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四十四話、再会


 カーテンのような扉から顔だけ出して外の様子をうかがうと、今まで走り抜けてきた光の道が無くなって夜風がヒューヒュー鳴いているだけだった。


「うわぁ! 雲が下に見えるよ!」

「本当ね。小さく見える、あの島がフィーネかしら?」

「間違いないだろう。この辺りはフィーネしかないはずだからな」


 と、その時。


【オオオォォォーーーン!】

【グオォォォーン!】


 奇妙な鳴き声が聞こえたかと思ったら、翼の生えた魔物がボクたちの方に向かって、ものすごい勢いで飛んできた。


「避けろ!」


 ファディスが、いち早く反応してボクとサアヤに覆いかぶさり魔物からかばう。


「ありがとファディス」

「ファディスさん、ありがとう。怪我はないかしら?」

「大丈夫だ。怪我はない。だがここがルフトラーガに続くイフェルのダンジョンだとしたら様子がおかしい」


 魔物はボクたちに攻撃するでもなく見向きもせず、通りすぎて扉の外へいってしまった。


「たしかに変よね」

「うん。サラは妖精とエルフが産まれる聖なるダンジョンだから危険はないって言ってたからね」

「と言うか、今のが王都周辺に現れてる魔物なんじゃないか?」


 ファディスの言葉に、サアヤとボクは顔を見合わせてから「絶対そうだわ」「間違いないよ」と勢いよく頷いてしまう。


「まぁ、とりあえず進んでみるしかないな」


 腰のレイピアに手をかけ周囲を警戒しながらファディスは歩きはじめた。ファディスの後ろにはサアヤ、最後にボクが一列に並んだ。これならどこから魔物が来ても大丈夫だからね。


「空飛ぶ魔物は別として、イフェルにはたしかに魔物はいないようだが……」

「そうね。でもサラさんの言っていたお花が見当たらないわ」

「みんなぐったりしてるよ」


 イフェルのダンジョンの中は、過ごしやすい温度で保たれ壁も床も緑の蔦だらけだ。ボクたちは、なるべく蔦を踏まないように歩いてたんだけど、なんだか元気がない。蔦の先が、ところどころ枯れてしまってるのだ。


「壁が湿ってるから水が足りない感じでもないみたいだわ」


 サアヤは蔦を傷つけないよう、ソッと壁や床に手で触れる。


「サラが急いで帰ったのは、ルフトラーガに異変が起きてたからなのかな?」

「間違いないだろう。王都の異変にも気づいてたようだからな」


 たまにある水たまりを避けながらサアヤが「やっぱり水以外が原因よね」とつぶやいた、その時。


『やっほー! サアヤちゃん、ニャーちゃん、ファディスちゃん、久しぶり! 来てくれたんだにゃ!』


 ヒューーー!


 ビタン!!


「モガッ!?」


 聞き覚えのある声と共に、ボクの顔面に生温かい小さな生き物がぶつかってきた。思わず全身の毛が逆立って尻尾がボワッとなる。


『ぶつかっちゃったにゃん。ごめんごめんにゃ!』

「ビックリしたぁ! サラ、久しぶり」

「サラさんこんにちは」

「元気そうだな」

『サラちゃんはいつでも元気いっぱいにゃ。でもディーネちゃんが病気なのにゃー』


 ファディスの頭にちょこんと座ると、ワンピースの裾を握りしめサラは瞳を潤ませる。


「ディーネさんは泉の管理者さんだったわよね?」

『そうにゃん。けどディーネちゃん少し前から調子崩してるにゃ。サラちゃんがルフトラーガに戻った時には寝たきりになってたんだにゃ……』

「私に治せないかしら?」

『ディーネちゃんは湖そのものだから分からないにゃ……』

「やってみるしかないだろう」

「うん! うん! サアヤなら治せると思うよ」


 考えるふうにサラは頭を抱え『うーん。うーん……』と唸っていたけど、顔をあげた。


『分かったにゃ。試してみるにゃん』

「早速、行きましょう」

『待つにゃ』


 歩きだそうとしたサアヤを止めると、サラはファディスの頭から飛びたち指笛を吹きはじめた。


『♪♪♪〜♪〜♪〜♪♪〜♪〜……』


 透きとおる美しい音色はダンジョン全体に響き染み渡っていく。


『か¥8765黒ds3;78¥?,;ojvftキな58&!?』


 ふわっと涼しい風が吹いた瞬間、小さな羽の生えたサラと同じ精霊が現れた。けど言葉は不明瞭だし身体は半透明だ。


『シルフィちゃん来てくれてありがとにゃ』

『sfで3567?弓か』

『うん! ディーネちゃんのところまで運んで欲しいんだにゃん』

『o家kd5』

『よろしくにゃ』


 精霊同士の話し合いを終えたらしいサラは、再びファディスの頭の上に座って、ボクたちに向かってニコッと笑む。


『ディーネちゃんのところまで飛ぶから、サアヤちゃんとニャーちゃんはファディスちゃんにしっかりつかまって欲しいにゃん』

「分かったわ」

「うん」


 左手にボク、右手にサアヤがつかまる。


『じゃ! いっくにゃーん!』

『ylさ42¥』


 サラの掛け声と共に風が巻き起こり身体が、ふわっと浮き上がる。そしてシルフィが片手を斜めに振り下ろした瞬間、ゴゥと大きな風音が鳴り響き、一気にダンジョンを駆け抜けていく。まるで爺ちゃんのスキル超加速みたいだ。


「ふふふ! とっても早いわね」


 なんだかサアヤは楽しそうだ。そういえばサアヤはボクの背中に乗っている時も喜んでたから、スピードが速いのが好きなのかもね。


「あぁ。だが風に押されることもないし、目を開けていられるのも不思議だ」

『シルフィちゃんが空気の膜を張ってるから平気なのにゃん! 膜が無いと人間は圧でペシャンコにゃー』

「ありがとうシルフィさん」

「ありがとうシルフィ」


 ボクは魔物でスケルトンだから平気だけど、サアヤとファディスは人間だ。ペシャンコになったら凄く困る。爺ちゃんが人間は凄く脆いって言ってたからね。


『uな8!』

『気にしなくていいって言ってるにゃん。もうすぐ到着にゃ!』


 少しずつスピードが落ちていき、ふわりとダンジョンの床に降りたった。床全体が苔に覆われていてフカフカ柔らかいけど、蔦は相変わらず縦横無尽に這ってるし先っちょが枯れてる。


「出口かしら?」


 サアヤの言葉に頷き『あの光の先がルフトラーガの中心、世界樹の湖だにゃ』とサラが指差す。



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