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73話「無人島生活⑧-遭難者達」

「という訳だ・・・私にもサッパリ解からない事だらけだ」


前田機長から旅客機の墜落した原因が分からずこの島に漂流したそうだ。


不思議なことに乗客には日本人以外も居たはずだが生き残ってすらいないそうだ。


たしかにここに居る人は全て日本人らしい。


若者~中年の年齢層が揃っている。


「出来ればこの島について教えてくれないか?」

「どんな事が知りたい?」

「なんでもいい・・・特に猛獣の情報が欲しい」

「ボアを含めるならば俺の知っている種類は5種類、ファングボア、サーベルパンサー、クロコダイン、ディラノサウル、ラプトルだ」

「クロコダイン?」

「水辺に生息する体長3m超えのワニだ。この湖には住んでいなくて良かったな」

「あぁ。ディラノサウルというのは?」

「俺の左腕を持っていった奴だ。体長は10m程、頭は爬虫類に分類される鋭い牙を持ち、手は短く、太い脚を持ち二足歩行の化物だ」

「絵にしてくれないか?」


ガリガリガリ


「まさか・・・コレが居たのか?」

『前田機長・・・』


今まで黙って聞いていた女性が呟く・・・CAの女性だ。


「これが本当ならとても危険な島じゃないか・・・君、えっと」

「アオイだ、娘のリン」

「アオイ君はコレを何処で見たんだね?」

「あの山を越えて2週間~3週間ほど森を進んだ所を縄張りにしている。俺たちの住んでいる場所は更にその奥だ・・・」

「あの山よりこちら側には何がいたのだね?」

「ファングボアしか見ていない。脅威度を下げれば大蛇なんかも見かけたが」

「我々にとって大蛇ですら脅威なのだよ・・・せめて武器なんかが作れればな」


・・・


見た所、木の棒程度しか装備していないレベルの集団だ。


「どうやって食料とか得ているんだ?」

「近くにバナナが実っている。たまに魚なんかで凌いでる」

「バナナにも気をつけなければならない奴がいる。食虫植物の様にバナナを餌にして待ち伏せする植物だ」

「なに?」

「その場所に案内して貰えないか?」

「あぁ」


前田機長に案内してもらいバナナを実らしている木の群生地を見て回る。


「コイツだ」


コンッ


小石を幹に当てると幹が縦に開き、触手をウネウネと飛び出してくる。


「こんな奴が潜んでいたのか・・・」


結構奥のほうで待ち伏せしていた様で犠牲者は居なかったらしい。


「見分け方は簡単だな、バナナが普通よりも大きく、他と比べて幹が高い・・・コイツが成長途中の場合は分からないが・・・幹に縦線が入っていたら要警戒するべきだ」

「助かった・・・まさかこんな身近に危険な植物が生えていたなんて」

「だが、倒さないほうがいい。こいつ自身の作り出すバナナは他と比べて栄養価が高く感じる、なにしろ甘い」

「そうなのか・・・しかし私では取れる位置に無いな」


5m上、幹によじ登れないならば素手で取るのは難しいだろ。


グッ


ダンッ


俺は垂直飛び5m越えをして簡単に一本のバナナをもぎ取る。


ギィイイイイ


やはり痛覚があるのだろうか食虫植物は悲鳴を上げる。


「食べてみろ」

「・・・あ、あぁ」


前田機長は腕ほどあるバナナを食べ始める。


「なんて、甘さだ!?君も食べてみろ」

『いただきます』


女性CAも半分のバナナを食べて笑顔になる。


「何か道具でも作ればアレは何時でも取れる」

「検討しておこう」


バナナ園を離れて湖へと戻ってくると喧騒が上がっていた。


『もっと分けてくれよ』

「いや!コレは私たちの取り分」


若い男が数人でリンを囲んでいた。


サーベルパンサーが威嚇してリンを守っている、リンも小型ナイフで臨戦態勢だ。


「君達!」


ザッザッ


前田機長が話しかける前に俺が歩き、男達に近づく。


『あ?』


バキィッ


一番近い男に右拳を叩き込み地面に叩きつける。


『あがっ!?』

『なにをする!!』

『アンタ、なんて事を』


他の男達が殴られた男に駆け寄り、非難を浴びせてくる。


「俺の娘に手を出そうとは見ていられないな。殺されたいか?」

『『『ひっ!』』』

「大方、肉が欲しかったのだろうがアレは俺が狩り、娘が解体した物だ。分けて貰った事に味を占めて無理やり奪おうとする輩に慈悲を与えるとでも思ったか?」

「君達、謝りなさい!この状況で我々は苦しいのは皆一緒だが越えてはならない一線というのもあるのだぞ!!」

「肉が欲しければ自分で狩って来い」


近くに置いていたボーンボアランスを男達に投げる。


ドゴォッ


ランスが地面に落ちると少し凹む。


『あ、あぁ。やってやるよ!武器さえ手に入れば俺だって』

『なんだ、この槍』

『くそ、重いぞ』


2人がかりでボーンボアランスを持とうとするが少し持ち上げるだけでも一苦労する。


推定でも200kgはあるボーンボアランスだ、人が扱うには難しいだろう。


「その程度も持てない軟弱者がこの島で生きていけると思ったか?」

『なんなんだよ、アンタは』

『突然現れたと思ったらよ』

『俺たちの苦労もなにも知らないくせに』


男達は溜まっていた負の感情を漏らす。


「お前達はたかだか1ヶ月の漂流なんだろ?」

『たかだか!1ヶ月もこんな島に居るんだぞ!!』

『いろいろ我慢してんのにその言い草はねぇだろ!!』

『お前に何がわかる』

「10年だ」

『『『え?』』』

「俺がこの島に漂流して10年待っている。たかが1ヶ月でゴチャゴチャ言うな」

『嘘だろ!?10年も待っているのに助けが来ないのかよ!!』

『そんな』

『そんな事・・・』


3人の男を含めて遠くから眺めていた人たちにも伝播し雰囲気が暗くなる。


「アオイ君、出来れば後で話しておこうと思っていたのだが・・・」

「希望を持たせるのは素晴らしい事だが長引かせてどうする?今を生きる術を考える時期だろう。コチラ側の気候がどうだか分からないが、あと数ヶ月もすれば冬に突入する」

「冬が存在するのかね!?」

「あの極寒の中、この程度の装備で超えられるとは考えにくい」

「・・・確かに我々は助けを待つだけの時間は終わったのかもしれない」

「漂流したのはここに居るだけなのか?」

「いや、2つの海岸線にも人を送っている。通りかかった船に向けて狼煙を上げる為に」

「何処だ?」

「アッチとコッチだ」


前田機長は南と西を指差す。


「あの山からこちら側を見たが飛行機の残骸があったな?」

「南の海岸線に墜落して少数だが我々は助かったのだよ」

「そうか」

「見に行くのかね?」

「あぁ」

「できれば西の方を先に見に行ってきてくれないかね?」

「何故だ?」

「アチラ側は我々が追放した人々を送り出したのだ」

「追放とは物騒だな」

「秩序を乱した人間が複数居てね」

「そんな奴等の心配をするのか?」

「コチラにも事情があるんだ・・・無事かどうかだけでも良い」

「分かった。リン、行くぞ」

「うん。レーズン」


タッ


リンがレーズンの背に乗る。


グッ


地面に落ちていたボーンボアランスを拾い上げて肩に担ぐ。


・・・


・・・・・・


西の海岸線に向けて森を抜ける。


ザザァンザザァン


ミィイ


レーズンがチラチラと海をみて落ち着かない・・・猫科は大量の水を嫌っているというがソレか?


ハハハハハハハッ


遠くのほうから笑い声が聞こえてくる。


50m付近まで近づくと向こう側もコチラの存在に気がついた様で見返してくる。


人数にして7人。

中年の男1人、若いイケメンが1人、清楚系の少女が1人、ギャルっぽい少女が1人、メガネを掛けた女性が1人、ショートボブで勝気が強そうな少女が1人、ピンクの水着を着用している少女が1人。


ザッザッ


『君達は一体誰だ?』


一定距離に近づいて中年の男が話しかけてきた。


スポーツ刈りに目の下には隈をこさえた苦労人といった風貌だ。


「俺達はこの島の反対側に住んでいる者だ。1ヶ月前に飛行機の墜落現場を目撃して様子を見に来た」

『この島に人がいたんですね!』


会話を聞いていたイケメン男子が歓喜する。


『待て、喜ぶのは早い。住んでいると言ったが、他に住人がいるのか?』

「俺と妻、娘の3人で住んでいる」

『・・・この島はなんなんだ?何処にある?』

「同じ質問か・・・この島は危険が沢山存在している。何処かは俺達も漂流者だから分からないな」

『漂流者だったのか・・・何時からいる?』

「10年だ」

『『『『『10年!?』』』』』』


後ろで聞いていた若者達が驚きの声を上げる。


『10年も待っていて救援が来ないのか・・・』

「そういう事だ。俺達が来た目的には忠告も含まれている」

『あ~くそ』


中年の男はボリボリと頭を掻く。


『次の段階に来ちまったか』

「話が早くて助かる」

『皆も良く聞いてくれ。漂流状態になった場合には何段階かある・・・1つは救助を待つ為に生き残る事だ』

『そうですね』

『そしてこの事実からして救援は絶望的になった訳だ・・・次の段階を考えなければならない・・・生き続ける事に変わり無いが永住する決断する事を考えなければならない』

『永住ですか!?』

『あぁ。本格的に家を建てて生活を向上させるんだ・・・こんなシェルターじゃなくてな』


このグループの住む場所は先程の湖に居た連中とちがい意外とシッカリとした物を建てている。

恐らくこの中年の男がリーダーとなってこのグループを纏めているんだろう。


『永住するなら1年間のサイクルが知りたい・・・この島には四季が存在するか?』

「こちら側はどうだか分からないが俺達の住んでいる場所は存在する。中でも過酷なのは冬だ・・・その家じゃ耐えられないだろう」

『冬もあるのか・・・・』

『山田さん、冬があると困るんですか?』

『いいか、冬は今と違って寒い・・・現代社会の日本において感じられなかったかもしれないが冬の厳しさは今の段階では自殺行為だ。暖を取れる住居だって必要となってくる』

『このシェルターじゃ駄目じゃん』

『暖かい格好も出来ないわ』

『そういう事だ・・・何か手はあるのか?』

「今から準備した所で間に合わないだろう・・・近場に洞穴があればソコを改良すれば急場だろうが凌げるぞ」

『たしか、崖付近に小さな洞穴があったな』

『漂流者全員は入れないぜ?』

「何人いるんだ?」

『俺達7人、湖に15人、南の砂浜に20人位だったな』

「42人か」


旅客機の乗客数が200人ならば4分の1しか生き残れなかった様だ。


『あの~、南の海岸線に居た人たちが~数人で筏を作って沖に向かったと聞いた事あるんです~』

『そうだったのか・・・もう少し少なくなるかもな』

「南の海岸の情報は無いのか?」

『1週間前に俺達は離れたから交流は殆どしていない。とにかく俺達は冬超えの準備を始めるしかないな』

「見た所道具もなさそうだが」

『良くて火を起こす物か石斧程度だ』

「墜落した飛行機には使えそうな物は無かったのか?」

『飛行機の半分だけが海岸に残っている・・・更にその半分が海水に浸かっていて探し出すのは困難だ』

「分かった・・・リン?」


リンがイケメン男子の事をじっと見ている。


まさか・・・


「足に怪我をしているよ」


なんだ・・・


イケメン男子は足に布を巻いていた。


「怪我をしているようだが?」

『あぁ、無理に歩き回ったからな』


ゴソゴソ


カバンから薬類を取り出す。


「コレは傷薬だ。無いよりマシだろ?」

『助かる・・・効くのか?』

「この傷を塞ぐのには役にたったな」


左腕の傷跡を叩く。


『ありがたい』

「それと女性がいるとコレも必要になりそうだな」

『コレは?』

「生理痛を和らげる薬だ。ある程度は抑えてくれる。妻がよく飲んでいるから問題ないだろう。お湯に溶かして飲んでくれ」

『スマンな』

「俺は南の海岸線に行ってみようと思う」

『一人で行ったほうがいいぞ』

「何故だ?」

『正直、ここや湖より治安はよくない連中が残っているからな』

「なるほど。娘を置いていくが見ていてくれるか?」

『それくらいは構わないが・・・俺たちは初対面だぞ?』

「日本人はもとよりお節介焼きが多いしな。それにここの連中はアンタをリーダーにしているようだ」


周囲の若者達がこの男の元に集まるにはカリスマ性があるからだろう。

あの機長も湖の連中を纏めあげている存在だが、機長の責務でやっているに過ぎない感じだった。


「俺の目に狂いは無かったと言わせてくれよ」

『ハハハッ、もとより手は出せないだろうがな』


サーベルパンサーのレーズンが牙を見せて常に警戒している。


「リン、俺は少し南の海岸線に行ってみる。どうやら向こうは危険な感じらしいからココに居てくれないか?」

「うん。わかった」

「いい子だ」


頭を撫でて南の海岸線に向く。


『南の海岸線は森を通ったほうが早いぞ。海岸線沿いに行った先には磯があって歩きにくい』

「問題ない。少しの間、娘を頼む・・・えっと」

『山田だ』

「アオイだ。娘の名前はリン」

『リンちゃんだな。責任を持って預かろう』


一旦リンを預けて南の海岸線に向かった。


ザザァン

ザザァン


「あれか」


海岸線には飛行機の半分が浜辺に打ち上げられていた。


ザクザクザク


森の出入り口付近に大小さまざまなシェルターらしき物が立ち並んでいる。


数人ほど中で休んでいるが覇気があまり感じられない。


『おい、アンタは誰だ?』


そんな中、俺に話しかけてきた若者が居た。


金髪をオールバックにし日焼けした上半身は程よく鍛え上げられた肉体を持っている。


「俺はこの島の反対側に住んでいる者だ。1ヶ月前にアレが落ちてきたのを目撃したから様子を見に来たんだ」

『ここには人が住んでいたのか!これで助かる』

「話を最後まで聞け。この島にはアンタ達が望むものは無い。俺も10年はこの島で漂流中だからな。先輩として来ただけに過ぎん」

『10年も漂流だと!?』

「落ち着け」

『これが落ち着いていられるか!救援が来ないなんて絶望的だろ!!』

「だから落ち着く必要がある。救援を待っていても来ない場合には次の段階があるんだ」

『段階?』

「このままだとお前たちは遠からず全滅するだろう?」

『なっ!?なにが言いたい!!!』

「この島には冬が来るんだ。今は暑いからなんとかなっているだろうが冬には食料が圧倒的に足りなくなる。それに寒い状態をどうやって解消するというんだ?」

『冬だと!?』

「雪も降る。言いたいことは分かるだろう?」


ドサッ


男は両膝をついて絶望の表情をする。


「このままダラダラ待っていても死ぬだけだ。生きたいなら動け」

『俺達は一般人だったんだぞ、いきなり言われても』

「頭を使え」

『そんな事考えつかねぇよ』

「知恵を出し合え。人は死に直面すれば協力し合うだろう」

『わかった・・・』

「それと、あの飛行機の残骸は誰かの物なのか?」

『誰のものじゃねぇよ。もし何かを探そうとしても無駄だ何も残っちゃいねぇ』

「荷物とかはどうした?」

『手荷物程度なら各自で持っていた分を回収した』

「旅客機なら大きな荷物も入っていただろう?」

『真っ二つになっちまったんだ、何処かに行っちまったよ』

「・・・そうか」

『おい』


ザクザク


飛行機の中も見てみるか・・・


飛行機の先頭にある搭乗口から中へと入ってみる。


既に乗務員準備室の中は荒らされており飲食物の類は無かった。


ガチャッ


トレイに入ってみれば案外綺麗な状態が保たれていた。


「勿体無いな」


バキャッ


トイレの便座と床を繋ぐ固定金具を尾翼斧で破壊し取り払う。


グイッ


便座を持ち上げて旅客機の外へと運び出す。


ドスッ


『アンタ、何してんだ?』


先程とは別の男が近くに来ていた。


「使えるものを飛行機から取り出してるんだ。何故、誰もやろうとしない?」

『そりゃ、使えるものか分からないからだろ?』

「これは使えるだろう?」

『つか、どうやって取り外した?俺も最初は考えたが金具で固定されていたんだぞ?』

「壊した」

『どうやって?』

「コレでだ」


尾翼斧を見せ付ける。


『斧なのか?』

「金属片を斧にしただけに過ぎないがな」

『なるほど・・・何か俺に手伝う事は無いか?人数が必要なら集められるが?』

「椅子なんかも使えそうだったな」


水に浸っていない前のほうの椅子は多少湿気でカビが生えているが日干しすれば問題ないだろう。


『何人集まるか分からないが声を掛けてくる』

「あぁ」


俺は中に戻り、椅子の足元に固定されている金具を見る。


「ふっ」


バギィ


金具が壊れて外れるようになる。


何箇所か破壊して2人席を無理やり取り外す。


ガリガリガリガリ


狭い通路を通して搭乗口から砂浜に投げ落とす。


『本当に取り外したんだな』

「それだけか?」

『元気な連中が居ないだけだ』


あの金髪オールバック男に加えて肥満気味の男、中年サラリーマンの4人しか集まらなかったようだ。


『コレをどうするんだ?』

「椅子としての機能はそのまま使えるんだ・・・ベッド程度にはなるだろう」

『リクライニングで御座るな。拙者もそう思っていたで御座るぞ』


肥満気味の男が独特な喋り方をする。

雰囲気からしてオタクの様な感じか。


『私も何か手伝いましょう』


サラリーマン風の男が眼鏡を掛けなおす。


それから俺達5人で使えそうな椅子を片っ端から砂浜に運び出した。


2人席が15セット、3人席が10セットの合計で60人分は座れて寝れる椅子が砂浜に集まった。


『快適でござるなぁ』


オタクの男は椅子に座って海を眺めている。


『テメェ、休んでんじゃねぇぞ』

『これこれ、止めないか』

『少し休憩しようぜ』


4人が椅子に座って海を眺め始める。


その様子を遠巻きで見ていた若い連中がワラワラと集まってきた。


『こんな量をたったの5人で運んだなんてすごーい』

『凄いですね』

『何に使うんだ?』

『さっきの話は本当か?』


俺達の行動をみて気力が戻ってきたのか表情は明るくなった。


「俺は他にやる事がある。さっき説明した事を言っておいてくれ」

『うっす』


金髪オールバック男に説明を託して俺は尾翼斧を片手に旅客機の主翼の上に上がる。


ガイィイン


主翼のつなぎ目に向かって尾翼斧を振り下ろす。


一撃でつなぎ目が破壊されて隙間が出来る。


ギィン

ガァン

ガァン


何度か打ち下ろして隙間を広くする。


ガッ


隙間に手を突っ込み引き上げる。


攻撃力分の筋力が働き人間では出せない力を発揮する。


バキバキバキバキッ


無理やり接合部が引き剥がされて一枚の鉄板が主翼に転がる。


ガキィン


ガイィン


鉄板を尾翼斧で更に細かくある程度の形に切り取る。


流石に主翼に使われている鉄板故に硬い。


この硬さが役に立ってくれるだろう。


数種類の形を複数個作り出す。


ドサッ


『これは何だ?』

「斧の刃部分だ。何かで柄を取り付ければ木位は倒せるだろう。こっちはナイフの様な物だ。研げば使えるようになる。コレは槍の穂先に使え、ボアが来たときに槍があれば牽制くらいは出来るだろう」

『どうして、こんなにもしてくれるんだ?』

「なに、困ったときは互い様だろう。コレでなんとか生き残るんだな。助け合いをすればだがな」

『あぁ』


湖と西の海岸線の連中にも同じような金属片を渡す為にカバンに入れて此処を去る。


・・・


「向こうの様子はどうだったのかね?」

「西は元気そうだった、南は絶望感が多かったが活をいれてきてやった」

「それは助かる。それは?」

「斧、ナイフ、槍に転用できる金属片だ。活用してくれ」

「道具が無くて困っていたところなんだ」

「冬を越せるように他の連中と知恵を出しあえ。大事なのは火を絶やさない程度の薪を備蓄しろ、外に温度が逃げない住居作りをしろ」

「・・・あぁ」

「俺は西にもう一度行ってコレを渡したら北の住居に戻る」

「去るのか?」

「ここの様子が分かった以上は目的は達成した。既に1ヶ月以上も妻を待たせているのだからな」

「そうか・・・」


湖から西の海岸線に向かう。


「どういった状況だ?」


キャイキャイ


リンが女性メンバーに可愛がられていた。


1人レーズンをモフっている猛者も居るが・・・


「すまないな・・・このストレス環境で女性陣たちが爆発してしまった」


山田がボリボリと頭を掻きながら謝罪をしてくる。


『ハハハッ、僕達は蚊帳の外ですからね』


イケメン男子も困った表情だ。


「リン」

「お父さん!」


タッタッタッ


ダッ


リンは笑顔で俺の腰に抱きついてくる。


「世話になったな」

『いえいえ~』

『こちらこそお世話になりました』

『リンちゃん、またねぇ』

『いつでも遊びに来いよな』

『また来てねぇ~』


この短い時間で女性陣に気に入れられた感じだ。


「これを」

「これは、斧と槍にナイフか?」

「道具は必要だと思ってな」

「助かる。どこで手に入れたんだ?」

「飛行機の鉄板から作り出した」

「とんでもない力を持っているようだな・・・ありがたく使わせてもらう」

「俺達は一旦、北に戻る。冬越えの準備は分かるな?」

「出来れば一緒にいて欲しいんだが」

「妻を待たせているんだ」

「それなら無理に引き止められないな」

「リン、行くぞ」

「バイバイ」


リンは手を振ってレーズンの背中に乗る。


リリィの待つ北に俺達は帰路につく。

お疲れ様でした。

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