(自称)英雄の村
--(自称)英雄の村
夜遅くになってしまっているが、なんとか村の入り口まで到着した。
村の入り口には篝火が灯されあたりを明るくしている。
そこには門番が二人、斧槍を装備した上で近づく者に警戒を示している。
「そこで止まれ!」
入り口に向かって歩いていると門番のうち一人から声をかけられる。
「あー、怪しいものじゃない。宿があれば一泊お願いしたいのだがいかがだろうか」
両手を上げ敵意がないことを示しながら止まれといわれた場所で立ち止まり門番へ向かって返事をする。
すると門番のうち一人が斧槍を肩に担ぎこちらへ近寄ってくる。
よく考えればこっちの世界での久しぶりの会話かー。緊張するなー。とか棒読みで思いながら近寄ってくるのを待っている。
「こんな夜更けに来るとは非常識も甚だしいな」
「すまないね。さっきやっと森を抜けてきたところなんだよ。勘弁してくれ」
森を抜けてきたという言葉を聞いた兵士がまじかこいつみたいな顔をしているが嘘は言っていない。
「なにか身分証明書になるものはもっているか?」
「いや、あいにくどこかで落としたみたいで持っていない。近々ギルドで再発行する予定だ」
持っていない、というところで門番の目が警戒を示したがギルドといった言葉を聞いて納得したような顔になる。
「なんだ、冒険者なのか?」
「あぁ、ここ5年ほど活動していなかったんだがな。そろそろ蓄えもなくなってきたし稼がないとな」
「5年も稼がなくて生活できるなんてまぁ随分稼いでたんだな」
働いていましたけどね!ブラック企業で!
「まぁそんなわけで王都に向かう途中なんだがここを見つけてね。せっかくだしちゃんと宿で休みたいと思った次第だ」
「なるほどな。だが身分証明書を持っていない人を村に入れる事は出来ないんだ。もっと早い時間だったら村長のところに連れて行って判断を仰ぐところなんだがな」
ですよねー。
んじゃ近くで野宿でもしますかね。
「じゃあ近くで野営させてもらうわ。それくらいは許可してくれるかい?」
「あぁ、俺らの目の届く範囲にでもいてくれれば朝、村長が起きた頃合に聞いてくるぞ。その際一緒に来てもらうことになるがいいか?」
「あぁ、かまわない。」
「俺はリックという。明日の朝にまた声をかけてくれ」
「ありがとう。俺は一二三だ。あの辺にいるから適当に声かけてくれ」
門番とのやりとりが終わったところで少し離れた所にある木の麓に腰掛け、荷物を抱えた状態を取る。
正直まだ興奮が冷めていないので眠りにつけないとは思うので今のうちにやれることをやっておこうと思う。
「解析」
鑑定系の魔法を自分にかけ、今の自分のステータスを表示させる。
目の前に透明な板に書かれた俺のステータスが表示される。
ame:ヒフミ・サクラザカ
Age:30
Sex:男
Job:なし
Skill:刀術、二刀流、剣術、体術、回避、解体、魔法、魔術
Title:元冒険者
Record:なし
ふむ。
スキルがいろいろなくなっているがしょうがないか。これだけあれば生活はしていけるだろ。
以前来た時に使っていた魔法とかも使えるみたいだし本当に前回の『続き』だな。
正直助かる。
まずは王都に向かう最中にある街で冒険者証の再発行して…なにか適当な武器と防具を見繕って…
その前にここの街でしとめた獲物売って金つくらないとなぁ…
…………
………
……
…
「おーい、ヒフミ。おきろー」
はい、おきますよー
「おーい」
おきてるってばー
「だめだなこりゃ。もうちっとほっとくか」
なにをほっとくのさー
「長旅の疲れでも出たのかねぇ。ま、ゆっくり休めや」
そんな言うほど疲れてないんですけどねー
って、ん?
あぁ、寝てたのか俺。
「んー~~~」
目はまだ開けていないが腕を上に伸ばし座ったままだけど背伸び。
背中いてぇ・・・
徐々に身体も起きてきたので立ち上がり軽く柔軟をすると頭もしっかりしてきた。
えーっと、たしか昨日こっちに来て、森を抜けて、んで宿を借りようと思ってここの村に来たんだよな。
で、村に入れなかったから野営して、今は朝、と。
あれ、当初の目的と違う。
ま、食料の買出しとかできればいっか。ついでに獲物売っちゃおう。
荷物を背負いなおして門番の立っているところに近づいていく。
昨日話しかけてきたリックという門番はまだいたが、もう一人のほうは交代したのか変わっていた。
「おはようリック」
「あぁ、おはよう。声かけても起きないからよほど疲れてたんだな。もう大丈夫なのか?」
「あぁ、うん。もう大丈夫だ。すまなかったな」
「問題ない。さて宿を、といったことだったがごらんの通りもう夜は明けてしまった。まだ村に立ち寄る用事があるなら村長の所に案内するがどうする?」
「物資の調達やら売却やらで他にも用事はあるから入れてくれると助かる。」
「そうか、わかった。ちょっと待っててくれ」
そういうとリックはもう一人の門番に声をかけ、一度村の中に入っていく。
しばらくしてたぶん交代要員なのだろう軽鎧を着けた若者と歩いてきた。
「んじゃ後はよろしくな。ヒフミ、行くぞ」
「あいよー」
門番に軽く頭を下げ挨拶をしながらリックに連れられて門をくぐる。
門をくぐるとなんというか、牧歌的な村。というのが第一印象だ。
メインストリート…とかそういうものではなく、柵に囲われた広い範囲の中に家が数件、散らばったような感じに立っている。
門を超えてすぐに雑貨屋らしきものと食堂…兼宿屋かな?
見た感じ武器屋とかそういうのはなさそうだ。
そこからは奥に向かうにつれて畑が広がる。
奥側の柵からちょっと手前くらいにある小さめの家に向かうみたいで畑の間の道をリックと二人で歩いていく。
畑では女性衆が畑の雑草取りや野菜の収穫をするため腰を曲げている。
「女のあぁいう尻を突き出した格好ってなんかそそられるよな」
尻派か貴様。
「まぁわからなくもない」
俺はおっぱい派だけど同意はする。
お互い目だけで同士よ。といった会話をしつつ横目で尻を眺めながら先へ進む。
そして到着した小さい家の扉をリックがたたき、「村長ー、開けますぜー」といい扉を開ける。
せめて返事を聞いてから開けようや、リックさん。
リックに扉をくぐるように促され、部屋に入る。
入ってすぐが応接間の様になっていて膝ほどのテーブルを挟んでこちら側と向こう側とでソファーが用意されている。
部屋の中は質素といった感じで華美な感じはしない。
「おまたせしました」
奥の扉から出てきたのは村長…かと思いきや少年だった。
ふむ?
「村長、こちらが入村を希望しているヒフミという青年です」
え、村長なの?
見た目は15歳くらいの少年で短髪青髪。ひょろっとした体系でいかにも文系って感じの雰囲気。
「ヒフミと申します。一晩の宿を求めて訪れたのですが、夜中の入村は出来ないとのことでしたので野営させていただきました。この後、村にて物資の調達をさせていただければと思い挨拶に参りました」
年下とはいえ一応丁寧に挨拶。
リックが挨拶を聞いてびっくりした顔をしているがどうした同士よ。
俺だって挨拶くらいまともに出来るのよ?
「ご丁寧にありがとうございます。当『英雄の村』、エルマ村の村長、カイリと申します。どうぞ席にお座りください」
エルマ村…記憶にないな。それにしても英雄の村ねぇ…
「英雄の村ですか。英雄を輩出した名高い村ということですかね。無知なため私の知識の中には存じないのですが…」
ソファーに腰掛け思案しているような顔をすると、その言葉を待ってましたといわんばかりの笑顔でカイリ村長が身を乗り出してくる。
「そうです!エルマ村が誇るA級冒険者のラミレスというのですが、つい先日ドラゴン討伐に成功しまして!これはもうこのまま英雄と呼ばれるまで行ってもらうしかない!と!」
…えーっと。
「ラミレスがそのうちここに戻ってくるのか王都でお姫様とかをいただいて王席に着くのかはわかりませんがこのまま実績を積んでいただければ英雄と呼ばれる日も近いかと!」
うんうん、そうだねー。
「そんな英雄を生んだ村として当エルマ村は『英雄の村』として広報してもよいんじゃないでしょうか!」
うん、まだ『自称』なわけね。
しかもこれ、関わっちゃあかんやつや…話が長いパターンだ…
リックのほうを見ても首を振って生暖かい目で見られる。
あかんかー…そっかー…
カイリ村長は途切れる間もなくそのラミレスっていう冒険者のことについて熱く語ってるけど正直どうでもいい。
早く調達するもの調達してとっととこの村から逃げないとな。
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村長から開放されたのは日が真上に上がった頃。
実に4時間近くしゃべり続けていたんだな、あの村長。
あ、ちなみに入村の許可はもらえました。
「なんか…すまんかった。」
「うん、なんというかあれでよかったのか?」
「あぁ、あの村長鑑定もちなんだよ。で、賞罰の所だけ見て入村の許可を出すわけだ。」
「へぇ。んじゃ俺も見られてたわけだな」
「だろうな。入村許可が出たってことは問題ないってことだろう。遅ればせながらようこそエルマ村へ」
いまさらだな。と笑いあう。
さて、何が調達できるかなー。
これから更新頻度が落ちるかもしれません。
出来るだけ定期的にアップしていこうとは思っていますので今後ともよろしくお願いいたします。




