幕間 「ルイスの相談」
冬に向けて話が動いてくる、、はず?
翌日の午後。
ハミルトン邸は静かだった。
夏の間あれほど騒がしかった庭も、
今は落ち着いている。
芝生の上には誰もいない。
風だけが動いていた。
悠馬は書斎から出て、廊下を歩いていた。
仕事は一段落している。
珍しいことだった。
階段のところで足音が止まる。
下から小さな声。
「……叔父上」
悠馬が振り向くと、ルイスがいた。
「どうしました?」
ルイスは少し迷い、それから言う。
「少し時間ありますか」
悠馬は頷いた。
「はい。あります」
二人はテラスへ出る。
秋の光がやさしく差し込む。
庭は静かだ。
ルイスはしばらく芝生を見ていた。
それから言う。
「マックスから手紙が来ました」
悠馬は頷く。
「そうですか」
ルイスはポケットから紙を出す。
少ししわになっている。
「アメリカ来いって」
悠馬は少しだけ笑った。
「マックスらしいですね」
ルイスも小さく笑う。
それから少し黙る。
芝生を見る。
「叔父上…」
「はい」
「もし、ですが」
ルイスは言葉を選ぶ。
「僕がアメリカに行きたいって言ったら」
悠馬は静かに聞く。
「どうしますか?」
ルイスは続ける。
「マックスは言いました」
「蘭叔母さんは母さんなんだろ」
「なら簡単じゃないかって」
悠馬は少し考える。
それから言う。
「簡単ではありませんね」
ルイスは頷く。
「僕も…そう思います」
少し沈黙。
風が芝生を動かす。
ルイスは続ける。
「でも、考えました」
悠馬はルイスを見る。
ルイスは真面目な顔だった。
「僕は」
「叔父上にはなれない」
悠馬は一瞬だけ黙る。
ルイスは言う。
「でも」
「ハミルトンは僕の家です」
その声は静かだった。
けれど迷いはない。
悠馬は小さく頷く。
「そうですね」
ルイスは息をつく。
少しだけ軽くなる。
それから言う。
「マックスには」
「冬に会えるって書きます」
悠馬は言う。
「クリスマスですね」
ルイスは頷く。
「はい」
少し笑う。
「去年みたいに」
悠馬も小さく笑った。
テラスの向こうで風が動く。
ハミルトン邸の秋は静かだった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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