幕間 「日常」
なんでもない午後、の回
普通の午後。
ウィルトシャーの空は明るかった。
芝生にはいつもの子供たち。
走る。叫ぶ。転ぶ。
騒がしい。
「待てー!」
タイラーが叫ぶ。
マックスが逃げる。
リリーが笑う。
ルイスは少し離れて見ている。
そして言う。
「そっち行くと滑るよ!」
タイラーが滑る。
そして転ぶ。
マックスが笑う。
その時、後ろから声がする。
「楽しそうだな!」
全員止まる。
振り向く。
ノアだった。
子供たちが言う。
「叔父様!」
ノアは芝生に降りる。
「何してるの?」
マックスが言う。
「鬼ごっこ!」
ノアは頷く。
「いいな」
ルイスが言う。
「父上は禁止です」
ノアが笑う。
「なんで?」
ルイスは真顔。
「強すぎるから!」
タイラーが言う。
「それはある」
ノアが言う。
「じゃあ…ハンターだ!」
子供たちが一斉に逃げる。
芝生が一気に騒がしくなる。
その瞬間。
テラスから声がした。
「ノア!」
凛だった。
全員止まる。
凛が言う。
「何してるの」
ノアが言う。
「教育だよ!」
凛が言う。
「違うわね」
「あなたのは騒音」
ノアは肩をすくめる。
その時。
庭の向こうから悠馬が歩いてくる。
書類を持っている。
ルイスが言う。
「叔父上」
悠馬が止まる。
「どうしました?」
ルイスは芝生を見る。
そして言う。
「父上が暴れています」
ノアが言う。
「暴れてないよ!」
悠馬は少しだけため息をつく。
それから言う。
「ノア?」
「はい」
「ほどほどにしなさい」
ノアは笑う。
「了解!」
子供たちがまた走り出す。
庭はまた騒がしくなる。
テラスの端。
ロッテがその様子を見ていた。
隣にエレノア。
ロッテが言う。
「この家って、」
エレノアが笑う。
「騒がしい?」
ロッテは頷く。
少しの間。
ロッテが庭を見る。
悠馬はもういない。
屋敷の中に戻ったらしい。
ロッテは小さく言う。
「……逃げない」
エレノアが聞き返す。
「何?」
ロッテは首を振る。
「別に」
風が庭を通る。
ハミルトン邸の夏はまだ続いていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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