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おまけ メイのリセリア観察日記

 リセリアのメイドをしているメイは平民出身である。

 リセリアの母、リリーナが幼いリセリアに気さくに付き合える友達を作ってほしいために、十年前から雇っているのだ。

 平民出身ということで、後ろ指を指されることもあるが、メイは気にしていない。

 リセリアとは主従というよりも姉妹の様に育った間柄であった。

 そんなリセリアに最近ある変化が見られた。

 なんと、自分を差し置いて、ある男性に恋をしてしまったのだ。

 本人は照れ隠しなのか否定しているが、バレバレである。

 今も、


「ぬぁ~~~、むわぁ~~~!」


 リセリアは天蓋付きのベッドの上で、枕を抱きながらゴロゴロと左右に転がっていた。

 普段の清楚で可憐なリセリアからは想像もできない姿である。

 流石に長い付き合いのメイもこんなリセリアは見たことがない。

 恐らく、今もその男性を想って見悶えしているのだろう。


「・・・何してるんですか姫様?」

「わきゅぅ!?」


 誰もいないと思っていたのだろう。

 突然、声をかけられとても可愛い声を上げてリセリアはベッドの上で飛び跳ねた。


「メメメメメメメメイ! い、いつから居たの?」

「姫様が喘ぎ声を上げながら見悶えしている辺りですかね」

「そっ! 喘ぎ声なんて上げてないでしょう!!」

「じゃあ、何をしてたんですか?」

「・・・それは、あれよ。何? これからの国の行く末を考えて」

「考えていたのはスティーグ様の事でしょう?」

「ば、バッカじゃないの! そ、そんな事、あるわけないじゃない!!」


 スティーグというのは最近リセリアとメイが知り合った男性だ。

 最初は興味本位程度だったはずだが、何があったのだろう? 今ではすっかりお熱を上げているのだ。


「最近、自室の扉が開かれるたびに、すごく期待に胸を膨らませた顔で見てますよね? その後で、すごくしょんぼりする。スティーグ様じゃなくて残念でしたね?」

「だ、だから、違うったら!」

「はぁ~。いい加減、認めたらどうですか? 好きなんでしょう? スティーグ様の事が」


 リセリアは頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にした。

 その後で、ひどく落ち着かない様子になり、クルクルと自慢の髪をいじり始めた。

 その姿が実に愛らしく、メイは思わずギューっとハグしたくなった。

 リセリアはムキになって叫ぶ。


「ち、違うわよ!」


 こんな調子でリセリアは決して自分の恋を認めなかった。

 恐らくだが、これがリセリアの初恋なのだろう。

 もしかしたら、本当に恋という感情が解らずに、彼女自身も気づいていないのかもしれない。

 そう考えてメイは、ムラムラと悪戯心が沸き上がって来た。

 自分を差し置いて、恋する乙女になってしまった妹の様な存在のリセリアをからかってみたくなったのだ。


「じゃあ、姫様は断固としてスティーグ様への思慕を認めないと?」

「だ、だって違うんだもん。何度も言わせないで」

「ふむ。じゃあ、私がスティーグ様にアタックしても問題ないわけですね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい?」


 リセリアは一瞬硬直し、真顔ながら、こうゴリっとした声を上げた。


「ち、ちょっと待って。ほ、本気なの、メイ?」

「ええ」

「いや、だって。え? それは、その、マズくないかしら?」

「何でですか?」

「それは、えっと、だから・・・」


 メイは思わず吹き出しそうになった。

 予想以上に効果てきめん。

 面白いようにリセリアはうろたえた。


「ち、因みに、あくまでも、あくまでも参考までに、何処が好きなの?」


 なんとか笑いを堪えながらメイは答えた。


「だって、かっこよくないですか?」

「か、かっこいい!?」

「美形、とまでは言いませんけど。顔立ちは整ってますし、目元もキリっとしててワイルドな感じだし、それにとっても強いんですよね? 素敵じゃないですか」


 恋愛対象になるならないはともかく、それはメイの率直な感想であった。

 メイは直接スティーグが戦っているところを見たわけではないが、王国騎士団が束になっても敵わなかったとは聞いている。

 それに国王陛下の覚えもいい。かなりの優良物件に思えた。

 これに対してリセリアは、


「・・・違うわ」

「はい?」

「あいつの凄さはそんな見た目とかじゃなくて、懐の深さって言うか、大きさにあると思うのよ。普段はだらしないくせに、決める時は想像もできないくらい気品があるし、無邪気に笑った顔はちょっと可愛いし、勿論、強いところもかっこいいとは思うけど、あ、あくまでも客観的に見てね。客観的に!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 メイは絶句した。


(こいつぁガチだぜ)


 上辺ではなくその内面をべた褒めしている。

 心は完全に恋する乙女全開モードであった。


「そ、それにしても、最近あいつ来ないわね」

「つい先日来られたじゃないですか」

「そうかしら? もう結構経ってない?」


 スティーグはリセリアとの約束を一応守り、度々リセリアの自室に顔を出している。

 だが、リセリアは待ち遠しくて仕方がないのだろう。


「し、仕方ないわね。私が直接行くしかないでしょう」

「駄目です」


 スティーグの元へすぐにでも飛んで行きたそうなリセリアを、メイはバシっと引き止めた。


「なんでよ!?」

「この前もお忍びで出かけたばかりじゃないですか。姫様は今や事実上、次期女王なんですよ? ご自分の御立場をよく考えてください」

「ぐ!」


 エリックが失墜した今、次に王位を継ぐのはまず間違いなくリセリアである。

 そうホイホイと出歩く訳には行かないのだ。


「大体、好きでもない相手の所へ頻繁に何をしに行くんです?」

「そ、それは」


 リセリアが素直になれないのをいいことに、メイの悪戯心はどんどんリセリアを追い詰めていく。

 リセリアはうんうんと唸りながら、なんとか適当な理由をでっち上げようと必死なようだ。

 頭脳明晰であり、公務を完璧にこなすリセリアも、こうなっては形無しであった。


「し、視察。そう、視察よ! 軍の直轄である学園を視察に行くの。そうなのよ!」


 完璧な名案を閃いたと言わんばかりに、リセリアの顔はパッと明るくなった。


「ふむ。視察ですか」

「そうなのよ。し、仕方ないわね。お仕事だもん。仕方ない、仕方ない」

「確かに、それなら仕方ないですね」

「だしょうが!!」


 リセリアは本当に心を許した相手にだけは非常に気軽な言葉遣いをする。

 しかし、流石に崩し過ぎている気がしなくもなかった。


「で、あるならば。しっかりと視察団を伴って行かれるのがよろしいかと思います」

「ふえぇ!?」


 リセリアは素っ頓狂な声を上げた。

 まあ、気持ちは解る。

 本格的な視察となれば、学園全体を見回らなくてはならず、スティーグのそばにずっといるわけにもいかない。

 いられるわずかな時間も、視察団がいる手前、当たり障りのない会話しかできない。

 それでは意味がないのだ。

 だが、メイの言ったことは正論で、一度出た言葉を覆すことはできない。

 リセリアはがっくりと項垂れて、下を向いてしまった。

 さすがにやり過ぎたと感じたメイは苦笑しながらリセリアに話しかけた。


「ウソですよ」

「え?」

「姫様が、お忍びで抜き打ち視察するのもいいんじゃないですか?」


 その言葉を聞いて、リセリアの顔がみるみる明るく晴れやかになっていった。


「抜き打ち! そう、それよ。もう、全く仕方ないな~。本当はとっても忙しいんだけど、これも国益の為よ!」


 言葉とは裏腹に嬉しそうに笑うと、リセリアは服に手をかけてどんどん脱ぎだしてしまう。


「そうと決まれば服選びよ。メイ、一番かわいい服を選んで頂戴!」

「はい、姫様」


 メイはくすりと笑いながら、着替えを手伝う。

 視察にかわいい服を着る必要は全くないが、それは言わぬが花である。

 着替える手間すらも惜しむ様子のリセリアを見ながら、メイは心の中で呟いた。


(私の姫様をこんなにかわいくしてくれちゃった責任。しっかりとって貰いますからね? スティーグ様)

 この話で王都騒乱編はお終いです。

 王都騒乱というほどではなかったと思い反省しています。

 また時間を置き、書き貯めたら連載を再開します。

 ご愛読ありがとうございました。

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