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本当の黒幕?

 ラッセンは首を振りながら左手を前に突き出して、弁解を始めた。


「待て、待て待て待て!! ち、違うのだ。私じゃない。お前の周りの者達を陥れる様に指示をしたのは私ではないのだ!!」

「今さら適当言ってると」

「本当なのだ。私はある方から頼まれただけなのだ」


 スティーグは眉をひそめた。

 確かにこの馬鹿が陰謀を巡らせたというよりも、他に黒幕がいると考えた方が説得力がある。


「それじゃあ、答えてもらおうか。その『ある方』ってのは誰だ?」

「そ、それは、言えん。私が粛清されてしまう!」


 ラッセンは真っ青になって拒否した。

 どうやら黒幕はかなりの大物のようだ。


「好きな方を選べ。今死ぬか、後で死ぬか」

「ひ、ひぃーーーーーーーーーー!!!!」


 ラッセンは自身の持てる力の全てを出し切って、脱兎のごとく逃げ出した。

 ある意味でスティーグの前で初めて見せた『正しい判断』と言えなくもなかった。


「逃げられるとでもー」


 すぐに追いつこうと考えたが、スティーグは一瞬、躊躇した。


(こいつの後をつければ、黒幕の所まで案内してくれるか?)


 速度を緩めて後をつけようとしたのだが、それがラッセンの生死を分けた。

 突然、殺気を感じたのだ。

 だが、自分に向けられたものではない。それはつまり、


「くそが!」


 緩めた足に再び力を入れ、加速する。

 それでも敵側の方が僅かに速かった。

 ラッセンが突然倒れたのだ。

 思わず舌打ちをして、殺気を感じた方向に目を向けるが、既に殺気も気配も感じない。

 今から探し出すことは不可能だろう。

 捜索を諦めて、ラッセンに近づいたが、口から泡を出し、既に絶命していた。

 よく見てみれば首の辺りに小さな棘が生えている。


「即効性の毒か・・・」


 スティーグにも気取られない距離からの狙撃。

 そして、標的を仕留めてからの鮮やかとも言える撤退。

 その手際にスティーグは舌を巻いた。


「大した暗殺者を飼っている。侮れないな」


 これで手掛かりは失ってしまった。

 後、出来ることはリセリアや元帥に働きかけ、あのラッセンを従わせることができる有力者に探りを入れるくらい。

 数は絞り込めるかもしれないが、特定は困難である。


「また敵の出方を伺うしかないか」


 小さなため息をつくと、スティーグは仕方なく帰路についた。

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