リセリア姫
スティーグは腰を抜かして動けなくなってしまった元帥をほっぽって、さっさと王宮を出ようとしていた。
だがしかし、一人でブラブラするものではなかった。
有体に言って迷ってしまったのだ。
「おっかしいなぁ~。マジで迷ったぞ」
辺りを見渡しながら、来た道を引き返そうかと思案している時に、後ろから声がかかった。
「スティーグ様。お待ちください」
振り返ると、そこにはこちらに走ってくるメイドさんの姿があった。
メイドさん。
メイドさんである。
スティーグがミラに無理やりさせているような、なんちゃってメイドではなく、王宮に仕える正真正銘のメイドさんであった。
ちょっと感動したスティーグの前に、メイドさんは肩で息をしながら立ち止まった。
呼吸するたびに程よい胸が上下する。
スティーグはそれを見て一つの結論に達した。
「そうか。俺がここに来た意味ってこれだったんだな」
「はい?」
「ああ、いやなんでもない。それで俺に用か?」
胸に手を当てて呼吸を整えると、メイドさんは本題を切り出した。
「私の仕えております、リセリア王女殿下が、スティーグ様にお会いしたいと申しております。ご一緒くださいませ」
「今度はお姫様かよ」
スティーグはもううんざりだった。
一刻も早くこの王宮から出たいと切に願った。
「悪いが、また今度にしてくれ。じゃあな」
恐らく『また今度』は二度とないだろうと心の中で呟きながら、スティーグは半回転し、さっさと立ち去ろうとしたのだが。
「いけません。スティーグ様を連れてこないと、私が姫様に叱られてしまいます」
「おいおい」
逃がすものかとメイドさんは、スティーグの腕にしがみついた。
その時、スティーグは重大なあることに気が付いた。
ぎゅっとスティーグの腕にしがみついたことで、メイドさんの程よい胸がスティーグの腕に当たっているのである。
このラッキーを少しでも長く味わうためにスティーグはある一計を講じた。
「条件がある」
「私にできることでしたらなんなりと」
「このままの状態で部屋まで連れて行ってくれ。ああ、急がなくていいから」
「は? はぁ。このまま、ですか?」
「よろしく」
メイドさんは首を傾げたが、そんなことでいいのならお安い御用と、二つ返事で引き受けた。
そんなわけでスティーグはしばし、柔らかな感触を堪能したのだった。
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「姫様、スティーグ様をお連れいたしました」
「ありがとうメイ。って、あなた、何をしているの?」
リセリアの私室にスティーグを招き入れたメイドさんを見て、リセリアは思わず突っ込んだ。
それは無理からぬことであった。
なぜか必死に男の腕にしがみついている自分のメイドを見れば、誰だって不思議に思うことだろう。
「これはですね。あは・・・もうよろしいですか?」
「うむ、ありがとう」
スティーグに放してもいい許可をもらったメイドさんは、そそくさとその手を離した。
離れていったその感触を惜しんでいたスティーグだったが、気を取り直し、ここでようやくリセリアを見た。
まず目につくのは、肘の辺りまで伸びているプラチナブロンドの長髪。碧眼の瞳と長いまつ毛。瑞々しく張りのある、艶やかで陶器の様な肌。整った顔立ちとスマートな体に見事にマッチした白いドレスを身に纏った女性が立っていた。
それは正に『ザ・プリンセス』と呼んでも過言ではない超がつくほどの美少女であった。




