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調査

 説明を終えると、校長はクレアとセリスを励ました後、闘技場を後にした。

 残った特別クラスの面々とリセリアは深刻な表情を浮かべながら、事件を整理することにした。

 ミラは二人の肩に手を置いて優しく微笑む。


「何かの間違いよ。そうに決まってる。二人のお父さんがそんな事をするはずがないもの。すぐに釈放されるわ」


 もちろんクレアもセリスもそうであると信じている。だが、その意見にアティシアが異を唱えた。


「そうでしょうか? いえ、お二人のお父様が罪を犯したということではなく、すぐに釈放されるかという部分です。果たして簡単に解放されるでしょうか・・・」

「ど、どういうことですか!?」


 アティシアの不穏な発言に、クレアは不安が込み上げてきた。


「冷静に状況を整理しましょう。大前提として、お二人のお父様は無実として話を進めます。そうすると何故、二人は捕まったのでしょうか? 特別クラスの生徒二人の父親が同じ日に、日頃の行いからは考えられないような理由で、こんな事が偶然に起こるとは思えません。つまり」

「つまり、何者かによって嵌められたって訳だな」


 アティシアの言葉をスティーグが引き継ぐ。

 アティシアはコクリと頷いた。


「そうなってくると考えられるのは特別クラス、あるいはお兄様に恨み、もしくはこの件を脅迫材料に何かをさせようとしている者がいる」

「複数とも考えられるな」


 兄妹の会話にリセリアが加わる。


「あんた達のことを詳しくは知らないけれど、タイミング的に、この前スティーグが王宮に来たことが関係あるんじゃない? あの一件でかなりの貴族連中の反感を買ったわよ」

「あり得る話だな。となると、一番の容疑者はあのボンクラ王子なんだが・・・」


 どうなんだという視線を、スティーグはリセリアに向けた。


「正直、わからないわ。あの直情的なバカ兄が、こんな迂遠な方法を取って嫌がらせをするのか、判断ができない」


 確かに、あの一幕を見る限り、もっと直接的な方法を使ってきそうな印象だ。

 まとめると、やはりこの間の王宮での一件が今回の事件と繋がりがある可能性が高い。

 もしそうだとしたら、二人の父親は完全にとばっちりを食った形となる。

 スティーグはかつてないほど険しく顔を歪めた。


「ちょっと出てくる。クレアとセリスは早く帰れ。母親が心配してるだろう。リセリア、お前もな」


 言うだけ言って、そそくさと闘技場を出ていこうとしたスティーグを、生徒達が呼び止めた。


「先生、あたし達も!」

「今回は首を突っ込むな! いいな、余計なことはするなよ」


 そう言い放つと今度こそスティーグは出て行った。

 アティシアは生徒達を見つめると小さく笑って見せた。


「あれで責任を感じてるんですよ。これ以上、あなた達を巻き込まないように気を使っているんです」

「それは、わかりますけど・・・」

「でも、それだと一番危ういのはスティーグ本人じゃない?」


 リセリアはアティシアに向けて率直な感想を口にする。

 それに対し、アティシアは不敵な笑みを浮かべて首を振った。


「お兄様なら心配いりませんよ。例え世界全てを敵に回そうとも勝利すると、私は信じています」


 スティーグの力をそれほど知らないリセリアにとっては、それはとんでもない大言壮語に聞こえた。

 だが、そう思っているのはどうも自分だけの様だ。ここにいる者達はスティーグに対し、絶大な信頼を寄せている事が表情から読み取れた。


「むしろ、何者かは知りませんが、お兄様がやり過ぎてしまわないか心配ですね。今回の敵はお兄様の逆鱗に触れました。自分が大事に思っている誰かが傷つくことはお兄様が最も嫌うところ。思い知ることになるでしょうね。お兄様の力を」


 やはり兄妹か。アティシアの瞳は獰猛に輝いていた。

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