表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/106

63話「魔王軍の進行②」

1時間程の処置のお陰で死亡する者は抑えら重傷者は軽傷者レベルまでに回復した。


ドドドドドドドドドッ


『ベヘモス出現!正規軍も撤退を開始!!』


正規軍の伝令が門に入ってきて大声で通り過ぎていく。


直ぐに生き残った正規軍が門を潜り中へと入ってくる。


門の上部からヘルニア平原を見渡すとモンスターが健在で撤退してくる正規軍を追撃している。


ズズゥン


ズズゥン


奥に目を向ければ山と思わせるモンスターの影が近づいて来るのが分かる。


「あれがベヘモス」


【看破】

 名前:ベヘモス

 レベル:70

 種族:トーラスキング

 体力:32,908/32,908

 魔力:3,564/3,564

 攻撃力:5,702

 防御力:5,705

 所有スキル:踏みつけ、スピン、広範囲ブレス、アースクエイク、憤怒、大咆哮、睡眠

 状態:健康


全高300m、全幅は250mはありそうなシルエットだ。


ズシィン


ズシィン


歩みは遅いが四速歩行、頭は地面の位置に垂れ下がっている。


高い位置の部分は硬い何かで出来た山と形容できるほど盛り上がっている。


「亀か?」

「あれはトーラス族の最上位だって話だ・・・本当にコレで勝てるのか?」


門の上部には2基のバリスタが設置されている。


要塞を囲う壁にも等間隔に1基のバリスタが備えられている。


ガコォオオオン


正規軍が全て入り門が閉まる。


ガンガンガンガン


門にモンスター達が持てる力で叩き始め、正規兵達が門が開かないように固定する。


バタバタバタバタ


『ここに居らしましたか。こちらへ来てください』


指揮官の後ろにいた副官が要塞内部へと俺を引っ張り込む。


『民衆から報告がありアナタが高位の回復術者というのは分かっています。我が軍の兵士たちを癒してください』

「なんでだ?」

『え?なんでとは?』

「お前たちは回復ポーションを持っている筈だろう?ソレを使えばいいだろう?」

『持っていましたが戦闘中に使用してもうありません』

「予備や備蓄は無いのか?」

『1人に使用を許されているポーションは1本なんです』

「医療に携わっている奴は?」

『この人数を助けるほどの人材はありません』

「ここは最前線の基地だろう?なんで足りていないんだ?」

『それは』


副官がギュッと握りこぶしを作る。


「しかし、この人数は俺でも」

「その必要は無いわ」


カツカツカツ


俺の横を1人の女が通り過ぎる。


白を基調としたレースがふんだんに施されたドレスに近い衣装を身にまとい、手には金と銀で装飾された錫杖を掲げている。

後ろ姿では誰なのか分からないが黒いロングヘアーだ。


「光の精霊よ我の呼びかけに応え彼の者に安らぎを与え給え。エリアグレーターヒール」


エリアグレーターヒールだと?


パァアアア


リィイイン


光り輝き周囲一帯に回復の魔法が波となって広がっていく。


傷つき倒れていた兵士達の症状が緩和し回復していく。


ィイイイン


回復の効果が終わると軽症レベルまでに落ち着いた兵士達が横たわっている。


フラッ


「っと!」


女が魔法が止むのと同時に倒れそうになり支える。


「お前だったのか」

「お久しぶりね。アオイさん」

「見違えたぞウミ」

「私のことは夏風と呼んでと言った筈よ」

「随分早い到着だったな」

「これでも急いできたのよ」

「他の3人は?」

「・・・2人はベヘモスに向かったわ」

「2人・・・分かった。ここは任せていいか?」

「え、えぇ。回復は私の仕事だからね。後から追いつくわ」

「あぁ」


俺は砦をでて門へと向かう。


ゴォオオオオオオオオオオオオオ


遥か彼方、空から巨大な炎の玉が東に向かって落ちていくのを目の当たりにする。


「あれは、メテオストライク・・・誰が?」


第7位階魔法、隕石を地上に落とす魔法だ。


ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン


グラグラグラグラグラグラッ


遥か彼方で爆砕音と共に爆風や土煙が舞い上がった。


地面が揺れ脆い建物が数軒ほど崩れさっていく。


「ワイアーアクション」


走るよりも糸で俺の体を運んだほうが早く、建物に糸を引っ掛けて空中をかけて行く。


ッタ


「状況は?」


ガルンは呆然として指をさす。

フゥは目を見開き反応が無い。


隕石が落ちた場所に視線を向けると土煙で何が起こったのかは見えない・・・だが尋常じゃない量の土煙が発生している。


「っよっしゃぁ!俺の魔法がダイレクトアタックしたっすよぉ」


横ではしゃぐ若い男の声に視線を向ける。


「そうか、アレはお前がやったのかアキヒサ」

「そうっすよ!いやぁ、第7位階魔法って撃ったこと無かったから自信がなかったけど大命中でしたっすね!」


深いグリーンの厚手ローブを着込み、右手には金色の杖が握りこまれている。頭には銀色に輝くサークレットを付けているアキヒサが笑って立っている。


「という事は」


ズバンッ


門の前に居たはずのモンスターはたった一人によって殲滅されようとしていた。


「斬鉄剣!火炎剣!!五月雨斬り!!!」


キラッ


銀色のプレートアーマーを着込み、左右には金と銀の剣を握り流れるような剣さばきで近づくモンスターたちを切り伏せていく人影。


「おーい!こっちは大丈夫だ!!そっちは大丈夫っすか?」

「問題ありません!一刻も早く倒しますよ」

「オッケー!アオイさん、こっちは任せて欲しいっす!」

「あぁ・・・だがな」


俺はもう一度視線を土煙に向ける。


モワモワモワモワ


ズシィン


土煙の中から巨大な足が見えた。


【看破】

 名前:ベヘモス

 レベル:70

 種族:トーラスキング

 体力:21,600/32,908

 魔力:3,564/3,564

 攻撃力:5,702

 防御力:5,705

 所有スキル:踏みつけ、スピン、広範囲ブレス、アースクエイク、憤怒、大咆哮、睡眠

 状態:出血(大)、激怒



「アレを喰らって歩くなんて嘘っすよ!」


自信満々だったアキヒサが唖然とし急速に自信を失わせる。


「直撃しなかっただけだ」


隕石の落下場所はベヘモスの居た場所の真横に着弾した跡が残されている。


「ダメージはあるようだが」


甲羅部分の半分近くが砕け散り大量の血を流しながらも着実にこっちに近づくベヘモス。


「アナタは一体」


フゥが呟くように言う。


「俺?俺はアキヒサ、賢者をやってるぜ」

「け、賢者。では、噂は本当だったのですか?」

「下で戦っているのはまさか」


ガルンがたった一人でモンスターの大群と戦い続けている人影を見ていう。


「ハルヒコだ。あれでも勇者っすよ。あと砦の方に聖女もいるっすからね」

「さっき会ってきた。重傷者をあっという間に回復させた」

「どうよ、俺達も結構強くなったっすか?」

「銀狼、勇者たちの知り合いなのか?」

「銀狼!?なにその中二病みたいな2つ名!マジ受けるw」

「話は後だ。アレを何とかしないとな」


未だに動き続けているベヘモス。


『バリスタ、用意!!撃てぇ』


門の2基と城壁の数基が一斉にバリスタをベヘモスに向けて放つ。


キィン


だが、その防御力の前ではバリスタは針にも等しい攻撃力だ。


「アキヒサ、メテオストライクは何回撃てる?」

「アレが精一杯。1日に1回限りの魔法っすよ。残りの3つが有効ならいいけど」

「エクスプロージョン、バイオレントストーム、アブソリュートゼロの事だな?」

「そうっすけど、3つとも範囲がメテオストライクの数倍だから撃ちづらいんだけどね」

「何を悠長なことを言っているんだ」


魔法のことを知らないガルンが呟く。


「エクスプロージョンでこの城壁ごと崩れてもいいなら撃つよ?バイオレントストームでこの城塞都市が壊滅してもいいなら撃っても良いかい?アブソリュートゼロで城塞都市にいる人々も凍りづけになってもいいなら放つけどさ?アンタに責任取れる?」

「うぁ?」

「強力な魔法は威力も桁違いなんだよ。こんな街に近い位置まで近づかれちゃ逆に撃てないんだよね」

「私達の力が足りないばかりに・・・」

「別に俺はアンタ達を攻めているわけじゃないんだけさ」

「なんか、変わったな」

「そりゃ、こんな荒んだ世界に放り込まれて1年も経てばヤサグレても仕方ないっしょ」

「本質は変わっていないから安心した」

「ここはゲームじゃないから被害とか考えないとダメっしょ」

「あぁ、そうだな。問題はアレをどうにかする手段が限られているって事だな」

「アオイさん、もしかして超強い人でしょ?」

「なんだ、急に?」

「遠くから見てたから分かったけど、幾つの職業を持っているわけ?」

「・・・よく見ているな?」

「賢者って賢い者なんだぜ?」

「お前の言うとおり複数種の職業を持っている。魔導師もその一つだ」

「最初に会った魔法使い系の職業っていうのは魔導師の事だったのかぁ。魔導師って最上級職業ってこと?」

「賢者と同じ魔法は扱えるようになる」

「それじゃ、ダメだね」

「2人共、長々話してないで手伝ってくださいよぉ~」

「分かったぜ。リーダー」

「す、少し休憩しますね」


タッタッタッタッ


ハルヒコが城壁を苦もなく登ってくる。


「ハァハァハァ。アオイさんお久しぶりです」

「お前も元気そうだな・・・その傷」


ハルヒコの左頬には深い傷跡が残っていた。


「ケジメ見たいな物です。僕たちを守ってくれたクルルーさんの分までもね」

「そうか・・・」

「アオイさん。とりあえず下の殲滅しちゃいましょうや」

「分かった」

「力強き土の精霊よ、我が願いを叶え、矮小なる存在に力を見せつけよ!!敵を砕け、ロックガトリング」

「ロックガトリング×10!」


俺とアキヒサの2人による岩の弾丸を雨の様に降らせて門前のモンスター達を殲滅していく。


物の数分で動けるモンスターは殆どいなくなった。


「気力が戻りました。2人共有難う御座います」

「どうって事ないっすよ。問題は眼前までに近づいてきたコレだけだ」


ゆっくりだが着実にベヘモスは城塞都市の壁に接近してきている。


「ストリングランス×2」


シュルシュルシュルシュル


ブゥン


4本のオリハルコンの糸がより合わさって1本の槍が形成されていき、8本を使って2本の槍でベヘモスの顔面に投げつける。


グシャッ


ぎゃぁあおぉおおおおおおおおおおお


1本は弾かれて、もう1本はベヘモスの目を貫いた。


「この程度じゃ止まらんか」

「糸使いカッケエェエ」

「糸を操るんですね」

「言ってなかったな」

「アオイさんの糸って何で出来ているんですか?」

「オリハルコンだが」

「リーダーと同じ素材かよ」

「というと?」

「この本物の勇者の剣とプレスプレートはオリハルコン製なんですよ。魔力伝導率も凄いんですけどね」

「俺やウミの武器だってミスリル製なんだぞ。でもリーダーのは別格だった」

「オリハルコンは他の金属に比べて魔力が通りやすいのもそうですが魔法やスキル効果も伝達しやすいんですよ」

「効果の伝達?」

「あのベヘモスは強力な防御力が僕達の攻撃を防いでいるんです。であれば外部からではなく内部から叩けばあるいは」

「なるほどな。やってみる価値はあるか・・・何をすればいい?」

「先程のストリング?」

「ストリングランスか?」

「アレを何処か体内に打ち込めませんか?」

「打ち込む場所はあと一つ位しか無いな」


残った目位しか貫通しそうな場所は無い。


「ストリングランス!」


キィン


流石に残った目を守ろうとして防がれてしまう。


「アキヒサ、如何にか出来ませんか?」

「了解。力強き土の精霊よ、我が願いを叶え、矮小なる存在に力を見せつけよ!神の力を示したまえ!アースクエイク」


ドゴォオン


ギィイイイ


ベヘモスの真下で隆起現象が発生する。


グワッ


前足を高く上げる。


ズドンォオン


グラグラグラグラッ


自身の体重も加えてアースクエイクを踏み潰す。


「ストリングランス!」


意識を足元に持って行かれて目の警戒が疎かになっている。


ズブゥッ


オリハルコン製の槍は目の奥深くまで入り込んだ。


「今だ」

「雷鳴剣!」


バリバリバリバリバリバリッ


雷を纏った剣が糸に振り下ろされた。


おい、それって


バリバリバリバリバリ


電撃が糸を伝いベヘモスへと押し寄せた。


バババババッババババババッ


高圧電流がベヘモスの目から流れ込み頭全体に高熱が焼きまわる。


いくら頑強な体を持っていたとしても頭を内側から焼かれてしまえば生物なら即死する。


ギャァアアアォオオオオン


巨大な断末魔を上げてベヘモスの目に光が消えて体重を支えていた足に力が抜けてその場に崩れさす。


バババババババッ


「あっがっ!?」


そう、電撃は何も攻撃先に伝わるだけではない、攻撃元である俺にも伝わるのだ。


「アオイさん!?」

「ハルヒコ止めるんだ!」

「一定時間立たないと止まらないんです」

「このままじゃアオイさんが死ぬんだぞ!!」


ドンッ


アキヒサがハルヒコに体当たりをして剣毎倒れさせる。


ブシュゥウウウウ


バタンッ


全身が感電を起こして筋肉が痙攣し倒れる。


「おい、アオイさんが!!死ぬんじゃねぇぞ。やっと此処まで来たんだ」

「みっともないわね」

「ウミ!アオイさんが」

「分かってるわ。光の精霊よ我の呼びかけに応え彼の者に安らぎを与え給え。ハイヒール」


パァアアアア


全身の怪我が回復していくのが分かる。


「これで大丈夫の筈よ」

「あ、あぁ。助かった」

「どうしたらこんな大惨事が起こるのか説明してちょうだいね」

「う、うぅ」

「とりあえず、勝鬨を上げなさい。下のみんなは待っているわ」


正規兵、冒険者、傭兵、都市の住民、避難民達が不安で仕方がなく門の上を見上げている。


「お、おう。全員聞けぇ!我々は驚異に打ち勝った!!安心しろぉおおおお」


アキヒコの大声が伝播して全体へと届くまでそんなに時間は要さず至るところから歓声が上がった。


ズォオオオオオオオオオ



城門に影が落ちる。


「へ?」


アキヒコが振り向くと、両足立になったベヘモスが都市内を見渡せる事になる。


歓声が一転し絶望に変わった瞬間であった。


クォオオオオオオオオオオ


ベヘモスの口の中に魔力が集まる。


「マズイ!広範囲ブレスが来るぞ」

「街中に放たれたら大惨事だ」

「だめ、私の結界術じゃ広さが足りないわ」


ハルヒコ、アキヒサ、ウミが広範囲ブレスを防ぐスキルを持ち合わせていない。


「糸防御術三式」


ヒュオッ


10本の糸が縫い合わさり一枚の布が出来上がりベヘモスの眼前に現れた。


ボッ


ワァアアアアアアアアアアアア


高熱の広範囲ブレスがオリハルコンの壁に阻まれて四方へと拡散していく。


アァアアア


直ぐに広範囲ブレスは止まる。


シュルルルルルッ


オリハルコンの布も糸に戻る。


「有難う御座います!ハァアアアアア、雷鳴剣、火炎剣!!」


右の剣が雷を纏い、左の剣が火炎を纏ってハルヒサがベヘモス目掛けて飛び出していった。


ズバァアアア


ギャァアアアアォオオオオン


左右から振るわれた雷と炎に挟まれてベヘモスの太い首に食い込んでいく。


「硬い」

「糸拘束術三式」


グルルルルルルッ


両剣を一つにする為にオリハルコンの糸が巻かれ締め上げる。


グチャッ


その挟み込む力によってベヘモスの首に刃が通る。


「あががっ!?」


当然雷を帯びている剣に糸を絡めているのだから感電する。


ズバッ


ベヘモスの太い首が断ち切られて地面へと落下する。


ズズゥン


ブシャァアアアア


ドドォオオオオオン


首から大量の血を噴き出し後方に倒れこむ。


「今度こそ倒したぞぉおおおおお!!」


アキヒコがそう言うと歓声が再び上がる。


パチパチパチパチッ


『いやはや、見事です。さすが勇者と言わざるを得ませんね』


バサッバサッ


城壁近くに空を飛んでいる人影が現れる。


「魔王様が気にかけるだけありますね」

「アナタは?」

「申し遅れました。私は魔王が四天王の一人、ヤンデバウトで御座います」

「魔王四天王」

「まぁ、今その内の一角をアナタ方が倒されてしまったのですがね」


ヤンデバウトは地に倒れふしたベヘモスを見る。


「ベヘモスが四天王の一人ですか」

「といっても彼は」

「四天王の中でも最弱って言いたいんだろ?」


アキヒコがヤンデバウトの言葉を遮る。


「ほぅ、何故それを?」

「こういう時のセリフは大体そう言うもんだろう!」

「さすが賢者といった感じですね・・・今日はこの位で退散致しましょう」

「戦っていかないのですか?」

「今回はベヘモスの監視役ですよ。魔王様のご命令とあれば今にでもアナタ方を殺したいくらいだ」


ゾクッ


ヤンデバウトの殺気に周囲の人間たちが恐怖する。


「次会うときは最後だと思っておいてください」

「糸拘束術三式」


10本の糸がヤンデバウトを捉えようと迫る。


キィキィキィキィキィ


糸が拘束するまえにヤンデバウトの体はコウモリの群れに変化する。


『無粋な人ですね。次の機会に残しておいてくださいよ。それでは皆様ひと時の平和を楽しんでいってください』


バサバサバサバサバサバサ


コウモリの群れは東へと向かって飛んでいった。


「これで終わりだよな?」

「多分」

「四天王って結構強いわよね」

「魔王配下の四天王は強いのがデフォルトだからなぁ。ベヘモスが最弱って言っていたけど俺達ですらギリギリの戦いだったぞ・・・それよりも強力な相手かよ」

「更に魔王が控えているとなると気が滅入るね」

「3人共とりあえず報告にいけ」

「あ、そうですね」

「アオイさん、また後で話し合おうぜ」

「失礼します」


3人が砦に向かって行く。


「銀狼・・・アンタ一体何者なんだ?」

「そうです・・・勇者、賢者、聖女の知り合いなんて早々いませんよ」

「俺か・・・俺は巻き込まれし者って感じだな」

「「巻き込まれし者?」」

「気にするな。それより冒険者と傭兵ギルドでも報告が必要だろう」

「あぁ」

「ですね」

「ベヘモスが倒れヤンデバウトが撤退したんだヒューマン側の勝利といえよう」

「報告に向かいますか」

「あぁ」


フゥは冒険者ギルドへ、ガルンは傭兵ギルドへと報告しに向かう。


俺は所詮ゴールド傭兵だから報告義務は殆どない。


・・・


・・・・・・


「魔王領侵攻作戦?」


数日が立ち、要塞都市とその周辺の町や村の復興等を話し合う中、軍務では魔王領侵攻作戦の話が持ち上がりハルヒサ達に伝わっていた。


それは、オリハルコン冒険者フゥ、オリハルコン傭兵ガルン、オリハルコン傭兵アオイの3人と冒険者ギルドと傭兵ギルドのギルド長の2人を加えた5人だ。


俺がゴールドからオリハルコンに飛び級したのはモンスターの大群に対して殿を務め、ベヘモス討伐の功績を湛えてランクが上がった体。


「しかし魔王領へ入れるのは勇者一行だと聞きましたが」

『確かに勇者一行こそが魔王領に蔓延する魔素の影響を受けない人物たちだと分かっている。しかし我々も馬鹿ではない、幾世代を経て魔素を分解する魔導具を完成させているのだ』

「おぉ、噂では聞いた事しかなかったが」

「実在したんですね」

『これが有ればなにも勇者一行で進行しなくても良いのだ』

「それでその魔道具は拡散系なのか?単体系なのか?」

『拡散して一定フィールドは作り出せなかった。一人に一つ持つ形となる』

「何個作られたんだ」

『十数個だ』

「「「・・・」」」


さすがにハルヒコ達も呆れてしまっているようだ。


「たった十数人が勇者一行に加わっても足でまといにならないとは限らないだろう。逆に荷物を作り出してどうする?」

『貴様!軍部に対して暴言だぞ』

「ハッキリ言ってやる。ここから先は過酷な旅が待っているのは確実だ。食糧問題に四方八方から襲いかかってくるモンスター達と常に戦い続けなければならない環境だ。精鋭の人材を送り込んだ所で焼け石に水だ」

『我々の長年の研究成果を馬鹿にしているのか!』

「そんな事はない。魔素を分解する魔道具の開発は歴史上最高だろう。なぜ、増産して万の軍勢が装備できる物にしなかった?」

『それは・・・魔道具の核に高ランクの魔石が必要だからだ』

「ならベヘモスの魔石を使え」

「「「え?」」」

『いや、アレは勇者達が倒したモンスターであろう』

「ハルヒコ、お前たちはアレを貰って活用する術はあるのか?」

「無いよ」

「あんな、巨大な奴どうやって使うんだか見当がつかないね」

「私も」

「だろう。あのレベルのモンスターを何に使うかすら分かっていないなら、この都市に還元してやればいい。捨てるところも殆どないだろう?」

『しかし、いいのか?災害級のモンスターだぞ?』

「もちろん、軍部だけじゃない。今回参加した兵士達や冒険者ギルド・傭兵ギルドにも回せ。都市・街・村の復興にも使え。アレはそういった資源なのだからな。軍部が欲しいのは魔石だけなんだろう?」

『・・・わかった』

「お前たちもそれでいいだろう?」

「そうですね。アレをもらった所で置く場所もありませんし。お任せします」

「異議なし」

「リーダーの決定に賛成よ」

『勇者様がた有難うございます』


こうして魔王領侵攻作戦という無謀な作戦を潰した。歴史通り魔王討伐に向かうのは勇者一行だけとなり話し合いが砦の中で行われた。


俺はというと旅支度のために食料を購入し始める。

この為に俺は1年間殆ど稼いだ金を使わず貯めていた。


『オッサン、こんな鉄の馬車なんてどうするんだ?』

「通常の馬車だと防御面が弱いからな」

『木よりかなり重い馬車だからよ馬は8頭居ないと牽けないぜ』

「そこは大丈夫だ」


・・・


・・・・・・


更に日数が経過し勇者一行の旅達の日が決まった。


ワァアアアアアアアア


パカラパカラ


大通りに沿って都市を守った勇者一行を一目見ようと民衆が集まりパレードにまで発展した。


御者はもちろん俺がしている。


「プロジット王国を思い出しますね」

「一番最初もこうだったしな」

「懐かしいわね」


様々な人々に見送られて大門へとたどり着く。


「これがベヘモス、間近で見ると凄く巨大ですね」

「俺達はコイツを倒したのかぁ」

「そうね」


ベヘモスの死骸には人々が何人も集まり素材の剥ぎ取りをしている。


その横を通りヘルニア平原へと出て行く。


「馬車はここで変えていく」


予めヘルニア平原に用意した鉄の馬車に乗り換えるべく木の馬車を止める。


「鉄なんて珍しいですね」

「馬を繋ぎ変えるのは得意だぜ」

「手伝うわ」

「いや、馬も返す」

「馬の居ない馬車じゃ動きませんよ」

「そもそも2頭じゃ牽けない重さだ。ちゃんと適した馬を用意してある」

「何処に?」


≪サモン(幽馬)≫


ボワッ


ヒヒィン


亜空間から幽馬が飛び出してくる。


「元気していたか?」


ブルルゥン


「アオイさん、それは?」

「召喚術師でもあったのか?」

「すごい巨体ね」


普通の馬より2回りほど大きい幽馬。


「こいつは幽馬。そういった種族でな、飼葉も必要のない幽体の馬だ」

「へ、へぇ」


ハルヒコが幽馬に触れようと手を伸ばす。


スカッ


だが手はすり抜けた。


「言っただろう、幽体だってな。認められたものしか触れることすら出来ない」

「残念です」

「つなぎ止めるから荷物を移動しておいてくれ」

「わかったぜ。ハルヒコ行こうぜ」

「行きましょう」


俺が幽馬を鉄の馬車に繋ぐ間、3人は木の馬車から各々の荷物を運び出す。


パカラパカラ


幽馬は力強く鉄馬車を挽き東の関門へと向けて歩を進める。


・・・


「酷い光景だね」

「街が壊滅しているわ」

「これがモンスターの大群が通った道かよ」


元は美しい街並みだったのだろうが、石造りの壁も民家も崩れ去り廃墟と化している。


大きなくぼみが等間隔に連続で続いていることからベヘモスが通り過ぎたと分かる。


「そう言えばお前達は予想より早く来れたのはなんでなんだ?」

「それはアオイさんの存在があったからこそですね」

「俺の?」

「アオイさんが待っていてくれると思ったので一刻も早くこの国に到着する為に急いできました」

「あと半年位あったんだがな」

「アキヒコとウミが頑張ってくれたお陰です」

「お前もだろう」


【看破】

 名前:天城晴彦アマギ ハルヒコ

 レベル:65

 種族:ヒューマン

 職業①:勇者(Lv53)

 体力:8,540/8,540

 魔力:4,462/4,462

 攻撃力:1,234(+420)

 防御力:910(+230)

 各種装備品:オリハルコンの黄金剣、ミスリルの剣、オリハルコンのプレスプレート、鋼鉄のフォールド、靴下、革靴、腕時計、スマートフォン

 所有スキル:生活魔法:ファイ、ウォタ、ウィン、ロック、一閃、二連閃、三連閃、四連閃、豪腕一閃、豪腕二連閃、豪腕三連閃、豪腕四連閃、スマッシュ、回転斬り、五月雨斬り、雷鳴剣、火炎斬り、真空切り、斬鉄剣、異世界翻訳(日本語、ルルーシ語)

 状態:健康、隷属(プロジット王位継承者)


【看破】

 名前:陸奥秋久ムツ アキヒサ

 レベル:63

 種族:ヒューマン

 職業①:賢者(Lv47)

 体力:4,170/4,170

 魔力:7,446/7,446

 攻撃力:878(+340)

 防御力:586(+200)

 各種装備品:ミスリルの杖、賢者のローブ、靴下、革靴、スマートフォン

 所有スキル:生活魔法:ファイ、ウォタ、ウィン、ロック、第1位階:ファイアーボール、ウィンドカッター、ウォーターバレッド、アースホール、ライトボール、第2位階:ツインファイアーボール、ウィンドシールド、ウォーターウォール、アースウォール、第3位階:トリプルファイアーボール、ソニックウェーブ、ウォータースプラッシュ、ロックランス、第4位階:フレイムアロー、ウィンドフルール、アイスブレード、ロックキューブ、第5位階:フラッシュオーバー、ウインドバインド、アイシクルフィールド、ロックガドリング、第6位階:フレイムピラー、ダストストーム、ダイダルウェーブ、アースクエイク、第7位階:エクスプロージョン、バイオレントストーム、アブソリュートゼロ、メテオストライク、異世界翻訳(日本語、ルルーシ語)

 状態:健康、隷属(プロジット王位継承者)


【看破】

 名前:夏風海ナツカゼ ウミ

 レベル:57

 種族:ヒューマン

 職業①:聖女(Lv51)

 体力:3,160/3,160

 魔力:9,248/9,248

 攻撃力:670(+314)

 防御力:364(+154)

 各種装備品:聖女の錫杖、ミスリルドレス、ミスリルヒール、スマートフォン

 所有スキル:生活魔法:ファイ、ウォタ、ウィン、ロック、ヒール、パラライズヒール、ポイズンヒール、ペトリファクションヒール、グレーターヒール、ハイヒール、リジェネーションヒール、エリアヒール、エリアグレーターヒール、エリアハイヒール、ホーリーランス、ホーリーバリア、ホーリーブレード、ホーリーレーザー、異世界翻訳(日本語、ルルーシ語)

 状態:健康、隷属(プロジット王位継承者)


たったの数年で無茶をしてきたんだろう。


「アオイさんが今まで何をしてきたのか教えて欲しいです」

「あぁ。お前たちの成長も教えてくれ」


道中、互の生き様を語らいながらヘルニア平原を進む。

お疲れ様でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ