その168 「秋の入り口」
夏の終わりは少し寂しいもの、と聞きますが。僕は暑がりなので正直早く終わってほしいしなんなら一生夏に来てほしくないです(`・ω・´)
午後、ハミルトン邸。
静かだった。
朝まであった子供の声はもうない。
誰もいない芝生。
庭園の道に風が通る。
ルイスは一人で歩いていた。
ゆっくりと、周りを見ながら。
ふと屋敷の扉の前で止まる。
振り返る。
芝生…。
昨日まで、
マックスが転がっていた場所。
リリーが走り回っていた場所。
タイラーが文句を言っていた場所。
今は静かだった。
ルイスは少し考える。
それから歩き出す。
テラスを下りる。
芝生を横切る。
庭園の石の道。
葉が揺れる。
森が見える。
”秘密基地”
ルイスは森の入口で少し止まる。
そして、振り返る。
屋敷。白い壁。
窓。
いつもと同じ。
でも少し違う。
ルイスは森に入る。
葉が足元で鳴る。
少し歩く。
見えてくる。
枝。葉。
小さな屋根。
「秘密基地」
まだちゃんと残っていた。
マックスが組んだ枝。
タイラーが支えた柱。
リリーが集めた葉。
ルイスは中に入る。
少しかがむ。
座る。
静かだ。
少し冷えた風が通る。
ルイスは枝の屋根を見る。
少し曲がっている。
マックスが言っていた。
「壊すなよ」
ルイスは小さく言う。
「壊してないよ」
少し沈黙。
森は静かだった。
ルイスは外を見る。
遠くに屋敷が見える。
それから言う。
「……まだ、子供だ」
小さく言う。
そのとき、足音がした。
葉が鳴る。
ルイスが振り向く。
森の入口に、人影。
悠馬だった。
ルイスが言う。
「叔父さん」
悠馬は少し周りを見る。
秘密基地。
枝。葉。
それから言う。
「ここでしたか」
ルイス。
「分かった?」
悠馬。
「だいたい」
ルイスは少し笑う。
悠馬が言う。
「探しましたよ」
ルイス。
「ごめんなさい」
悠馬は首を振る。
「怒っていませんよ」
少し沈黙。
森の風。
ルイスが言う。
「叔父さん」
少し間。言い直す。
「……叔父上」
悠馬が少しだけルイスを見る。
何も言わない。
ルイスが続ける。
「伯爵って」
少し考える。
「大変?」
悠馬は森を見る。
それから言う。
「場合によります」
ルイス。
「叔父上は?」
悠馬は少し考えて、
それから言う。
「忙しいです」
ルイスは少し笑う。
「それは知ってる」
悠馬も少しだけ笑う。
それから言う。
「帰りましょうか」
ルイスは秘密基地を見る。
枝。葉。
小さな屋根。
それから立ち上がる。
「うん」
二人は森を歩き出す。
少しして。
ルイスが言う。
「叔父上、」
悠馬。
「何ですか?」
ルイス。
「あの秘密基地…」
悠馬。
「はい」
ルイス。
「残すよ」
悠馬は小さくうなずく。
「壊さないでください」
ルイス。
「うん」
森を抜ける。
庭園、夕方の光。
ハミルトン邸が見える。
屋敷へ戻る二人の後ろで、
小さな秘密基地は
まだ森の中に残っていた。
ハミルトン邸の夏は、静かに終わろうとしていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
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