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最強教師は最低のクズ野郎~神殺しの王。教師となり美少女を育成する〜  作者: さく・らうめ
カルドニアのアベンジャー編
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金欠教師スティーグ

「お金がありません」

「・・・え?」


 ミラのその発言に、珍しくスティーグは呆けた。

 徐々にミラの言っている意味を理解し始めると同時に、持っていたティーカップがカタカタと震えだす。


「いやいやいや、そんなはずないだろ!? 老後まで遊んで暮らせるくらいの貯金はあったはずだ!」


 まだ隣国カルドニアと戦争状態にあった頃、傭兵としてスティーグは随分と荒稼ぎをしていた。

 前述通り、遊んでいても十分に生きていけるだけの貯金があったはずである。

 だが、無情にもミラは告げる。


「忘れたの? あなた、例の牧場に毎月すごい額の支援をしてるのよ? 貯金なんてあっという間になくなっちゃうわよ」


 スティーグがひいきにしている牧場。誰が読んだか、ブレメン牧場。

 旨い肉を作るために、何代にもわたって試行錯誤を繰り返し続けた牧場の経営者は、遂に至高の肉を作りだすことに成功した。

 そこに一切の妥協はない。

 品種改良から始まって、飼育、高価な餌、それらを円滑に行うための最新の設備。

 ただ旨い肉を作りたい。それだけの為に、彼らは人生の全てを捧げていた。

 利益を度返しでそんなことをすれば、当然、経営など成り立たなくなる。

 そこの手を差し伸べたのがスティーグであった。

 だが、個人が持つには十分な貯金と言っても、経営を支えるほどの援助を行えば、個人資産などあっという間に尽きてしまう。

 ミラの言っているのはそういうことだった。


「い、いや、だが、今は俺も学園の教師として働いているわけだし・・・」


 この世界、教養を持って人を教えられる教師という人材は貴重であった。

 本来であれば、十分な教育を受けた貴族が就く職業である。

 当然、給料はいい。

 更にスティーグはそれに色をつけてもらうことを、教師を引き受けた際に、理事長ベネデットと約束している。


「これまでに何度か、特別闘技場、破損してるわよね。それに、たまにあなたが街中で喧嘩する時、壊した建物の修繕費。結構バカにならない額になってるのよ」

「なっ! そんな事に俺の金使ってんのか? 聞いてねーぞ!!」


 基本、金勘定の苦手なスティーグは、金銭管理をすべてミラに丸投げしていた。

 ぶっちゃけ、自分の貯金が後どれだけあるのか、まったく把握していない。

 弁解すると、スティーグは自分から誰かに喧嘩を売ったことはない。

 全て売られた喧嘩を買っただけなのに、何故、自分が弁償しなければならないのかと憤慨した。

 兎に角、どうやら現実を認めるしかないようだ。

 自分は今、金がない。


「・・・後どれだけ残ってるんだ?」

「まだ結構残ってるわよ。あたしとアティシアさんを養っていけるくらいにはね。正し、牧場の支援を止めればだけど」


 無論、ミラも貯金が尽きてからこんな話をするつもりはない。

 あくまでも、このまま今の生活を続けるといずれそうなるよということである。

 それを回避するには支援を止めるのが一番手っ取り早いのだが、


「それは駄目だ」


 考慮する余地もなく、スティーグは断じた。

 これでスティーグは結構なグルメである。

 美味しい料理を食べるのは好きだし、作るのも好きだ。

 あの牧場主の情熱に感銘を受けたスティーグは、何としても、この牧場を潰す訳にはいかないと心に決めた。

 それに来週は、あの牧場から食材を取り寄せて、BBQをする予定なのである。

 ここで支援を止めるわけにはいかない。

 それに、この支援はこの先ずっと続く訳ではない。

 彼らの努力が実り、徐々にだが、口コミでブレメン牧場の知名度は知られてきている。

 このまま経営が軌道に乗れば、スティーグの支援は必要なくなる。

 それどころか、黒字になれば、その売り上げの何%かはスティーグの手元に転がり込んでくる約束を取り付けている。

 もう少し、ここが踏ん張り所なのだ。

 そんなスティーグの心情を理解しているのか、ミラは薄く笑いながら腰に手を当てた。


「しょうがないわね。あたしもバイトするし、アティシアさんも冒険者ギルドに仕事を探しに行ってるわよ」


 どうも姿が見えないと思っていたら、アティシアは既に事情を聞いた上で仕事を探しに行ったらしい。

 この時代、男が仕事で外に出かけ、女が家を護るといった暗黙の了解が少なからずあったので、生活の為に女性に働いてもらうというのは普通の男にとっては結構クルものがあるのだが、この最低野郎は平然とこんな事を言ってのける。


「え? じゃあ、俺はここで茶を飲んでていい?」


 正しい拳と書いて正拳突きと読む拳がスティーグのみぞおちにめり込んで、床にゴロゴロと情けなく転がった。

 仁王立ちしてスティーグを見下ろしながら、指を突き出してミラは言い放つ。


「働きなさい!」


 これまたうら若き女性に言われた日には男としての矜持を挫くには十分な一言であっただろう。

 だかやっぱりこのクズ野郎、スティーグはそんなミラにこう返した。


「働きたくないでござる。死んでも働きたくないでござる!」

「何がござるよ! 兎に角、貯金を崩さずに教師としての収入を援助に回して、あたし達の生活費を賄わないといけないの。生きる為にね!」

「・・・」


 スティーグは頭を抱えた。



*********


 幸か不幸か、治安悪化の為に冒険者ギルドでは仕事に困ることはなかった。

 こうしてスティーグは労働に励むことになる。

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