その148 「夏の客人Ⅹ」
ロッテとイーサンはいいコンビになる気がする
ハミルトン邸は広い。
それは来た日から分かっていた。
古い石の廊下。
高い天井。
長い階段。
壁には昔の肖像画が並んでいる。
ロッテは廊下をゆっくり歩く。
窓の外には庭が見える。
芝生。
花壇。
遠くに森。
そして――
騒がしい。
「捕まえろ!」
庭の向こうでタイラーが叫ぶ。
マックスが走る。
リリーが笑う。
ルイスが振り返る。
「そっちじゃない!」
ロッテは腕を組む。
「……元気ね」
横から声。
「今日はまだ静かな方」
イーサンだった。
ロッテが振り向く。
「静か?これで?」
「うん」
「嘘でしょ」
イーサンは笑う。
二人で庭を見る。
子供たちは芝生を走り回っている。
「あなた去年も来たんでしょ」
ロッテが言う。
「うん」
「この家、いつもこんな感じ?」
イーサンは少し考える。
「分かんない」
ロッテが眉を上げる。
「分からない?」
「毎年来てるわけじゃないしね」
少し沈黙。
ロッテは庭を見る。
「じゃあ昔は?」
イーサンは肩をすくめる。
「よく知らない」
「ただ」
少し笑う。
「去年はもっと酷かったよ」
ロッテが興味を持つ。
「何したの?」
「芝生をね」
ルイスが後ろから言う。
「めちゃくちゃにしたんだ」
イーサンが振り向く。
「楽しかったな」
ルイスは首を振る。
「最悪だったよ」
「凛叔母さんに怒られた」
イーサンが言う。
「ノア叔父さんにも怒られた」
ロッテは即答する。
「当然」
イーサンが笑う。
「でも一番怒られたのは」
ルイスが言う。
「悠馬叔父さん」
ロッテが少し止まる。
「佐伯さん?」
ルイスは頷く。
「うん」
「怖いの?」
「別に怖くはないかな」
ルイスは平然と言う。
「でも怒らせない方がいい。絶対」
イーサンが笑う。
「それは本当だな」
ロッテは庭の向こうを見る。
その時。
テラスの奥。
悠馬が執事と話している。
書類を持っている。
静かに何かを確認している。
執事が頷く。
すぐに去る。
ロッテはそれを見ていた。
イーサンが言う。
「何見てる?」
「別に」
ロッテは答える。
「変な家だなって」
イーサンは笑う。
「どこが?」
ロッテは指を折る。
「前伯爵」
「騒がしい叔父」
「子供たち」
「広い森」
少し間。
そして言う。
「佐伯さんは…」
イーサンが頷く。
「うん」
ロッテは庭を見る。
「全部真ん中にいる」
イーサンは少し考える。
「そうかも」
ロッテは小さく言う。
「ウサギじゃなかった」
イーサンが笑う。
「まだ言うんだ」
ロッテは肩をすくめる。
「だって弱そうだもの」
「でも」
少し考える。
「厄介、かな」
庭ではまた子供たちが走り出していた。
ハミルトン邸の夏は騒がしい。
そしてまだ、
”ロッテが見えていないもの”がたくさんある。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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