その160 「森の出口」
下書きはもっとちゃんと書こうと思った次第です
午後。
さっきまで降っていた雨は止んでいた。
芝生はまだ少し濡れている。
テーブルの上。
本。ノート。
子供たちは宿題を広げていた。
ルイスが本を読む。
マックスが覗く。
「それ、まだやってるのか」
ルイス。
「うん。宿題だからね」
マックス。
「難しいなぁ」
タイラー。
「大学の本みたいだ」
イーサンがページを見る。
少し笑う。
「政治哲学じゃん」
マックス。
「子供の宿題じゃないね」
リリー。
「分かるの?」
ルイス。
「普通だよ」
マックス。
「普通じゃない」
その横。
悠馬が言う。
「まず、読むこと」
ルイス。
「読んでるよ」
悠馬が続ける
「きちんと理解すること」
ルイスは言う
「それはまだ途中です」
マックスが椅子にもたれる。
「夏休みなのに?」
悠馬が言う。
「宿題ですから」
遠くでノアが笑う。
「兄さん、厳しいな」
悠馬。
「ノア、邪魔です」
子供たちが笑う。
そのあと少しして。
一人ずつ立つ。
マックス。
タイラー。
リリー。
ルイス。
椅子が空く。
芝生は静かになる。
悠馬はページをめくる。
それから顔を上げる。
テーブル。
椅子。
四つ空いている。
少し沈黙。
ノアが聞く。
「どうした?」
悠馬。
「子供たちは?」
ノア。
「散歩じゃない?」
悠馬。
「…屋根裏ですね」
ノアが笑う。
「即断かよ」
悠馬。
「先日、通路を見つけましたから」
ノア。
「あぁ、なるほど」
悠馬は芝生の奥を見る。
それから言う。
「管理人を呼んでください」
少しして。
庭の向こうから男が来る。
帽子。長靴。
管理人だ。
「御用ですか?佐伯様」
悠馬。
「森の出口を見ててください」
管理人は少し笑う。
「若様方ですか?」
悠馬。
「そうです。おそらく向かっています」
管理人。
「承知しました。迎えに行きます」
悠馬。
「お願いします」
管理人は頷く。
そして森の方へ歩いていく。
ノアが言う。
「追わないのか?」
悠馬。
「迷子になりますから」
ノア。
「もうなってるだろ」
悠馬。
「そのために管理人がいます」
ノアが笑う。
「なるほど」
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屋根裏。古い部屋。壁。
板を押す。
通路。
マックスが言う。
「覚えてるな」
タイラー。
「こっちだ」
リリー。
「暗いね…」
ルイス。
「前は途中だった」
マックス。
「今日は最後まで行く」
通路は曲がる。
石の壁。
古い空気。
しばらく歩く。
そして。
光。扉。
マックスが押す。
外。森。
タイラーが笑う。
「出た!」
リリー。
「すごい!」
ルイスは周りを見る。
木。湿った土。雨の匂い。
マックスが言う。
「行こう!!」
ルイスは少し考える。
それから言う。
「少しだけね」
その時。
後ろから声。
「若様」
全員固まる。
振り向く。
管理人。
帽子を取る。
マックス。
「……やばい」
管理人。
「お迎えです」
タイラー。
「誰?」
管理人。
「佐伯様」
沈黙。
イーサンが言う。
「やっぱり」
管理人は森を指す。
「屋敷に戻りましょう」
マックスがため息。
ルイスは頷く。
「分かった」
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玄関。
凛が腕を組んで立っている。
子供たちが止まる。
凛。
「どこにいってたの?」
マックス。
「散歩です…」
凛。
「森でしょ?」
沈黙。
イーサン。
「観察に言ってただけだよ」
凛。
「反省なさい!」
子供たちが散る。
そのあと。
凛が言う。
「兄さん」
悠馬。
「はい」
「知ってたの?」
悠馬。
「通路に向かったので」
凛。
「止めないの?」
悠馬。
「迎えに行かせました」
凛は少し笑う。
「甘いわね」
悠馬。
「経験ですから」
森の奥。
雨の匂い。
ハミルトン邸の夏は、
まだ少しだけ
秘密を増やしていく。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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