エピローグ
エリックとカッカリコが巻き起こした騒動は、ようやく終わりを迎えた。
エリックが王位を剥奪されたというニュースは瞬く間に王国に広まった。
王宮内は上へ下への大騒ぎである。
特に被害を受けたのは、エリック派の貴族達であった。
彼らの多くは貴族至上主義で、甘い蜜を吸いながら、本来の義務を放棄した連中である。
これから先、彼らの勢力は、急激に衰えることとなるだろう。
エリックは未だひどいショック状態にあったので、自室で寝込んでしまっている。
しかし、今さら公式発表を取り消すことはできないので、そう遠くないうちに、アーゼル王が言ったように、辺境の軍施設に送られることになるだろう。
プリンスナイツは解散。
エリックの命令とはいえ、嬉々として無辜な民を殺害しようとした罪からは逃れられない。
自宅謹慎で処分を待つことになっている。
今回の実質の首謀者であり、唯一逃げ延びたカッカリコの足取りは未だ掴めていない。
おそらく、すでに国外に逃亡したものと見られている。
ここで驚くべき事実が判明した。
カッカリコは召喚術を修めてはいなかった。
簡単な魔法は使えるものの、それほど魔法の造詣は深くなかったようである。
そんな人間が、魔人などを召喚できるとは思えない。
つまり、カッカリコに魔人を渡した何者かがいることになる。
しばらくはその何者かを探す捜査が王宮内で行われるだろう。
以上がこの事件の簡単な顛末である。
スティーグ達は、ようやく平和な日常に戻ることができたのだ。
*************
事件から数週間後。
無事、国外に逃げ出したカッカリコは現在、暗い遺跡の中にいた。
崩れた壁からうっすらと外に光が差し込む。
カッカリコは、風化した遺跡に不釣り合いな装飾が施された椅子に座る男を前に、膝をついていた。
この男こそカッカリコに魔人を渡し、凄腕の暗殺者を派遣してくれた人物である。
初老といっても差し支えない風貌の男。
しかし、その眼だけはやけにギラついており、野心の満ちていた。
「今回の件。誠に感謝しております。あなたのおかげでこうして逃げ延びることができました」
「なに、こちらも資金や物資を横流ししてもらっていたのでな。相応の見返りは当然だ」
男は悠然と答えた。
「それで、これからどうするのだ? これ以上はお前を支援する義理はこちらにはないが」
カッカリコはもう、何の力もない追われる身である。これ以上、協力する価値はないだろう。
カッカリコは唾を飲み込み、男に懇願した。
「どうか、どうか私をあなた様に仕えさせてください。必ずやお役に立って見せます」
男はカッカリコをしばらく見つめた後、尊大に答えた。
「よかろう。では精々これから役に立つがいい。そして、我が名をその魂にまで刻み付けよ!」
男は立ち上がると、両手を広げ、高らかに名を告げた。
「我が名はガガドーム。 古の王にして、王の中の王だ!」




