その170 「いつもと違う朝」
悠馬君は自覚があってもすぐには動かない。
朝、ハミルトン邸。
朝食室。
窓から光が入っている。
ノアが新聞を広げている。
ルイスは椅子に座っていた。
パンを食べている。
凛が紅茶を注ぐ。
静かな朝だった。
そこへ悠馬が入ってくる。
ノアが顔を上げる。
「兄さん、おはよう」
悠馬。
「おはようございます」
凛が言う。
「今日は早いのね」
悠馬は答える。
「少し仕事があるので」
ルイスが言う。
「叔父上」
悠馬。
「おはようございます」
ルイスはうなずく。
「おはようございます」
エレノアが資料を持って入ってくる。
「おはようございます」
悠馬。
「おはようございます」
資料を受け取る。
悠馬は予定表に目を通す。
「問題ありません」
エレノア。
「十時にロンドンで会議です」
悠馬。
「分かりました」
短い会話。
いつも通りだった。
ただ、
悠馬はふと視線を上げる。
エレノアを見る。
ほんの一瞬、
それだけ。
エレノアは気づかない。
凛が言う。
「今日も忙しい?」
悠馬。
「少し、ですね」
ノアが笑う。
「少しじゃないだろ」
悠馬は紅茶を飲む。
朝食は静かに進む。
しばらくして、悠馬が席を立つ。
「仕事に戻ります」
ノアが言う。
「俺も行く」
二人は朝食室を出る。
廊下。窓の光。
ノアが言う。
「兄さん」
悠馬。
「はい」
ノアは少し笑う。
「最近、やけに機嫌いいな」
悠馬は少し考える。
それから言う。
「そうでしょうか」
ノアが即座に言う。
「そうだよ」
悠馬。
「気のせいですね」
ノアは肩をすくめる。
「まあいいや」
二人は廊下を歩く。
ノアが言う。
「夏、終わったな」
悠馬。
「そうですね」
ノア。
「静かになったな」
悠馬は少し庭を見る。
芝生。庭園。森。
それから言う。
「そうですね」
ノアが悠馬を見る。
少し笑う。
「兄さん」
悠馬。
「はい」
ノア。
「何かあった?」
悠馬は少しだけ首を傾ける。
それから言う。
「いいえ」
ノアはニヤッと笑う。
「そっか」
二人は廊下を曲がる。
仕事の部屋へ向かう。
ハミルトン邸の秋が、静かに始まろうとしていた。
さすがノア君は気が付いた?
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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