その145 「夏の客人Ⅶ」
探検の予感
ハミルトン邸の庭は広い。
昼の光が芝生を白く照らしている。
空は高く、
風はゆっくりだ。
今日は珍しく静かだった。
子供たちは庭の奥にいる。
ルイスとマックスは木に登っていた。
「もう少し上!」
ルイスが言う。
「大丈夫?」
マックスが笑う。
枝が揺れる。
その下ではタイラーが虫を追いかけている。
「待て!」
リリーが笑いながら追いかける。
芝生。
木陰。
夏の昼。
テラスではロッテが本を読んでいた。
ページをめくる。
だけど、少しして顔を上げる。
庭を見る。
「落ちない?」
木の上の二人。
イーサンが横で肩をすくめる。
「慣れてるさ」
「そういう問題?」
「多分?」
ロッテはもう一度庭を見る。
木。
芝生。
噴水。
そして遠くの森
「広いわね」
イーサンが言う。
「まだ半分だよ」
ロッテが顔を上げる。
「嘘?」
「本当さ」
少し沈黙。
「迷子になりそう」
イーサンが笑う。
「なるねぇ」
「なったの?」
「小さい頃」
ロッテは本を閉じる。
肘をついて庭を見る。
その時。
テラスの奥。
執事と話している人影。
”佐伯悠馬”
書類。
眼鏡。
いつもの仕事の顔。
執事が言う。
「こちらの確認を」
悠馬が目を通す。
「問題ありません」
執事が頷く。
それだけ。
ロッテが少し目を細める。
「忙しそうね」
イーサンが言う。
「いつもだよ」
「休まないの?」
「多分?」
ロッテはまた庭を見る。
木の上。
ルイスが言う。
「見えるね」
「何が?」
「屋敷の屋根」
マックスが笑う。
「本当だ!」
少ししてルイスが言う。
「さ、、」
「降りようか」
二人が降りる。
芝生。
マックスが屋敷を見る。
「なあ」
小さく言う。
「この家」
ルイスが振り向く。
「大きいよな」
「うん」
「まだ行ってない場所ある?」
ルイスは少し考える。
「いっぱいあるよ」
マックスがにやっと笑う。
「じゃあさ」
「探検だな」
ルイスも笑う。
「いいね!」
その時。
リリーが叫ぶ。
「お昼!」
タイラーが言う。
「お腹すいた!」
全員走る。
屋敷へ。
テラスでロッテがそれを見ていた。
「元気ね」
イーサンが言う。
「夏だからな」
ロッテは庭を見る。
屋敷。
古い石の壁。
高い屋根。
そして思う。
(まだ知らない場所がある)
それは
”子供たちも同じ”だった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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