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最強教師は最低のクズ野郎~神殺しの王。教師となり美少女を育成する〜  作者: さく・らうめ
カルドニアのアベンジャー編
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シルフィーの恐怖

「・・・ひどい目にあったわ」


 口の中が火傷で皮がべろんべろんになってしまったリセリアは冷水を飲みつつ、一息ついていた。

 先ほど散々踏まれたスティーグは、いい気味とばかりにニヤニヤ笑っていた。リセリアはそんなスティーグが死ぬほど憎らしい。

 メイが冷ました肉をリセリアに差し出した。

 リセリアは今度は慎重に、何度もフーフーした後に肉を口に運ぶ。


「柔らかい!」


 先ほどはそれどころではなかったが、改めて食べるとそれは衝撃的な美味しさだった。

 柔らかい上に、噛むほどに肉汁の旨味が溢れてくる。

 王宮でもこんな肉は食べたことがない。

 スティーグはそんなリセリア達をドヤ顔で見つめていた。

 人が喜ぶ顔が好きなどという善良な心を持たない外道男ではあるが、料理を食べている喜ぶ顔だけは別だった。

 もし別の人生を歩むことがあったなら、自分は食に携わる仕事をしていたかもしれないとスティーグは思った。


「お肉だけでなく、お野菜も食べなさい」


 そう言ってミラは切った野菜を焼いていく。

 肉に負けないように、産地直送の新鮮な野菜は程よい焼き目を付けて焼きあがっていく。

 皆、素直に肉と野菜をバランスよく食べ進める。

 シャキシャキした野菜が火を通す事で甘くなり、生とは別の美味しさが味わえた。

 アドルフは唸る。


「旨い。驚いたのはこのタレだな。恐らくは何種類もの野菜をすりおろしているのだろう。甘い旨味と口当たりがまろやかだ。だが、このベースとなっているソースは一体?」

「それは醤油だな」

「しょうゆとは?」

「ここから東の国で使われているソースだ。大豆という豆から生成される」

「東、というと、帝国か!?」


 帝国は東に位置する強大な軍事国家である。

 独自の文化形態を持ち、ごく一部の商人としか取引をしない為、謎の多い国だ。

 そんな国の食材を使っているというだけでも驚きだが。


「苦労したぜ。何人も人を通しているから、値段が高いのなんの」


 スティーグは遥か古代の時代の人間である。

 古代と言っても、現代よりも高度な技術を持っていて、この大陸だけでなく、世界中を行き来する事ができたので様々な国と交易を行っていた。

 故にその見識は現代人では並ぶ者はいない。

 その豊富な知識をいかんなく発揮して、エルベキア国内にいるだけでは知りえない、食材や調味料を知っているのだ。

 頷きながら、噛みしめる様に、焼き肉のタレをつけて肉を食べるアドルフは、普段の仏頂面とは比べ物にならないほど幸せそうである。


「そんな事ばっかしているから、お金がいくらあっても足りないのよ」

「・・・・・・」


 ジト目でミラに睨まれ、スティーグの頬に一筋の汗が滴り落ちた。

 ともあれ、一同はとても美味しくBBQを楽しんだのだった。

 この後に起こる事態など知る由もなく。




**********


「・・・・・・そんな、嘘だろ?」


 スティーグは驚愕した。

 いつの間にか額ばかりでなく、手もじっとり汗で濡れている。

 ありえない、こんな事がありうるはずがない。

 これまで波乱万丈の人生を送って来たスティーグの経験を持って尚、その光景は異常であった。

 スティーグの視線は食材を詰めていた箱に注がれていた。

 空であった。

 食べ盛りの生徒達の食欲を考慮し、人数分×三倍分近く用意した食材が全く残っていなかった。

 それぞれの家庭のお土産用として用意していた分も綺麗になくなってしまった。

 一同の視線は一人の少女に向けられていた。

 その視線の先、シルフィーはそんな視線をものともせずに、ひたすら焼きあがった食材を食べ続けていた。

 すでにこの場にいる全員分を合わせた量より多く一人で平らげてしまっている。

 シルフィーの食べ進めるペースは非常に速い。

 正し、汚くがっついているという訳ではなく、手と噛む口の速度が異常に速いのだ。

 その上ペースが一向に落ちない。

 シルフィーがゴクリと肉を飲み込むと、不思議な顔をして皆を見つめ返した。


「皆さん、どうかしたのですか?」


 首を斜めに傾げ、キョトンとする顔は普段であれば可愛らしいと言えたかもしれないが、自分が今、何故、視線を向けられているの解っていないことが、すでに化け物じみていた。


「シルフィー。お前、何ともないのか?」


 もはや、『まだ食べるのか?』 といった言葉は遥か後方に置き去りにされていた。


「え? 体調は至って良好ですが」


 喋りながらも、まだ食べ続ける。

 遂に最後の食材も平らげてしまった。

 どうして皆が見ているのか理解していないシルフィーであったが、自分が何かマズい事をしていることは理解したらしい。

 少し考えた後に、何かに気が付いたらしく頷いた。


「これは、私としたことが迂闊でした」


 ようやく食べ過ぎた事に気が付いたらしいシルフィーに、皆は安堵のため息をついたのだが、


「肉の美味しさに目が行って、野菜をあまりとっていませんでした。これから四、五皿分食べればバランスがとれるでしょう。おかわりを下さい」

『ーーーっつ!!』


 恐怖。

 それはもやは純粋な恐怖だった。

 人は自分の理解できない事に恐怖心を抱く。

 シルフィーの食欲はもはや人が理解できる量を超えていた。


「いやいやいや、おかしいでしょう!!」


 遂に我慢ができなくなったステラが突っ込んだ。


「いや、もう全部おかしいけど、何より一番は、なんであんなに食べてお腹変わらずへっこんでんですか!?」


 そう、ここにいる全員が、たらふく食べたために、お腹が少しぽっこりしていた。

 なのだが、桁違いに食べたはずのシルフィーのお腹は食前と変わらずに、見事なくびれを作っていた。


「ああ、私はいくら食べても体形が変わらない体質の様なのです」

『・・・』


 それはそれで女性が聞いたら憤慨しそうなセリフではあるが、もはやそんな問題でもなかった。

 あれだけ食べて見た目が変わらないはずがない。

 食べた物がそのまま異次元空間に放り込まれたとしか思えない。

 前々からよく食べると思ってはいたが、まさかこれほどとは。

 『シルフィーに食べ物を与えてはならない』

 それが今回の件で一同が感じた共通認識であった。

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