リセリアとの亀裂
シャルロッテの話を終えると、バアルは再び黒い渦のワープホールへと消えて行った。
それと同時に暗黒に染まった空は再び青い空へと戻っていた。
ほのぼのとしていたBBQから、台風の様な事態に急変した一幕が終わりを告げた。
残った者達は白昼夢を見ていた様に唖然としていた。
「まっさか、またカルドニアに行く事になるとはなぁ」
スティーグは頭をかきながら、億劫そうに呟いた。
カルドニアは昨年、スティーグが単身戦争を仕掛け、降伏させた国である。
スティーグの力を目の辺りにしたカルドニアは恐怖に怯え、エルベキア王国の従属国となった。
スティーグとしては正直、関わり合いになりたくない国であったのだが。
「まあ、しょうがねーか。報酬は破格だからな」
バアルが手付と言って置いていったこの金塊。おそらくは24金(純金)だろう。
これだけでも、とんでもない価値があるのは言うまでもないが、成功した暁にはこれと同等の純度の金塊をうず高く積むという。
老後までどころか、何世代も遊んで暮らせるほどの報酬である。
もうチマチマと労働に勤しむ必要などなくなるのだ。
思わず顔がニヤけてしまう。
その時、これまでずっと傍観していたリセリアがようやく声を出した。
「・・・もうなんだか、どこから聞いていいのかわからないけど、説明、してくれるわよね?」
適当に濁すことは許さない。リセリアの目はそう言っている。
周りの仲間達はスティーグを見つめる。
スティーグやアティシアの素性を聞かせていいものなのか、考えているのだろう。
スティーグは肩をすくめる。
「別に、絶対内緒って訳でもないからな」
スティーグが口を開こうとした時、それに割って入る者がいた。
「お待ちください。お兄様を語る者はこの私を置いて他にありません」
何故かドヤ顔で躍り出たアティシアが、リセリアに向き合った。
「語りましょう。お兄様が何者であるのかを」
*******
「一万二千年前に栄えた古代王朝最後の王? 神々や多くの種族の加護を受けて、この時代に復活した神の獣を倒し、世界を救った?」
リセリアは顔を引きつらせながら、アティシアの話を聞いた。
「・・・とてもにわかには信じられない話ですが」
リセリア同様、メイもまた大きな衝撃を受けているようだった。
メイはスティーグに目を向けるが、まるで他人事のように平然としながら、いつもの様にだらんと弛緩した体制で立っている。
とてもそんな偉大な人物には見えない。
だが、リセリアには色々納得できてしまうことがあった。
王国騎士団が束になってもまるで寄せ付けない驚異的な戦闘力。
時に別人のように思えるその風格。
アティシアの話を全て信じるならば、辻褄が合う。
古代人が災厄を現代に招いた事については、発言に困る所だが
神獣を退け世界を救ってくれた事は素直に感謝するべきだろう。
王女として正式に感謝の意を示すべきだ。
だが、リセリアにはまずスティーグに問い正すべき事があった。
「なんで無関係の人を見殺しにするような事を言ったの!?」
「?」
何を言っているのか一瞬分からなかったスティーグであったが、先ほどのバアルとの会話を思い出し、ポンと手を叩いた。
「いや、だって俺関係ないし」
パァン!!
スティーグの言葉に被せるように、リセリアの平手がスティーグの頬を叩いた。
「見損なったわ!!」
リセリアは振り返り、そのまま走り去って行った。
その時、瞳から雫が溢れ落ちた。
スティーグはポリポリと頬をかいた。
ミラは若干責めるようにスティーグを見つめる。
「いいの、このままで?」




