リセリア姫とのお茶会
スティーグは置かれている環境からか美人は見慣れている。
だが、そんなスティーグから見ても、リセリアは文句なしの美少女だった。
容姿端麗を体現していると言っても過言ではないだろう。
そういえば、王も王子も眉目秀麗であった。
この国の王族は美形が多いらしい。
リセリアはスカートの端をつまむと優雅に一礼した。
「スティーグ様。この度はわたくしの我儘を聞いていただき、ありがとうございます。この国の第一王女、リセリア=ドゥ=エルベキアでございます。どうぞ、お見知りおきください」
「スティーグだ。で? 俺に用っていうのは?」
スティーグはさっそく要件を聞こうとした。
リセリアは自分の指を唇に這わせ、ニコリとほほえむ。
一つ一つの動作が実に絵になる。
それでいて、エリックの様な演技感はなく、ごく自然に行っている。
「スティーグ様と」
「それ止めろ。スティーグでいい」
「わかりました。では、わたくしのことはリセリアとお呼びください」
スティーグはコクリと頷いた。
一国の王女を呼び捨てでいいのだろうかという気もしないでもないが、この男にとっては今更である。
リセリアは続ける。
「スティーグに興味がありました。お茶でも飲みながら、お話をしたいと思いまして」
「ほぉ。俺はお茶にはうるさいぜ?」
「メイの入れてくれたお茶は絶品なんですのよ。メイ、お願いね?」
リセリアはメイドさんに声をかけて、支度を促した。
「腰を下ろす前に、謝罪を。先ほどは兄が大変失礼を致しました。王族としてあってはならない蛮行。この通りお詫びいたします」
リセリアは深々と頭を下げた。
スティーグはすぐにそれを制する。
「ああ、いいんだ。もう親父さんに謝ってもらったしな。気にするな」
リセリアは顔を上げると、目を丸くして驚きを露にした。
そして、しばらく何かを我慢していたが、堪えきれない様子で、ついに吹きだしたのだ。
「ぷっ! 親父さん! 親父さんって。一国の国王を親父さん! あっはははは! やだ、おかしい! あっははは。く、苦しい。あははははははは!!」
「・・・そんなにツボだったか?」
リセリアは壁に手をついてしばらく笑い続けた。
スティーグはあっけにとられてしまった。
「あ~もう。なんだかバカバカしくなっちゃった。ほら、早くテーブルについてよ。メイ、いつまでも呆けてないで、早くお茶を入れて頂戴」
「は、はい。姫様」
慌てて作業に戻るメイを確認すると、リセリアはさっさと椅子に腰かけてしまった。
「どうしたのよ? 突っ立ってないで、ちゃっちゃと座っちゃって」
今度はスティーグが目を丸くする番だった。
先程までの如何にもお姫様然とした雰囲気は完全に消し飛んだ。
リセリアは深窓の姫君から、快活な少女へと変貌したのだった。
「・・・お前、そっちが素か?」
「まっね~。この私を知ってるのは専属の使用人であるメイだけだから。あんたで二人目よ。光栄に思いなさい」
「どう受けとりゃいいんだかな」
スティーグは呆れたようにため息をつくと、ドカッと椅子に腰を下ろした。
リセリアはニコニコ笑いながら、スティーグを眺めている。
そこにメイがティーセットをもって戻って来た。
「どうぞ」
運ばれてきたティーカップからは芳醇な香りが漂っている。
さすが王族が使っているだけあって、見事に彩られたティーセットである。
スティーグはそっとカップの縁に口をつけ、紅茶を口に流し込む。
「美味い」
スティーグは素直に称賛の言葉を送った。
メイは嬉しそうに、リセリアはどこか誇らしい顔をしたのだった。




