生徒達の決意
少女達の戦意は大きく挫かれた。
魔人の腕は再生し、完全に修復してしまったのだ。
これで実質、あちらはノーダメージ。
対して、こちらはアティシア、セリス、ステラ、シルフィーが負傷。
戦況は非常に不利であった。
それにしてもあの超速再生は厄介だ。
どれだけ攻撃しようと無駄なのではないかと、どうしても考えてしまう。
改めて魔人の脅威に少女達は身震いした。
敗北。その先に待つ死が脳裏をかすめる。
心が折れかけたその時。
「まだです。諦めないで!」
アティシアが生徒達に喝を入れた。
「ここでやられてしまってあなた達はいいんですか!? 今までお兄様の何を見てきたんです」
『!?』
はっと少女達は顔を上げた。
そうだ。自分達はずっと見てきたはずだ。
追いかけてきたはずだ。
どんな相手であっても決して諦めず、飄々とした余裕な態度を崩さないあの背中を。
ここで死ぬ訳にはいかない。
自分達はあの人に教えてほしいことが、まだまだあるのだから。
「負け、ない。負けてたまるかぁーー!」
クレアが決意を込めて叫んだ。
それと同時に他の少女達の瞳にも光が灯る。
体はまだ動く。やれる。自分達はまだ戦える。
それはアティシアも同じである。
(お兄様がここにいない以上。彼女達は私が必ず守る)
自分は兄に任されたのだ。
兄の為、自分の誇りの為、なによりこの世界で出会った大切な友人達の為に、アティシアは負けられない。
そんな少女達の決意を砕く様に、魔人は周囲に魔力球を多数生み出す。
アティシアを苦しめた闇魔法だ。
飛び回ってしまうと手が付けられない。
その前にすべて叩き落す!
「シャル。合わせて!」
「了解ですわ!」
アティシアの呼びかけにシャルロッテが応える。
二人は同時に詠唱に入った。
「雷精よ」
「一条の光となりて」
『我らが前に立ちはだかる敵を討て!』
二人から迸る眩い雷光。
それは瞬時に黒の球体を吹き飛ばす。
打ち損じた球体はシルフィーとステラが斬り捨てる。
「今!」
クレアが走る。
魔法使用後の一瞬の隙をついて、一撃必殺の技を繰り出そうと大剣を振り上げた。
その時、クレアは見た。
魔人の赤い瞳が更に赤く、光を増していることに。
「まさか!?」
脳裏によぎる最悪の予想。
赤く光る瞳はクレアの頭部を見つめた。
攻撃のモーションに入ってしまったクレアは、もはや剣を振り下ろすしかない。
死ぬ。
背筋が凍った。
時間がとてもゆっくりと感じられた。
そこに、
魔人の背後に疾風のごとく迫る影が見えた。
セリスだ。
跳躍したセリスはそのまま魔人の左側頭部へと思い切り回し蹴りを叩き込んだ。
魔人の首が傾き、視線がクレアから外れる。
同時に瞳から二つの赤い閃光が放たれ、クレアの横をかすめていった。
今度こそ、魔人は硬直する。
仲間が与えてくれた絶好の好機。
クレアは剣を強く握りしめる。振り下ろせ。渾身の一撃。
「崩、断!!」
クレアの必殺技が魔人を縦に斬り裂いた。
一刀両断。
通常の生物であれば問答無用の死。
しかし、魔人はまだ倒れない。
縦に真っ二つにされたというのに、細い繊維の様なものが魔人を繋ぎ止め、徐々に合わさろうとしていた。
『や、ら、せ、る、かーーーーーーーーーーーーーーー!!』
シルフィーとステラが裂帛と共に剣を振りかざす。
シルフィーが突きを、ステラが斬撃を、切っ先が霞むほどの速度で同時に叩き込む。
更に、
「みんな散って!!」
八つ裂きにされた魔人に止めを刺すべく、シャルロッテが叫ぶ。
瞬時に魔人から離れた少女達を確認すると、放たれた大火球が魔人を包み込んだ。
大炎上。
紅蓮の炎が森を赤々と照らした。
ついに魔人は塵一つ残すことなく、光の粒子となって夜空に消えた。




