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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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幕間 「報告(ロッテ)」

ロッテちゃん正解

夜、寮の部屋。


ロッテはベッドに座っていた。


ノート、本、参考書。


スマートフォンが鳴った。

表示を見ると【ママ】


『ロッテ?』


「うん。どうしたの?ママ」


少し間を開けて、エレノアが言う。


『報告があるの』


ロッテは言う。


「何?」


また少し間。


『佐伯さんと、結婚することになったわ』


ロッテは数秒黙る。


それから言う。


「……ついに?」


エレノアは笑う。


ロッテは続ける。


「あのウサギ、ちゃんと申し込めたの?」


エレノアは思い出す。


夕暮れのオフィス。

花束。膝。そして言葉。


思わず笑う。


ロッテが言う。


「何?」


エレノアは笑いながら言う。


『プロポーズね、すごく彼らしかったわ』


ロッテ。


「どんな?」


エレノアは言う。


『お互いの生存確認のために』


少し間。


『一緒に暮らしませんか』


ロッテは黙る。


数秒。それから言う。


「……は?」


また数秒。


「まじ?」


エレノアは笑っている。


ロッテは言う。


「バカじゃないの?!そのウサギ」


「ママ、ほんとにそれでいいの?」


エレノアは言う。


『いいじゃない、彼らしいと思うわ』


ロッテ。


「ママ」


「本気でそれ言ってる?」


エレノアは笑う。


『ええ』


それから少し考えて言う。


『もっとも…』


『二十年前なら無理だったでしょうね』


ロッテは軽くため息をついた。


「でしょうね」


少し間。


「ママ、あとで後悔するかもよ」


エレノアは窓の外を見る。

ロンドンの夜。


そして言う。


『どうかしらねぇ…』


少し笑う。


『レオンと結婚した時の気持ちとは』


『少し違うかもしれないわ』


ロッテが聞く。


「パパと?どういうこと?」


エレノアは少し考えて、

それから言う。


『彼、放っておいたら』


『死にそうだもの』


ロッテは黙る。


エレノアは続ける。


『なんというか…庇護欲?』


ロッテが即答する。


「ママ?それはダメ男に尽くす女の言い訳よ?」


エレノアは笑う。


『そうかもしれないわね」


それから言う。


『でも、佐伯さんは』


『ダメ男じゃないわ』


少し間を開けて、言う。


『分かるでしょう?』


『ただ、真面目で、ちょっと不器用なのよ』


ロッテは少し考える。


それから言う。


「そうね」


また少し間。


「でも、やっぱりありえないって」


エレノアはクスクスと笑う。

電話の向こうで。


静かなロンドンの夜が続いていた。

電話を切る。


部屋は静かだった。

エレノアは少しだけ笑う。


「ありえない、ね」


ロッテらしい。


スマートフォンを机に置く。


少し考えて、それから立ち上がる。


コートを取って、外に出る。


夜のロンドンの空気は冷たい。


ただ、歩く。柔らかな街灯。

人は少ない。


角を曲がった、そのとき。


ふと止まる。


”見慣れた背中”


エレノアは言う。


「佐伯さん」


悠馬が振り向く。

少し驚く。


「エレノアさん?」


エレノアは近づく。


「まだ帰ってなかったんですね」


悠馬は言う。


「少し、仕事が残ってましたので…」


それから聞く。


「電話ですか」


エレノアは笑う。


「ロッテに、です」


悠馬は少し頷く。


「シャーロッテ嬢は元気ですか」


「ええ」


少し間をあけて、それからエレノアは言う。


「報告したわ」


悠馬は静かに聞く。


「そうですか」


エレノアは思い出して笑う。


「あの子、第一声、」


悠馬が聞く。


「何と?」


エレノアは言う。


「あのウサギ」


少し間。


「ちゃんと申し込めたの?」


悠馬は黙る。


数秒。それから言う。


「……ウサギ?」


エレノアは笑う。


「ロッテの観察結果よ」


悠馬は少し困る。


「否定はできませんね…」


エレノアは笑いながら続ける。


「それで、あなたのプロポーズを伝えたら」


悠馬は聞く。


「はい」


エレノアは言う。


「バカじゃないの」


悠馬は黙る。


エレノアは続ける。


「そのウサギ」


悠馬は少しため息。


「……厳しいですね」


エレノアは笑う。


「でも」


少し間。


「最後は」


エレノアはじっと悠馬を見つめる。


「ありえないって」


悠馬は少し首を傾ける。


「何がですか?」


エレノアは少し考え、それから言う。


「あなたと私」


悠馬は少し黙る。


夜の空気。ロンドンの灯り。


それから言う。


「そうでしょうか」


エレノアは肩をすくめる。


「ロッテから見れば」


悠馬は少し笑う。


「確かに」


少し間。それから言う。


「でも」


エレノアを見る。


「私は…」


悠馬は少し考えて言う。


「ありえると思っています」


エレノアは少し黙る。


それから笑う。


「ええ、そうね。私も、です」


夜のロンドンの静かな通り。

二人はしばらく並んで歩く。


悠馬が言う。


「ウサギは」


エレノアが聞く。


「なに?」


悠馬は言う。


「逃げません」


エレノアは少し笑う。


「そうね」


「逃げないウサギ、ですね」


二人は歩く。


ロンドンの冬の夜は、静かだった



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


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