その169 「秋の風」
イメージがちゃんと伝わればいいのだけども・・・
夕方、ハミルトン邸のテラス。
悠馬は一人で立っていた。
手には紅茶。
芝生の向こう。
庭園。さらにその奥。森。
さっきルイスと歩いて戻った道だった。
風が吹く。
芝生が揺れる。
屋敷は静かだった。
子供の声がない。
マックスの笑い声。
リリーの足音。
タイラーの文句。
イーサンの冷静な声。
今はもうない。
悠馬は紅茶を一口飲む。
それからゆっくりテラスを下りる。
芝生を横切る。
誰もいない。
広い芝生だった。
庭園の石の道に入る。
葉が揺れる。
夕方の光。
少し長い影。
悠馬はゆっくり歩く。
ベンチの前で止まる。
座る。
静かだった。
遠くで鳥が鳴く。
悠馬は庭を見る。
いつもと同じ庭園。
同じ道。
同じ木。
でも、少し違う。
悠馬は少し考える。
”何が違うのか”
すぐには分からない。
しばらくして、
悠馬は小さく息を吐く。
それから紅茶をもう一口飲む。
庭園の道の向こう。
屋敷が見える。
窓の灯りと夕方の空気。
悠馬はふと視線を動かす。
庭園。芝生。テラス。
そこに誰かがいる気がして。
悠馬は少し目を細める。
誰もいない。
静か。
悠馬は少しだけ首を傾ける。
それから小さく笑う。
「……何だろう」
自分でもよく分からない。
でも、さっきから
”少しだけ”
何かが違う。
悠馬はもう一度庭を見る。
そしてしばらく
そのまま座っていた。
夕方。庭園。ベンチ。
風が静かに通る。
芝生の向こうに屋敷が見える。
子供の声はもうない。
先日までの夏の賑やかさが、
嘘のように静かだった。
悠馬は庭園を見ている。
風に揺れる木々。
長く続く道。
同じ景色。
毎日見ている景色。
それなのに、
少しだけ違う。
悠馬は小さく息を吐く。
何が違うのか、
考える。
それからふと、
自分の考えに気づく。
さっきから、探している。
テラスを見た。
芝生も見た。
庭園を歩いた。
そこにいるはずの人を、
無意識に。
悠馬は少しだけ目を閉じる。
それから小さく言う。
「……あぁ」
静かな声だった。
悠馬は空を見る。
夕方の光。
少しだけ口元が緩む。
「そうか」
少し間。
それから、
ゆっくり言う。
「好きなんだな」
誰もいない庭園。
風が木を揺らす。
悠馬はそのまま座っている。
少しだけ、考えている。
ハミルトン邸。
仕事。
これから。
それから。
エレノア。
しばらくして。
小さな足音が聞こえる。
石の道を近づいてくる。
悠馬が目を開ける。
ルイスだった。
「叔父上」
悠馬がルイスを見る。
「どうしました?」
ルイス。
「夕食の時間です」
悠馬は少し空を見る。
それから立ち上がる。
「そうですね」
ルイスが聞く。
「何してたの?」
悠馬は少し考えて、それから言う。
「散歩です」
ルイスはうなずく。
「なるほど」
二人は庭園の道を歩き出す。
屋敷の灯りが見える。
ハミルトン邸の夏は、静かに終わろうとしていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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