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取り調べ

「だから、何度も言ってるじゃないですか。被害にあったのは私たちの方なんですってば!」


 苛立ったアティシアは机をバンと叩いた。

 憲兵に連行されたアティシアは、一先ず、大き目な取り調べ室の様な場所に連れてこられた。

 なぜ、大き目かと言えば、被害にあったとされる三人組と、目撃した男の事情も一緒に聞くためだった。

 だが、話は食い違ったまま平行線をたどった。

 双方、被害にあったのは自分だと主張し、一歩も譲らない。

 そうなると、仲間以外に目撃した人物の証言が重要視される。

 加えて、暴力を受けたのは一方的に三人組側とくれば、アティシア側に分が悪いのは仕方のない事だった。

 憲兵は机に肘をついて、胡散臭げにアティシアを見つめる。


「しかしね。こうして目撃者がいるわけだよ。言い逃れはできないんじゃないか?」

「あの人は嘘をついているんです!」

「なんでそんなことを?」

「私を嵌めるためです!」

「だから、なんでそんなことを?」

「そ、それは・・・」


 アティシアは言葉に詰まった。

 『兄が貴族達の不興を買い、貶められようとしている』などと言ったところで、質の悪い冗談として受け止められることは目に見えている。

 寧ろ、そんなことを言えば、こちらの心象がますます悪くなってしまう。


「おいおい、ねーちゃんよ。そろそろ諦めたらどうなんだ? 俺達はあんたに一方的にやられた傷が痛くてしょうがねーんだけどよ」


 三人組の男の1人が、ニヤニヤと笑いながらアティシアを嘲った。

 アティシアは殺気を込めて、男を睨む。

 先ほど、悶絶させられたことを思い出したのか、顔を引きつらせて男は押し黙った。


「落ち着きなさい。少し、休憩するかね?」

「はぁ。かつ丼でも出してくれるんですか?」

「は?」

「・・・何でもありません」


 憲兵は間の抜けた声を上げた。

 アティシアはため息をつく。

 自分の時代にあった取り調べのお約束を言ったところで通じるわけもないし、これ以上、変な女と思われたくもない。なによりも、


(お兄様に迷惑をかけてしまった)


 敬愛する兄の力になりたいと思っているのに、逆に足を引っ張ってしまった。

 アティシアは実は地味に落ち込んでいた。

 と、その時、部屋の外から物音がして、扉が勢いよく開かれた。


「よぉ。お邪魔するぜ」

「お兄様!」

「まったく。古典的な手にしてやられたなアティシア?」

「面目ありません」

「な、なんだお前は!?」


 突然現れて、加害者と会話を始めた闖入者に憲兵は戸惑いの声を上げた。


「ああ、そこのお嬢さんの兄だ」

「そうだとしても、関係者以外は入っちゃいかん!」

「まあ、いいじゃねーの。もう一人の関係者も一緒だぜ?」


 スティーグは後ろを指さしてミラを部屋に入れた。


「あ、君! 勝手に出て行っちゃいかんだろうが! 君にも聞きたいことがあったんだぞ」

「す、すいません」


 憲兵に怒鳴られて、ミラは深々と頭を下げた。

 捜索に行かせた憲兵もいるんだぞと、さらにミラは怒られた。


「そっちのお嬢さんはともかく、お前は駄目だ。出て行ってもらおうか」

「そう言うなって。別に怪しいものじゃないぜ。俺はスティーグ。バレンティアで教師をしている。身分証もあるぞ?」

「スティーグ。まさか、『英雄スティーグ』か!」

「お?」


 スティーグはちょっと驚いた。

 巷で自分が噂されていることは何となく知っていたが、どうやら変に広まってしまっているらしい。

 三人組と目撃者の男にも動揺が見られた。

 普段であれば、そんな呼び名は勘弁してほしいところだが、それが有利に働くのであれば、迷わず利用するのがこの男である。


「なあ、憲兵さんよ。何も妹を連れて逃げようって訳じゃない。俺も話に参加させてもらいたいだけだ。固いこと言わずに頼む」

「・・・まあ、身元がしっかりしているのであれば」


 憲兵はスティーグの威光もあって渋々、許可をだした。

 スティーグは満足そうにうなずく。


「さて、じゃあ話を聞こうか?」

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