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チート能力を貰って異世界転生したはずが、ステータス画面の「正気度」がゼロだった  作者: 臥亜


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8/10

第2部・第3話 魔王様からの『ご褒美』と、狂い始める味覚

第3話をお読みいただきありがとうございます!

生き残るために、プライドを捨てて必死に床を磨き上げたエリーゼ皇女。

そんな彼女の頑張りを認めたカナタは、優しい元日本人として「あるご褒美」をあげることに。しかし、SAN値ゼロの男の優しさは、正常な人間にとってただの拷問でしかありませんでした。

「はぁ、はぁ、はぁ……っ! か、カナタ様、アリア様! 部屋の隅々まで、磨き上げました……っ!」

数時間後。エリーゼ皇女は、汗と(恐怖の)涙に濡れながら、床にカサリと膝をついた。

さすがは人類最高峰の美女というべきか、その雑巾がけは見事なものだった。脈動する生物の内臓にしか見えなかった床が、今や鏡のようにピカピカに輝いている。……まぁ、俺の目には「粘液でツヤツヤになった胃壁」にしか見えないのだが。

ぐぅぅぅぅ~~~。

静まり返った部屋に、情けない音が響いた。エリーゼのお腹の虫だ。

帝国のお姫様として育ち、生贄として拉致され、そのまま高速雑巾がけ労働をさせられたのだ。無理もない、お腹も空くだろう。

(うわ、めっちゃお腹鳴ってるじゃん。元日本人として、女の子を飢えさせたまま労働させるのは気が引けるな……。よし、ここは主導権を握る主人として、頑張ったご褒美をあげよう!)

俺はベッドから身を起こし、パチリと指を鳴らした。

すると、部屋の肉壁がモゾモゾと蠢き、銀色のお盆に載った「出来立ての料理」がニュッと生えてくる。王宮の厨房から取り寄せた、我が国が誇る最高級の宮廷料理だ。

「エリーゼ。よくやった、ご褒美だ。これを食べるといい」

俺はできるだけ優しい笑顔(※魔王っぽい引きつり顔)で、その皿を彼女の前に置いた。

「ひっ……! ぁ、あ……」

エリーゼの顔が、一瞬で紙のように真っ白になった。

ガタガタと歯を鳴らし、皿の上の『ご馳走』を凝視したまま、完全に硬直している。

そりゃあ、そうだ。

俺の『万物鑑定』によれば、その料理の詳細はこうだった。

====================

【名称】 王国秘伝・幻鳥のココット(※主人公の目には「煮え立つ黒ブイヨンの中に、まだバタバタと蠢く無数の触手と目玉のスープ」に見えています)

【味】 至高。口に入れた瞬間に濃厚な地鶏の旨味とトリュフの香りが広がる絶品シチュー。

【補足】 栄養満点。正常な人間が食べても健康になります。

(味はトリュフ香る絶品シチュー! 栄養も満点! だけど、見た目は完全に魔女が呪いで作った劇物なんだよね……)

俺にとっては日常茶飯事のメニューだが、正常なSAN値(100)を持つエリーゼにとっては違った。

彼女の目に映るそれは、黒い泥の中でドロドロに溶けた悍ましい怪物の死骸であり、時折プツプツと泡を噴いては、怨念のような紫色の煙を上げている『真の地獄の料理』だった。

(ま、魔王が……私に、バケモノの肉を喰えと命じている……っ!)

エリーゼの脳内で、最悪のシミュレーションが暴走を始める。

(これは、私を肉体だけでなく、精神まで完全にバケモノの仲間入りにさせるための儀式なんだわ……! 拒否すれば、今度こそあの横にいる肉塊アリアに貪り食われる……っ!)

「……あら、泥虫の分際で、カナタ様からの直々のご褒美を拒むのですか?」

横から、アリアさんの冷たい(※脳内美少女)声が響く。

アリアさんの縦に裂けた口がギチギチと音を立て、黄色い酸の混じった涎が床にポタリと落ちた。ピカピカに磨かれた床が、一瞬でジュッと溶ける。

「い、いえっ! 滅相もございません! ありがたく、いただきます……っ!」

エリーゼはボロボロと大粒の涙を流しながら、震える手でスプーン(※魔物の骨製)を握り締めた。

そして、死を覚悟した特攻兵のような悲壮な顔で、ドロドロとした『怪物のシチュー』をたっぷりと掬い、口の中へと決死の覚悟で放り込んだのだ。

(ああ、お父様、お母様、人類の皆様、さようなら――)

ゴクリ、と彼女の喉が鳴る。

次の瞬間、エリーゼの動きがピタリと止まった。

その美しい碧眼が、これ以上ないほど大きく見開かれる。

「――っ!?!?!?」

美味い。

信じられないことに、それは彼女がこれまでの人生で食べてきた、帝国のどんな一流シェフの料理よりも、圧倒的に美味しかったのだ。口いっぱいに広がる極上の地鶏のコク、鼻に抜ける芳醇なトリュフの香り。あまりの美味さに、全身の細胞が歓喜に震え、疲れた体にエネルギーが満ちていく。

「ど、どうして……? 毒じゃない……? むしろ、信じられないほど、美味しい……?」

呆然と呟くエリーゼ。

そんな彼女を見て、俺は「だろ?」と自慢気に(※邪悪な魔王スマイルで)頷いた。

「我が国の料理は最高だろう? 遠慮せず、全部食べるといい」

俺のその言葉を聞いた瞬間、エリーゼはハッと我に返り、自身の頭を抱えて激しくガタガタと震え出した。

(ま、間違いないわ……! これこそが、この魔王の本当の『呪い』なんだわ……っ!)

エリーゼの脳内は、完全に斜め上の絶望へと狂い始めていた。

(見た目はあんなに悍ましい地獄の肉塊なのに、私の脳はそれを『美味』だと認識してしまっている……。もう始まっているんだわ、私の精神の汚染が! 私の味覚が、私の正気が、この魔王の魔力によって、内側からバケモノへと作り変えられているのよぉおおおっ!!)

「うっ、うう……、美味しい、美味しいです、魔王様……っ!」

エリーゼは、自分の正気がじわじわと破壊されていく(と勘違いしている)恐怖にワンワンと泣き叫びながら、もの凄い勢いでシチューを貪り食い始めた。涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、恐怖の美味に溺れている。

「ウフフ、お行儀の悪い泥虫ですね。でも、カナタ様の奴隷なら、そのくらい必死に餌を貪るのがお似合いですわ」

横では、アリアさんが俺の腕に触手をスルスルと絡ませながら、満足そうにブクブクと泡を吹いている。

(うんうん、喜んで完食してくれてるな。やっぱり美味しいものを食べると、みんな笑顔(※号泣パニック顔)になるよね!)

俺は、自分のSAN値がゼロであるという事実を完全に棚に上げ、お姫様が順調に引きこもり部屋に馴染んできていることに、深い満足感を覚えるのだった。

第3話をお読みいただきありがとうございました!

「美味すぎる恐怖」によって、順調に精神を追い詰められていくエリーゼ皇女。

完全に餌付け(?)が完了したところで、次回、王宮の地下室にさらなる来客が。

なんと、ハエの国王様が「勇者カナタの様子見」と「エリーゼ皇女の検分」にやってきます。元皇女vsハエの王の、最悪の対面が幕を開けます……!

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