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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第二章 それでも彼らは救い出す
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第十五話 死の舞踏を舞い踊れ


玲御は太刀を【神穢シンエ】の瞳であるトパーズに突き刺し、パキリと壊しながら回し蹴りを放つ。敵は数人の【神穢シンエ】をも巻き込んで行く。玲御はふと、一緒に来ていた左京を見た。彼は敵の攻撃を舞を舞うように避けながら、追撃を与えている。その動きは軽やかで儚げで美しい。と、彼女の視界の隅に雷のような光が見えた。一瞬、そちらを振り向こうとしたが【神穢シンエ】の攻撃に気を取られ、確認できなかった。だが、あれは。


「(感覚的に守光の…)」


玲御は軽く頭を振って気になって仕方がない好奇心を振り払い、目の前の敵に向かって太刀を振り切った。




零耶は目の前で起こった事に少なからず動揺していた。と同時に清守が言っていた意味を理解し始めていた。


「…それがお前の特殊な攻撃パターンか」


小さく、口角をあげる零耶の口からそんな言葉が零れ落ちた。なんだかその声は愉しそうであった。それもそのはず。零耶はこんな攻撃を今まで見たことがなかったからだ。その攻撃を放った張本人、守光は清守と似た笑顔でありながらも残酷さを孕んだ笑顔で零耶を振り返った。


「うん、そうだよ零お兄ちゃん!ねぇ、見て…ぼくの可愛い子達…とても……とっても!可愛いでしょ?」


守光はうっとりとした顔で自分の近くに浮いているその"特殊な攻撃パターン"に手を伸ばした。振り袖がヒラリヒラリと風で舞い揺れる。守光が手を伸ばした先には赤黒い色をした頭蓋骨が数個浮いていた。中には空洞の目や口から血なのか黒いものを流している頭蓋骨や目に五寸釘が突き刺さっていたりと不気味な頭蓋骨が多く、守光の云う「可愛い」が何処にも見当たらない。と云うよりもどちらかと云うと「気持ち悪い」や「不気味」がしっくり来る。


守光の攻撃を目の当たりにした零耶は小さくなるほどと納得したように頷いた。先ほど、守光は空中に浮かぶ頭蓋骨を使って攻撃した。それから考えるに守光の"特殊な攻撃パターン"とは、つまり、


「……"死の瞳"がお前の武器か」

「"死の瞳"だなんて名前、可愛くないよ、零お兄ちゃん。ぼくの武器であるこの子達は、とっても優秀だよ」


守光は嬉しそうに笑った。

"死の瞳"、大昔、ある陰陽師が妖怪になった時産み出したと云う式神にして武器。自分が殺めた人間の頭蓋骨に魔力を溜めて作られたもの。だがそれは大昔に不吉だと云って使用を禁止され、存在を消し去られた。それを守光は使う。それは武器の性質を細胞に組み込んだ故に出来た異常か、それとも清守あにと同じ成長の過程での"障害持ち"による後遺症か。零耶はどれも違うと考える。だって彼女はあんなに嬉しそうに微笑んでいるのだから。守光は心から「可愛い子達」と呼ぶ誰かが殺めた頭蓋骨を、誰かの頭蓋骨を好いているのだ。それはどういう事か。零耶はかろうじてだが予想がついた。


「だって、ぼくが直々に復活させた子達だもんっ!!」


弾けるような笑みを暗闇に咲かせ、頬を紅く染めながら守光は言い放った。それに零耶は少し驚き、目を見開いた。だが、予想通りだった。守光かのじょは"障害持ち"でもなければ異常者でもない。彼女は、お墨付きをもらった頭脳の、魔力の持ち主であったのだ。"死の瞳"はそう簡単に出来るものではない。必要なのはその作り方を理解できるほどの頭脳と膨大な魔力。それを守光はクリアし、消し去られた制作方法を発見し、作り上げた。まさにお墨付きの名に、【AVANOLSアヴァノリス】に相応しい。


「(大昔の技術をこの世に復活させ、自らの武器とする………本当、味方で良かったと思わずにはいられねぇ!)」


零耶は愉快げに口角を上げた。だが守光の武器である"死の瞳"(以下、頭蓋骨)には唯一弱点がある。それは魔力の暴走である。その暴走を止めるには太刀ではないく、短刀を…いや短刀しか出来ない。そのため、清守は零耶に守光を頼んだのだろう。そこまで考えて零耶の背に悪寒とはまた違う感覚が走る。自分の仲間達がこんなにも頼もしい。それがとても嬉しかった。


零耶は短刀の柄を握り締め、守光の背後にいた【神穢シンエ】を大きく跳躍し、頭に短刀を突き刺す。頭からの突然の攻撃に敵は美しいエメラルドの4つの瞳を大きく広げた。そこに守光が自身の背後に円を描くようにして浮かんだ数個の頭蓋骨に指示を出す。それはとても簡単。人差し指を【神穢シンエ】に向けるだけ。それを確認した零耶は【神穢シンエ】の頭を蹴って空高く跳躍した。上からは【AVANOLSアヴァノリス】と【神穢シンエ】が闘っているのが月光でよく見えた。


「ぼくの可愛い子達、殺っちゃって!」


守光の言葉と共に頭蓋骨から淡い赤い光が放たれる。それらは【神穢シンエ】に向かって放たれた。数本にも束ねられた凄まじい光線が【神穢シンエ】を意図も簡単に消し去った。スタッとその守光の隣に零耶が着地すると彼女は楽しそうに彼を見上げた。


「じゃ、ちゃっちゃと任務遂行しちゃおうよ!ぼく、玲お姉ちゃん達とこれ終わったらお茶の約束してるの!」


無邪気に約束を語る守光に零耶はクスリと笑った。あんな笑みをしていても、人型の武器であっても守光は守光なのである。そして、仲間。零耶は守光に笑い返すと短刀を握る。


「じゃ、さっさと片付けるかっ!」


そう叫んで2人は【神穢シンエ】の群れへ大きく跳躍した。零耶は素早く【神穢シンエ】の懐に入り込むと次々と斬りつけて行く。そこに守光が追撃を与えて行く。零耶の目の前に突如、現れた黒い大きな人型を持った【神穢シンエ】。【神穢シンエ】は零耶に向かって持っている薙刀を振り下ろした。それを紙一重でかわすと零耶は敵の足を刈った。が、大きいために重いらしくびくともしない。零耶の足がジーンと痺れただけである。再び振り下ろされた薙刀を横に滑るようにしてかわす。と、


「零お兄ちゃん!」

「!?」


守光の悲痛な叫びに零耶は背後を顔だけで振り返った。そこには赤いガーネットの瞳を輝かせる【神穢シンエ】が零耶に向かって大剣を振り下ろしているところだった。暗闇に慣れた目にはその大剣が片腕にもついているのがはっきりとわかった。簡単に云えば大剣の二刀流である。今から防ぐ事も考えたが、それは短刀がもたない。零耶は咄嗟に薙刀を持っている【神穢シンエ】の方へと素早く走り込み、胴体を攻撃した。【神穢シンエ】はそんな痛みをもろともせずに薙刀を振る。そこに二刀流の【神穢シンエ】の攻撃が風圧と共に降り注ぐ。守光には何故、2つの攻撃を同時に受けるような事をしたのか、わからなかった。慌てて援護をしようと零耶を見ると彼は計画通り、予想通りとでも云うように細く微笑んでいた。それに守光の脳内にある考えが浮かんだ。零耶は迫る攻撃2つに向けて短刀を垂直に持つと叫ぶ。


「"小鶴"・鶴刀つるがたな!」


零耶が触れた刃物が順に白い光を放ちながら長くなっていく。よく見れば刃物が長くなっているのではなく、光が長くなっているようだった。零耶は迫る攻撃に向けて長い光を纏い、刀のようになった短刀を振った。攻撃は零耶が放った攻撃とぶつかって瞬殺された。と共に攻撃を放った【神穢シンエ】達に攻撃を与えていた。零耶は跳躍し、二刀流の【神穢シンエ】に技を発動中の短刀を斬りつけた。威力が増しているのかスパッと【神穢シンエ】の片腕が大剣ごと斬れ、黒い霧と化して消えていく。零耶はその【神穢シンエ】に回し蹴りを放ち、先程の薙刀の【神穢シンエ】へと投げ飛ばす。攻撃しようとしていたのに突然、仲間が飛んで来た事に驚いていた【神穢シンエ】は仲間をキャッチしながら薙刀を頭上で振り、風圧の攻撃を与える。ピッ、とそれを避けきれなかった零耶の右腕に浅い一線が刻まれる。が今相手は動けない。零耶は今だ!と守光に叫ぶ。


「守光!」

「わかってる!」


守光が両手を前に突き出すようにしている背後で数個の頭蓋骨の口が勝手に動き、カタカタと鳴り出す。まるで嗤っているようで零耶は少し怖いと思った。その頭蓋骨は先程とは違い、黒く不気味に光輝いていた。守光は零耶の作戦になんとなくだが気付き、彼の合図があるまで準備をしていたのだ。零耶の方も賭けであった。守光が気づかなければ自分は挟み撃ちにされるのだ。だが、守光は気づいた。新人にしては、中々である。さすがが清守の妹、支援を主とする武器を持つ者と云ったところだろうか。

守光は前に出していた両手を重なりあうように動けない【神穢シンエ】達に受けると叫ぶ。


「"死の瞳"・黒妖星こくようせい!」


頭蓋骨が放つ光が守光の背後で星を形作り、暗闇の中で妖しくも美しく輝く。その星は小さく散らばると【神穢シンエ】達を囲む。守光が笑ってパチンッと指を鳴らすと星々から黒い光が放たれた。その光と云うかビームを避ける暇さえなく真に受けた【神穢シンエ】達。光が止まり、【神穢シンエ】達から微かな煙が上がる。これだけでは倒せないほどの体力の持ち主だったのだろう。【神穢シンエ】達は瞳の宝石を怒りに輝かせながら立ち上がろうとした、が


「ぼくの可愛い子達の攻撃はまだ終わってないよっ!」


目の前に現れたのは赤黒い色をした大きな頭蓋骨。頭蓋骨は大きく口を開けながら敵である彼らを食らおうと待ちわびていた。そして、何も抵抗する暇なく……いや、正確に云えば抵抗する暇を与えずに頭蓋骨は【神穢シンエ】達を食らった。彼らを食らった頭蓋骨は黒い霧を立ち上らせながら徐々に小さくなっていき、最後には元の大きさに戻り、コトンッと軽い音を出して甲板に落ちた。零耶は周りに他の【神穢シンエ】がいない事を確認すると守光に視線で促した。守光は心配そうに、不安そうに甲板に落ちた頭蓋骨を拾い上げ、胸に抱き締めた。


「……また、後で会おうね…」

「………」


感覚的に零耶にはあの技のデメリットが理解できた。頭蓋骨に溜めた魔力全てを解放させて巨大化させる技。他の数個がまだ空中に浮いているのを見るとそれができるのは一つまで。再び武器にするには今のところ彼女のみが知る方法で魔力を溜めなければならない。

守光は頭蓋骨を抱いたまま、頑張った?と零耶を見上げた。零耶はニッコリと笑って短刀を持っていない方の手で彼女の頭を優しく撫でた。


「よく分かったな、守光。お疲れ様」

「!うん!お疲れ様ー!」


嬉しそうな、楽しそうな守光の声が夜の闇に響き渡った。



たまに思うんですが、闇堕ちがあるなら逆に光関連のやつってあるんですかね?まぁないのなら作ればいい話ですね!(笑)

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