幕間 「春の庭/ルイス」
夏になると素小路話が動く、、といいな、、
春の庭はまだ少し湿っている。
ロンドンの空は薄い青だった。
ルイスは芝の端に座っていた。
膝の上には本。
ラテン語。
プレップの先生は言った。
「今から始める」
パブリックスクールの準備。
八歳、少し早い。
でも、、
理由は分かっている。
ルイスはページをめくる。
単語。
格変化。
覚える。
意味はまだ難しい。
ただ、覚える。
屋敷の窓を見る。
大きな家だ。
静かな家。
だけど学校は静かではない。
噂がある。
ルイスは小石を転がす。
皆が言う。
「叔父さんに似てる」
ルイスは自分の手を見る。
顔は分からない。
鏡を見てもよく分からない。
ただ、皆が言う。
似ている。
笑うと特に。
ルイスは顔を上げる。
庭の奥。
悠馬が歩いている。
電話中だ。
速い。
歩くのが速い。
電話が終わる。
悠馬はルイスに気づく。
「勉強?」
「うん。ラテン語」
ルイスは本を見せる。
悠馬はページを見る。
「難しい?」
「少し」
悠馬は少し考える。
「最初は覚えるだけでいい」
「うん」
「意味はあとで分かる」
ルイスは頷く。
悠馬は本を閉じる。
「少し走る?」
「いいの?」
「いい」
ルイスは芝に出る。
走る。
春の空気は軽い。
少しだけ。
頭が軽くなる。
ルイスは戻ってくる。
悠馬はベンチに座っていた。
ルイスも座る。
少し沈黙。
それからルイスは言う。
「叔父さん」
「なに」
「僕」
ルイスは少し迷う。
「…似てる?」
悠馬は首を傾げる。
「誰に」
「叔父さんに」
悠馬は一瞬止まる。
それから少し笑う。
「そう言われる?」
「うん」
ルイスは芝を見る。
「学校で」
悠馬は少し考える。
そして言う。
「嫌かな?」
ルイスは首を振る。
「わからない」
それが正直だった。
悠馬は静かに言う。
「似ててもいいよ?」
ルイスは顔を上げる。
「ほんと?」
「うん」
悠馬は続ける。
「君は君」
それだけ。
ルイスは少し考える。
そして頷く。
悠馬は立ち上がる。
「夏にね、」
「うん」
「従兄弟が来るよ」
ルイスの顔が明るくなる。
「イーサン?」
「来る」
「タイラー?」
「来る」
「リリーも?」
「来る」
「マックスも?」
「来る」
ルイスは笑う。
夏は騒がしくなる。
それは良いことだ。
ルイスはまだ知らない。
その夏に新しい人が来ることを。
そして、その人が
ほんの少しだけ、
世界を変えることを。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
『佐伯悠馬の結婚事情(仮)』始まりました。
結婚する気がない男の結婚事情(仮)です。
相変わらず周囲がうるさく、悠馬の胃が忙しいです。
更新はのんびりですが、完結まで書いていく予定なので
よかったらまた覗いてください。
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