その149 「 夏の客人Ⅺ(雨の日の探検)」
こういう「冒険」してみたかったなぁ(遠い目)
翌日は朝から雨だった。
ウィルトシャーの空は灰色で、庭の芝生は濡れている。
窓には小さな雨粒が並んでいた。
子供たちは窓の前に集まっている。
タイラーが言う。
「外出れない」
リリーがため息をつく。
「つまんない」
マックスが椅子に座る。
「暇だ」
ルイスは窓の外を見る。
しばらく黙る。
それから言う。
「じゃあ…」
マックスが顔を上げる。
ルイスは小さく言う。
「探検?」
マックスがすぐ笑う。
「いいね」
タイラーが振り向く。
「どこ?」
ルイスは少し考える。
「屋敷…かな?」
リリーが目を輝かせる。
「秘密基地?」
「かもしれないね」
子供たちは顔を見合わせる。
そして一斉に立ち上がる。
「行こう!」
廊下。
雨の日の屋敷は静かだった。
遠くで使用人が歩く音だけがする。
ルイスが先頭に立つ。
「こっち…」
マックスがついていく。
タイラーとリリーも後ろ。
階段を上がる。
さらに上。
屋根裏へ続く廊下。
この間来た場所。
マックスが言う。
「ここだ!」
ルイスは部屋のドアを開ける。
ギィ・・・。
古い音。
小さな使用人部屋。
机。
ベッド。
小さな窓。
タイラーが言う。
「ここきたよね」
マックスが壁を見る。
「でも」
少し眉を寄せる。
「これ昨日なかったな」
ルイスが近づく。
壁の端。
古い板。
少し隙間がある。
ルイスが押す。
動く。
タイラーが言う。
「開いた!」
ゆっくりと、板がずれる。
その奥。
暗い。
細い通路。
リリーが小さく言う。
「秘密通路!」
マックスが笑う。
「すげえ!!」
ルイスは中を覗く。
奥は見えない。
暗い。
静か。
雨の音だけが遠くから聞こえる。
少し沈黙。
マックスが言う。
「行く?」
ルイスは少し考える。
それから言う。
「ちょっとだけ?」
タイラーが笑う。
「冒険だな!」
リリーも頷く。
「冒険だね!」
四人が通路に入る。
古い石の壁。
狭い。
足音が響く。
しばらく歩く。
曲がる。
また曲がる。
マックスが言う。
「これ……」
「すごいな」
ルイスは前を見る。
「まだ続くね」
その時。
遠くで声。
「ルイス!」
子供たちが止まる。
また声。
「ルイス!」
凛だった。
タイラーが言う。
「呼ばれてるよ?」
マックスが言う。
「戻るか?」
ルイスは少し考える。
それから言う。
「今日はここまでにしようか」
リリーが少し残念そうに言う。
「えー」
ルイスは笑う。
「続きあるよ」
マックスも頷く。
「また来ようぜ」
四人は来た道を戻る。
屋根裏の部屋に出る。
板を元に戻す。
ドアを閉める。
そして階段を降りる。
廊下に出た瞬間。
凛が立っていた。
「どこ行ってたの」
四人が固まる。
ルイスが答える。
「探検だよ」
凛は少し黙る。
それから言う。
「ほどほどにしなさい?」
子供たちは一斉に頷く。
「はーい」
四人が廊下を歩いていく。
少し後ろ。
ルイスとマックスが目を合わせる。
小さく笑う。
マックスがにゃりとしながら言う。
「続き…必ずな」
ルイスが頷く。
「もちろん!」
ハミルトン邸の雨の日は静かだ。
だけど。
屋敷の奥には、
まだ誰も知らない道が続いていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
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