66話「無人島生活①-漂流」
注意:ここからは作者が勝手に考えだしたサバイバル術や応急手当の内容が含まれています。正しい情報だと勘違いされるかもしれませんが決して真似をしない様にして下さい。『当作品に関する内容を真似た行為に関して、事故や病気・怪我などの一切の責任を負いかねます』サバイバルをする場合は専門の知識書で確認してください!
ザバァッ
リリィを担ぎ、数十メートル先の海岸へと泳ぎたどり着く。
「息をしていない」
気絶し海底に沈んだのだから仕方がない。
「死ぬな!」
グッグッ
リリィを浜辺に横たわらせて心臓マッサージをする。
スゥウウ
フゥウウウ
人工呼吸で息を吹き込み自発呼吸を促す。
グッグッグッ
フゥウウウウ
心臓マッサージと人口呼吸を繰り返す。
「死ぬな!お前を死なせるか!!」
何度も何度も繰り返す。
「うっ、ゴホッ」
ビシャッ
「リリィ!?」
リリィが息を吹き返し海水を吐き出す。
「大丈夫か!」
「・・・えぇ」
「無理をするな!今、暖かいところに連れて行くからな」
「・・・うん」
グッ
リリィを力強く抱きしめて、海岸を走る。
早く水に濡れた体を温めなくては駄目だろう。
「アソコで良いか」
海岸の崖にぽっかりと空いた洞穴を発見して中へと入る。
中に危険な生物が居ないか確認して一番奥へと侵入する。
どうやら、ただの洞穴の様だった様でリリィを横たわらせる。
「さすがに何もないか」
洞穴内は岩肌が削れただけで中には何もなかった。
浜辺の近くには乾燥した流木や何かあるかもしれないな・・・
ビチャビチャビチャッ
外套に染み込んだ水を絞りだしてリリィに掛けて外へと再び出る。
リィンカーンが墜落した場所はここから数十キロ先の海の底のようだ。
《マスター、聞こえますか》
「無事だったのか!?」
通信機越しにリィンカーンから音声が流れる。
《機械に無事という概念はありません》
「そうだったな。機体は大丈夫か?」
《残念ながらリアクター及び推進器が破損しました。放射線等の物質は漏れていませんのでご安心を》
「エネルギーは保つか?」
《残エネルギーは少なく。これが最後の通信となるかもしれません》
「そうか」
《ご安心をすでに救難信号を全方位に向けて発射しております。方舟の方々がキャッチして頂ければ直ぐに救援はくるでしょう》
「済まないな」
《マスターの役に立ってこそのAIサポートシステムです。そろそろエネルギー切れが近づいてまいりました。お先に眠らせてもらいます》
「機械は眠らないんじゃないのか?」
《機械ジョークというやつですよ。では・・・》
ビビビィイイ
通信機から砂嵐のような音が響く。
「いつかサルベージするからな」
救援が来たら海底から引き上げる事を誓い使える物を探しに向かう。
・・・
・・・・・・
何とか乾燥した流木やヤシの実らしき物を見つけて洞穴に戻ってくる。
「魔法が使えれば早いんだがな」
魔力の無くなった俺では火すらまともに点けられない。
スキルに頼り切った生活した弊害が来てしまった。
シュッシュッシュッシュシュッ
古い記憶をたたき起こして、原始的な火起こしを試してみる。
乾燥した木と木の枝を擦り合わせて火種を作り出す。
モワッ
高ステータス補正なのか、たったの5秒程で煙が立ち上がった。
シュッシュッシュッシュシュッ
「ずいぶん簡単に火種が作れるんだな?」
摩擦で擦れた火種が直ぐに出来上がった。
更にヤシの実についていた繊維を集めて火種を中央に落として息を吹きかける。
モクモクモクモク
ボワッ
あっという間に火が上がった。
「始めてやってコレなのか?」
記憶にある人物はずいぶん時間を掛けて火をおこしていた筈だった。
パチパチパチパチッ
集めた火に燃焼性のある木々を追加して火力を上げさせる。
小ぢんまりとした洞窟に火の熱量は充満していく。
煙は開放感溢れる出入り口から天井を伝って逃げていく。
「うぅん」
ずいぶん時間がたってリリィが目を覚ました。
「気分は大丈夫か?」
「えぇ・・・また助けられちゃったわね」
「気にするな」
「有難う」
「そのまま寝ていろ」
「私達はどうなったのかしら?」
「さぁな。空気なんかあるから居住可能な未開拓惑星にでもジャンプしたんだろう」
「リィンカーンは?」
「海の底だ。救難信号が出ているから待つしかない」
「そう・・・眠いわ」
「眠れ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ピカッ
太陽の眩しさに目を開く。
どうやら俺も寝ていた。
「む?」
「おはよう」
「これは一体」
俺の目の前に見下ろすリリィの顔。
後頭部には柔らかい感触が伝わっている。
リリィに掛けていた外套は俺に掛かっていて仄かに甘い香りが漂う。
「寝助さんね」
「スマンな」
「もう少し位なら」
「なんだ?」
「もう、いいわ」
「体調は大丈夫か?」
「えぇ。御免なさい」
「どうした?」
「アレ、飲んじゃったわ」
リリィが指差すのはヤシの実だ。
穴が開いていて残っていたココナッツジュースが垂れている。
「構わない。しかし良く飲む気になったな」
「え?」
「未知の惑星の実だぞ?」
「飲んじゃマズイ物なの」
サァとリリィが青くなる。
「あぁ。問題ないから安心してくれアレは食べられる。中の水分も飲める」
パチィン
リリィの小さな平手が俺の左頬を叩く。
「何故に?」
「脅かさないでよ!!」
「いや、もう少し危機感というのをだな」
「知らない!」
リリィが洞穴を出て行った。
女心は分からんな?
俺も外に出て行く。
昨日はリリィを助けるのに精一杯で周囲の事は分かっていない。
リィンカーンは巨大な島だと行っていたのだから孤島なのだろう。
砂浜には流木などが打ち上げられているが使えそうな物は無い。
「リリィ、何処へ行くんだ?」
「さぁね」
「あまり遠くには行くなよ」
「私はそこまで子供じゃないわ」
見た目18歳位にしか見えないからな。
という俺も20代前半の見た目をしている。
2人供上位種族になった為に見た目が変化しているのだ。
同じくフェリス、ハルヒコ、アキヒサ、ウミも20代前半で老化が止まっている所を見るとヒューマンの老化現象は抑えられているようだ。
30代を過ぎていたロイドと俺は若返る形になった。
「未知の生物が居るかも知れないだろ?」
「馬鹿にしないで!私も戦えるわ」
バンッ
怒りを露にしたリリィが右手でヤシの木を叩く。
バキィ
メキメキメキ
ドスゥン
「・・・お、おう」
たったの一撃でヤシの木がへし折れた。
「ほらね?」
「それなら平気だろう」
ヤシの木からヤシの葉と実を採取して洞窟に持ち帰る。
「私の体どうしたのかしら?」
「この惑星の動植物が極端に弱いのか・・・俺達が強すぎなのか試してみる必要があるな」
俺はリリィが倒したヤシの木の元へ向かう。
グッ
バキッ
指で掴もうとしたらヤシの木に穴が空いて持ちやすくなった。
「うわぁ」
「化物を見る目でみるな」
「だってねぇ」
「これからが本番だ」
グッ
ヤシの木を振りかぶり、海に向かって投げた。
ブォオオオン
バシャァアアン
ヤシの木が水面スレスレを吹っ飛びかなり先で着水した。
「軽いな」
「いえ、アオイが強すぎるのよ」
「そういうお前もな」
「うっ・・・否定できないわね」
「とにかく、サバイバルに必要なのは水、食料、火、キャンプ地の確保だ」
「そういえば火はどうやって着火したの?」
「乾燥した木と木を擦り続けて着火した」
「原始的ね」
「それ以外何もないからな」
外宇宙スーツと外套程度の装備しか俺達は持ち合わせていない。
「リィンカーンの中には何かあるかも?」
「海底までは潜れん」
「そうね」
「早めに洞窟生活もでないとな」
「あそこで十分じゃない?」
「満ち潮があった場合、あの低い洞窟だと水の中だ・・・天井にフジツボらしき形跡があったしな」
「・・・早く移動しましょう」
「そうだな」
砂浜のように見えるがいつ水没してもおかしくない場所だ。
ヤシの葉で実を包み運ぶ。
インベントリすら使えなくなっているから持てるものにも制限が付く。
海岸沿いは10m程の崖になっている。
どこからか上がれる場所はないか海岸沿いを歩く。
「アソコから上がれそうよ」
「そうだな」
上がれそうな細道を発見し登る。
「森か・・・」
鬱蒼と茂る緑へと景色を変える。
「この装備で大丈夫かしら?」
「スーツ自体も強い素材だった筈だ」
「先に進みましょう」
ヤシの実を包んだ葉を肩にかけて俺達は森へと入る。
「何もないわね・・・ひっ!?」
「どうした?」
「く、くも」
木の幹に手のひら程の巨大な蜘蛛が張り付いていた。
「待っていろ」
パキっ
近くの木から枝を折って構える。
「フッ」
ブズッ
「ひぃいいい」
蜘蛛の腹に枝を付き入れた途端に6本の脚をワシャワシャとさせる姿にリリィがしゃがみ込んだ。
「もう大丈夫だ」
「なんで、捨てないの!」
「これも立派な食料だからな」
死んだ蜘蛛をヤシの葉の包みに入れる。
「食べるの?」
「食べれるぞ」
「それ以前の問題よ」
「う~む」
これでも野宿とかで虫や爬虫類を食べることもあったしな。
最近は滅多に食べないが・・・やはり女心は分からん。
「ハァハァハァハァ」
「大丈夫か?」
随分森の奥へ進んだようでリリィが息を切らし始めた。
「飲むか?」
チャプンッ
持ってきた実をリリィに見せる。
「もらうわ」
「あぁ」
ズブッ
「本当に人間かしら」
「ハイヒューマンだからな」
指を付き入れて硬い実に穴を開ける。
ゴクゴクゴクッ
「アオイも飲んだら?」
「そうだな」
「あっ・・・」
「なんだ?」
「何でもない」
ゴクゴクゴクッ
俺が飲んでいる時も目を離さないリリィだ。
バカッ
穴に指を差し入れて2つに割る。
「ん」
「何?」
「ココナッツの実だ。内側は食べられるぞ」
「そう。これだと食べられないわ?」
「それも、そうだな・・・」
俺は辺りを見渡すがちょうど良さそうな物は無い。
「コレでいいか」
近くに転がっていた平らの石を拾い上げる。
「まさか、それで食べろって?」
「贅沢言うな。フンッ」
バキィッ
石を左右から力を加えて折る。
切断面が斜めとなり鋭くなった。
「これで削って手で食べればいいだろう」
「・・・アオイって案外野生児だった?」
「15歳の頃は最低限の荷物をもって旅をしていたからな。これくらい日常茶飯事だ」
「そう・・・」
「嫌なら食べなくてもいいぞ?」
グゥウウウ
「食べるわよ」
ガリガリガリガリ
リリィが渡された石の破片を使ってココナッツを削り取り食べる。
「旨いわ」
「だろ」
ガリガリガリ
俺もココナッツを削り食べる。
「真水のある場所を探さないとな」
「ん・・・ちょっと待って」
リリィが目を閉じて耳を澄ませる。
「こっちよ」
「聞こえるのか?」
「ヒューマンより耳が良いだけよ」
「そうか」
リリィを先導に森の中を歩く。
サラサラサラサラ
小さな流水を見つける。
「川上を進むか?」
「川下は何があるのかしら?」
ここで2人の意見が別れる。
「川下は海につながっているだけだろう」
「何かあるかもしれないじゃない?」
「上も同じことだな」
「こういう時は」
「ジャンケンだな」
意見が分かれた場合にジャンケンは後腐れなくすむ
「「ジャンケン!・・・ポンっ」」
「やったわ」
リリィがパーで俺がグーを出して、川下を目指す事が決まった。
「なんだか、臭いわね」
すでに水がなくなっているが変わりに独特な匂いが立ち込めていた。
「硫黄の匂いか?」
「じゃあ、温泉があるのかしら!?」
「温泉があるのもな」
ここは森の中だぞ?
ゴボゴボゴボッ
「あったわ」
「あったな」
・強酸性源泉
水素イオンが多く含まれている温泉
切り傷、擦り傷に良い
90度。
パシッ
「触るな」
リリィが湯に触れようと手を伸ばしていたが俺が止める。
「90度の高温だ」
「それを早く言ってちょうだい」
「水で薄めて冷ますしかないな」
「何処まで続いているのかしら?」
温泉は小さな川を作り流れている。
ザクザクザクッ
流れている温泉を辿った。
ザァアアアア
幅5m程、水深20cm程の水が流れる川に合流していた。
「水は確保できたな」
「残念ね」
流れ着いた温泉は川の水量によって急激に温度を下げて薄まっている。
「川の水と温泉の割合を調整すれば入れるだろう」
「あんな水量なのよ?」
「別に源泉の流れを変える分には問題ないだろう」
「じゃぁ」
「それは、また後でな。今は衣食住を整えるのが先だ」
「そうね」
シュンッとするリリィ。
なんだか可愛く見えてしまうな・・・
ポンッ
「だから、子供扱いしないでよ」
「悪いな」
頭を撫でられて不機嫌なリリィ。
水の確保はできたが、今度は火の確保が面倒になってしまった。
ここは湿気が多くて乾いた木が見つかりそうにない・・・。
「食料も身近にないしな」
「食べられるものが少ないの?」
「この実2つと蜘蛛位だな」
「うっ」
まだ、蜘蛛に抵抗が有るようだ。
「動物でも居れば狩りにでるがな。リリィの耳で見つけられるか?」
「野生の動物だと難しいわ・・・」
「地道に探すしかないか・・・」
「海なら魚が一杯いるでしょ?」
「捕る道具がない」
「アオイの力技でなんとかならないかしら?」
「力でどうにかできるほど海は甘くないぞ。知恵が必要だ」
「むぅ」
「考えるより行動しよう」
「えぇ」
温泉の流れ込む場所に目印を立てて俺達は川下を目指す。
ザザァン
ザザァン
俺たちの漂着した砂浜とは別の砂浜へと出る。
あの場所よりヤシの木がたくさん生えている広い砂浜だ。
「あの入り江なら何かあるかもしれないわ」
警戒無くリリィは入り江の先端に向かって進む。
幾らスーツの強靭性があるとは言え岩場を進むのは危険だ。
ズルッ
ザバァン
案の定、転んで海に転落した。
「あぷ、あぷっ」
まさか、泳げないのか?
手足をバタつかせて必死にリリィは海面に顔を出している。
ザバァン
バシャバシャバシャッ
ガシッ
「もう大丈夫だぞ」
「う、うん」
ギュッ
リリィが俺の体を必死にしがみ付く。
「浜に戻るからな」
途中で脱ぎ捨てた外套をリリィに掛けて周囲から火を着火できそうな木々を拾いに行く。
シュッシュッシュッシュシュッ
摩擦で擦れた火種が直ぐに出来上がった。
更にヤシの実についていた繊維を集めて火種を中央に落として息を吹きかける。
モクモクモクモク
ボワッ
僅か5分ほどで火を熾す。
「簡単に火が熾るのね」
「何故だかな」
「私にもやらせて」
「あぁ」
シュッシュッシュッシュシュッ
「あれ?」
俺と同じように木と木をこすり合わせているが煙が起こらない。
シュッシュッシュッシュシュッシュッシュッシュッシュシュッ
リリィは頑張って擦るが全く煙が出てこない。
カランッ
「ハァハァハァハァ」
10分ほど粘っていたが火は熾らなかった。
「どうして?」
「これでも飲んで落ち着け」
近くのヤシから実を取ってきて渡す。
ムシャムシャ
ついでに蜘蛛を火で炙って食べる。
「うっ」
それを見て嫌な顔をするリリィ。
「何か食べないともたないぞ」
「これでも食べてるわ」
リリィは自ら実を割ってココナッツを食べ始める。
腕力は俺より劣るがヒューマン以上なんだよな・・・何が違うんだ?
「貝くらいあるんじゃないか?」
「そうね!」
リリィが立ち上がって浜辺を歩き始める。
深くなければ問題ないだろう・・・俺は岩場あたりを散策する。
「おっ」
水面近くに動くものを発見した。
パシャっ
手を突っ込み岩場に隠れている奴を引っつかむ。
「っつ」
手に挟まれた感じ取りながら引っ張り出す。
「カニか?」
随分、手の部分が鋏が太いカニだ。
・太手ガニ
その強力な鋏で挟まれた柔らかい肉を持つ者を切る事のできるカニ。
毒性なし。
食えそうだな。
ゴスっ
そこらに落ちていた石でカニの頭を潰して持ち帰る。
「アオイ、たくさん見つけたわ」
すでに焚き火の近くにリリィが居て大きめの貝を数個ほど持っていた。
・ホッタテ貝
大きめの二枚貝。
毒性なし。
「食べられるぞ」
「さっそく火で炙ろうと思ったけど、どうやるの?」
「火に入れるんじゃなくて、火の弱いところに置くだけでいい」
火のついた小さな薪の上に貝を乗せる。
「アオイは何か取れた?」
「カニだ。こいつも食える」
「カニ!?」
「お前笑うと可愛いな」
「え?」
心の声が漏れてしまいリリィが顔を真っ赤にする。
「やだもぉ、今年で57歳よ」
「レディに歳の話は禁止だったんじゃないか?」
「何十年も前の話よ。さっさと焼いてしまいましょ?」
「そうだな」
貝とカニを焼いて、2人で分け合いながら夜を迎える。
「ねぇ」
「ん?」
リリィに膝を貸して寝転がらせている。
「私達、このままずっと居るのかしら?」
「さぁな。救難信号さえ届けばあの艦の性能ならそう時間は掛からないだろう」
「でも、ペンドラゴン達が復活しないんでしょ?」
「アイツ等ならなんとかするさ」
NALLシリーズが居なくても艦は動かせるだろう。
「そうね・・・ふわぁ」
「眠いか?」
「お腹一杯だから」
「ここより、別の場所に移動するぞ」
「すぅすぅ」
遅かったか。
グッ
リリィを担ぎ浜辺を後にする。
月が出て、海水が上昇している。
ジュウウウ
焚き火が海水にひたり鎮火されるのを見て俺達は森へと引き返す。
パチパチパチパチ
新たに火を熾して俺も横になる。
スーツの性能がいいのか暑さも寒さもあまり感じない。
・・・
・・・・・・
「きゃああああ」
ババッ
リリィの悲鳴を聞き、目覚める。
「あっちか」
悲鳴の方角に向かって走る。
バサッバサッ
茂りを無視して真っ直ぐに進む。
ザァアアア
川上に向かっていくと水に混じって赤い物が流れていた。
「大丈夫か?」
「アオイ・・・アレ」
リリィが恐怖に顔を歪めて指差す。
「これは・・・」
1m程の猪らしき生物が横倒れになっていた。
頭部が陥没し大量に血を流し即死していた。
「リリィ、その右手はどうした?」
サッ
リリィが右手にベットリ付いた体の影に隠す。
「・・・」
「そんな、見つめないで」
「これはお前が殺ったのか?」
「だって、急に出てくるんですもの」
ポンッ
「とりあえず、ようこそと言っておこう」
「へ?」
リリィの肩に手を置いて猪もどきを担ぐ。
「お前のおかげで肉が手に入った。手は洗っておけよ」
「う、うん?」
困惑気味のリリィを置いて、寝ていた場所近くの川辺に猪もどきを下ろす。
【鑑定】
名前:NoName
レベル:10
種族:ファングボア
体力:0/150
魔力:0/0
状態:死亡
「この石でいいか?」
・硬岩石
通常の石より硬い。
割れやすく鋭い刃になる。
ガンっ
バキャッ
石が粉々に砕け散る。
・硬岩石の刃
硬く鋭い刃。
ブズッ
グボッ
ブシュゥウウ
頚動脈を石の刃で切り、体を思いっきり押し込むと血液が噴水のごとく噴出す。
流れ出る大量の血は川を伝って海へと向かう。
ブシュッ
ブシャッ
「こんなもんか?」
粗方、血を外にだす。
本当は足をロープで縛って逆さづりにしたかったが道具が無かった。
ビッビッビィ
石の刃でファングボアの毛皮を剥いで皮下脂肪が出てくる。
「なに、この大惨事?」
手についた血を洗い落としたリリィが俺の所に戻ってきた。
周囲にまき散る大量の血に呆然としている。
「ちょっと血抜きをな。そっち抑えててくれるか?」
「嫌よ」
「じゃ皮の方を持っていてくれ」
「うぅん」
なんだか嫌がっているが人手が居るし新鮮なうちに食べれる物が目の前にあるのだからササッと処理をしておきたい。
「うぅ」
生きていたボアの毛皮を持って引っ張る。
石の刃を滑らせて剥いでいく。
次は内蔵だな・・・
ビビィ
ピチャッ
腹を掻っ捌くと血が噴出し顔を汚す。
「よく平気ね」
「こんなもの幾らでも見てきたからな」
野宿では野生の動物を狩るのも当たり前で行ってきた。
ハルヒコ達が召喚された惑星での旅も同じ事をやって来たしな。
バキィッ
肋骨を無理やり開き内蔵が見える。
「心臓と肝臓はいけるな・・・後は駄目か」
ハツとレバーだけを取り、残りの内臓は地面に穴を掘って埋める。
バシャバシャッ
血で汚れた臓器を水で洗い流し石の刃で薄く切る。
「ん」
「食べられるの?」
「旨いぞ」
モゴモゴ
俺が先に口にしてみる。
「分かったわよ・・・」
切り身のハツを手に取り口に運ぶ。
「んぁ・・・美味しい」
「新鮮だからな。時間がたつと食えなくなるから褒美みたいな物だ」
「レバーは危険だって。昔聞いた事があるわ」
「店に出る場合はな。死後1時間以内だし問題ないだろう・・・たぶん」
「不吉な事言わないでよ」
「一応焼くか?」
「・・・そうする」
「コレを火にくべて熱してから焼け」
薄い石を拾ってリリィに渡す。
俺は残りのハツを食って残りの部位を切り出す。
肉は死亡してからドンドン悪くなる一方だからな。
リリィは石とレバーを持って寝ていた場所に戻っていく。
後は食べられそうな部位毎に切り分ける。
この量だと2人で食べるには数日は掛かる・・・冷蔵庫もないこの場所では生肉が痛み食べられなくなるのも時間の問題だ。
干し肉にしたい所だが、他の動物に食べられる恐れがある。
グルルゥ
「おぅ」
唸り声を聞き振り向くと太い牙が特徴の豹らしき動物が睨んでいた。
猪の血に引き寄せられた様だ・・・
お疲れ様でした。




