その198 「準備」
支度は何でも大変
春、ハミルトン邸。
整えられたきれいな庭園。
そこに集まる人、人、人。
多い、とにかく多い。
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テラスのテーブルの上に広がる
図面、そしてリストとペン。
三方向から声が聞こえる。
蘭が指摘。
「それ、違う!」
ジェシカが言う。
「いいえ、違わない!」
菜摘が焦る。
「ちょっと、これ増えてる!」
ノアが答える。
「あ、それ俺が増やした」
三人とも同時壬生。
「「「聞いてない!!!!」」」
ノア。
「今言ったじゃん」
蘭。
「今じゃない!」
悠馬がリストを書いている。
そして消す。
さらにまた書く。
さらにまた消す。
ノアが横から書く。
悠馬。
「増えています」
ノア。
「気のせいだよ!」
悠馬。
「五名」
ノア。
「誤差じゃん?」
悠馬。
「誤差ではありません」
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遠くで使用人が叫んでいる。
「花が足りません!」
別の使用人が返す。
「今届きました!」
さらに別の使用人が言う。
「それ、違う花です!」
全員。
「「「「違うの?!」」」」
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庭に椅子を運ぶ人たち。
ぶつかる音。
「すみません!」
「そこじゃない!」
「どこですか!」
「そこでもない!」
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エドワードは中央に立っている。
動かずに、全部見ている。
ただ、一言。
「それは左だ」
全員、一斉に動く。
拓海が笑っている。
「まるで戦争だな」
エドワードが言う。
「通常運転だ」
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室内ではドレスを合わせている。
エレノアが立っていた。
蘭がうっとりという。
「いいわねぇ…」
ジェシカも微笑みながら言う。
「とても素敵よ」
「完璧ね!」
と、菜摘も言う。
エレノアがぼそっと言う。
「これでは、動けません」
三人は揃って言った。
「「「動かなくていい」」」
ロッテ腕組みをしていう。
「盛りすぎなんじゃない?」
三人。
「「「黙って?」」」
ロッテ。
「あ、はい」
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外ではノアが走っていた。
走る。
「ルイス、手伝え!」
ルイスは少し考える。
「何をしますか」
ノアが止まる。
「……分からん」
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テラスで凛がリストを見る。
「席順、どうなってるの?」
ジェシカ。
「優先順位よ!」
菜摘が呟く。
「え…数が合わない………」
ノアが横から言う。
「あ、それ増やした」
蘭、ジェシカ、菜摘が声をそろえる。
「「「減らして!」」」
ノアが引きながら言う。
「なんで!」
そこで悠馬が静かに言う。
「ここ、削ります」
ノア。
「やめろ!」
悠馬。
「削ります」
ノア。
「俺を削るな!」
悠馬。
「候補です」
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遠くで使用人が吠える。
「テントが足りません!」
別。
「ここ、一つ多いです!」
全員。
「どっちだよ!!!」
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夕方の光。
やっと少しだけ整う。
ほんの、少しだけ。
悠馬は立って庭を見ている。
エレノアは隣に来て言った。
「大変?」
悠馬。
「非常に」
エレノア。
「でも」
少し笑う。
「嫌じゃないでしょう?」
悠馬は少し考える。
遠くでノアが騒いでいる。
「それ違う!」
蘭。
「違わない!」
ジェシカ。
「落ち着いて!」
菜摘。
「また増えてる!」
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悠馬は小さく言う。
「……はい」
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ハミルトン邸の春。
結婚式の準備は、順調に、崩壊していた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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