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74話「無人島生活⑨-子育て」.

ザッザッザッ


再び1ヶ月程の道のりを歩き島を横断する。


ビックファングボア、バナナ食虫植物、ラプトル、ディラノサウル等の危険生物を時には避けて、時には戦ってたどり着いた。


「ただいま帰ったぞ」


約2ヶ月ぶりに戻ってきた我が家・・・だがリリィから返事がなかった。


ガチャッ


「リリィ?」

「お母さん?」


俺とリンはログハウスの中に入ってリリィを探すが姿が見えなかった。


「リンは海辺を見てきてくれ、俺は湖側を見てくる」

「うん」


二手に分かれてリリィを探しに行く。


「あら、アナタ」


湖のレンガハウスに近づけばリリィが居た。


「何をしているんだ?」

「冬越えの支度よ?」

「なんだ・・・ログハウスにいなかったから心配した」

「私も2人の事を心配したわ。リンは?」

「お前を探しに海岸線に向かったよ」

「そぅ」


ムニュッ


「どうした?」


リリィが俺の胸に体を寄せてきた。


「あの子が居ないうちにね?私も寂しかったのよ」


上目遣いで俺を見つめてくる。


これは逃げられんわ・・・


リリィに連れられてレンガハウスへと入る。



・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


「お父さん達、どこに行っていたの!!」

「スマンスマン」

「リン、ゴメンなさい。お父さんと話し込んじゃったのよ」


夕方になりやっと開放されたが、今度はリンが怒って待っていた。


「心配したの!お父さんまで何処かに行っちゃったのかぁああ」


大粒の涙を流しながら俺に抱きついてくるリン。


「なんか、変な匂いがする」


ギクッ


「生臭いような・・・ここから」

「久しぶりに親子水入らずで温泉にでも入りましょう!」


リンが際どい場所に鼻を近づけようとするがリリィがリンを抱っこして阻止する。


「温泉!久しぶりだよ!!ずっと水浴びしか出来なかったから臭わない?」

「ぜんぜん、臭わないわよ。いい匂いよぉ」

「そうかなぁ。えへへ~」


まぁ、レモングラスの匂い袋を腰に下げているしな。


思っていても口には出さないが・・・


「う~む」

「なに、お父さん?」

「俺としては嬉しいと言うべきか?」

「ア・ナ・タ。まさか娘に」

「そういう事は思っていないからな?」

「どうかしら?」

「なんの話?」

「こっちの話だ。お前がスクスクと成長していてくれるから父として嬉しく思うぞ」

「ありがと、えへへ~」

「リンはもう直ぐ9歳よね?」

「そうだよ」

「あれから、もう11年も経つのね」

「早いものだ」

「そういえばお父さんはあの人たちに漂流してきたって言ってたけど、この島に住んでいるんじゃないの?」

「あぁ。11年前に俺とお母さんは漂流してきたんだ」

「じゃあ、この島の人じゃないんだ?」

「まぁ、そういう事だな。それでお前が生まれた」

「産んでくれてありがとう」

「お前が無事生まれてきてくれた良かったと思っている。昔の俺じゃ考えられなかった光景だったからな」

「あら、そうなの?」

「コレでも73だぞ?」

「それを言うなら私だって69よ」

「73?69?」

「俺達の年齢の事だ」

「えっと・・・」

「私はリンと58歳も年齢が離れているのよ」

「俺は更に4歳も離れているな」

「・・・全然分からないよ?」

「そうね、そろそろ、いろんな事を教える時期ね」

「そうだな・・・俺達の知っている範囲でいいな」

「そろそろ出ましょう」

「のぼせない内にな」

「うん」


俺達は冬超えの準備をする。


既に肌寒くなり、今からあの墜落現場の所に戻っても移動中に冬になってしまう。


雪の中で野営をしながらは自殺行為である。


俺はリリィに春になったら、墜落現場に居住場所を変えようと伝え了承を得ている。


・・・


「御免なさい・・・出来ちゃったみたい」


真冬の夕食時にリリィからそう告げられた。


「それはめでたいな」

「何が出来ちゃったの?」

「お前の弟か妹だ」

「え?そうなの!!」

「でも・・・移住は1年も先送りになっちゃうわ」

「それは仕方ないだろう?」

「その人達って大丈夫かしら?」

「確かに心配だが・・・お前の方が心配だ」


グイッ


肩を引き寄せて俺の胸の中に収める。


「私は!」

「もちろんお前もだ」

「んん~」

「愛してるわ」

「あぁ。俺もだ」

「私もお父さんもお母さんも愛してる!」

「あぁ」

「えぇ」


新たな家族が増える事により南に移住するのは1年先延ばしになってしまったがあの危険な森を身重のリリィを連れて行けるはずが無い。

妊婦に対するストレスが一番危険になるのだから。


・・・


・・・・・・


「うぐぐぅ」

「呼吸が乱れているぞ、ヒッヒッフーだ」


秋に近づきリリィが産気づき2回目の出産を迎えた。


「リン、お母さんの手を握っているんだぞ」

「うん。大丈夫だよお母さん!」

「えぇ、うぐっ」

「呼吸を整えた方がいい」

「そうは、言ってもねぇ」


リリィはリンを産んだ時よりも苦しそうに呻く。


体力も時間が経過する度に目に見えて減っている。


既に頭頂部は見えているが出てこない。


「何故だ?」

「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」


リリィはラマーズ呼吸法で息を整えているが大粒の汗が流れ落ちるのをリンが拭っている。


・・・このままだと母子共に危険だ。


陣痛が来て、破水が始まりお産が始まってかれこれ13時間も経過しているが中々出てこなかった。


「どうすれば」

「うぐぅ」


【鑑定】

 名前:リリィ

 レベル:35(ホビット:70)

 種族:ハイホビット

 職業①:魔導師(Lv70)

 体力:581/3,341

 魔力:0/0

 状態:疲労(大)


リリィの体力も限界に近づいている。


「お父さん・・・」

「心配するな」


母の様子を見て心配する娘の頭を撫でて安心させる。


「リリィ・・・このままだ危険だと判断する。事前に言っていた事をするが良いか?」

「え、えぇ。やってちょうだい」

「リン、ソレをお母さんに咥えさせろ」

「うん」


予め用意した木の棒と繊維タオルを組み合わせた物を咥えさせる。


「本当は素人が手を出しちゃ駄目な領域なんだがな」


こういう事態を想定して俺は事前に準備をしていた。


「リン。ここからは衝撃の連続になる。外に出ていなさい」

「いや。ここにいるよ」

「そうか・・・あまり直視しないほうがいい」


スッ


予め準備した物をベットの下から取り出す。


数本の細長く薄い刃を持つ銀色の刃物、外科手術で使われるメスに近い物だ。


「麻酔なんかがアレば良かったが我慢しろよ」


コクッ


リリィは決意を固めて頷く。


スッ


パァ


リリィの臨月で膨れたお腹にメスを滑らせる。


「んんぉん!!!」


ブシュッ


切ったところから赤い鮮血が飛び散る。


ガタガタガタッ


痛みで暴れだすリリィ。


「動くと危険だ」


フゥフゥフゥフゥ


切開し始めてしまえば時間との勝負である。


なるべく注意を払いながら帝王切開を続ける。


お腹の皮膚を始めに切り開き、膨れた子宮に圧縮された皮下脂肪、腹筋、腹膜という層を慎重にかつスピーディーに切る。


奥へ進むと出血量が多く、ベット下に血溜まりを作る。


「ふっふっふっふっ」

「深呼吸をしたほうがいい」


短い呼吸では脳に酸素が行かず危険に陥る。


ビッ


ピンク色をした子宮の壁を切り裂き、胎盤の羊膜を最後に切って胎児の足が見えた。


グイッ


慎重に退治を引っ張り出す。


ズシッ


予想以上に重く感じた。


チャッキッ


臍の緒を素早く切り、青ざめているリンに赤ん坊を一時的に預ける。


胎盤をさらに引き出して縫合に入る。


縫合糸としてリリィの長い髪の毛を使わせてもらっている。


衛生上悪いのは分かっているができる限りの殺菌を施している髪だ。


チャチャチャチャッ


ここで裁縫師のスキルが役にたった。


プロの医師でもちゃんとした道具があって力を発揮するのだろうが、こっちはピンセットもなく素手で手製の縫い針で切り開いた部分を縫合している。


「もう少しだ、頑張れ」


縫合箇所に止血剤を塗って凝固作業を早めつつ腹部を閉じる。


ペタッ

ペタッ


最後に傷薬と止血剤を混ぜた塗り薬を縫合箇所に塗って繊維包帯を巻く。


「ふぅうぅふぅううふぅうう」

「よし」

「お父さん、赤ちゃんが泣かないよ!?」

「一難去って、もう一難か。貸してみろ」


リンから赤ん坊を預かる。


「息をしろ!生きるんだ」


ペチンッ


赤ん坊の尻を叩いて呼吸を促す。


コホッ


オギャアアオギャアアア


羊水を吐き出して赤ん坊を産声を上げた。


チャプチャプチャプッ


用意していた産湯で体の汚れを洗い流して繊維タオルで包む。


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:1

 種族:ハーフホビット

 職業①:なし

 体力:90/90

 魔力:0/0

 状態:健康


「ほら、元気な赤ん坊だ。抱いてやってくれ」

「えぇ」


リリィの状態を起こして赤ん坊を抱かせる。


腹部の痛みに耐えながら抱き涙を流しながら赤ん坊を抱く。


「お母さん、やったね!」

「えぇ。アナタの弟よ」

「うん!」

「これから忙しくなるな」

「そうね」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


オギャアアオギャアアア


出産してから数ヶ月経ち順調に成長をしているがリンの時と比べて今回は夜泣きが頻繁に発生する。


リリィがベットから起きて赤ん坊をあやすし寝かしつける。


「大丈夫か?」

「えぇ」


何度も夜泣きで睡眠が削られていきリリィの体調が徐々にだが悪化しているかもしれない。


「ねむいぃ」


同じくリンも夜泣きで寝不足の様だ。


「リン、今日は外に行かなくてもいいぞ。弟の面倒を見る事は出来るか?」

「うん!」

「お母さんの言う事は聞くんだぞ。リリィ、少しでも寝るんだ」

「そうね。何かあったら直ぐに教えて頂戴」

「うん」


リンに弟であるツヨシを任せてリリィは眠りに入る。


ツヨシという名前はリンと同じ願い、強く生きて欲しいと願って名づけた。


俺は外の仕事をして3人分の食事等を用意する。


・・・


・・・・・・


それから数ヶ月経ち、ツヨシの夜泣きも落ち着いて余り泣かなくなって来た。


「アナタ、あっちは大丈夫かしら?」

「そうだな・・・向こうにとっては2回目の冬越えだからな・・・」


冬に入り俺達も容易には動けなくなってしまった時期に入り移住計画は春先になった。


もしかしたら全滅していてもおかしくは無い、俺達が1年目で生き残れたのは知識もそうだったが根本的には頑強な肉体があったからだ。


生き残っている日本人は平均的にレベル5前後のステータスでファングボアですら驚異になる。


南と西、湖の連中が協力しあえば生き残れる確率はグッと上がる。


知識の他に連携力も人間ならではの強みなのだ。


野生動物のように直感で動くのとは訳が違う。


春先となり俺達は万全の準備を終えて、長年暮らしていた住居を後にして南を目指し動き出す。


ツヨシは時折泣き出すがその頻度は少なく、ラプトルを呼び寄せる事もは殆どなく順調に進んでいく。


「マズイな」

「不味いわね」

「こればかりは食べられないよ」


ラプトルの肉は筋張っていてやはり食べられない。


ガツガツガツ


唯一レーズンだけがラプトルを食べている。


「もう少しでボアの領域だから、それまでの辛抱だ」


リンのお陰で森に迷わずまっすぐ南へと迎えている。


「大丈夫か?」

「えぇ」


南の巨山を登り、やっとの事で飛行機墜落地域へと到達した。


「アレが現場なのね」


遠くに見える飛行機の残骸を眼下に納める。


「生き残っているようだな」


湖と西の海岸線から焚き火の煙が見える。


飛行機が墜落した南はここからじゃ解からない。


「とにかく湖に向かってみるか」


一番近い湖の場所へ目指す。


ブギイィイイ


途中でボアを狩り、解体を直ぐに済ませて手土産とし歩を進める。


「随分と様相が変わったな」


湖の近くには泥で周りを固めた住居が幾つか見えた。


1年前に比べて雰囲気がガラッと変わっていた。


「アオイさんじゃないか」


いち早く俺達の事に気づいたのは前田機長だ。


既に機長スーツは使い物にならなくなったのかボアの毛皮を腰に巻いて上半身は裸になっている。


ちらほらと見える男たちは腰箕1つ、女性は胸と腰部分を隠しているだけだ。


「帰ってこないかと思った」

「すこし事情が変わってな」


リリィが抱くツヨシを見ると祝福の言葉を言う。


「こっちの様相が変わっているな」

「皆で知恵を出し合ってなんとかここまでといった所でな」


軽く前田機長から1年の出来事を話してくれた。


「やはり死者は出たか」

「1人では監督で行き届かなくてな」


餓死者、怪我や病気による死亡者が何名かが出てしまった様だ。

中には南の数名が食料を独り占めしようと湖を襲うという事件も発生したが、たまたま居合わせた西のグループと協力して追放とした。

この事で南に居た生き残りは湖と合流し冬を越したそうだ。


「君たちが取り外してくれた椅子が役に立っているよ」


椅子のリクライニングを使った簡易ベットが各居住内にあり役立っているようだ。



【鑑定】

 名前:前田吉成

 レベル:6

 種族:ヒューマン

 職業:機長(Lv25)

 体力:390/390

 魔力:0/0

 状態:健康


1年前と比べてレベルが上がっている。


周囲に居る男性陣も平均的に8前後だ・・・おそらくボア狩りで上がったのだろうな。


「お裾わけだ・・・西はどうしている?」

「ありがたい。近々西と合流を果たして湖を中心とした集落を作ろうと計画している。最初と比べて協力が欠かせないと冬で実感したのでな」

「そうか。リリィ」

「えぇ、私達はここで休んでいるわ」

「リンは」

「着いていく!」

「アオイさん」


見覚えのある金髪の青年が近づいてきた。


どうやら合流組の1人のようだ。


「俺もついて行っても良いか?」

「構わないが?」

「ありがてぇ」


何か事情でもあるんだろう。


「拙者も良いでござるか!!」


あの時小太りで鼻息の荒かったオタク男子だと思うが


「痩せすぎだろう」

「拙者これでも美男子でござるからな!」


この1年間で激やせしたオタク男子は余分な贅肉が落してキリッとしている。


「師匠に挨拶したいのでござるよ!」

「師匠?」

「山田師匠でござる。拙者に狩りの仕方を伝授してくださった御仁よ」

「まぁ、いいだろ。2人抜けて問題ないか?」

「構わんよ」


前田機長の許可をもらい、4人で西の海岸に向かう。


レーズンはリリィとツヨシの護衛として置いていく。


「やっぱり只者じゃねぇな」

「そうでござるな。この1年で森の道を進みなれた拙者より先に行けるとは」


すこし息を切らしながら俺達のペースに着いてくる金髪青年とオタク男子。


「そういえば、名前を聞いてなかったな」

「たしかに」

「自己紹介はまだだったでござる。拙者は入江京介と申す」

「俺は久我義徳だ」

「アオイだ。娘のリンに妻のリリィ、息子はツヨシ。日本語が話せるのは俺とリリィしか出来ない」

「漂流してきたと言ってたが、元々日本に住んでいたのか?」

「まぁ、住んでいたといえば住んでいたな」


転生する前はな。


「それにしても日本語が達者でござるな」

「日本生まれなんだ。逆に英語が喋れん」

「なるほどな。通りで日本人臭い感じがしたのか」

「っと、着いたようだぜ」


ザザァン


ザザァン


サクサクサク


西の海岸線に到着してあの場所に行ってみる。


「1年前に比べて豪華になってるな」


簡易シェルターだった物はシッカリとした土台が作られた高床のコテージ風の建物が建てられていた。

屋根は軽くする為にヤシの木の葉が満遍なく敷き詰められている。


「アオイさん、帰ってきたんだな」


ちょうど獲物をぶら下げて反対側の浜辺から山田がやって来た。


「あぁ。随分様相が変わったな」


コテージ風の建物を見て呟く。


「アオイさんの忠告通り、みんなで協力して作ったんだ。そこにいるのは久我くんと入江くんだな」

「ご無沙汰してます」

「師匠、お久しぶりでござるな」

「その様子だとソッチは問題なさそうだな?」

「えぇ」

「これも師匠のお陰でござるよ」

「どういう事だ?」


軽く事情を聞いてみると西と湖で分かれているが交流はしっかりととしているそうだ。

1年前に追放したとされていた西だが今では湖の連中にとって欠け替えのないグループだそうだ。

特に山田はサバイバルを行う上で様々な情報を持ち、衣食住について湖へとアドバイザーとして出向くほどだそうだ。


入江や久我は山田から狩りについて講習を受け、今ではボアを単独で狩れる程の実力を持っているそうだ。


【鑑定】

 名前:入江京介

 レベル:10

 種族:ヒューマン

 職業:狩人(Lv5)

 体力:430/430

 魔力:0/0

 状態:健康


【鑑定】

 名前:久我義徳

 レベル:9

 種族:ヒューマン

 職業:狩人(Lv4)

 体力:360/360

 魔力:0/0

 状態:健康


「こっちには何用で来たんだ?来ないかと思っていたんだが?」

「こっちに移住しに来たんだ。家族を連れてきた」

「そうなのか?それなら歓迎するぞ」

「気を使わないでくれ。挨拶のようなもんだしな」

「向こうに住むのか?」

「何かあるのか?」

「出来れば向こうの方がいいかと思ってな。一応は協力関係を築いているが俺達は追放者の建前で向こうには行けない」

「何を言っているでござるか!」

「今、向こうではアナタ達を受け入れる話をしているんだぜ?」

「そうなのか?」

「1年もの間、生き残れたのは師匠の功績でござる」

「それは有難い話だな。だが、俺達はこの場所が気に入っているんだ」

「山田さんがそう言うなら仕方ないな・・・」


ザッ


「久我、なにしに来たのよ」


そこで他の連中がやって来た。


先頭にギャル少女が立っている。


表情は硬い感じだ。


「すこし話したい事があって来たんだ・・・あっちで話さないか?」

「いやよ。私はここが良いって言ってるのよ」


ムギュッ


何故か久我に見せつけるように山田の腕に自身の腕を絡めて言う。


豊満な胸が山田の腕にあたり形を変えた。


「おおきぃ」


後ろで黙っていたリンが呟く・・・リンよ、母の前では言ってはいけないぞ・・・


『1年前の事を謝りたいんだ、この通りだ』


久我は頭を下げる。


久我とギャル少女は何かあったようだ・・・


『いいわ・・・アッチで話しましょう』

「あぁ」


先にギャル少女が俺て久我と共に離れた場所へと歩いて行ってしまった。


ムギュッ


「むむぅ~」


俺の背後でうめき声が聞こえると、ピンク水着の少女がリンを抱いていた。


『リンちゃぁん、会いたかったよ~』

『あ、ズルいぞ!!』

『リンちゃんを独り占めするのですかぁ?』


続いてボーイッシュ少女と清楚少女がリンの近くに行く。


3人の美女に囲まれリンはタジタジだ。


「また、こうなったか」

『そうですねぇ』


離れた所で山田とイケメン男子の2人が呟く。


「うらやまけしからんでござるな。リン殿、そこを拙者と交代するでござるよ!」

『嫌ですぅ』

『誰がキモオタと』

『来ないでください!』

「はぅ!イイでござるよ~」


美男子になっても中身が変わってなければ嫌がられるようだ。


「お前も相変わらずだな」

「我々の業界ではご褒美でござるぞぉ」

『ハハハッ』

「元気そうで何よりだ」

「話の続きなんだがアオイさん達は湖の方に移住した方がいいだろう。俺達よりも漂流暦は長いし、向こうも安心するだろうしな」

「わかった」

「出来ればアオイさんの持つ知識があれば欲しいんだが」

「何が知りたい?」

「冬越えが中々厳しくてな」

「そういえば冬は如何している?」

「冬場は居住を変えている」

「洞穴だったか?」

「あぁ、そこで越しているんだが出入り口を完璧に防げなくて困っているんだ」

「何処だ?」

「見てもらったほうが早いな」

「リン・・・はこのままで問題なさそうだな」


女性人に揉みくちゃにされているが大丈夫だろう。


「すまないな」

「構わん」


山田とイケメン男子と共に冬を越す洞穴へと向かった。


「ここが件の洞穴だ」


木などで出入り口を極力塞いでいるが隙間がよく目立つ作りとなっている。


「これでは中の熱は逃げていくな」

「そうなんだ、泥を積み上げてみたが自重で崩れるか、積みすぎて木がへし折れる事もあって上手く行かないんだ」

「泥はその辺の土で作ったものか?」

「色々試したがどれも一緒だった」

「そうか・・・粘土は試したか?」

「粘土なんてあるのか?」

「・・・無いのか?」

『そういえば湖の家はなんで形を保っていられるんですかね?』

「なるほど・・・向こうの住居の壁が保たれている理由はそれか」

「泥粘土と呼ばれる土が建造には最適なんだ」

「分けてもらえるか・・・」

「中はお前たちだけで過ごすのか?」

「あぁ」

「この程度の出入り口であれば分けてもらえるだろう」


湖の住居は四方を泥粘土で固めているからかなりの量を使っている。


「俺からも話をしておこう」

「助かる」

『僕からもなんですが』

「なんだ?」

『1年前に頂いた鉄の道具なんですがそろそろ寿命かと』

「見せてみろ」

『これなんですが・・』


イケメン男子は木の柄に斧頭を取り付けたものを見せてくる。


・鋼鉄斧

 木の柄に鉄の斧頭を取り付けた物。

 攻撃力:5

 耐久値:2/45

 装備可能職業:全職

 ランク:ノーマル

 品質:1


「近いうちに壊れるな」

『使いすぎですかね』

「良く使い込んでいるな」

『鉄製は少ないですからね・・・以前、コレで飛行機から同じものを作りだそうと試したんですが傷一つ付きませんでしたよ』

「これでやるのは無謀だな・・・新たに作り出してやる」

『ありがとう御座います』


話し合いを終えてリンを連れ湖の畔に戻ってくる。


「様子はどうであったか?」

「皆元気そうだった。こっちに迎え入れる話をしてみたが向こうは向こうで暮らすそうだ」

「そうか・・・奥さんと話してみたがコチラに移住するとかで?」

「あぁ。良いか?」

「私を含めて歓迎するよ。まぁ、女性陣は良い顔をしてませんがね?」

「?」

「リリィさんがとても魅力的でウチの連中が鼻の下を伸ばしている感じでしてな」

『機長もでしょう』

「男なら仕方ない事なのだよ」

「自慢の嫁だからな。だからって襲うような事は絶対にしないほうがいいぞ、あれでも鬼嫁だ」

「そうなのですかな?」

「俺の次に力を持つ者だ。返り討ちにあって命が助かれば儲け物だな」

「私のお母さんはヤシの木をへし折るもんね」

「あれ?娘さんが日本語を話されたのですかな?」

「・・・何時覚えた?」

「う~ん。なんとなく覚えられたよ」


子供の頃の記憶力はすさまじいと聞くが、幼少の頃から2つの言語を覚えられるものか?


「言葉の壁がなくなったのなら良いか」

「む、今の話は本当ですかな?」

「妻はあまりやりたがらないからな」

「お父さんの力も見せてもいいんじゃない?」

「アオイさんの力も見てみたいですな」

「1年前にも見せただろ」

「あの時は我々も精一杯の時期でしてな・・・あまり印象は薄いのだ」

「まぁ、減るものじゃないか」

「少し待ってください、皆を連れてくる」


湖の男集を集めてきた。


生き残ったのは金髪青年やオタク男子の他に数名の青年達だ。

前田の様に年配の者は少ない。


「これから新たに住民となるアオイさん一家だ」

「1年前に顔だけは出したアオイだ。こっちは娘のリンに後ろに居るのは妻のリリィと息子のツヨシだ。これからはよろしく頼む」

「1年前に説明したと思うが、アオイ一家はかれこれこの島に10年近く漂流してきたそうだ。去年息子さんが生まれたそうだ」


前田機長の言葉に青年や女性達から祝福の言葉が上がる。


「そこで我々はアオイさんの力を見ておきたくて挨拶も含めて集まってもらったわけだ。ではアオイさん」

「あぁ」


俺は腰に挿している尾翼斧や火縄銃をリンに預ける。


『あの斧を使わないのか?』

『つーか、アレって火縄銃だろ?』

『何者なのかしら?』


若者達に見られながら近くの木へと移動し誰も居ない湖に向かって立つ。


スッ


腰を少し下げて構える。


「フッ」


攻撃の意思を乗せた俺の拳は30cmはある木の幹を叩く。


ベキャァアア


周囲に木の折れる乾いた音が響く。


ドバシャァアアン


一撃で木の幹を破砕し湖の中心部に木が叩き込まれた。


・・・


・・・・・・


長い沈黙が周囲を取り囲む。


「これが俺の力だ。もし妻に手出ししよう物なら分かるな?」


コクコクコク


青ざめた青年たちは頷くほかない。


「もちろん、俺に近づこうと思えば今度妻が黙ってはいないだろう。俺より数段弱いがこの中の誰よりも強いからな」

「お父さん、カッコイイ」

「無論、娘や息子もその範囲に入るから心してくれ」


抱きついてくるリンの頭を撫でながら笑いかける。


(((((((怖っ!))))))))


その場にいたもの達はアオイ一家に下心で近寄らない事を心に決めたのだった。

お疲れ様でした。

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