68話「無人島生活③-石器」
俺達がこの星に不時着して太陽を登るのを数えて30回目を迎えた。
1ヶ月が30日前後ならば俺達は1ヶ月もの間、島に漂着している事となる。
「おはよう」
「おはよう」
この1ヶ月で俺たちが行ける場所は殆ど見回り尽くした。
バナナ園の奥の森にはボアの生息地であり沢山の数が居た。
俺達がバナナ園で出会うボアは群れからつま弾きされた為に食料を得ようと来るようだ。
何度か身を隠してボアの観察をすると気性が激しくなるのは外敵が接近する時であり平時の場合は温厚な程大人しい事が分かった。
さらにその先、西側にある山道の近くまで見てきたが険しい山道だと判明した。
斜度50度以上の傾斜を延々と登らなければならない以上、生半可な装備で挑めば落下死の恐れもある程だ。
現在の目標は山越えする道具を作り出すという事に観点を置いている。
カンカンカンカンっ
「ふぅ」
石を長方形に形を整えて大工道具であるノミを作り。
円柱型の石に持ち手が嵌るように穴を開けて木を差し込んだハンマーを作り。
2つの道具を使い、切り倒した丸太に細工を施している所だ。
本職が作る木造建築は作れない為、簡易的なログハウスを作り出そうとしていた。
バキンッ
「またか」
幾度も叩きつけると石のノミは割れて使い物にならなくなる。
ハンマーも同様に壊れやすい物だ。
ポイッ
ゴロッ
使えなくなった石が近くに山積みとなっている。
「鉄が欲しいな」
「鉄なんて何処にもないでしょう?」
例え鉄鉱石を見つけたとしても鉄に精錬する道具も器具も設備も無い。
「まさに石器時代だな」
「そうね。今まで楽してきた罰かもしれないわ」
バリバリ
「何食べてるんだ?」
「これ」
作業中に横で見ていたリリィは何かを食べていた・・・見せてもらうと足が沢山ついているムカデだ。
「虫はダメだったんじゃないか?」
「そうは言っていられないもの食べられる時は食べなきゃ」
「1ヶ月で変わりすぎだろ」
「心境の変化があったのかもね」
「そうか・・・」
肌の露出は極力避けていたかったが1ヶ月もスーツのメンテもせずに着続ければ劣化するのは当然であり、今の俺は上半身裸でヤシの葉を細く切ったものを束にして腰の周りに下げている腰箕一つで動いている。
それはリリィも同じ事で、植物の葉を織り込んだ物で胸と下半身を隠しているだけで殆ど肌が露出している。
「せめて麻があればいいんだが」
「これよりマシになればいいわね」
リリィが行っているは、時折狩ってくるボアの毛皮をなめす作業だ。
ちゃんとした道具は無いが衣服になりそうなのはボアの毛皮だけである。
何度も毛皮を洗って獣の匂いを消しては日光に当てながら毛を手製のブラシを作り梳いている。
・・・
・・・・・・
「やっと完成だ」
約3ヶ月を消費してログハウスが完成した。
釘の一本も使わず、丸太に凸凹の加工を施しはめ込む事でズレる恐れを軽減させ頑丈に作り出した。
それまでに消費した石は小山を作り出していた。川原にもう手頃な石は無くなってしまった。
ログハウスは寝室、居間、土間の3つで区切っている。
板が作れないから全ての部屋は土の床だ。
屋根は耐久値の問題で木では作らずバナナの葉で覆い隠す事で雨を防ぐ。
「こっちも完成したわ」
「衣と住がレベルアップしたか?」
俺が家作りをしている間、リリィは何枚もの毛皮をなめし2人分の着るものを作り出していた。
鋏も無い為、極力切らずに着られるように衣服に見立てている。
毛皮のベストと毛皮のズボン、余った毛皮で草履のような靴も作ってくれた。リリィも同じような格好である。
「原始人から野蛮人にレベルアップか」
「毛皮しかないんだから仕方ないじゃない」
毛皮の衣服に石の斧や牙槍の武器を持っていれば少しは充実したか?
「次は何をすればいいかしら?」
「そうだな・・・石器から土器にレベルアップするか」
ここの所、生活に余裕が出てきたしな。
「どうやっての作り出すのよ?」
「土器を作るには窯を作らないと駄目だ・・・粘土が必要だな」
「粘土なんて見た事ないわ?」
島の殆どを散策したが粘土らしき物は見ていない。
「あの湖の近くは行った事すら無かったな」
飲み水に使っている川の上流にある湖はいった事すらなかった。
わざわざ行くものでは無いと後回しにしていた。
「調査する前にカゴ作りをするか」
「カゴ?」
「物を運ぶとき俺達の両手じゃ限度があっただろう」
「そうね」
「背負カゴを作ろうと思う」
「便利そうね・・・でも作れるの?」
「ここで裁縫師が生かされるんだ」
何も布や糸で衣服を作るのが裁縫師だけの範囲じゃない、草での編み込みだって立派な裁縫師のスキルだ。
ヤシの葉やバナナの葉を細く切って、編み込んでいく。
リリィが俺の手元を見て並行で小さめながカゴを編もうと頑張ってくれている。
「私って不器用なのかしら?」
途中で形が崩れてリリィは困惑している。
「そんな事はない、毛皮の衣服だって作り出せたんだからな」
「アレは大雑把に分ければ洗って、日光に当てながら梳いて、極力切らないように衣服のように形作って草糸で縫っただけよ」
「そこまで出来れば上出来だぞ。っと完成だな」
・ヤシの葉のカゴ(大)
30kgまで入るカゴ
鑑定で見てみるとアイテムとして判定された。
「リリィには背負う為の紐を作ってもらうか」
「ロープ?」
「そんな頑丈じゃないがな」
細長い繊維質の草を持ってきて縦に細く裂く。
「この細くなった2本を親指と人差し指で捻る事で1本の糸になる」
「・・・それで縫えば良かったかしら?」
「そうだな」
リリィが毛皮を縫いとめたのは細く裂いただけの草であり耐久性はたかが知れている。
「つくり方は4本の繊維を束ねて左手で持って根元の方から2本ずつで分かれさせる、その内の2本を先ほどの説明の通りに捻って強度を上げてやる。ある程度まで捻ったら右手首を捻って左手の中指と薬指で捻じれが戻らないように固定しながら、ばらけている残りの2本を同じ要領で捻って手首を返す。あとはこの繰り返しで強度が上がった草の紐が出来上がる」
「地道な作業ね」
「どんな事も地道なことから始まったからな。これなら大丈夫だろ?」
「それなら出来そうだわ」
「手元に集中せず、下にも気を配らないといつの間にかゴチャゴチャになるから時折、手櫛で4本をバラバラに保つんだ」
「最初は玉結びが必要かしら?」
「そうだな、途中で持っていた部分を外すからキツく玉結びをするべきだ」
「頑張ってみるわ」
「俺はサイズを変えてカゴを作ろう」
黙々と俺達はカゴ作りと紐作りに没頭する。
カリカリカリ
「ん?」
ログハウスの木を引っ掻く音で顔を上げる。
ヒョイッ
「なんだパンか」
扉なんて物は作れないから草の葉で出入り口は塞いでいる。
そこから、あのパンサーが顔をだした。
懐いているから名前をパンと付けてやった。
俺たちの家の周りに良くいたが最近見かけなくなっていたが元気そうだ。
クゥン
甘える声で鳴くときは何かある様だ。
タッ
俺が立ち上がろうとしたらパンの下から小さな影が飛び出してきた。
キュゥキュゥ
「あら可愛い!」
真っ先に反応したのはリリィで中に入ってきたのを抱き上げた。
「パン、お前の子か?」
体長50cm程度のサーベルパンサーの子供を抱き上げている。
子供故に牙は生えていないようだ。
グルルゥ
「まだ居るのか?」
外にでるとパンの他に1回り大きなパンサーが俺を睨んで待ち構えていた。
「お前の相手か?」
グルゥ
グルルルゥ
「なんだか穏やかじゃないな?」
パンの頭を撫でてやると、目の前のパンサーが喉を鳴らして威嚇してきた。
俺に家族で挨拶に来たという雰囲気ではなさそうだ。
「その体格からして、西の森に住んでいる奴だな」
パン以外にもサーベルパンサーの存在は知っていた。
西の森にいるボアを食料としてサーベルパンサー達は数匹の群れで狩りをして生きているのだ。
「何が気に食わない?」
グルゥァ
両腕を低くし下から睨み付けて口元を大きく開いて威嚇する。
名前の由来にもなっている太く硬くサーベルのような牙が見える。
「どうしても戦いたいらしいな?」
グルゥア
群れを作る動物の習性として強い奴と認めない限り戦いを挑んでくる種類がいる。
まさに目の前のコイツがそうだ。パンの時は弱っていた所を助ける形で力を見せつけたみたいだったな。
「着いてこい」
ここじゃ、折角完成したログハウスが壊れかねない。
浜辺に向かうために歩き出す。
いつでも背後から襲いかかってきてもいいように警戒は怠らない。
その後ろにリリィとパンにその子供が付いてくる。
「アナタの旦那さんは襲わないのね?というか襲えないようね」
クゥン
・・・
浜辺について互いに距離を取って構える。
「いつでも来い」
パンサーは低く唸ってジリジリと距離を縮めてくる。
奴の攻撃範囲に入ったらパンサー特有のしなりのある体で襲いかかってくるだろう。
グッ
パンサーが飛びかかろうと脚に力を入れた所を見逃さない。
グルゥアア
牙を突き立てようと大口を開けて飛びかかってくる。
「遅せぇ!」
ブォン
俺は拳をパンサーではなく真下の砂に向かって振り下ろした。
ドバァアアアアン
攻撃の意思を持った拳は砂を大量に巻き上げ周囲に降り注ぐ。
飛びかかってきたパンサーは砂の波に飲み込まれて消えていった。
ヒュォオオオオ
波風が舞い上がった砂を吹き飛ばして俺の立っている惨状を明らかにした。
直径30m、深さ3mほどのクレーターが出来上がっていた。
表面上の乾いた砂は簡単に吹き飛んでいたが、その下にある押し固められた砂は殆ど衝撃を地面に吸収されてしまったがこの威力を出した。
記憶が確かなら大体447tの砂が周囲にばらまかれた計算だな。
ズボッ
砂の中からパンサーが這い出てきた。
ゼェゼェゼェ
砂の中から這い出るのに体力を結構使ったようだな。
「まだ、やるか?」
今度は俺を見上げる形でパンサーが俺をみる。
スクッ
クゥン
「いい子だ」
今の一撃で俺の強さを感じ取り伏せて頭を下げてきた。
頭を一撫でしてリリィ達の所に戻る。
「もう一匹、いや、二匹が俺達の仲間になったようだ」
「おめでとう」
クゥン
パンが夫であるパンサーに近寄り体を摺り寄せていた。
・・・
「どうして、こうなった?」
「そのセリフ、生で聞いたわ」
西の森に住むパンサー達が翌日家の前でお座り状態で待っていた。
「彼が群れのボスだったようね」
俺が降したパンの相手は群れのボスをだった様で連鎖的に配下のパンサー達も俺に降った様だ・・・
唐突に大所帯になってしまった・・・
「とにかくお前たちは自由にしていてくれ」
西の森を指差してパンの夫に命令をしてみる。
ミィイイ
昨日の勇ましさがすっかり消えてしまった声だ。
パンの夫は配下達に何か命令をくだしたのかその場から去っていった。
「お前は残るのか?」
どうやらパンと離れる事はしないようで子供と一緒に近くに寝そべり始める。
「名前、考えないとね」
「ネーミングは嫌なんだけどな」
パンの名前もパンサーから取っただけだ。
「パンの夫だからブレッドでいいか」
「同じ意味よ」
クゥン
「これで良いそうだ」
「良いのかしら?パンとブレッドの子供は?」
「レーズンで」
「パン繋がりじゃない」
「良いだろ。安直の方が覚えやすい」
「そうね・・・・・自分の子供もそう付けるのかしら?」
「何か言ったか?」
たまにリリィは小声で呟くことがある。
「パンにブレッド。その子供はレーズンね」
「よろしくな」
こうして新たなパンサー親子が俺達の家に住み着くことなった。
・・・
「湖に行くか」
準備が整い大きいカゴは俺が背負い、中くらいのカゴはリリィが背負った。
後ろにブレッドとパンが着いてくる。
レーズンはリリィが抱き抱えているが気にしないでおこう、劣悪な環境下で相当なストレスを溜めているだろうし動物セラピーは大歓迎だ。
ザァアア
川上を目指して川辺を歩いていく。
ヒョイッ
拠点付近の石は使えそうに無い物が多くなり途中で手頃な石を見つけてはカゴの中へと入れていく。
さすが水辺の近くだな。
・ガマ
止血効果有り。
薬草類が生えているじゃないか。
ブチッ
ヒョイッ
「この葉を見かけたら採取しておいてくれ」
「紐の材料にするのかしら?」
「薬草に分類される草だ」
「分かったわ」
・ヨモギ
切り傷に効果有り
「コレもだ」
「分かったわ」
・ユキノシタ
解毒に効果有り
「よく見ると沢山あるな」
「後で仕分けしてもらうわよ」
リリィのカゴに薬草類がどんどん入って行くが問題ないだろう。
土器時代がくれば必要になってくるからな。
中には乾燥しなければ使えない薬草も有る。
サァアア
薬草の採取に時間を掛けて上流にある湖へとやって来た。
周囲には木や草が生え、湖を囲むように大小の山々が見える。
「薬草の宝庫だな」
鑑定が発動して雑草に見えていた物が薬になる草だと分かった。
「もう入らないわよ」
「何度かまた来れば良い。目的はこの湖の水辺だ」
ジャブッ
水辺に入り足元を注視する。
・泥粘土
水分を多く含んだ粘土、水分を飛ばせば粘土として使用できる。
ベチャベチャベチャッ
手ですくってみるが水分量が多く泥の様になっている。
「これじゃ網目から落ちちまうな」
カゴの底面は細かく編んでいるが横面の網目は大きく編んでいるから粘土がそんなに運べない。
「これが粘土なの?」
「粘土の元の様な物だな。水分が多すぎるんだ」
「乾かせば良いの?」
「そうだな・・・」
周囲を確認するが良さそうな物は見当たらない。
「あれは?」
木々の間に見かけない種類の木が見え隠れしていた。
・シラカバ
硬い木。樹皮は容易に燃えやすい。
バリッ
「これで良いか」
樹皮を容易に剥ぎ取れて大きな薄い板のようになった。
それをカゴの網目を塞ぐように何枚も剥ぎ取っては着けて泥粘土を入れる。
「アオイ、後ろ!」
ザバァアッ
岸から俺を見ていたリリィが叫び呼びかけてきた。
背後から何かが飛び出して振り向いた。
グワッ
視界一杯に上下に揃ったギザギザの三角の集合体、光の加減で赤黒い何かが急接近してくる。
ガッ!
何とかガードが間に合った。
「ワニか!」
グググッ
【鑑定】
名前:NoName
レベル:23
種族:クロコダイン
体力:398/398
魔力:0/0
状態:興奮
上下に開かれた鋭い牙の揃った口を閉じようと力が込められているが俺の腕力がソレをさせない。
「ぬぅうう」
両腕と背中に力を入れて閉じようとする口を逆に開こうと力を込めていく。
「っせぃ!」
ザバァアアア
口先を掴んだまま体を捻ってクロコダインを持ち上げて岸に向かって叩きつけるように腕を振り下ろす。
グワァ
地面に叩きつけられて閉じようとしていた口の力が弱まり手を離す。
バタバタバタッ
手足をバタつかせてひっくり返った体を元に戻す。
全長3m程の巨体が見える。
「大丈夫!」
「なんとかな」
ガルルルゥ
グルァアアア
ブレッドとパンがクロコダインに攻撃を仕掛けているが身を護る鱗で防いでいるようだ。
「コレ借りるぞ」
リリィから牙槍を受け取る。
「はっ!」
ダンッ
左足を踏み込んで牙槍をクロコダインに向けて振り下ろす。
バキィ
木の持ち手が折れて牙槍は湖へと飛んでいった。
「鋭さが足りないのか」
「アオイの攻撃が通らないワニなの?」
「武器としての性能が弱すぎたんだな」
この生活を続けている内に俺の攻撃力が高くても武器次第ではダメージが通らないときがあると感じていた。
それが現実になったか。
「ハッ!」
ゴバァア
今度は素手で殴りつけてみたら貫通はしないが背中が大きくしなりクロコダインが悶えている。
グバァ
ザザザザザザッ
巨大な顎を上下に開き、太い足で俺に噛むために突っ込んできた。
意外と早い動きをする。
スッ
俺の動きに合わせて進行方向を微調整してくるクロコダインだ。
ヒュオッ
身軽に空中へ飛び上がり、クロコダインも顎を開いた状態で状態を持ち上げてきた。
「甘い」
ガガッ
グワッ
クロコダインの上下の顎に足を乗せて顎が閉じる力以上に開脚する。
バキャッ
上あごが耐えられず半ばから折れる。
ギャゥウウウウ
折れた箇所から大量の出血をし後退し始める。
「逃がすか」
クロコダインの鱗は何かに使えるかもしれないし肉はタンパク源になる。
クロコダインの最大の武器が無くなった以上、下顎を大胆に持って岸に無理やり引き戻す。
「ハッ」
こんどは手刀突きでクロコダインの背中を攻撃する。
グシャッ
ブシュゥウウウウ
手刀はアッサリと硬いウロコを貫通し内臓へと到達する。
ギャワァアォオオオオオオオ
バタバタバタバタバタっ
断末魔に似た叫び声を上げて暴れる。
「暴れるな!」
グァン
左拳でクロコダインの頭部に攻撃を加える。
フッ
一撃で気絶状態に持ち込み動かなくなった。
「死んだの?」
「いや、気絶しただけだ。どの道助からないがな」
上顎の欠損に加えて内蔵に大ダメージを与えたのだから。
「コレ使えるか?」
魔力消失で空間拡張が消えたオリハルコンワイヤーの手袋からオリハルコンの糸を取り出す。
「たったの1m弱か」
首が太すぎて糸を一周させる程長くなかった。
「何とかなるだろう。シッ」
糸を首に添えて足で頭を固定して思いっきり引っ張る。
ブシャッ
瞬間的に加速した糸は容易く首の鱗を切り裂き中へと入る。
「もう少しだ」
ブシュゥ
最後の引っ張りで糸が首を通過して両断する。
ブシュゥブシュゥ
首は切断されても生命力の高いクロコダインは切断面から血が噴出し湖を汚す。
「アオイ・・・アレ」
ん?
バシャバシャバシャッ
クロコダインが6匹程、湖から顔を出して近づいてきた。
流石に武器も無い状態で連戦は避けたい。
「帰るぞ」
ブンッ
切断したクロコダインの首を湖に放り投げると集まりつつあったクロコダイン達は元仲間の首を奪い合うように食い始めた。
その隙に俺たちは拠点に帰る事にする。
「ソレ、持ってこれるか?」
ミャアア
ブレッドとパンが一鳴きしてクロコダインの尻尾を加えてズルズルと引き摺り始める。
グッ
今の戦闘中で粗方水分が落ちた泥粘土の入ったカゴを背負い引き返す。
「コレ、どうするの?」
家前に置かれたクロコダインの屍骸。
解体するにも石の刃では皮膚が硬く切れそうに無い。
「糸でも無理そうだしな」
オリハルコンの糸でも取っ掛かりが無ければ剥がすのは無理だ。
ピピピッ
唐突に電子音が鳴り響きログハウスに置いてある通信機へと向かう。
ソーラー発電で通信機は常に使える状態である。
リィンカーンは生きているのか、通信が入って来た。
通信機の画面にはこの島の一部マップが映し出されて赤いマークが点滅していた。
俺の脳内マップと照らし合わせてみると最初に一夜を明かした海岸の洞穴より更に南側に行った所を指し示している。
「行ってみるか」
「私は待っているわ。少し疲れたの」
「あぁ」
リリィを置いて俺は点滅の場所へと向かうために動く。
ガルル
ブレッドが俺の前にきて伏せた。
「如何した?」
ガルルゥ
「乗れって事か?」
ガルッ
「助かるな」
ブレッドの背に乗ると思いのほか柔らかい体で短い毛は手触りが良い。
「あっちだ」
ガルルゥ
俺の指し示す方角に向けて走り始めた。
「こりゃ楽に移動ができるな」
森の中だというのに一切スピードを落とさずにスイスイとブレッドが木々を避けてあの洞穴まで20分と掛からずにたどり着いた。
「たしかこの先だったな」
ザクザクザクザクッ
砂浜を進み、南側にそびえる山から連なる断崖絶壁へとやって来た。
ここから向こう側に進むには海を迂回する必要があるな。
キラッ
なんだ?
日光を反射して断崖絶壁の中腹に光るもの発見した。
「尾翼の一部か?」
リィンカーンの尾翼だった物が突き刺さっていた。
目測で縦30cm、横幅10cm、厚さ5cm程の小さな一部だ。
「アレを使えってことか?」
たしかにアレならワニの鱗皮を剥がす道具には成るが・・・都合が良すぎるタイミングだろう。
なんだか試されている様だ・・・
上を仰ぎ巨大な山の山頂を見るが何もない。
ザクッ
ザクッ
命綱の無いロッククライミングをして断崖絶壁を登る。
掴むところは殆どなく、指を岩に突き入れて無理やり登っているに過ぎない。
人間からかけ離れている肉体に感謝だな。
ズボッ
埋まっている部分が出てきて長さは50cm程の尾翼の一部だった。
「武器にはなりそうだな」
刃物としての価値はないが、素材がアダマンタイト製だし打撃武器にでも使えそうだ。
ダンッ
地上30m位から飛び降りて着地する。
普通は足が折れる高さなんだがな・・・
・・・
「何それ?」
「リィンカーンの尾翼だった物だ」
「これで何するの?」
「こっちの細くなっている部分で鱗皮を剥ぐ」
「出来るの?」
「さぁな?」
やって見ないと分からないし。
ズボッ
首の切断面に尾翼の破片を突き入れてみれば折れる事もなく皮膚と鱗の間に差し込めた。
ビビィッ
力を大分入れるが無理やり引き剥がせている。
「フンッ!」
腹の部分まで差込み無理やり力技で引き裂く。
「ボアの釣るし台で解体してくる」
「紐作りをしているわ」
「その前に泥粘土を日向に持って行ってくれるか?」
「分かったわ」
グイッ
大きなカゴに入れっぱなしの泥粘土をリリィは担いで浜辺のほうへと向かっていった。
俺ほどの力はなくても、あの重量(350kg)は持てるようだな。
・・・
川辺の釣るし台にクロコダインを吊るすが3m越えで旨く吊るせない・・・
「切るか」
長い尻尾を根元からオリハルコンの糸で切断すると胴体は2m程になる。
ギギィ
「あとで新調だな」
ボア以上の重量で吊るし台の耐久値が気になるな。
ビリィバリィ
尾翼の破片で鱗と皮膚の間に差込み引っ張るとビリビリと剥がれていく。
2時間近く剥がすのに手間を掛けたが解体素人だと妥当だろう。
背中に空いた穴意外は綺麗に鱗皮が取れた。
更に内臓の取り出しの為、腹を引き裂く。
ブシュゥ
内臓を破壊した為に大量の出血が俺に掛かる。
バシャバシャバシャッ
近くの川で洗い流して再開する。
「内臓は駄目だな・・・付近の肉もそぎ落とそう」
内臓は食べられない状態であり、毒性の物質が蔓延している。
穴を掘って内臓を捨てる。
腕や脚の部位を切り、胴体を大体のブロックで刻む。
小さめのカゴにブロック肉を入れて家に運び入れる。
ガブガブガブッ
クロコダインの腕をレーズンに与えてみると小さいながらも肉を食べ始めた。
「お前達もな」
今かと待ち構えているブレッドとパンにも肉を与えてやる。
土器作りは明日だな、日も暮れての作業は止めている。
家で出来る事と言えば、採取した薬草の仕分けと紐作りだけだ。
お疲れ様でした。




