玲御が苦笑しながら云う。


零耶レーヤの短刀は私が頼んだら、点検係が持ってっちゃった。もうすぐで返ってくると思うんだけど…」

「え、"小鶴"、点検に行ってたのかよ」

「気づいてなかったの?」

「気づいてなかった」


零耶がそう云うと呆れたと云う感じで玲御が笑う。それに2人もつられて笑い、空気が緩和されていく。と、その時


「すっっっっごい、事になってるんだけど、どういう事?!」


スッパーン!、とスライド式の扉を壊す勢いで開けた人物がいた。その人物を振り返った3人は驚愕にあんぐりと口をあけた。その人物は驚いている3人を見て「なんで驚いてんの?」と不思議そうだ。その人物の両手には零耶の武器である"小鶴"と統軌の武器である"燭"、そしてあるファイルが抱えられていた。


「ど、どうしたの…?」


玲御が戸惑い気味に訊く。その人物は部屋の中に入ってくるといまだ驚いた状態の3人に向かって答えた。


「え、んだからさ。すっごい事起きてんだって。零耶と統軌の武器にさ」

「………具体的には」

「進化した」


暫しの沈黙。

そうかそうか、俺達の武器が進化したか。まるで【神穢シンエ】みたい……て


「「「進化??!!」」」


部屋に3人の驚く声が木霊した。


零耶と統軌の武器の名前については考えた時に思い付いてたんですよね。と云うか"小鶴"ってのが先にピンッ!と思い付いたっていう(笑)

そしてこれは前々からやりたかったんですよ!

…と云う裏話?的な…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ