その144 「夏の客人Ⅵ」
大きなおうちで探検、あこがれるぅ
屋敷は広い。
廊下は長い。
そして古い。
ルイスが立ち止まる。
「こっち」
小声。
マックスがついてくる。
「しーっ…静かに」
後ろからタイラー。
「なんで」
リリーが言う。
「冒険だから」
小声。
階段。
古い木の階段。
屋敷の奥にある、古い使用人用のものだ。
マックスが少し嬉しそうに言う。
「いいね」
「でしょ?」
ルイスが少し得意そうに言う。
上へ。
キイッときしむ音。
さらに上。
屋根の近く。
小さな廊下。
窓が小さい。
天井が低い。
「ここ?」
「うん」
ルイスがそっとドアを押す。
ギィーッ。
軋んだ古い音。
部屋が開く。
部屋の中は狭い。
狭く小さなベッド。
古い机。
昔の使用人の部屋だ。
マックスが言う。
「すげえ」
タイラーが窓を開ける。
光が入る。
ほこりが舞う。
リリーが笑う。
「秘密基地ね!」
ルイスも笑う。
「いいな」
その時。
下から声。
「……ルイス?」
静か。
しかし低い。
全員固まる。
マックスが小声。
「誰」
ルイスが言う。
「叔父さん」
足音。
階段。
ゆっくり上がってくる。
ドアの前。
悠馬が立っていた。
眼鏡。
書類。
いつもの顔。
「何をしていますか?」
沈黙。
タイラーが言う。
「……探検」
「それは見ればわかります」
悠馬が部屋を見る。
窓。
机。
ほこり。
子供五人。
そして言う。
「ここは危ないです」
ルイスが少し言い返す。
「でも」
「でも、じゃありません」
淡々と告げる。
「この家はとても古い屋敷です」
「壊れる場所もあります」
マックスが言う。
「怒ってる?」
悠馬が少し考える。
「怒ってはいませんね」
少し間。
「ですが、やめなさい」
ルイスが頷く。
「……はい」
全員階段を降りる。
悠馬が最後に部屋を見る。
そしてドアを閉める。
ぎい。
古い廊下。
鈍い光。
下から凛の声。
「子供たち!」
「はい!」
全員返事。
走っていく。
悠馬は小さく息をつく。
「ノア」
遠くで声。
「何?」
「ちゃんと見てて?」
「なんで俺!」
廊下が静かになる。
その少し後。
ルイスとマックスが後ろを歩く。
少し距離。
目配せ。
小さく笑う。
マックスが言う。
「また今度な」
ルイスが頷く。
「うん、もちろん」
「もっと奥までね」
小さく拳を合わせる。
「探検だな」
廊下の先。
ハミルトン邸は静かだ。
まだ。
屋根裏の奥には誰も行っていない。
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『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
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