その176 「シャーロッテ」
ロッテちゃんの学校も始まります
ロンドン。
ハミルトングループのロンドンオフィス。
午後の仕事の時間だった。
悠馬は書類に目を落としていた。
コツコツ、とノック。
「どうぞ」
秘書が少し困った顔で入ってくる。
「佐伯さん、来客です」
「予定は?」
「ありません」
悠馬は顔を上げる。
「……誰ですか」
秘書は少し言いにくそうに言った。
「シャーロッテ嬢です」
悠馬は一瞬だけ止まる。
「通してください」
ドアが開く。
ロッテが入ってくる。
背筋が伸びている。
夏に会った時と同じ落ち着いた表情。
「こんにちは、佐伯さん」
悠馬は立ち上がる。
「ロッテ」
ロッテは少し肩をすくめる。
「突然すみません」
「ママいます?」
悠馬は答える。
「外出しています」
ロッテはあっさり頷く。
「そうですか」
それから部屋を見回す。
「待ってもいいですか」
悠馬は椅子を示す。
「もちろんです」
ロッテは座る。
バッグを机の横に置く。
悠馬は聞く。
「学校は?」
ロッテは言う。
「始まりました」
少し笑う。
「 ファウンデーションコースです」
悠馬は頷く。
「ロンドンですね」
「はい」
ロッテは続ける。
「寮も決まりました」
それから軽く付け足す。
「パパの会社のロンドン支部には連絡してあります」
「なので突然来ても大丈夫です」
悠馬は小さく息をつく。
「用意がいいですね」
ロッテは少しだけ笑う。
「パパがそうしろって」
少し沈黙。
ロッテはじっと悠馬を見る。
前より落ち着いている。
でも、やっぱり同じだ。
ロッテは思う。
”逃げないウサギ”
その時、廊下から足音。
ドアが開く。
エレノアだった。
「……ロッテ?」
ロッテが振り向く。
「ママ」
エレノアは一瞬だけ悠馬を見る。
それからロッテに視線を戻す。
「どうしてここに?」
ロッテは平然と言う。
「会いに来たのよ」
それから少しだけ笑う。
「あと、報告にね」
エレノアは小さく息をつく。
「……ロッテ」
悠馬は静かに言う。
「 ファウンデーションコースが始まったそうです」
エレノアは頷く。
「そう」
ロッテは言う。
「だから来たの」
「ちゃんと話しておかないといけないでしょ」
一瞬、静かになる。
ロンドンの午後の光が窓から入っていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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