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チート能力を貰って異世界転生したはずが、ステータス画面の「正気度」がゼロだった  作者: 臥亜


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3/10

第3話 裏切りの代償と、愛の檻

第3話をお読みいただきありがとうございます。

ルートを少し変更し、ここから物語は「別の地獄」へと突き進みます。

人間の襲撃に乗じて、このバケモノの国から脱出しようと試みるカナタですが、事態は思わぬ方向へと転がっていきます……。

「――敵襲! 敵襲ォオオオ!」

深夜、王宮に鳴り響いた悲鳴のような鐘の音で、俺は跳び起きた。

貸し出された豪華な客室(※俺の目には巨大な生物の胃袋の中に見える)の扉が、凄まじい勢いで開け放たれる。

「カナタ様! ご無事ですか!?」

飛び込んできたのは聖女アリアだ。

純白の法衣から無数の触手をウネウネと激しく蠢かせ、縦に裂けた口から「ギチギチギチ!」と鋭い牙を鳴らしている。脳内に響く声は可憐な美少女だが、ビジュアルは完全にホラー映画の怪物だ。

「ア、アリアさん!? 何が起きたんですか!?」

「魔王軍の残党が、この王都へ攻め込んできたのです! ああ、恐ろしい……。あの残虐非道な悪魔どもが、また我が国を脅かすなんて……!」

アリアは触手で顔を覆い、本当に悲しそうに咽び泣いた。

(魔王軍……! ついに来たか! 待てよ、襲ってきたのが『本物の魔王』なら、この国を滅ぼしてくれるんじゃないか!?)

淡い期待を抱き、俺はアリアと共に城外へと向かった。

王宮のバルコニーから戦場を見下ろした瞬間、俺は言葉を失った。

街のあちこちから火の手が上がっている。

だが、暴れている連中の姿を見て、俺の心臓は激しく高鳴った。

「死ね! 汚らわしい異形どもめ! 神の光の前にひれ伏せ!」

銀色に輝く美しい甲冑を身に纏い、聖なる光を放つ剣を掲げた騎士たちが、一糸乱れぬ隊列で街を進軍している。その後方には、純白のローブを着て祈りを捧げる神官たちの姿もあった。

(え……? なんだあいつら。めちゃくちゃ綺麗な、普通の『人間』じゃん……!)

慌てて、光の剣を振るう騎士に向かって『万物鑑定』を放った。

====================

【種族】 人間(神聖魔王軍・聖騎士)

【目的】 世界を脅かす邪悪な化け物(※この国)を滅ぼし、人類の平穏を取り戻すこと。

【補足】 非常に正義感が強く、家族思いな好青年。

(やっぱりそうだ! 狂っているのは、SAN値がゼロになった俺の脳の方だったんだ!)

この国の住人は本物のバケモノで、襲ってきた人間たちこそが本物の正義。

ならば、話は簡単だ。俺はあっち側(人間)に助けてもらえばいい。だって俺は、元々人間なんだから!

「カナタ様、危ないわ!」

アリアの叫びを無視し、俺はバルコニーから飛び降りた。女神に貰ったチート能力のおかげで、このくらいの高さは何ともない。

「おい、人間! 待ってくれ! 俺は味方だ!」

俺は必死に手を振りながら、戦場を駆けて人間の聖騎士長へと近づいた。

騎士長は俺の姿に気づき、ハッと目を見開いた。

「な……!? 漆黒の魔導鎧を纏い、凄まじい魔力を放つあの男は……まさか、化け物どもの黒幕、魔王カナタか!?」

「違う! 俺は魔王じゃない! 転生者だ! 日本人だ! 化け物に騙されてここにいただけなんだ、助けてくれ!」

必死に訴えかける。だが、俺の『無限の魔力』のせいで、俺の周囲の空気はドス黒く歪み、禍々しいオーラを放っていた。正常なSAN値を持つ彼らからすれば、俺の姿は「命乞いをして油断させようとする最凶の魔王」にしか見えなかったのだ。

「騙されるな! あれは精神を惑わす高位の怪異だ! 神聖魔法――『終焉の聖雷』!!」

「え――」

直後、騎士長が放った極大の雷撃が、俺の脳天に直撃した。

……しかし、チート能力による絶対防御のせいで、パチパチと静電気が走った程度で、俺は無傷だった。

「な、何だと……!? 我が全力の神聖魔法を、無傷で耐えただと……!? なんという化け物だ……!」

騎士長が絶望に顔を歪め、ガチガチと歯を鳴らして後退りする。

違うんだ。本当にただ無傷なだけなんだ。攻撃する意図なんてないんだ。

「待ってくれ、話を――」

俺が手を伸ばした、その時だった。

『――我が最愛のカナタ様に、何をしてくれていますの?』

地鳴りのような、だが脳内には「ドスの利いた美少女の声」が響き渡った。

王宮の壁を突き破り、巨大な肉塊――アリアが、凄まじいスピードで飛来した。

彼女の無数の触手が、一瞬にして人間の騎士長を絡め取る。

「ぎゃああああ!? 化け、物……っ!」

「汚い。汚らわしい。下等生物の分際で、カナタ様に触れようとするなんて」

ベキベキベキッ、と嫌な音がして、騎士長は一瞬で肉の塊へと変えられた。

アリアの縦に裂けた口が、勝利を誇るように「ギチギチギチ!」と激しく牙を鳴らす。

「カナタ様! ご無事ですか!? ああ、恐ろしかった……! あの残虐な人間どもに、危うく呪い殺されるところでしたわ!」

アリアの触手が、俺の体をフワリと抱きしめる。

冷たくて、ヌルヌルとした感触。好感度MAXの、純粋な愛の抱擁。

「ア、アリアさん、俺は……」

「分かりましたわ、カナタ様。人間どもは本当に狡猾で危険です。貴方のような純粋なお方は、すぐに騙されて傷つけられてしまう……」

アリアの触手が、さっきよりもギチギチと、強く俺の体を締め付け始めた。

身動きが取れない。チート能力で引き剥がそうと思えばできるが、それをすれば、目の前で涙を流して(※黄色い粘液を撒き散らして)俺を心配している彼女を傷つけることになる。

「もう、二度と外に出してはなりませんわね」

脳内に響くアリアの声は、うっとりとするほど甘く、そして底知れない狂気に満ちていた。

「王宮の地下に、最高に安全で、素敵な『お部屋』を用意させますわ。そこにいれば、もうあんな危ない人間どもに怯える必要はありません。私が、一生貴方を守って差し上げます」

「え、あ、アリアさん……?」

遠くで、ハエの国王が「素晴らしい名案だ!」と言わんばかりにブーンと羽を鳴らすのが聞こえた。

俺は人間側に拒絶され、そして、化け物たちの『深すぎる愛』によって、王宮の奥深くへと拉致されていくのだった。

第3話をお読みいただきありがとうございました!

人間に助けを求める作戦は大失敗。それどころか、アリアのヤンデレ・過保護スイッチを完全に押してしまいました。

次回、カナタの「過保護すぎてもはやホラーな監禁ライフ」が始まります。

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