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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第二章 それでも彼らは救い出す
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第十八話 気配と予感



少々薄暗い部屋の中で紙を捲る音と何かを書く音が響いている。円卓を囲んで座るのは5人の男女。そのうち2人がテーブルの中央に置かれた大量の明日以降の任務書類を仕分けて、もう3人が今日起こった事件、〈【神穢シンエ】による誘拐拉致事件〉の資料をまとめていた。起きた日のうちにーいや、日にちが変わったので一日かー解決した事に此処にいる全員が仲間達を誇らしく思っていた。それに政府への報告は明日。清守からの書類も確認し、早く仕上げて月一の宴に向かおう。いつもの政府からの嫌味を綺麗さっぱり忘れて、今日の朝方まで飲み明かそう。そんな思いで5人は黙々と手を動かしていた。


と、ふと、その手をある書類で止めた者がいた。それに気づいた隣の者が怪訝そうに首を傾げて問う。


「どうしたの?」

「……いや、なんでもない。この任務、僕が担当しても良いかな?」

「ふぅ~ん、医療系の任務おしごと?…お薬の投与ね。いいんじゃないかしら」


その者が書類を覗き込んで言うと他の皆にも意見を求める。全員が「良い」と云う答えを返し、書類を持っていた者は小さく会釈した。


「じゃあ、そろそろ清守の方も終わった頃合いだろうし、宴に行かない?」

「いいねいいね!そうと決まったら早速行こう!"五天王"が行って酒盛りして酔うまでが宴なんだから!」

「そうよね。報告は明日でいいんだし、行きましょ!」


そう、此処にいるのは"五天王"である。彼らは報告書や書類をテーブルの中心へと集めていくが一人だけ、先程の書類を持ったまま動かない者がいた。さっきの書類を持っていた者だ。その者、彼は"五天王"でもリーダー的存在である。【AVANOLSアヴァノリス】、戦闘専用人種にただ一人の珍しい"異常持ち"でもある。


AVANOLSアヴァノリス】は本来、武器の性質を政府の科学者が造り出した【人造幼児体じんぞうようじたい】と呼ばれる、【AVANOLSアヴァノリス】の元となる赤子の細胞に組み込む事によって誕生する。設定された成長になるにはおよそ一週間かかる。たまに成長過程で【人造幼児体】が分かれる事があり、その場合は双子となる。兄弟はその武器の性質を同じ分量組み込まれている。ちなみに兄弟は同じ瞳の色をしているのでわかりやすい。

"異常持ち"はその過程で通常ならばあり得ないものを持って生まれた者をさす。彼は"異常持ち"であるがその異常がなんなのかは政府も知らない。彼が生まれた瞬間に「異常はあるが大したことはない」と言ったからである。科学者がもっと念入りに調べるようとするのをかわすように彼は通常なら一週間してから任務に関わるところを三日でおこなった。それが政府には人型の武器、戦闘専用人種としてふさわしいとされ、今の今までー"五天王"になってからもー科学者が関わる事がなかった。


そんな"異常持ち"である彼が気になった書類には薬を投与すると云う医療系任務が書かれている。【AVANOLSアヴァノリス】には【AVANOLSアヴァノリス】が対応すると云うことで医者もいるにはいるが、任務内容が可笑しいのだ。何故、〈【AVA64R】を【AVANOLSアヴァノリス】全員に投与〉する必要があるのか。【AVA64R】とは【AVANOLSアヴァノリス】の細胞に組み込まれている武器の性質の総称ー物質と液体に近い細胞ーである。何故、生まれ持っているものを投与する必要があるのか。しかも全員。昨日から今日の事件をきっかけに【AVANOLSアヴァノリス】を強化するのだろうか。だが【AVANOLSアヴァノリス】を強化するのならば、それとは別の薬を投与すれば良い話だ。既に持っているものを投与しても変化がない事は既に把握済みのはず。実質、意味のない任務内容だった。


「(なんでだ?なんで政府はこんな無意味な任務を下した?)」


ただ単に実験なのか?ならばあの研究室に引きずってでも連れて行けば良い。もしかすると新しい【AVANOLSアヴァノリス】を造るための任務をこちらに間違えて入れてしまったのだろうか。きっと、そうだ……だが、内容的には違う。気のせいじゃなかった。

……………いやな予感がする。

彼は自分の"異常"を手で触れた。その"異常"は顔にある。

彼は瞳を閉じ、軽く息を吐いて深呼吸すると少し遅れて椅子を引いて立ち上がった。


「?宴に行かないの?」

「嗚呼、もちろん行くよ。此処の片付けをしてからね」

「それなら手伝った方が…」

「いいのいいの。確かめたい事もあるし、先に行ってて」

「…分かりました」


彼はしぶしぶと云った感じで部屋を出ていきながらも楽しそうな表情をしている仲間達にお礼として微笑むとその書類をテーブルの中心へと集められた書類の山と一緒にまとめる。

彼の心中を蝕む、悪い予感。

〈【神穢シンエ】による誘拐拉致事件〉の首謀者と思わしき黒装束。

無意味な医療系任務。

そして、彼の"異常"が囁く不気味な呪詛めいたさざなみ。


「…ま、考えてても分かんないもんは分かんないか」


ただの考え過ぎだ。

そう結論付けて止まっていた手元をトントンと動かし、書類をまとめ、近くの棚に駆け寄る。棚の全ての段には難しそうな本がズラリと並んでいる。その棚の一番上、一番端の赤茶の背表紙の本を横にずらすとそこには少しさびれた小さな取っ手があった。その取っ手をカチリと云う音がするまで回すとそこに書類を入れるだけの小さな隙間が取っ手のついた板の向こう側から現れた。彼はそこへ書類を入れると先程と同じように取っ手を回し、本を元の位置に戻しておく。これで片付けは完了である。この仕掛けはこの建物を使っていたお偉いさん方や政府関係者が機密情報や賄賂を隠すのに使っていた隠し金庫だったのだろう。今となっては確かめる事は出来ないし、知る必要もない。

彼は肩を少し回し、月光でいくらか明るい部屋を見渡す。片付け忘れはない。


よしっと頷いて彼は部屋を出ようと扉へと向かう。


「っ」


また、あの嫌な予感。

だが彼はそれをかぶりを振って払った。あの任務内容には疑問しかないがきっと何か意味があるのだろう。もし、仮に意味がなかったとしてそれはきっと自分達には関係ない事なのだろう。そう、きっと。


「(…………宴も重要だけど、この"予感"も重要なんだよね。あの子よりも強くはないけれど、あの子と同じで…)」


彼は暫し考えた後、食堂に行く前に一度確かめたい事のために自室に寄って行くことにした。自分が自室に寄っている間に宴が終わっていなければいいなと思いながら彼は心中に蠢く嫌な予感を抱えたまま、部屋を後にした。


彼が去った部屋に残ったのは窓から差し込む美しき月の光のみだった。


































ーーーーー"以前までは"
















だんだんいつ出しているのか間隔が分かって来ますねこれ。

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