その156 「夏の食卓」
夏はまだまだ続きます
夜。ハミルトン邸。
食堂。
長いテーブル。
夏の夕食はゆっくり始まる。
ノアが言う。
「今日は静かだな」
凛が言う。
「昼が騒がしすぎたのよ」
ルイスが言う。
「楽しかった」
マックスが言う。
「叔父さん逃げたよね」
悠馬は言う。
「逃げていません」
イーサンが笑う。
「捕まってたよ」
ノアが笑う。
「兄さん人気者だな」
悠馬は言う。
「違います」
食卓は穏やかだった。
子供は食べる。
大人は会話。
外はまだ少し明るい。
夏の夜。
ロッテが言う。
「パパ」
レオンを見る。
「明日帰るんだよね」
ノアが言う。
「もう帰国ですか?早いですね」
レオンは肩をすくめる。
「仕事があるからな」
落ち着いた声。
金融の男。
エドワードが頷く。
「忙しいな」
レオンは少し笑う。
「あなたほどでは」
静かな会話。
悠馬は普通に食べている。
エレノアはグラスを置く。
ロッテが続ける。
「だけど、」
少し間。
「私はもう少し残るわ」
ノアが聞く。
「学校か」
ロッテが頷く。
「ファウンデイションの準備の一環よ」
イーサンが言う。
「大学準備ってやつ?」
ロッテ。
「一年感ね」
ノアが聞く。
「どこ」
ロッテは言う。
「金融やビジネス系で考えているの」
少し空気が動く。
ノアが笑う。
「兄さんが詳しいかも」
悠馬は言う。
「そうでもないです」
イーサンが聞く。
「叔父さんって大学どこだっけ」
悠馬。
「オックスフォードです。コースはPPEでした」
ルイスが聞く。
「何それ」
ノアが言う。
「政治」
凛が続ける。
「哲学」
悠馬。
「経済」
ロッテが言う。
「ファウンデイションからだと難しいわね」
少し静かになる。
レオンが悠馬を見る。
少し笑う。
「経験者」
悠馬は言う。
「昔の話です」
レオン。
「昔でも」
少し間。
「簡単ではない」
悠馬は頷く。
「そうですね」
短い会話。
ノアが言う。
「俺は無理」
凛が言う。
「分かる」
ノアが笑う。
「失礼だな」
ルイスが聞く。
「難しい?」
悠馬が言う。
「読む、書く、考える、ですね」
マックスが言う。
「大変だ」
イーサンが言う。
「面白そうかも」
ロッテが悠馬を見る。
「相談しても?」
悠馬は言う。
「構いません」
エレノアが少し見る。
悠馬。
ロッテ。
すぐ視線を戻す。
レオンはそれを見る。
グラスを持つ。
少しだけ笑う。
ロッテが言う。
「経済、国際、金融」
「そのあたり」
レオンが頷く。
「妥当だな」
ノアが言う。
「兄さん」
「後輩か?」
悠馬は言う。
「違います」
イーサンが笑う。
「同じ大学行けばいい」
ノア。
「面倒見たらいいよ」
悠馬。
「断ります」
ノアが笑う。
食堂は静かに笑う。
夏の夜。
落ち着いた夕食。
レオンが言う。
「イギリスは良い場所だ」
ロッテが言う。
「私、好きよ」
レオン。
「それなら良い」
エレノアは黙って聞いている。
凛はそれを見る。
少しだけ。
食堂の空気は穏やか。
外はおだやかな風。
レオンが立つ。
「明日は早い」
エドワードが頷く。
「また来るといい」
レオンは言う。
「仕事次第だな」
ロッテが言う。
「空港まで送るわ」
レオンは少し笑う。
「ありがとう」
悠馬が言う。
「車を出します」
レオンが悠馬を見る。
少しだけ。
観察。
それから言う。
「お願いしよう。助かるよ」
短い会話。
食堂は静か。
夏の夜。
ロッテは思う。
大学。進学。未来。
そして。
少し離れた席。
悠馬。そして母。
二人はまだ遠い。
夏の食卓は静かに続く。
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『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
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