65話「天の川銀河」
注意:この話を境にファンタジー要素が殆ど無くなる事をご了承下さい。
「ハイパージャンプドライブ起動まで3・・2・・1。ジャンプします」
バシュゥ
アンドロメダ銀河を10年間程飛び回り、遂に天の川銀河へと繋がる銀河椀の情報を手に入れることが叶った。
この10年間の内に艦もだいぶ改良が施された。
コールドスリープ装置はハイパースリープ装置に換装し従来の十倍以上眠る事が可能となった。
リアクターは対消滅反応炉A型を4基、高速推進器S型も4基積み込み1光年を5時間で通過できる。
俺が勇者召喚で転移した距離を進むのに3年掛かったそうだが、たったの13日で到着する速度を出せる。
□基本性能
艦名:方舟
艦種:戦艦型
艦体:全長2km(箱型)
主機:対消滅反応炉A型2基 高速推進機S型4基
補機:サブブースター8基
最高速度:73,264コイル
兵装:主砲 戦艦級レーザー砲(荷電粒子砲)1門
副砲 なし
対宙砲 40cmレーザー単装2基10門
ミサイル発射管 戦略型ミサイルポッド5門
防御:アダマンタイト装甲板
耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜A型
電子兵装:光学観測装置B型、広域通信機B型、高性能アンテナB型
特殊兵装:亜空間停滞収納C型(秘匿)、クラス15戦闘魔導機・CTL-40165リィンカーン(秘匿)
特記事項:ハイパージャンプドライブ、ハイパースリープ20個
ビービービー
ジャンプ中に警告音が鳴り響く。
「何が起こったのだ!」
珍しくロイドが焦っている。
ジャンプ中に不具合が発生するのが珍しい為だ。
「超重力網を検知、引き寄せられています」
「対象は巨大なブラックホールと判明」
「銀河椀の間にか!?」
「ジャンプアウトします!」
バシュゥ
銀河椀の間で艦が放り出される。
「光が全くない」
「銀河椀の間は光のない空間と聞いていたが・・・」
「前方に巨大ブラックホール」
全部が真っ暗でどれがブラックホールか分からない。
ギギギギィッ
「ブラックホールに入りました」
「頼むから潰れないでくれよ」
「今まで貯めていたアダマンタイトで不要な空間を埋め尽くしていますが」
「どうした?」
「超重力による圧力で艦体が縮んでいます」
「そうなるとどうなる?」
「圧迫死の恐れがあります」
「おいおい、ここまで来てかよ」
「対消滅反応炉A型沈黙しました」
「艦内エネルギー消失」
「停電します」
パッ
全ての電力が落ち始めている。
「予備炉を叩き起こせ、ハイパースリープ中にそれだけはマズイ」
俺とロイド以外の連中はハイパースリープ中でエネルギー不足によって強制的にたたき起こされる事だけは避けなければならない。
そういった生物の脳に深刻なダメージを負うからだ。
「対消滅反応炉F型の起動を確認。エネルギーをハイパースリープとブリッジに集中させます」
パッ
再び電力が復活する。
「ブラックホールから抜け出します」
ブワッ
なんとか、押しつぶされずに抜け出せた様だ。
視界が広がり、星の煌きがモニターに写る。
「射撃艦船用の高周波レーダーで周囲を確認しなさい。他の機器チェックですよ」
「「「「はっ」」」」
ペンドラゴンの指示でテキパキとチェックを開始するNALLシリーズ達。
「レーダーに異常はありません。人工物等も検知せず」
「全システムオールグリーンである」
「居住区エリア、期間エリア、特別エリア、医務室、格納庫等に被害なし」
「艦体が10%程縮小しました」
「艦外武装が全て破損しました」
次々に報告が上がってくる。
「続いて近距離高精度スキャンをします」
600km圏内を高精度でスキャンする。
「異常は発見されませんでした」
「光学観測によりスールン星系の領域ではない事を確認。トランスポンダーは沈黙しているのである」
「つまり、到着したのか?」
「ただいま正確な位置を確認中ですが、アンドロメダ銀河ではない事は確かかと」
「そうか、うっ」
ドクンッ
急激に頭痛を感じた。
「マスター?」
「なんだ、急激に力が・・」
ズサッ
平衡感覚を失い片膝を付く。
「ウググッ」
「ロイド?」
ロイドも胸を抑えて痛みにこらえている様だ。
「くっ!?」
痛みが激しくなり強制的に気絶する。
ドサッ
・・・
・・・・・・
「うっ!」
「うぅ」
何時間経ったのか分からないが俺とロイドは目を覚ました。
「ここは?」
「医務室です。マスターとロイド艦長が倒れたので運びました」
「そうか・・・なんだか体が重いな」
「バイタリティーチェックをしましたが、異常は見られませんでした」
「・・・ん?」
なんだ?
何かを感じない・・・
「ロイド・・・何か変化があったか?」
「う、うむ。私も何かが抜けたような・・・」
「ただいま、ほかの皆様方もスリープ状態から回復させています」
「起こしたのか?」
「マスター達の様子を見て、他の方々も体調に変化が無いか確認しなければならなくなりました」
「目覚めたらブリッジに集まってもらう」
「分かりました」
俺とロイドは転移魔法陣でブリッジに行こうと踏むが反応がなくなった。
「どうなっているのだ?」
「まったく反応が無くなっている・・・魔法陣自体は決壊している訳じゃなさそうだな」
仕方なく歩きでブリッジに向かう。
プシュッ
ブリッジに到着するとハイパースリープから目覚めた面々が集まっていた。
キャメリア、リリィ、リウイ、スターニア、フェリス、ハルヒコ、アキヒサ、ウミの8人だ。
「おはよ~」
「おはよう」
「ふわぁ、まだ眠いわい」
「急に起こすなんて酷いのですよぉ」
「おはようございます」
「おはようございます」
「おは~」
「おはよう」
まだ眠たさがあるようで皆あくびをしている。
「お前達、喪失感とか無いか?」
「なにか無くなった感じだよね~」
「そういえば、体がダルイような気がするわ・・・」
「なんだか、調子が悪いようじゃの」
「長い事眠っていた弊害なのですかぁ~」
「私は大丈夫ですね」
「僕は何か足りない感じがします」
「う~ん、力が入らない感じっすねぇ」
「・・・アキヒサ、魔法って使える?」
「なに、言ってんだよ・・・魔法が・・・え?」
!!?
「魔力が無くなった?」
「なにか足りないと思っていたが魔力を感じないのである!」
「私はわかんないなぁ?」
「うそ、なんで!?」
「力が入らないのはコレじゃったか」
「何があったのですかぁ?」
「あぁ、スキルの殆どが失われています!?」
「嘘だろ!くそ!!魔法系のスキルが全て消えているぞ」
「私の回復系も全滅だわ」
戦闘系のスキルが殆どが使えなくなっている事に気づき全員が騒然とする。
「魔力を使うスキルが全滅か・・・」
「そりゃ困ったわい・・・バシップ系のスキルはどうじゃ?」
「鑑定までなら何とか発動する・・・が」
自分を含めて全員を鑑定してみる。
【鑑定】
名前:アオイ
レベル:35(ヒューマン:210)
種族:ハイヒューマン
職業①:傀儡師(Lv70)
職業②:魔導師(Lv70)
職業③:勇者(Lv70)
職業④:盗賊(Lv70)
職業⑤:薬剤師(Lv70)
職業⑥:採掘師(Lv70)
職業⑦:裁縫師(Lv70)
職業⑧:木工師(Lv70)
職業⑨:僧侶(Lv70)
体力:39,010/39,010
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:キャメリア・クルン
レベル:35(キャットピープル:70)
種族:ハイキャットピープル
職業①:電子戦技能士(Lv70)
職業②:機関整備士(Lv70)
体力:2,818/2,818
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:リリィ
レベル:35(ホビット:70)
種族:ハイホビット
職業①:魔導師(Lv70)
体力:3,341/3,341
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:リウイ
レベル:70
種族:エルダードワーフ
職業①:鍛冶師(Lv70)
職業②:機械光学(Lv70)
体力:2,555/2,555
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:スターニア
レベル:70
種族:ハイエルフ
職業①:薬剤師(Lv70)
職業②:錬金術師(Lv70)
体力:2,081/2,081
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:ロイド
レベル:35(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:司令官(Lv70)
体力:2,680/2,680
魔力:0/0
状態:健康
【鑑定】
名前:フェリス
レベル:35(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:合気道家(Lv70)
体力:4,060/4,060
魔力:0/0
状態:健康
【看破】
名前:天城晴彦
レベル:35(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:勇者(Lv70)
体力:11,650/11,650
魔力:0/0
状態:健康
【看破】
名前:陸奥秋久
レベル:35(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:賢者(Lv70)
体力:6,475/6,475
魔力:0/0
状態:健康
【看破】
名前:夏風海
レベル:35(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:聖女(Lv70)
体力:4,750/4,750
魔力:0/0
状態:健康
「という感じだな。全員、魔力がなくなっている」
「アオイさんがダントツの化物だという事が分かったのですよぉ」
「笑顔で酷いこと言うな」
「勇者だったんですね」
ハルヒコが呟く。
「俺が生まれた星のな」
「早く言ってくださいっす」
「あの時、別世界とはいえ勇者が2人揃っていたなんて・・・」
アキヒサとウミが呆れる様に言う。
「黙ってて悪かったな。この中で体力面で強いのは戦闘職のリリィ、フェリス、ハルヒコ、アキヒサ、ウミの5人か」
「勇者補正でアオイさんが強いのは分かりましたが差が開きすぎじゃないですか?」
「そうなのですよ」
「なにか裏がありそうじゃな」
「もしかして、その大量の職業取得に関係しているんじゃないかしら?」
リリィの鋭い観察眼が発動する。
「その通りだな、お前達よりも多くの職業を所持している事が起因だ。多くの職業適性を持ちレベルを上げる事によってステータスが上昇する。今ならスキル補正なしで鉄板位なら素手で穴を開けられるぞ」
「ハイハイ、化け物自慢は他所でやって頂戴。今、考えるべきは何故みんなの魔力が消えてしまったのかを考えましょう」
「所で此処は何処なんですぅ?」
「分からないんだ」
「分からないって事はなかろうて」
「俺たちは予定通り、銀河椀を超えて目的地である天の川銀河にハイパージャンプをしていた」
「つまり、天の川銀河に到着したのではないのですか?」
「その時、トラブルが発生した・・・巨大なブラックホールに俺たちの艦は飲み込まれた」
「それって大惨事じゃないっすか!!」
「生きている以上は全員無事に通過できた事になるが・・・」
「本当に天の川銀河についたか不明なのですか?」
「いま、ペンドラゴン達に調べてもらっている」
「あれ?NALLシリーズも魔力を使って動いているのではないですか?」
!?
「たしかに」
ダッ
俺はダッシュでペンドラゴン達の様子を見に行く。
プシュッ
ブリッジに入ると床に倒れているペンドラゴンを発見する。
「おい!」
「・・・あぁ・・・スター・・・訳ありま・・・ん」
「何があった!」
「・・・力が無く・・・り・・・私・・の活・・・限界・・した」
「くそ!もっと早く気付いていれば!!」
「・・・申し訳・・・りません・・・私達・・・の使命・・・はこれまでのようです」
「おい!!」
カタンッ
ピュウウウ
腕が床に崩れ落ち、両目の光が失われて動かなくなってしまった。
胸に嵌めこまれた魔石の魔力も無くなってしまったのが原因だろう。
「くそっ!」
「・・・スター・・あぁ・・ここに居たのですね」
ズリズルッ
「サンッ!」
階下から体を引きずって階段を登ってきたようだ。
「・・・最後・・スターに会えて・・・です」
「そんな事を言うな」
「この・・・・年間・・・スターの傍に・・・良かった・・・です」
「・・・馬鹿な事を・・・」
ポタポタッ
「・スター、泣かないで・・ださい」
「泣いてなんか!」
「・・・私達・・でも・・・マスター・・・います」
「おい!おい!!!」
カタンッ
ピュウウウ
サンも目の光を失い活動を停止する。
「何故だ!!」
ダンッ
怒りで床を叩く。
プシュッ
「アオイ・・・遅いと思って来てみれば・・・」
「リリィ」
「みんな、手伝って!NALLシリーズを運ぶのよ」
「わかったわい」
「手伝います」
「結構重たいですね」
「チャリオットは4人で運ぶぞ」
全員で協力して活動停止をしたNALLシリーズをブリッジ上階に運び出す。
「ダメじゃ、完全に活動を停止しておる」
この中で機械光学に精通しているリウイに見てもらったが魔力で動いていたNALLシリーズが活動停止の宣言をする。
後ろではリリィが指揮をとって指示を飛ばしている。
艦長席:ロイド・副艦長席:リリィ・砲撃席にアキヒサ・操舵席にハルヒコ・通信席にフェリス・電子戦担当席にキャメリアが座って対応をしている。
「アオイのおっさん。オレに任せてくれないか?ガンジって奴を信じてコイツ等のデータを抜き取りたい」
「データが残っているのか?」
「恐らく、ゴーレム技術と魔道具に科学をブレンドした奴じゃろう。体や動力はファンタジーじゃが、データは媒体に保存しているはずじゃ」
「分かった・・・任せる」
「あぁ。キャメリアの嬢ちゃんにも協力を頼むぜ。スターニアとウミの嬢ちゃんはオレと一緒にコイツ等を運び出しじゃ」
「わかったよ!私に任せて!!」
「分かったわ」
「分かりましたのですよぉ」
階下から元気のいい声が返ってくる。
グイッ
目元に貯めた涙を裾で拭い前を見据える。
全員が俺をみてる。
「急展開でみんな驚いているが、これからは俺達でこの艦を動かす事になると思う。アキヒサやハルヒコは初めての事で混乱すると思うがキャメリアを中心に聞いてくれ」
「よろしくお願いします」
「俺がレーザー砲担当とかって心躍るっすよ」
「このキャメリアお姉ちゃんにどんと任せなさい」
上位種族になって若々しくなったキャメリアだが何時までたっても少女のまんまだな。
「なによ?」
「何でもない」
「失礼なこと考えて無いでしょうね」
「否定はしない」
ゲシッ
「痛っ!」
俺を蹴った方のリリィが痛がる。
「防御力も化物なのね」
「強くなりすぎた様だ」
「ハハハッ、君たちは仲が良さそうで何よりであるな」
隣で聞いていたロイドが笑う。
「なっ!?そんなんじゃないわよ!」
顔を真っ赤にして否定する。
「アオイ殿、ここは私たちに任せて貰えないだろうか?」
「・・・あぁ。頼む」
俺は私室へと向かう為にブリッジを後にする。
「リリィ殿、いまがチャンスですぞ」
「何が!」
「あまり遠慮していると逃すのである」
「だから、もう!」
リリィもアオイを追いかける為に走り去る。
「この艦は恋愛に発展しないのであるなぁ」
「いやいや、俺達は家族見たいなものっしょ!」
「僕たちも年ですからねぇ。長く一緒に居すぎたのかもしれませんよ」
「う~ん。好きだけじゃ駄目なのかなぁ?」
「リリィ殿も時期が来れば分かりますぞ」
「ヒューマンと違って私はいつ発情期が来るのだろうねぇ?」
「・・・あれがそうじゃ無かったんですか?」
フェリスが首をかしげる。
「あれって何?」
「5年位前でしたか?キャメリアさんがアオイさんを襲っていましたよね?ベロンベロンに酔っ払っていましたが」
「ニャ!?」
「何を飲んであぁなったかは分かりませんが、もの凄い力でアオイさんの服を剥ぎ取りに掛かっていましたよ」
「嘘!?私、そんな記憶ないんだけど!!」
「酔っ払っていたからじゃないですかね?」
「おやおや、ここにも伏兵が」
「大胆ですねぇ」
「フェリスさんが見ていたと言う事は野外!?」
「いえ、旅館の方に無理やり引っ張っていたのを見ていたんですが私には刺激が強くて引き返しました」
「ふにゃぁ~。恥ずかしいなぁ」
「その後は闇の中ってやつっすか!」
「他の方に目撃されていれば分かると思いますが」
ブリッジ内には真実を知る者は居ない。
「あとで、ウミに聞いてみましょう」
「リウイ殿とスターニア殿にもな」
「普通にアオイさんに聞けばいいんじゃね?」
「今、聞きに行くのは得策じゃないのであるぞ」
「そうっすか?」
・・・
・・・・・・
NALLシリーズが活動停止になって数時間の時が過ぎた。
リウイが中心となって丁重にデータのサルベージ作業が行われているが強固に作られた頭部の解体に難航しているようだ。
ペンドラゴンの活動停止に伴って魔力で空間拡張していた草原フィールドへの扉が閉じてしまった様だ。
当然の様にペンドラゴン管理の亜空間停滞収納C型も使用不可となってしまった。
幸いにも食堂と食料庫は無事のようで材料は沢山残っていた為、数年間分は保つ筈だ。
・・・亜空間停滞収納も拡張フィールドも魔力だった。
「ちょっと」
俺が私室でボーっとしているとリリィが部屋を訪れた。
「なんだ」
「来なさい」
「?」
何時にもまして強気なリリィだ。
素直に後を追う。
ガァアア
格納庫に到着する。
「あっち向いてて」
パサッ
そう言うと衣服を脱ぎ始めた。
なんだ?
「もう、良いわよ」
振り向くと全身外宇宙用のレーダー無効化スーツを着用していた。
「気分転換に行くわよ。運転してちょうだい」
「誰でも運転できるぞ」
クラス15戦闘魔導機・CTL-40165リィンカーンが沈黙している。
「いいから運転して」
「こいつも魔導戦闘機だし動くか」
「魔導部分以外はマシンなんだから動くでしょ」
「そうだな」
元々外宇宙戦闘機を改造して作り出されたリィンカーンが動かないわけないか。
運転席に乗り込む。
《搭乗を確認。クラス15戦闘魔導機・CTL-40165リィンカーンサポートAIシステム起動。おはよう御座います。艦長、いえマスター》
「久しいな」
《それとリリィ様もお久しぶりですね》
「えぇ」
後ろの席にリリィも乗り込んでいる。
リィンカーンに乗らなくなって数十年の時が過ぎた・・・あの海賊船団との戦い後からか?
《この度はどのようなご用件ですか?》
「すこし宇宙空間に出てみたくてな」
《畏まりました。ブリッジに発進許可をもらいましょう》
「あぁ、そうだったな。ペンドラ・・ロイド、聞こえるか?」
《聞こえているのである。格納庫にいるのであるか?》
「あぁ。息抜きに宇宙に出てみたいんだが」
《少し待つのである。フェリス殿レーダーに異常はあるか?》
《600km圏内には異常はありません》
《であるならば発進許可を出すのである》
《リィンカーン発進!》
シャアアアアアア
カタパルトでリィンカーンが宇宙空間へと投げ出される。
《姿勢制御開始、戦闘機を水平へ移行》
直ぐに姿勢が安定する。
《リアクター稼働率上昇。推進器異常なし。マスター、いつでも飛べます》
ギュッ
「で、何処まで飛ぶんだ?」
「何処でも良いのよ。気分転換なんだから」
「分かった」
ゴッ
急加速で俺たちは艦から離れていく。
一方ブリッジでは・・・
「大丈夫かしら?」
「フェリスさん。アオイさんが居るんです」
「大丈夫っしょ」
「そう言う意味じゃないんだけど」
「あれ、今度はリリィさんがアオイさんを襲っちゃう番って事?」
「にゃぅ!その話はしないで欲しいよ」
ハハハハハッ
ブリッジ内に笑い声が木霊する。
・・・
「これは如何いう事だ?」
グググッ
艦から離れて宇宙遊泳をしていたら唐突にリリィから首を絞められていた。防御力のお陰で完全には閉まっていない。
「もぅ!何で気付いてくれないのかしら!」
何がだよ?
「私がこんなにも優しくしているのに」
首を絞めているのが優しいに入るのか?
「これでもアナタを慰めようと頑張っているのよ・・・」
何が言いたい?
「いつも一人で考えて、背負って見ていられないの!」
ガバッ
今度は両腕を俺の胸辺りまで回して締め付けてくる。
「今回の事もそうよ。みんなで考えて天の川銀河に向かう事は総意だったのよ。みんなの魔力が無くなったのもNALLシリーズの皆が動かなくなったのもアナタの所為では無いのよ。なんでも背負い込もうとしないで私達を頼って頂戴」
「お前、泣いているのか?」
キラキラと光る涙がコクピット内に浮遊する。
「そうよ!いつまでも孤独に生きようとしないで頼ってよ。みんな家族なんでしょ!」
「あぁ、ありがとう」
こう言って貰えるのは何年ぶりだろうか・・・
ビィービィービィー
唐突に警告音が鳴り響く。
「どうした!?」
《突如、謎の電磁パルスを感知。巻き込まれます!!》
バリバリバリバリバリバリ
リィンカーンを包むように落雷のような電磁パルスが周囲を埋め尽くす。
「うっ」
あまりの眩しさに目を瞑る。
《変形マスクを着用してください》
「わかった」
プシュッ
俺とリリィは変形マスクを着用する。
《これは》
「どうした!」
《どんどん艦から引き剥がされています。ハイパージャンプ現象と酷似しています!!》
「なんだと!?」
「それってつまり」
《ジャンプします!》
ブツッ
キャノピー越しにジャンプ中の風景が映し出される。
《モーションキャンセラー機能に異常を検知。衝撃に耐えられません》
ゴッ
「きゃっ!?」
俺とリリィが椅子に反動を受けて張り付けになる。
「大丈夫か!」
「もぅ、駄目」
《リリィ様は気絶しました》
クッ
かなり強い衝撃で手も腕も動かせない。
《ジャンプアウトします》
パッ
暗闇から一転、目の前に青空が広がった。
ドォオン
「今度は何だ?」
《リアクターが故障しました。核爆発はいたしませんが飛行不能です》
「くそっ」
《前方に大きな島と広大な海を確認。生存可能な空気等を検知、緊急脱出をします。マスター、生きて帰ってください》
「おっ」
バシュッ
キャノピーが強制的に吹き飛ばされる。
いつの間にかベルトで俺とリリィが固定されていた。
ドシュッ
俺が真上にはじき出されて、続いてリリィも脱出する。
ヒュォオオオオオオ
バッ
幾秒の後にパラシュートが開く。
気絶したままのリリィがこのままでは海に沈む。
リリィのパラシュートはイスが外れずに固定されている様で落下速度が速い。
グッグッ
パラシュートを出来るだけリリィの落ちる場所に近づけるよう操作しながら俺も落下していく。
ボワッ
ダァアアアアアン
リィンカーンが先に着水し水柱を立てながら沈んでいった。
ドバァン
ドバァアン
ガチャガチャッ
リリィが先に着水し、椅子ごと海の底に沈んでいく。
ベルトを外して、俺は底へと向かっているリリィを助ける為に潜っていく。
ゴババッ
ブチッ
腕力でリリィを固定しているベルトを引きちぎり椅子から引き剥がす。
ゴボボッ
リリィを抱えて海面を目指す。
お疲れ様でした。




