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71話「無人島生活⑥-出産」

ゴリゴリゴリゴリ


3回目の冬を迎える頃、俺は冬に備えて消耗品や食料の備蓄に務める。


ようやく肉の保存方法を確立する事が出来るようになった。


1つ目は干し肉、肉の内部に火を通し、塩で味付けをした後に日光を当てて肉の水分を完全に飛ばす事で保存食となる。

2つ目は燻製肉、弱火でじっくりと火を通し香りを肉に移す。これも水分を飛ばす為長期保存が可能だ。

3つ目は塩漬け、肉全体に塩をまぶして馴染ませることにより雑菌類を殺菌し空気と肉を触れさせない膜を作る事で長期保存が可能となった。


この方法をもってすれば冬場にボア狩りしなくても冬を越せる目処がたった。


「大丈夫?」

「あぁ、問題ない。それより動かない方がいいぞ」

「そうね」


リリィのお腹には俺達の子が出来た。


やる事はやっているしリリィも望んでいた様だ。


ホビットの出産時期についてはヒューマンと大差は無いらしく来年春以降に生まれる予定だ。


だからこそ厳しい冬を乗り越えるには十全な準備が必要だと感じた。


母体に負担をかけるような事はさせず、ストレスを溜めていないかチェックを欠かさない。


「ふふっ」

「なんだ?」

「私って幸せ者だと思っただけよ」

「そうか?」

「えぇ、こんなにも大切にされているのだからね」

「大事にしろよ」

「えぇ」

「山菜と薬草を取ってくる。レーズン達が居れば心配ないだろう」


既にブレッドとパンはこの世を去った。


サーベルパンサーとしては年老いていたのだろう。


レーズンの他に若い雌パンサーと番となって俺達のログハウス付近で巣を作り終えている。


「お前も行くか」


秋口になり始め山菜が取れなくなり始める頃合が重要である。


俺達は多少ビタミン不足等になろうが生きていけるがお腹の子供にはどんな悪影響が出るか分からないからな。


出来るだけタンパク質だけに偏らせずちゃんと出来なくても栄養バランスが必要だ。


活動範囲を広げて、丹念にこの領域を調べた結果人参らしき植物を発見し小さな畑で栽培を開始したが時期が遅すぎてそんな量が取れなかった。

未成熟な物が沢山あり、食べられる感じはあまり無い。


食べられる箇所を使って人参スープを一品に加えているが果たして無事に越せるか心配だな。


・・・


・・・・・・


本格的に3度目の冬を迎え、レンガハウスへと拠点を移動する。


パチパチパチ


秋のうちに蓄えた木炭や石炭を使い、常に一定の温度を家に保たせる。


モグモグモグ


「大丈夫かしら?」


妊娠後期になりリリィのお腹は膨らみ始めている。


順調に育っているようだが、この冬の厳しさが悪影響を与えなければ良いのだが・・・


「なにか取ってくる」


流石に保存肉だけでは栄養が偏りすぎる・・・山菜は絶望的であり・・・何か別の栄養素を見つけなければならない様だ。


海に出かけて見るが冬の海辺にはカニや貝等の海洋生物は見当たらない。


素潜りして取るにしても水温が低すぎて耐えられないだろう・・・


「シっ」


植物の紐を編み込み魚を取る為のアミを作成し、重しには鉄の塊を括りつけた物を海に投げ込む。


バッ


腰の捻りと遠心力で重しが綺麗に広がる、初日は結構苦労したが慣れれば簡単に使いこなせる。


バシャッ


広がった所で海に落ちて、重しが下に泳いでいる魚を広がった網で捉える。


「居なかったな」


アミを引き上げるも魚は捕らえられていない・・・いくら技術があろうが魚がいなければ意味の無い行動になってしまう。


ビチビチビチッ


数十投してようやく魚が取れた・・・50cm程のサケに似た魚だ。


見た目はグロテスクだが無毒だし問題なさそうだ。


さっそく帰って食べさせてやるか。


「戻ったぞ」

「お帰りなさい」

「大丈夫か?」

「えぇ・・・なんだか体がダルイの」

「肉だけじゃダメだったか」

「そうみたい。この子にもちゃんとした物を送らないと」


サスサス


リリィが慈愛に満ちた目で自分のお腹をさする。


「魚を取ってこれた、これを焼いて食べる」

「ありがとう」

「気にするな」


・・・


・・・・・・


「うぅ・・・」

「リリィ、大丈夫か?」


冬の厳しさが増し、リリィの体調が悪化し始めていた。


ここ最近では食欲も低下している。


・・・


「ハァハァハァハァ」

「苦しいのか」

「ダメ・・・まだ」


ビチャッ


え?


リリィの股下から赤い血液のような物が流れ出てくる。


「リリィ!?」

「うぐぅ」


本格的にお腹を抑えてリリィが痛みに耐える。


「もうなのか!?」


予定では冬越えした春先の筈だ、2ヶ月先の話だぞ。


「お湯を」

「あぁ」


流石に俺も出産に関する知識なんて持っていない。

もっと早くリリィから聞くべきだった。


リリィは意識を朦朧とし痛みに耐えながら俺にその知識を少しずつ伝えてくれる。


木のベットに寝かせて楽な姿勢を取らせる。


「呼吸を整えろ、酸素が行き届かなくなる」

「そうね」


大量の汗を流して微笑むリリィ、出産の痛みは男の俺では分からないが痛みに耐えることで呼吸が乱れて血圧が上がるのは危険だ。


リリィの手首の脈を図り、一緒に呼吸を整えるように先導する。


「ヒッヒッフー」


ヒッヒッフー


唯一聞いたことのあるラマーズ呼吸法。


呼吸を整えるだけではなくリラックス効果を与えて精神的に落ち着かせると記憶している。


ギュッ


リリィの手を右手で握るのも安心感を与えるためだと聞いたことがある。


「うううぅ」


暫くは容態が安定したが、急激に悪化した。


「リリィ!」

「産まれちゃう!」


バシャッ


羊水が溢れ出してきた。


「頭がもう」


赤ん坊を取り上げる為に立ち位置を変える。


動揺しながらも後は産まれて来るのを待つしかなくなった。


「ウググゥ」


ズズッ


リリィが息んで産むのに力を振り絞る。


「フッフッフッ」

「焦るな!ゆっくりでいいんだ」

「え、えぇ」

「呼吸を整えろ、ちゃんと出てきているんだ」


少しずつだが赤ん坊の頭半分が出てきている。


「んんんぅ!」


時間が経過しゆっくりとだが確実に出てきている。


ズルゥ


赤ん坊の肩口が抜けたら一気に出てきた。


トサッ


繊維タオルで赤ん坊をキャッチする。


「産まれたぞ」

「えぇ。えぇ」

「よくやったな」

「・・・なんで泣かないの?」


出産シーンでは赤ん坊の泣き声が絶対に出てくるのだ。


だが俺たちの赤ん坊は泣いていない。


「呼吸していない」

「貸して・・・」

「あぁ」


ビチャッ


臍の緒を切らずに赤ん坊をリリィの元へ持っていこうとして膜の様な物がリリィから流れ出たが無視してリリィに預ける。


グルッ


「息をしなさい!アナタはこんな所で命を落とすべきじゃないわ」


ペチンッ


リリィが赤ん坊を逆さにして尻を叩く。


出産後ゆえに力は入っていない様な物だ。


「私達の大事な赤ちゃんなのよ!!」


ペチンッペチンッ


涙を流しながら、息も絶え絶えなのにリリィは叩き続ける。


ゴプッ


オギャアアオギャアアア


ようやく、赤ん坊が泣き始めた。


「えぇ、頑張ったわね。よしよし」


リリィは赤ん坊を抱き寄せて頭を撫でる。


「ふぅううう」


久しぶりに緊張したな。


「アナタ」

「ん?」

「愛しているわ」

「俺もだ」


早産による未熟児の様だが何とか出産を乗り越えたがこれからが大変だ。


・・・


・・・・・・


リリィの体調も回復し初めた。


「夜泣きしないな」

「そうね」


どのような赤ん坊でも四六時中泣く事なんだか俺達が寝ているときすら泣かない。


グスッ


ホギャァア


「お腹が空いたの?オムツ?」


リリィが赤ん坊の泣き声に反応して寝かせているベットへと向かう。


【鑑定】

 名前:NoName

 レベル:1

 種族:ハーフヒューマン

 職業①:なし

 体力:90/90

 魔力:0/0

 状態:健康


鑑定のお陰で健康状態も見れて楽になった。


そういえば出産とかで気にしていなかったが名前を考えていなかったな。


「リリィ」

「ん?」


チュパチュパッ


赤ん坊に母乳を与えていたリリィが振り向く。


「その子の名前を考えていなかったな」

「すっかり忘れていたわ」

「何にするか・・・というか性別は?」

「女の子よ?出産に立ち会ったでしょ?」

「そこまで考えられなかったぞ?」

「それもそうね・・・ちゃんとした名前を考えて。食べ物の名前とか嫌よ?」

「アレは適当につけた名前だ。お前の希望とかあるか?」

「可愛い名前がいいかしら?」

「そうか」


あまりネーミングセンスは良い方じゃ無いしな・・・俺の名前、アオイも適当に思いついた名前だったしな。


「今更なんだが、前の名前を名乗ったほういいか?」

「知らなくてもいいわ。今のアナタが好きになったのだから」

「そうか・・・」


・・・


「リン、駄目よ」


俺たちの子供の名前はリンで決まった。

リリィの名前から一部貰い受け、この環境でも凛として育って欲しいと願ったからだ。


生まれてから3ヶ月達、首のすわりも良くなり一段落といった感じだ。


体の成長も順調と言えた。


・・・・・・・・・



時が過ぎるのは早い・・・


「まだ、諦めてないの?」

「あぁ」


夜、暖炉の光に照らされながら南の山を見上げている。


「もう取り返せないのよ」

「それは諦めた・・・だが、南に何があるのか確かめてみないとな」

「あの山がある限り私達の居場所は安全よ」

「そうだな」


・・・


娘が8歳の頃、俺達がこの島に漂流してきて10年近くが経過した時に事件は起こった。



ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


この島に来て一番の轟音が空から降り注いできたのだ。


俺達が食料集めをしている最中に視線を空を向けると、記憶にある形のものが空を飛んでいた。


「アナタ・・・」

「あぁ」


人を運ぶ為に作られた飛行機だ。


それも大量の人を乗せるための旅客機だった。


モワモワモワッ


大量の煙を吐き出しているエンジンだったが旅客機は滑空を続けて南の山を越えて消えていった。


轟音が遠ざかって行く・・・・


ドォオオオオオオオン


何かの爆発音が山の向こう側から轟く。


「アレって」

「この島以外に文明があったみたいだな」

「あの飛行機はどこから来たのかしら?」

「さぁな・・・尾翼に日本語が見えた」

「よく見えたわね・・・3,000m上を滑空していたのよ」

「視力は良くなったからな」

「帰りましょう。あの子が怯えてないといいのだけれど」

「そうだな」


・・・


ログハウスに戻ると娘は怯えていなかった。


「パパッ凄いよ!大きな鳥が飛んでいったの!!」


飛行機を鳥と勘違いしているらしい。


「そうか、怖くなかったか?」

「怖くなんかないよ!!」

「あぁ。お母さんの手伝いをしていなさい」

「うん」


どうやら杞憂だったな。


・・・


・・・・・・


ギュッギュッ


「行くのね?」

「あぁ、アレが気になるからな」


飛行機が墜落したのは間違いないだろう・・・1週間の準備期間を設けて俺は装備を整えていた。


この8年間で準備も整えた。娘も大きくなったし俺が居なくても問題ないだろう。


「今回はコレもあるからな」

「ソレでどうにか出来る相手じゃないわ・・・それでも行くのね?」

「あぁ。心配を掛けて済まないと思う」

「大丈夫よ。この子だって賢いのだから」

「なに、少し様子を見てきて直ぐに戻ってくるさ」

「アレは持って行って頂戴。アナタには必要よ」

「いいのか?」

「この数年間はアナタから色んなものを学んだのですもの。大丈夫よ」

「そうか・・・愛してる」

「私もよ」


山越えの装備に対ティラノサウルに対して作り出した鍛冶の結晶、火縄銃を片手に俺は南の山を目指す。


ダンッ


「パパ、何処へ行くの!」


朝方出ていこうとする俺に向かってリンが家から飛び出して俺の腰に抱きつく。


ギュッ


「すこし南に行くだけさ」

「嫌、行っちゃダメ!!」

「すぐに戻ってくる」

「南はダメ!不吉なの」

「心配するな」


ギュッ


リンを抱きしめる。


「リン、コレはお父さんが決めたことなのよ」

「でも、でも・・・あそこは危険なの」


確信ある言葉に引っかかる。


「リン、何が危険なんだ?あの場所は俺達ですら浅い場所しか行ったことのない所だ」

「夢で見たの、南には巨大な生物がいるの」

「レーズンやクロコダインのような」

「そんな大きさじゃない。山のように大きく強いの!!あの場所へは行っちゃダメなの」

「大丈夫だ。そんな奴を見かけたら逃げてくるだけだ。この山さえ超えればそんな奴は来れないさ」

「でもでも!」

「リン、お父さんはとても強いのよ。信じなさい」

「ママの尻に敷かれているのに」

「どこでそんな言葉を覚えたのかしら」

「痛いところを突かれたな・・・でも強いことは本当だ。信じてくれないか?」

「クロコダインも倒せるパパは強いよ。でも簡単に超えてくる強さなの」

「リン、いい加減にしなさい。お父さんはソレを超える強さよ」

「心配ない。信じて待っていてくれ」


フッ


リンの掴む力が弱まったところで離れる。


「すぐに戻る」


バサッ


外套をひるがえして西の森へと向かう。


「お前も付いてくるか」


レーズンが俺の横を歩き出す。


「行くぞ」


レーズンの背に乗り、山越えへと向かう。


今回は各種道具を揃えた上での攻略だ。


一人と一匹の旅路になりそうだ。


・・・


西の山道を超えて数年ぶりにあの景色を眼下に収める。


「いつ見ても綺麗な森だ・・・アレさえ居なければな」


俺の左腕を持っていったディラノサウル。


ザザッ


「レーズン、行くぞ」


ミィヤ


レーズンは故郷を振り返っていたが俺の後についていく。


・・・


パチパチパチッ


夜になり焚き火を囲い川向こうを見る。


この川を超えれば奴の縄張りだ・・・



パキッ


ザッ


音のした方向に火縄銃を瞬時につきつける。


「パパ、私だよ」


パチンッ


リンの頬を平手打ちをする。


「なんで、付いて来た」

「パパはアレの恐ろしさを知らないの」

「お前は何を言っているんだ?アレとはなんだ?」


スッ


リンが指差すのは月夜に照らされた小山だ。


「アレを目覚ましちゃダメなの」

「小山がどうした?」

「小山じゃないの。巨大な生物だよ」

「・・・あの大きさか」

「パパが強くたって勝てないよ。ママの所に帰ろう?」

「・・・あの生物を起こさなければいいんだな?」

「起きちゃうよ」

「なんで起きちゃうんだ?」

「ソレの音は大きいもん」

「コレよりも大きい音を出す生物は居るぞ?」

「ダメなの・・・絶対起きちゃうの」


俺を追いかけてくるのに精一杯だったのだろう途中で眠ってしまった。


薄々この子には何かあるのだろうと思っていたがアレを遠くでも感じ取る能力でもあるようだ・・・まるで千里眼・・・まさかな?


かつて俺に備わっていたスキルがバシップで発動しているような言い方だった。


娘を担いで帰路に着く。


「あぁ、心配したわ」

「8歳の子供があの山道を登ってきたとは思いたくはなかったがな・・・次は頼んだぞ」

「えぇ、目を離さないわ」

「この子には特別な能力があるようだ」

「大丈夫よ・・・2度目になるけど、行ってらっしゃい」

「行ってくる」


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・



ギャォオオオオン


バキバキバキバキッ


あの川を越えた矢先にディラノサウルが大木をなぎ倒しながら襲いかかってきた。


「今度は負けない」


スッ


カチッ


ダァアン


火縄銃をディラノサウルスに向けて発砲する。


攻撃の意思を乗せた弾丸は亜音速でディラノサウルの眉間に吸い込まれる。


グシャッ


弾丸は額を周囲の頭蓋骨ごとを巻き込み脳をグチャグチャにかき回して背中へと抜けていった。


ズズゥン


俺の目の前でディラノサウルは一撃のもと絶命する。


「攻撃の意思さえあればこんな物か」


チラッ



【鑑定】

 名前:エンシェントトーラス

 レベル:100

 種族:トーラス

 体力:57,262/57,262

 魔力:0/0

 状態:睡眠(極)


リンが指差した小山を見る・・・確かに馬鹿でかい怪物である・・・レベル100は魔王以来見た事の無い数値だ。


恐らく火縄銃程度の攻撃では大した痛手も負わせられないだろう・・・


「起こさない様に注意しないとな」


なるべく小山に近づくようなルートにならないように南へと進む。


北の山超えから3日間が経過しても大した距離が稼げていない様に感じる・・・南の方角には北の山と対を成すように3,000m級の山が聳え立っておりアレを目標としている。


そもそも旅客機のエンジン音ですらアレは起き上がってこなかったから火縄銃程度の音で起きるとは思えんな。


「ふぅうう」


ミィヤ


川辺を見つけながら南へ進んでいるが同じような木々に迷っているようにも錯覚する。


俺たちが目的としている山が南のなのか北のなのかが疑わしくなっている。


「寝るか」


木の上に登って俺とレーズンは安全を確保した上で眠って過ごしている。


・・・


「きゃあああ!」


パチッ


悲鳴を聞き、即座に目を覚まして下を見る。


「リン!?」


リンが小型の二足歩行する爬虫類に襲われている場面だった。


グルゥウアアア


レーズンが先に落下して爬虫類に襲い掛かる。


タッ・・タッ



スタッ


レーズンの攻撃を軽くかわして後退する爬虫類。


【鑑定】

 名前:ヴェロキラプトル

 レベル:20

 種族:ラプトル

 体力:665/665

 魔力:0/0

 状態:興奮


「俺の娘に手を出すな!」


俺が飛び降りて火縄銃の銃身を鈍器の如く振り下ろす。


ゴキャッ


ドゴォオオオオン


銃身が曲がる程の攻撃力を乗せてラプトルの頭蓋を叩き割り地面にめり込ませる。


「ふぅううう」


1m程のクレーターが出来ていたが気にせずリンに振り向く。


「ひっ」


ジュワアアアアア


よっぽど怖かったのだろう漏らしてしまった。


「パパ、怖い」


恐怖の目はラプトルではなく俺だった。


・・・助けたのに怖がられるとはコレ如何に


「どうして、着いてきた」

「だって、もう二度とパパと合えなくなるのは嫌なの!」

「二度と・・・か。俺の身に何か起こるのか?」

「パパはあの怪物に戦いを挑む夢を見たの・・・でも勝てなかったの」

「だから追いかけてきたのか・・・だがな、俺は戦う気はサラサラ無いぞ?」

「本当?」

「お前の忠告を受けて、アレを避けながら動いていたんだからな」

「うそ!パパはあの怪物に向かっていたもん」

「・・・詳しく話せ」

「パパは真っ直ぐアレに向かっていたもん!だから私が来たんだもん」


リンが嘘を言っている目をしている訳ではない。


「少し待っていろ」


俺は近くで一番背の高い木へと上っていく。


ズボッ


葉を退けて周囲を伺う。


「確かに近づいている」


数日前よりも小山に近づいている事に改めて気付いた。


スタッ


木から降りてリンの元へと向かう。


スッ


頭に手を伸ばそうとするとリンがギュッと目を瞑る。


ナデナデ


「え?」

「よくやった。危うくアレに突っ込むところだった」

「怒らないの?」

「確かに俺はお前を叱るべきだっただろう・・・だがな、お前が心配して危険を犯して来てまで俺を守ろうとしたのに怒る通りはない」

「怖かった~」

「俺は怒らないからな」


ヒョイッ


リンを肩に乗せて歩き出す。


「レーズン離れず付いて来い」


ミィヤ


ダッ


俺は北の山に向けて全速力で走り出す。


「きゃあああああああああ」


娘が喚こうが構わず突き進む。


般若の顔で待っているであろうリリィの元まで・・・


パシィンッ


「リン!!アレほどお父さんについて行ってはいけないと言ったでしょ!!」


2日でログハウスに戻り、リリィの雷がリンに落ちていた。


「だぁああっでぇえええ」


リンも反論しようとしているがリリィの般若顔に恐れをなして泣きながらだ。


俺は手を出さない・・・決して怖いからじゃないぞ?


ギュッ


「心配させないで」


2時間程リリィの雷が落ち終わった後、最後には優しい一言で締めくくる。


「お父さんが心配だったのよね?」

「う”ん”」

「助けたかったのよね?」

「う”ん”」

「そう」

「おがああさんごべんだざぁいい」

「二度とこんな真似をしないでちょうだい」

「う”ん”」


チラッ


「リン、お母さんは二度も黙って出て行ってしまったことに怒っているんだ。だがな、その行動力は大したものだ」


ポンッ


リンの頭に手を置き言う。


「リリィ」

「分かっているわ。連れて行くのでしょう?」

「何故?」

「何年アナタの傍にいると思っているのよ。大体は分かるわ」

「そうか・・・リンには遠くを見る能力があるようだ。3日掛けて歩いた森を追いかけてきた時、何かに見つからず来ることはありえない」

「リンは敵味方の位置を把握できるのかしら?」

「ぐずっ・・・ここからあの湖までなら」

「千里眼か」

「アナタのスキルが受け継がれたのかしらね」

「恐らくはな・・・」

「お父さんのスキル?」

「今は使えないがな・・・昔は千里眼という特殊能力が使えた。といってもお前と同じ距離を見渡した程度の物だ」

「そうなんだ」

「俺の危機を夢で見たのはお前の特殊能力かもしれないな。予知夢って奴かもな」

「アナタの未来を夢で見たのね?」

「あぁ、予知眼の能力かもな・・・育てれば凄い事になるかもしれないな」

「そうね・・・」

「お母さんもスキルあるの?」

「私は魔法使いだったのよ・・・今じゃ使えないけど」


魔力が無い今では殆どのスキルは使えない。


「マホーつかい?」

「昔のことよ。さ、お父さんと行ってきなさい」

「うん!」

「後は任せる」

「いつまでも待っているわ」

「あぁ。必ず帰ってくる」


俺はリンを連れて南に向かう事とする。

お疲れ様でした。

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