64話「魔王討伐」
魔王領へ入ってからは四六時中モンスターの襲撃を受けては撃退しつつ着実に進んだ。
時折知性のあるモンスターから魔王城の位置や方角を聞き出す。
ゴロゴロゴロ
ピシャァアン
「アレが魔王城か」
「そして、魔王軍ですね」
「何匹居るんだ?」
「勝てるかしらね?」
たった4人と1頭の眼前には巨大な魔王の城がそびえ立ち、眼下にはモンスターの大群がひしめいている。
1年の旅をしてようやく魔王の喉元にまで達した。
それまでに幾度となく危機を乗り越えて四天王の2人を退けた。
残る四天王はヤンデバウトだけとなった。
【20万7894】
簡易鑑定で導き出されたのは20万の数値。
「たった4人で20万か・・・」
「ハハッ!いくら勇者一行だからって無茶っしょ」
「戦力差が開きすぎているよ」
「撤退をした方がいいわね」
さすがに数の暴力の前では俺達が如何に強かろうが勝率は低い。
無限に体力があるわけではない、いつか破綻が来るのは明白だ。
ピピッガガガッ
《マスター!お待たせしました》
通信機から久しぶりにペンドラゴンの声が聞こえてきた。
「え?何処から?」
「アオイさん?」
「右腕からかしら?」
急に知らない声が聞こえてきて3人が驚いている。
ピッ
ウィン
右腕の通信機のボタンを押して、立体画面が映り出される。
!!?
3人は驚いて後ずさる。
「ピッタリに来たな」
《もっと早く到着したかったのですがギリギリとなりました。そちらの3人が対象者ですか?》
「あぁ。まずは魔王を倒さないと駄目なんだがな」
《分かりました。ご指示を》
「降下を開始して、目の前の敵を叩き潰してくれ」
《畏まりました。宇宙戦艦方舟降下いたします》
ピッ
通信が切れて静粛が訪れる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
直ぐに暗雲立ち込める雲を割ってその姿を現した。
3年間で向こうも色々あったのだろう、一般船という形から巨大な戦艦へと姿を変えている。
「UFO!?」
「あれは何ですか!」
「ファンタジーからSFが出てきたわよ」
見上げる3人は巨大な空中を浮かぶ戦艦を見て驚き慌てる。
キィイイイイイイン
船体下部で長方形の光が漏れ始める。
ドシュゥウウウ
ピンク色を帯びた光線が発射される。
ビュゥウウウウウン
螺旋を描くレーザー砲が曲線を描きながらモンスターの大群を薙ぎ払う。
土砂が大量に舞い上がり魔王城へと降り注ぐ。
シュンシュンシュンシュンシュン
戦艦から戦闘ドローンが投下され生き残りを掃討するべく土煙の中へと入っていった。
「活路は開かれた、行くぞ」
「いやいやいやいや、説明!」
「説明して下さい」
「そうね、気が動転していてそれ所じゃないわ」
「アレは味方だ。宇宙からきた戦艦のな。詳しい説明は後にして行くぞ」
3人を引っ張りながら魔王城へと向かう。
魔王城内部でも一瞬にして20万という戦力を壊滅せしめた巨大な飛行物体に度肝を抜かれて大慌てで情報収集をしている。
今もなお生き残った部下達が丸い飛行物体によって殺されまくっているという状況だ。
カツカツカツ
『来たか、勇者共よ』
さすが、魔王と言ったところか・・・
『卑怯であるぞ。あのような戦力で我が軍を滅ぼすなぞ』
動揺は隠せていない様子。
「魔王相手に卑怯も何も無いと思うがな。アレが何なのか分からないままこの勇者達に討たれるが良い」
「いやいや、俺もアレは無いと思っているっすよ!」
「どう考えてもファンタジーに科学を持って来てますよね」
「アオイさんは一体何者なのかしら?」
「俺が何者なのかも後で教えてやる。お前達は魔王を倒す事に集中しろ。目的を達成したいんだろう?」
バサッ
「魔王様、ここはお退きください」
ヤンデバウトが魔王の前に立ち登場する。
ピュンッ
「なっ、ガハッ!!」
ヤンデバウトは唐突に吐血し己が左胸を見ると風穴が開いていた。
「流石に光の速度は避けられないよな?」
俺の右手にはレーザーガンを持ちヤンデバウトに向けていた。
対レーザー装備を持っていなければどんな魔法耐性のある服だろうが貫通する。
「魔王様、お逃げください」
バタァッ
サァアアアア
ヤンデバウトは灰となって掻き消えていった。
『むぬぅ、小癪な』
「ハルヒコ、お膳立ては作り出した。後はお前たちだけで魔王を倒せ。でなければ地球へとは帰れないぞ?」
「・・・納得は出来ませんがやるしかありませんね」
「こうなったらヤケだ。後でキッチリ説明して貰うっすよ」
「2人共余計なことを考えないで頂戴」
3人が魔王の前に立ち武器を構える。
『ワシの役目を全うさせてもらうぞ。貴様等に敗れ去った同胞たちの報いを受けるが良い』
グワッ
魔王が立ち上がると身長は5m程ある巨体だ。
「行くぞ魔王!」
ハルヒコが先頭に立ち魔王に挑んでいく。
・・・
・・・・・・
『ぐふぅ』
「ぜぇはぁぜぇはぁ」
「まだ倒れないのかよ!」
「このままじゃ魔力が尽きるわ」
3時間の激戦の末、魔王が片膝をつくまで追い詰めた。
俺も後ろでサポートをして魔王の攻撃を幾度となく妨げる。
『ぐぬぅ、このまま殺られはせんぞ!愚かな人間どもめがぁああああ』
魔王の両目が赤く輝く。
「あれは」
【看破】
名前:アマギウス
レベル:100
種族:魔王(Lv100)
体力:797/56,797
魔力:1200/6,897
攻撃力:16,498
防御力:16,505
各種装備品:魔王の礼服、魔王のマント、魔王の靴、魔王の杖
所有スキル:第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール、第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール、第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ダイダルウェーブ、ロックランス、第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ、第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング、第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク、第7位階:エクスプロージョン、バイオレントストーム、アブソリュートゼロ、メテオストライク、第8位階:ダークフレイム、ダークゾーン、ブラックホール、魔王族の怒り
状態:健康
「魔王の怒りだ」
「どんな効果ですか」
「全ステータス倍化の広範囲攻撃を放ってくるぞ」
「ホーリーバリア」
「糸防御術三式」
俺の糸防御とウミの聖なる結界術で二重で防御を張る。
カッ
魔王の口から広範囲攻撃が俺たち向かって放たれる。
「マスターをお守りします。全反撃」
閃光の中に飛び込んでくる影が見える。
ブワッ
俺たちを飲み込もうとした閃光は拡散し魔王へと跳ね返っていく。
『グォオオオオオ、おのれ人間どもめぇ・・・ワシが滅んだところで魔王は再び復活するであろう・・・再び人間ども達は恐怖し震えるがよい』
自らの攻撃に押し負けて魔王の姿が飲み込まれていった。
カランッ
閃光が消え、そこに残されたのは拳大の赤い宝石だった。
・魔王の心臓
大量の魔力を秘めた魔石。
「終わったのか?」
「あの人は一体」
「誰?」
俺たちの前に佇む人影に3人は呆ける。
ガシャッ
サンが片膝をついて頭を垂れる。
「マスター、助太刀に参りました」
「あぁ、助かった。美味いところを総取りだったが結果オーライだったな」
「彼らが?」
「あぁ。保護対象になるかもしれない」
「そうですか・・・」
パァアアアアア
「なんだ!?」
「足元に魔法陣が!?」
「これは勇者召喚魔法陣か?」
「なんで!?」
俺たち4人の足元に赤く輝く魔法陣が現れる。
「くっ」
魔王の心臓を糸で絡めとりサンの目の前から消えていった。
「ペンドラゴン!」
《落ち着きなさい。マスターはこの星の現在地から遠い国へ転移されただけです》
「それなら良かったです」
《私の命令を聞かずに飛び出さなくともマスターはあの場面を乗り超えられたでしょうに》
「申し訳」
《過ぎたことです。この未開拓惑星には長居は無用です、大気圏に浮上いたしますので戻ってきてください》
「ハッ!」
サンが魔王城を抜けて、宇宙戦艦方舟は宇宙空間へと戻っていった。
・・・
・・・・・・
キィイイイイン
「ここは?」
「確か」
「勇者召喚の間?」
「あぁ、あの場所だ」
魔王を倒した事がトリガーだったのか勇者召喚の間に転移した。
「じゃぁ、俺達はやり遂げたっすか?」
「えぇ。この目で魔王が消えていくのを見ていましたし」
「私達の勝利よ」
「っしゃぁあ!」
アキヒサが歓声を上げてハルヒコに肩を絡める。
激難の3年間を苦楽を共にし魔王を倒したのだから仕方が無い・・・ただ気になる事がある・・・何故、俺達は勇者召喚の間に呼び寄せられたのだろうか?
「外に出よう」
グッ
「あれ?」
「ハルヒコ?」
「開かない・・・」
「ちょっと退いて頂戴」
ウミが錫杖を掲げて何かをする。
「外側から鍵がかけられているわ・・・」
「マジかよ」
「なんで鍵が・・・」
「内側から開錠は出来なさそうだな」
扉には鍵穴が無い所を見ると開錠はできない仕組みのようだ。
「無理やりこじ開けるか?」
アキヒサが杖に魔力を貯め始める。
「馬鹿!こんな狭いところで魔法は駄目よ」
「冗談だぜ。ハルヒコの技で突破できるんじゃね?」
「仕方がない、やってみるとしよう」
ハルヒコが剣を構えてスキルを発動する。
「斬鉄剣!」
ザンッ
バキャッ
ハルヒコの剣は両扉の間にスンナリと入り込み鍵を破壊した。
「開くぜ」
ギィイイイイ
両扉をアキヒサが開いていき暗い部屋に光が入り込む。
「オワッ!?」
アキヒサが何かを見て後ずさった。
「ホーリーバリア!」
ウミによって俺たちを包むように聖なる結界が展開された。
「なんだ、お主らか」
結界の外側から王宮魔法士の長となるアレキがフードを外して声をかけてきた。
「勇者召喚の間に侵入者を感知して来てみれば勇者方が何ゆえに?」
「アレキの爺さん。俺たちやったぞ!魔王を倒したんだ」
「ほっ!?」
!!?
アレキの周囲に居た他の兵士たちがアキヒサの言葉に驚く。
「これでやっと帰れるんだよな」
「う、うむ。直ぐに王へ謁見を申し出よう・・・前に使っておった控え室で待っていてくれはせんか?」
「あぁ、頼むぜ」
アレキは顔色悪く兵士たちを連れて王がいる執務室へと足早に去っていった。
「俺たちはあそこで待とうぜ」
「そうですね」
「えぇ」
「あぁ」
俺たち4人はこの国に召喚されて間もない頃に通された控え室へと向かう。
ボフッ
「このソファーも数年ぶりだぜ!」
「懐かしいですね・・・2年近く前の話ですからね」
「そうね」
コンコン
「マリアです。謁見の準備が整いました」
2年振りに世話係マリアとの再会である。
「マリアちゃん、美人になったね」
「そんな事ないですよ」
「謙遜するなって、なぁハルヒコ」
「そうだね。2年も経ったからね」
「あら、私も女として磨いてきたわよ」
「ウミはスゲェ近すぎるからなぁ」
「いやいや、ここは褒めようよ」
「もう遅いわ」
ワイワイとマリアと交えて謁見の間へと到着する。
「国王陛下、勇者様方をお連れいたしました」
ギィイイイイ
謁見の間の扉が開き2年前と変わらない場所を通り王と謁見を果たす。
「魔王討伐を成し遂げたそうじゃな」
「はい」
「ご苦労であった」
「魔王討伐という使命を果たした以上僕たちは元の世界に帰れるのですね?」
「うむ。魔王の心臓を手に入れたのだな?」
「そう言えば」
「え?ハルヒコが持っていたんじゃなかったのか?」
「・・・」
「仕方が無かったじゃないか、あんな急に魔法陣が展開するなんて」
「くそっ!もう一度魔王城へ行かないとダメなのかよ!」
ニィ
「魔王の心臓はちゃんと有るぞ」
王の小さなニヤケ顔を確認してから魔王の心臓を取り出す。
「さすがアオイさん!」
「あんな状況化でも冷静に対処していたなんて!」
「・・・」
「これで俺達は元の世界に戻れるんだな?」
「・・・帰れるには帰れるのじゃが帰還魔法には莫大な魔力が必要なのじゃ。行けたとしても勇者達3人の世界か巻き込まれたお主の世界だけじゃ」
「じゃ、じゃあ!僕達かアオイさんのどちらかしか帰れないって事ですか!!」
「なんで黙っていたんだ!!」
「最初に説明しておくべきじゃった。ワシの落ち度ですまぬが、どちらかが残る事になるのじゃ」
「王よ、一つ質問しても良いか?」
「なんじゃ?」
「帰還魔法は魔法陣で存在しているのか?」
「う、うむ」
「それは何処にある?見せてもらえないか?」
「帰還魔法陣は厳重に管理されておるのじゃ。お主らを呼んだ勇者召喚陣と同じでな」
「何処にある?」
「この城の地下じゃ。重要な魔法陣ゆえにな」
「見せられない事情でもあるのか?」
「そ、そんな事は無いぞ」
「まずは現物確認をしてから話し合おうじゃないか」
「そうですね」
「長くなりそうだな」
「そうね」
「案内してくれ」
「分かったのじゃ。着いて参れ」
バサッ
王が立ち上がり謁見の間を出ていき俺達は着いていく。
「怪しいから何時でも戦えるようにしておけ」
「え?」
「なんでですか?」
「私も怪しいと思う。なんで地下にあるのかしらね?」
「厳重に管理するためだろ?」
「勇者召喚の魔法陣こそ重要な物だろ?勇者たちを呼び寄せればこの世界として勝率が上がるんだからな」
「確かに・・・」
「まぁ、杞憂っしょ」
長い廊下を歩き続け、階段を幾層も下る。
「長くないか?」
「何だか遠回りしていたような」
「そうよね」
1ヶ月とはいえ王城に住んでいた為、ある程度の道は把握している。
にも関わらず遠回りして地下の階段を降りた様に感じた。
まるで何かの準備を整えているかの様な・・・
「ここじゃ」
地下の一室前へとやって来た。
扉の前には2人の兵士が待ち構えている。
「見張りご苦労じゃ、勇者が魔王討伐を成功させたそうじゃから帰還魔法陣を見せてやれんかの」
『それは誠でありますか!』
『これで我らは安心して眠れますな』
本心から喜んでいるようには見えない兵士。
『陛下、この部屋は代々から武器の持ち込みは禁止されております』
『私共へお預けください』
「おぉ、そうじゃったな。ワシも寄る年には勝てんのぉ」
『陛下はまだ現役でやって頂かないと我々が困りますな』
『皇太子殿にはまだ荷が重いかと思いますな』
「うむ。開けてくれんかの」
王の持つ杖や腰の短剣を兵士に渡す。
『勇者様方も武器をこちらへ』
『この中は神聖な場所故、無粋なものを持ち込みができないのです』
「分かりました」
「大事に扱えよ」
「聖女の錫杖が汚れていると考えているのかしら?」
『聖遺物であっても武器であれば入れるわけには参りません』
『何世代もの前から決まっています国法なのです』
「分かったわ」
『貴方もです』
「俺は武器は持っていないぞ?身体検査をしてみるか?」
『では、両手を上にあげてください』
「こうか?」
パンパン
パンパン
入念に隠し武器等が無いか確認する。
『確かに武器の類は無いな』
『通れ』
ザッ
俺達は中へ入り王が待っていた。
「この奥じゃ」
王が出入り口付近で待ち、俺達が奥へと歩いていく。
ほんのり魔法陣らしき光が見えている為、奥へと進んでしまう。
ガコンッ
ガシャァアアン
俺たちの背後に鉄格子が現れて王のいる場所と二分された。
「おい!どうなってやがる!!」
ガァアンッ
「クックックッ!魔王討伐ご苦労じゃった!!」
王の表情が豹変して大口を開いて笑い始める。
「帰還魔法など無いのに必死に魔王を倒してくれたのじゃからな」
「なんだと!!」
「それはどういう事ですか!!」
「騙していたのね」
「騙されるほうが悪いのじゃよ。おっと、その牢は対魔法用の特殊な檻じゃ。魔法は使えぬぞ」
「アナタは一体何が目的なのですか!」
「魔王が邪魔じゃったからのぉ。これでこの国も安泰じゃわい」
「くっ!」
「ホホッ!丸腰で魔法も使えぬ勇者なぞ恐るるに足らず」
・魔封じの鉄格子
周囲の魔力を吸収し尽くす特殊な鉄格子。
耐久値:500/500
「火の精霊よ・・・・くそ、魔力が抜けていく感じだ」
「無駄じゃ」
「剣さえあれば・・・」
「この為に武装解除させたのね」
「その通りじゃよ。魔王を倒せるほどの勇者達に武器を持たせたらこの世界では押さえ込むのは無理じゃからな」
「魔力強化二段階、斬糸」
ヒュォッ
ギィイイイ
鉄格子の上下から火花が散る。
「な、なんじゃ!」
ギィイイイイイイ
2本の糸で鉄格子の上下左右を壁から切り離す。
ドッ
ガシャァアアアアアン
「ぎょへっ!?」
鉄格子を王に向かって蹴りつけて壁と鉄格子のサンドイッチさせる。
「武器なら持っているからな」
「さすが、アオイさん!」
「無手と見せかけたんっすね」
「見事だわ」
ガチャガチャッ
今の音を聞いて入ってきた扉から開錠音が聞こえる。
シュルッ
「引き寄せ」
鉄格子を部屋の奥にぶん投げて慌てて入ってくる兵士たちを足蹴にする。
「武器は返してもらえ」
部屋を出ると未だにハルヒコ達の武器が近くに置いてあった。
「管理がズサンだなぁ」
「お陰で武器は手に入りましたから良いでしょう」
「それで、アオイさん。どうするの?」
「今、王城の庭に仲間を呼び寄せている。俺達はそれに乗る。説明は後だ」
コクリ
俺達は足早に地下牢から出ていき中庭へと急ぐ。
ガヤガヤガヤガヤ
中庭に近づくと人だかりが出来上がっていた。
「どけ」
俺たちの道を塞ぐ王城に働く者達を糸で左右に掻き分けて道を作り出す。
ヒュォオオオオオオオオ
全長30m位に縮まったの半月型の方舟が中庭に浮かび上がっている。
ヒュォオオオオ
俺達を確認したのか着陸し出入り口が開く。
カンカンカンカンッ
「マスター、お迎えに上がりました」
ペンドラゴンが中から出てきて俺の前で膝づく。
「出迎えご苦労だったな。3年間、不在の間よく努めた」
「勿体無きお言葉です。彼らが?」
「あぁ、そうだな」
宇宙船を見て固まっているハルヒコ達に振り向く。
「突然で悪いが、この世界にお前たちが元の世界に帰還する術はなくなった。この国の愚王は英雄である勇者達を亡き者にしようと企んでいた訳だ」
大声で集まっていた人々に聞こえる様に言う。
「世界を救った者達を労うのではなく恩を仇を持って牙をむいてしまった。お前たちは残念ながらこの世界では必要とされていないと言われたのにも等しい。であるならば、俺から選択を与えよう。俺達と共に宇宙に飛び出し物理的に地球を目指すか、この世界に絶望を背負って余生を過ごすか。選ぶが良い。1時間待とう」
バサッ
踵を返して俺はペンドラゴンを連れて中へと入っていく。
「おかえりなさい、アオイ!」
ギュッ
ブリッジに入るとキャメリアが笑顔で抱きついてくる。
「あぁ、みんな苦労を掛けたな」
「そうよ、いきなり居なくなるわ。ペンドラゴン以外は沈黙するわで大変だったわよ」
むくれて文句を言うリリィ。
「ペンドラゴンとキャメリアの嬢ちゃんとロイドの兄ちゃんが居なかったら航行もままならなかったのぉ」
嘆息するリウイ。
「でも、楽しい3年間だったのですよ。色んな事が起こっていましたからね」
いつもノホホンとマイペースなスターニア。
「いやはや、全員が一丸となって3年間があっという間に過ぎ去ってしまったからなぁ」
ため息混じりで一言いうロイド。
「アオイさんが居ない間で結構設備を充実できましたよ」
一番年下のフェリスが自慢げに言う。
「「「「マスター、ご命令を」」」」
最後にペンドラゴン以外の全員が片膝を付く。
「俺が居なかった3年間、迷惑を掛けたがようやく合流を果たせた事に心から安心している。俺はやはりここが落ち着く場所のようだ。ここでの束縛がなくなった今は自由の身である」
魔王を倒した事により俺たちの隷属化の魔法効果は切れている。
「そして、新たに彼らを迎え入れようと思う」
メインモニターに映ったハルヒコ達3人だ。
「日本人ね」
「まんま、日本人じゃな」
「転生者じゃないようですねぇ」
「むしろ、転移者側かと思うな?」
「私よりも若いかな?」
元日本人達からしてみれば日本人の体を持つ3人を懐かしむように呟く。
「ペンドラゴンから少しは説明があったと思うが、彼らは勇者召喚によって地球から拉致られた被害者だ。それも魔王を倒さないと帰れないと脅された挙句、使命を果たしたら殺されかけた」
「何よそれ!!」
「自分たちの都合が悪くなったら殺すのか!温厚なオレでも許せんぞ!!!」
「それは困った方達ですねぇ、新薬のテストにはもってこいなのですよ!」
「スターニア殿、あの薬はやめた方が良いぞ」
「リアルバイオハザードは見たくないですよ」
この3年間で○ウィルスでも作り出したのか?
「急なことだか、受け入れても良いか?」
「「「「「「「賛成!!」」」」」」」
全員から賛成の声が重なる。
「後は彼ら次第だな」
1時間経っても決断が降らなければ俺達はこの惑星を去る事になる。
・・・
・・・・・・
「ようこそ、我が宇宙戦艦方舟へ」
1時間の話し合いによってハルヒコ達は3人揃って乗り込んできた。
「これって、ブリッジってやつですか」
「うわっ、SFって感じがバリバリ出てるじゃねぇっすか」
「ファンタジー世界からSF世界に変わったわね」
3人がブリッジに来て周囲を見て感想を言う。
「ペンドラゴン、この惑星から脱出だ」
「ハッ」
「対消滅反応炉出力を上げます。10%・・・30%・・・50%。離陸いたします」
フワッ
「姿勢制御開始、浮遊装置作動、船体を水平へ移行」
音も振動もなく方舟が浮かび上がる。
「加速荷電粒子砲を起動」
「加速荷電粒子砲を起動します。マスター、目標は何処になりますか?」
「城、向かって左側の尖塔だ。アソコに勇者召喚陣の魔法陣がある。今後、新たな犠牲者を出さない為にも破壊尽くせ」
「チャージを開始します。エネルギーチャージ量20%・・・30%・・・40%・・・・100%まで到達」
「撃て!」
ドシュゥウウウ
ピンク色のレーザー砲が目標の尖塔を貫き城の背後にそびえる山に着弾する。
ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンン
着弾位置から強烈な閃光と轟音がビリビリと響いてくる。
「尖塔および背後の山の消失を確認」
「大気圏脱出しろ」
「リアクター上昇させます」
周囲の景色を置き去りにしてあっという間に大気圏を脱出する。
メインモニターには俺たちの居た星が宇宙空間に浮かんでいる。
「後は任せた」
「「「「はっ!」」」」
NALLシリーズには航行を続行してもらう事にする。
「ペンドラゴンと皆は新たな仲間に自己紹介をするぞ」
この人数になると話し合いは食堂の方が良い。
飲み物もだせる利点も有る。
・・・
「それじゃ、自己紹介と行くか」
「私はキャメリア・クルンだよ。自称アオイの騎士だけど、もっぱら電子戦担当だよ。種族はハイキャットピープルだからね」
「私はリリィ、元日本人の転生者よ。種族はハイホビットよ」
「オレはリウイ、同じく元日本人の転生者じゃ。種族はエルダードワーフじゃ」
「私はスターニアですよ。同じく元日本人の転生者なのですよ。種族はハイエルフなのです」
「私はロイド、同じく元日本人の転生者。この船の船長を主にしている。種族はハイヒューマンなのだ」
「最後に私はフェリスです。元日本人の転生者です。種族はハイヒューマンです」
ん?
「そういえば、3年間見ない間にお前達の姿が変っていないか?」
「それはアオイもよ?」
キャメリアは猫よりの人間だった筈だが、猫要素が薄くなり獣耳と尻尾が生えている程度の姿だ。
リリィは背が高校生くらいまで伸びている。ホビット族ではないみたいだ。
リウイとスターニアには変りは無いがロイドとフェリスはハイヒューマンとか言っていたがどういう事だ?
スッ
キャメリアに鏡を渡されて久しぶりに自身の顔を見る。
「む?若返っているのか?」
「種族がハイヒューマンになった影響じゃな」
「あれ?本当だ!!全然気付かなかったぜ!!」
「髭で隠れて見えてなかったけど皺とか無くなっていますね」
「凄いイケメンね」
ハルヒコ達から褒め言葉が届く。
「どういう事だ?」
「恐らく種族レベルがカンストした上で魔王を倒したからじゃな。オレ等もあの闘いの際に経験値入っておったからの」
【看破】
名前:キャメリア・クルン
レベル:1(キャットピープル:70)
種族:ハイキャットピープル
職業①:電子戦技能士(Lv70)
職業②:機関整備士(Lv5)
体力:1,658/1,658
魔力:1,036/1,036
攻撃力:357
防御力:287
各種装備品:外宇宙ヘルメット、外宇宙スーツ、外宇宙ズボン、外宇宙ブーツ、エアボンベ
所有スキル:システム掌握術、機関調整、古代光通信、アラムド連邦標準語、超越者
【看破】
名前:リリィ
レベル:1(ホビット:70)
種族:ハイホビット
職業①:魔導師(Lv70)
体力:2,899/2,899
魔力:4,831/4,831
攻撃力:485
防御力:346
各種装備品:服、手袋、スカート、革靴、リボン、偽装の指輪
所有スキル:第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール、第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール、第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ウォータースプラッシュ、ロックランス、第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ、第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング、第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク、第7位階:エクスプロージョン、バイオレントストーム、アブソリュートゼロ、メテオストライク、詠唱魔法、魔法陣魔法、詠唱魔法陣魔法、日本語、アラムド連邦標準語、超越者
状態:健康
【看破】
名前:リウイ
レベル:70
種族:エルダードワーフ
職業①:鍛冶師(Lv70)
職業②:機械光学(Lv35)
体力:2,205/2,205
魔力:1,405/1,405
攻撃力:766
防御力:695
各種装備品:マダマンタイトのハンマー、鍛冶エプロン、長靴
所有スキル:観察、注視、鑑定、鍛冶師(銅/鉄/鋼鉄/ミスリル/アダマンタイト/オリハルコン/ヒヒイロガネ)、機械制作、日本語、アラムド連邦標準語
状態:健康
【看破】
名前:スターニア
レベル:70
種族:ハイエルフ
職業①:薬剤師(Lv70)
職業②:錬金術師(Lv25)
体力:1,631/1,631
魔力:1,809/1,809
攻撃力:398
防御力:329
各種装備品:白衣、上着、ズボン、タイツ、サンダル、試験管、注射器、聴診器
所有スキル:観察、注視、鑑定、看破、解析、体力回復ポーション(下級/中級/上級)、エリクサー作成、状態異常回復薬作成、毒薬作成、麻痺薬作成、火炎瓶作成、爆薬作成、閃光丸作成、煙玉作成、怪力薬作成、対衝撃薬作成、俊足薬作成、日本語、アラムド連邦標準語
状態:健康
【看破】
名前:ロイド
レベル:1(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:司令官(Lv70)
体力:2,170/2,170
魔力:1,982/1,982
攻撃力:347
防御力:347
各種装備品:司令官帽、司令官の軍服、ズボン、革靴
所有スキル:アラムド軍式格闘術、アラムド軍式銃術、アラムド式操縦術(戦闘機、軍艦)、軍団指揮、艦隊指揮、部隊指揮、リーダーシップ、日本語、アラムド連邦標準語、超越者、環境適性能力上昇
状態:健康
【看破】
名前:フェリス
レベル:1(ヒューマン:70)
種族:ハイヒューマン
職業①:合気道家(Lv70)
体力:3,550/3,550
魔力:1,016/1,016
攻撃力:761
防御力:416
各種装備品:リボン、絹の服、絹のスカート、靴下、ペンダント
職業スキル:合気道術、相半身片手取り一教、正面打ち一教、相半身片手取り二教、正面打ち二教、相半身片手取り三教、正面打ち三教、両手取り四方投げ、横面打ち四方投げ、入身投げ、正面打ち入身投げ、日本語、スールン星系標準語、超越者、環境適性能力上昇
状態:健康
全員の種族レベルがカンストまで到達している。
あの魔王城に居たモンスターの大群を倒したから大量に経験値が入ったのだろう。
・超越者
普通の種族が最高値に到達した上で魔王を討伐した時に得るスキル。
種族ランクがアップし種族レベルが100まで到達出来る様になる。
・環境適性能力上昇
どんな劣悪な環境に居た所でも適性していく能力。
主に状態異常の耐性を持ち、毒・石化・麻痺・混乱・火傷・凍結・魅惑・隷属・沈黙・忘却・昏倒・盲目・行動制限を防ぐ。宇宙空間で生身でいた場合は時間経過で死亡する。水中にいた場合は水中呼吸ができるまで待つ必要がある。
「なるほど、各々の変化は後で聞こう。今回新しく仲間になる」
「僕は天城春彦だよ。ハルヒコでいいよ」
「俺は陸奥秋久、アキヒサって呼んでくれ」
「私は夏風海。ウミって呼んで頂戴」
「「「「「「ようこそ、方舟へ。そしてお帰りなさい」」」」」」」
「自己紹介が終わったところでお前たちに説明をしてやらなければな」
「お願いします」
「まず、この船の名前は方舟という。宇宙空間が航行可能な船だな」
「マジでSFって奴か~」
「この船の目的地は俺たちの心の故郷である地球に帰る事だ」
「行けるんですか?」
「ペンドラゴン、地球の情報は掴めたか?」
「この3年間で地球に関する情報を集めておりましたが、アラムド連邦と同様に人類発祥の地とだけしか拾えませんでした」
「もっと中心部に行く必要があるか?」
「辺境地には変わりなく銀河中心部に向かうのが宜しいかと・・・」
「そうか」
「あの、銀河とは?」
「お前たちの召喚された惑星はアンドロメダ銀河内にある星系の一つだ。俺たちの転生先も同じ銀河だった」
「アンドロメダ銀河・・・聞いた事がありますね」
「結構有名な銀河だ。馬鹿広いんだろ?」
「全体で約22万光年だ」
「22万光年・・・1光年が」
「考えるな、頭が痛くなるぞ?」
「分かりました」
「やっぱりワープ航行が主流だったり?」
「お前はこっち側も話が通用するのか?」
「ファンタジー、SF系はかなり読み込んでいたっすからね」
「なるほど。基本的にワープ航行で移動しているが、俺たちの船でも最低ランクだ」
「え?山を吹き飛ばした船が最低ランクなんですか?」
「リアクター・・・エンジンがこの銀河で最低ランクだからな。武装は宇宙軍にも負けないでいるが」
「宇宙軍っているんっすか?」
「ここはスールン星系軍の領域だ。銀河全体の殆どを支配している」
「じゃ、じゃあ。宇宙戦争とかもあるんっすか!!」
「無い事は無いが・・・ここ最近で戦争のニュースはあったか?」
「いえ、アラムド連邦とスールン星系の戦争位しかありません」
「小競り合い程度なら有るか?」
「宇宙海賊程度でしたら」
「宇宙海賊っすか!!」
「まぁ、その話は後でほかのメンバーから交流も兼ねて聞いてくれ。何か質問があるか?」
「地球に向かっている事は分かりましたが何時頃到着しますか?」
「地球の場所も分からないからな。見当がつかないのが現実だ。もし、降りたくなったら遠慮なく生存可能な惑星かステーションに降ろしてやる」
「いえ、怒らせてしまったら済みません」
「安心してください。人数分のコールドスリープ装置は揃えています」
「コールドスリープなんて高い物を揃えたのかフェリス」
「はい。外交は得意になりました」
「そのコールドスリープというのは?」
「人間を超低温の状態のままを維持して最小限の生命活動をさせ続けて眠らせる装置だ」
「つまりは何年も眠り続ける事で時間を抑える訳ね?」
「そういうことだ。ウミ」
「話は以上だ。ほかに聞きたいことが有れば後で聞いてくれ。解散だ」
パンッ
手を叩いて話し合いは終わる。
こうして俺達は新たな勇者、賢者、聖女を仲間にして地球を目指し航行を再開する。
お疲れ様でした。




