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それでも彼らは眠らない。  作者: Riviy
第二章 それでも彼らは救い出す
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第十三話 成功の行方と不穏な影の声



玲御は隣で両腕で体を暖める仕草をずっとしている統軌を心配そうに見つめながら左京と共に会議ホールへと向かっていた。


隠密行動後、全てをカメラを通して自前のノートパソコンで見ていた玲御と左京は統軌が直に感じたであろう悪寒を体感した。直に感じた統軌はいまだに悪寒が止まっていない事は彼の仕草から明らかだった。一度は止まったのに、再び起きた悪寒。


「(この任務には、強い【神穢シンエ】が関係している)」


玲御はそう思いながら会議ホールの扉を開けた。が中に入った3人は違和感に首を傾げた。そこにいるのは突入隊と命名された零耶と右京、絡繰、神楽他数名と今回の責任者である清守と彼の傍らに寄り添うように立つ少女だった。彼らの間に思わしくない空気が流れている。奇しくもそれが紛れもなく、統軌が得た情報によってもたらされている事は明らかだった。


玲御レーミ!」


零耶がこちらに気づき、近づいて来ると統軌の様子に気づいた。零耶は頷くと3人にこっちへ来るよう促す。統軌は兄と姉の姿を確認するとホッとしたように頬を緩めた。神楽が優しく統軌を抱きしめながら頭を撫でる。統軌は恥ずかしそうにしながらもそれに身を委ねていた。


「突入隊、これで全員だね」


人格がいつの間にか変わった清守が全員を見回して言う。何を言おうとしているのか空気だけでも理解できた。


「統軌達の情報でこの事件の首謀者と思われる【神穢シンエ】の存在が確認できた。なるべく無傷で捕らえたいけれど、それはもし出来たらにしようね……それでさ………私が考えた作戦を実行する」


清守の言葉に全員が力強く頷いた。それを確認した彼は深呼吸をしたあと、ゆっくりと口を開く。


「決行は今日真夜中。日付が変わったと同時だから、実質、明日かな。それでね…【神穢シンエ】を全て君達が倒している間に人質を救出する隊が行く予定だけど、」

「だけど?どうしました?」


言葉を唐突に切った清守に左京が問いかける。清守は決心したように右に拳を作り、小さく自分に向けて頷いた。大丈夫、きっと。

キッと顔を上げ、清守は言う。


「"五天王"によれば、政府はいまだに要求も、どんな関係者が捕らえられているのかも教えてくれないらしい。だから、もしかすると、何か非常事態が起こるかもしれない。首謀者らしい【神穢シンエ】だって……」

「あーなるほど?清守の兄貴は本当に心配性だなぁ」

「そうだよね。私達なんだから大丈夫!」


清守が心配しているのに気づいた零耶と玲御がそう笑いながら云うと周りも「心配すんなー」「無事に帰って来るって!」などと笑いながら彼を安心させようとする。それに清守は軽く笑ったが彼の心中を支配している不安はそれだけではなかった。なにやら、確証はないけれども感じる嫌な予感。これが当たっては欲しくない。でも、彼らなら…大丈夫。だって私達の仲間だから。


「て言うか、そんな心配してたら任務、終わらないぞ」

「そうだよー清守くん!」

「大丈夫だよ!」


3人兄弟の統軌達の言葉にコクリと清守は頷くとこう言った。


「私達も行くことになったんだけど…大丈夫?」

「「「ん?」」」


まさかの言葉に全員、固まった。

責任者である清守が何故、行く必要が……


「"五天王"が統軌達の情報からも言えるように何か異常があるかもしれないし、まだ情報が私の目からでも得られるかもしれない。もしものために行って欲しいんだって。あ、代理はちゃんといるから!」

「いや、聞きたいのはそこじゃねぇ」


いち早く、我に帰った右京が全員を代表して言う。清守は不思議そうに首を傾げている。右京達が聞きたいのは


「その、お前の妹も来るってことか?」


そっちである。

清守は「私達」と言った。つまり、彼の妹である新人も行くと云うことだろう。責任者が現場に出るのは妹の初戦だからか、それとも本当に"五天王"の指示か。怪しいところだが今回の責任者は清守だ。逆らう気はない。


「あ、うん。私の妹も行くけど……私は責任者だから船上での行動は絡繰と神楽さんに任せるから」

「んーそれは構わないけどね?大まかな作戦の指示は清守くんだよ?」

「わ、わかってるよ!」


神楽が困ったように念を押すと彼は失敬な!とでも云うように即答した。それに周りの緊迫していた空気がいくらか和らぐ。と清守の服の袖を彼の傍らに立っていた少女が引っ張った。清守は慌てたように彼女を全員の前に押し出した。それを見た玲御と神楽の目が輝いた。


「姉さん…」

玲御レーミ、怖がらせるなよ」

「大丈夫よー統軌!」

零耶レーヤもだよ。私、怖がらせるなんてしないし!」


弟達に心配されて姉達が言い返す。単に、興味が湧いただけなのだろうが念には念を。清守の影から押し出された少女ははつらつとそこにいる全員を見回す。それが気になったのか右京が声をかけようとするのを左京が済んでのところで止めた。右京は不機嫌そうな顔をしていたが自分の顔は初対面には怖いと分かっているのか口を閉ざした。それに左京は満足そうだ。左京が清守に目配せすると少女に優しく話しかけた。


「名前を教えてもらってもいいですか?」

「………お兄ちゃん」


少女は左京に聞かれて困ったように清守を見上げた。清守はニッコリと笑うだけ。少女はよし、と意気込んでニッコリと無邪気に笑うと片手を「はい!」と元気よく挙げた。


「はい!ぼく…じゃなかった。わたしは守光かみひかりって言います!お兄ちゃんの妹です!よろしくお願いします!」

「「可愛いっっ!!」」


元気に明るく自己紹介をした少女の健気な姿は玲御と神楽の心を掴んだらしい。玲御と神楽は両手を組んで目をキラキラさせている。神楽にいまだ抱きしめられたままだった統軌は挟まれた両腕と胸に苦しそうになっている。それに気づいた零耶が横で慌てていた。


少女、守光かみひかりは桃色の長髪で髪をおさげにしている。右が金色、左が茜色のオッドアイ。頭にカランコエと云う花とクレマチスと云う花を模した髪飾りをしている。服は白を基調とした浴衣ワンピースで帯はリボンになっている。両袖にはカランコエとクレマチスの花が描かれている。両手の爪に茜色のネイルをしている。白い長めの足袋に靴は小さな花がついたサンダル。見る限り武器となるようなものを持っていない。


武器を持っていないことに零耶は訝しげに首を傾げた。同じ事を考えていたのか神楽の腕の中から脱出した統軌も首を傾げている。それに気づいた様子を見せながら清守は左京と右京、絡繰達と話し出す。


「なぁ、なんで武器がない?」


零耶が戸惑いながらもそう問うと守光はきょとんとした表情をした後、口元に手を当て、含み笑いをしてその話題を反らした。それに零耶は統軌と不思議そうに顔を見合わせていた。


作戦実行は今日真夜中。日付が変わったと同時なので明日とも云う。


作戦実行まで4時間と39分


…*…


暗闇の中、輝く煌めきにその正体不明は嬉しそうに愉快そうに口元を歪めた。と、背後から響いた呻き声に笑っていた口元を不機嫌そうに歪める。コロコロと変わる表情は不思議なほどに暗闇でもよくはえる。正体不明は背後を振り返る。そこにいたのは猿轡さるぐつわを嵌められ、手首と足首をそれぞれ縄で縛られた計10人の人間達。その顔には不安や恐怖が滲み出ており、中には極度の緊張で顔が青白くなっている者もいた。正体不明は近くの【神穢シンエ】に促す。とその【神穢シンエ】はある人物に向けてゆっくりと進むと刃物のように尖ったその2本だけの爪で人物の猿轡を切った。殺されると思ったのか近くで響いた音に他の人間達からはヒッと恐怖の声が漏れた。正体不明が猿轡を切られ、そのまま恐怖で震えている人物に近付くと視線を合わせる。暗闇に慣れてきたその人物の瞳に移ったのは恐怖と驚愕だった。正体不明はその人物の耳元に口をー黒装束でほぼ分からないがー持っていくと囁いた。その声は小さくて近くにいる人間、誰一人として聞き取れなかったほどだ。


「なっ…!」


人物が驚きに目を見開き、正体不明を睨む。それを正体不明は気持ち悪いのか手でその視線をわずらわしそうに払った。それを合図と取った猿轡を切った【神穢シンエ】が新しい猿轡をその人物につけた。苦痛の表情を浮かべながら正体不明を睨み続ける人物を正体不明は横目に見るとそこから立ち去った。その口元は再び、愉快そうに歪められていた。



守がかみって読むらしいんで兄妹でこんな名前にしてみました。

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