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佐伯悠馬の結婚事情(仮)  作者: 雪森蓮


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227/293

その151 「夏の客人XIII(テラスディナー)」

友人に会いに行ったとき、東京駅で2時間ほどさまよいました。はい。立派な迷子でした。出られないのではと一瞬本気で思いました。

夏の夜。


ハミルトン邸のテラスは灯りで柔らかく照らされていた。

だけど今夜は昨夜ほど形式ばっていない。


長いテーブルはない。


代わりに小さな丸テーブル。

料理はビュッフェ。

ワインも自由。


立食だった。

重役たちがゆるく集まっている。


笑い声。

仕事の話。

世間話。


ロッテはテラスの端にグラスを持って立つ。

そして思う。


(昨日よりずっと楽)


隣でレオンが言う。


「どうだ」


ロッテは肩をすくめる。


「社交」


レオンが笑う。


「そうだな」


その時、後ろから声がかかる。


「ロッテ」


振り向くと、イーサンだった。


今日はジャケットなし。

シャツだけ。


明らかに大人の集まりに混ざっている。

ロッテが言う。


「子供は不参加じゃなかった?」


イーサンが笑う。


「一応」


「でも立食だからいいって」


ロッテは言う。


「ずるくない?」


イーサンが肩をすくめる。


「君も来てるじゃん」


ロッテは言う。


「私は招待だもん」


イーサンが笑う。


「僕もだよ?」


ロッテは少し疑う。


「本当?」


イーサンは料理を取る。


「たぶんね」


「叔父さんが呼んだんじゃないかな」


ロッテが聞く。


「どっちの?」


イーサンはテラスの奥を見る。


「多分、両方」


ロッテが視線を追う。


そこにいた。

ノア、そして。

佐伯悠馬。


二人が重役たちと話している。


ノアは笑っている。

悠馬は静かに話す。


ロッテが言う。


「不思議ね」


イーサンが聞く。


「何が?」


ロッテは少し考える。


「この家…」


イーサンが笑う。


「説明してよ」


ロッテは指を折る。


「威厳のある前伯爵」


「子供みたいな叔父」


「たくさんの子供」


「大きな森」


イーサンが頷く。


「全部本当だね」


ロッテは最後に言う。


「そして、ウサギ」


イーサンが吹き出す。


「まだ言うんだ」


ロッテは真顔。


「昼はそう見えたわ」


イーサンが聞く。


「今は?」


ロッテはテラスの奥を見る。


悠馬が話している。

重役が頷く。

レオンが静かに聞いている。


ロッテは言う。


「違うかな…」


イーサンが言う。


「何に見える?」


ロッテは少し考える。

それから答える。


「……分からないわね」


イーサンは笑う。


「危ない人、かな」


ロッテが眉を上げる。


「危ないの?」


イーサンは言う。


「怒らせるとたぶんめちゃ怖い」


ロッテは少し笑う。


「それは分かるかも」


その時、ノアの声。


「イーサン!」


二人が振り向く。

ノアが手を振っている。


「こっち来い!」


イーサンが言う。


「行く?」


ロッテは肩をすくめる。


「面白そうね」


二人はテラスの中央へ歩く。


その途中。


悠馬がちらりとこちらを見る。

一瞬だけ目が合う。


ロッテは思う。


(ウサギじゃない)


でも。


まだ正体は分からない。


ハミルトン邸の夏は、思ったよりずっと騒がしい。



ここまで読んでくださってありがとうございます!


『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。

結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。

相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。


更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので

よかったらまた覗いてください。


感想・フォロー等とても励みになります!

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