取り調べ3
「最初からお前が見たことを説明してくれ」
スティーグは目撃者の男に質問する。
男は唇を舐めると、恐る恐る答え始めた。
「俺が見たのは、その女がそっちの三人を殴っている場面で」
「ん? それだとどっちが先に手を挙げたのかはわからないんじゃないか?」
「い、いや、間違えた。正確には女が、歩いてる三人に近づいていって、突然殴りだしたんだ」
「いきなり知らない人間が近づいたら、誰でも警戒するんじゃないか? あいつらはただ黙って殴られたのか?」
「あ、あ~いや、そう! この女、後ろから突然不意打ちをしたんだ!」
「そんなことしません!」
アティシアは立ち上がって猛抗議した。
スティーグは興奮するアティシアを手で制すと、男に更に質問する。
「後ろから殴った?」
「ああ」
「間違いなく?」
「そうだ」
「ふむ」
スティーグは念を押した後に三人組に向き直る。
「無防備な状態で攻撃されたのなら、背中に傷を負ったはずだ。最初に殴られたのは誰だ? ちょっと服を脱いで傷を見せてくれ」
『い!?』
男達は顔を引きつらせた。
恐らく、ここまで細かく聞かれるとは思っていなかったので、綿密な打ち合わせをしていなかったのだろう。
お構いなしにスティーグは急かす。
「どうした? 早くしてくれ」
「い、いや、怪我するほど強くは殴られていないと思うな・・・」
「その腫れ上がった顔を見る限り、そんな事はないと思うが?」
「で、でも実際に背中は痛くないし、怪我してないと思う、ぞ?」
そう言いながら、三人組は目撃者の男を睨む。
余計なことを言うなといったところだろう。
「一先ず置いておくか。じゃ、続きを聞かせてくれ」
「あ、ああ。どこまで話したかな? そうそう。そいつらが殴られているのを見て、俺はすぐに憲兵を呼びに行ったんだ」
「続けてくれ」
「で、詰め所にいるそこの憲兵さんに事情を説明して、現場に来てもらった」
男は椅子に座っている憲兵に視線を送った。
憲兵もうなずく。
「現場ってのは?」
「ここから三区画離れた小道だ。近くに冒険者ギルドがある」
「ああ、あそこか。うん? 本当にそこか?」
「そうだ」
確認の意味を込めて聞き返すと、憲兵はうなずいた。
「ふむ。おかしいな」
「な、なにが?」
目撃者の男は、またなにかしてしまったかと気が気ではない様子だった。
「お前は喧嘩を目撃して、憲兵を呼びに行った」
「あ、ああ」
「詰め所に着くとそこの憲兵に事情を説明して、現場に戻った。間違いないな?」
「ど、どう、だったかな?」
ここで頷いてしまうのは何かマズいと男は思ったようだ。
下手な証言は自分達の立場を危うくすると。
だが、スティーグはそんな男の態度を許さない。
「ついさっきのことを覚えてないのか? そんなあやふやな記憶じゃ、お前の証言自体が当てにならないぞ」
「う! ・・・そ、そうだよ。間違いない!」
言質を取るとスティーグはニヤリと笑った後にアティシアに話しかけた。
「お前がこの男達を片付けるのにどれくらいかかった?」
「一分もかかっていませんね」
「お前らの方もそこは間違いないか?」
今度は三人の方を向いてスティーグは確認を取る。
「お、俺達が無抵抗だったから、それくらいで済んだんだぜ?」
「つまらない見栄はいいが、間違いないんだな?」
「・・・ああ」
「ミラ、喧嘩が終わったら、お前らはすぐにその場を離れようとしたんだったな?」
「うん。起きだして、また因縁付けられても困るしね」
ミラに確認を取ると、スティーグは舌なめずりをしてニヤニヤ笑う。
「さてさて、これは妙だな」




