54話「スールン星系へ①」
オウランコロニーからスールン星系に最も近い惑星に向かい始めて12年の月日が経った。
戦争は未だに続いており何時まで続くのか分からない様な状況の中で俺達は進む。
「オリハルコンストリングス砲が出来そう?」
『おうよ!ようやくオッサンが以前言っていた奴ができるぞ』
「ようやくか」
ここ十年で2人の旅仲間が出来た。
エルダードワーフ族のリウイだ。
たまたま立ち寄ったステーション内に凄腕の機械技師がいると聞いたのが出会いの始まりだ。
エルダードワーフ族ならばオリハルコンストリング砲が再現できるかと思い接触し何度か話している内に仲良くなった。
飲みに付き合ったりして心を許せる程となり自分の過去を話してもらった。
『なんだ、お前は元日本人なのか』
『日本語じゃと?』
『俺も元は日本人だ。船の仲間にはもう一人元日本人がいる。お前さえよければ一緒に来ないか?俺達の目的は地球だ』
『連れて行け!オレも帰りたいんじゃ!!!』
【鑑定】
名前:リウイ
レベル:12
種族:エルダードワーフ
職業①:鍛冶師(Lv70)
職業②:機械光学(Lv35)
体力:2,370/2,370
魔力:3,875/3,875
攻撃力:371
防御力:289
各種装備品:マダマンタイトのハンマー、鍛冶エプロン、長靴
所有スキル:観察、注視、鑑定、鍛冶師(銅/鉄/鋼鉄/ミスリル/アダマンタイト/オリハルコン/ヒヒイロガネ)、機械制作、日本語、アラムド連邦標準語
状態:健康
こうして、リウイが新たな仲間となった。
「あらあら、艦長嬉しそうですねぇ」
「ようやく復元ができるからな」
「うふふ」
こいつはハイエルフのスターニア。
別のステーションで魔法薬の研究をしていた変わり者という事で興味を持った。
『あらあら、こんな所で転生者に出会えるなんて運命ですかねぇ』
こいつは俺と出会った途端に日本語で話しかけてきた。
どうやら解析の所有者で俺のステータスを暴き出したようだ。
【鑑定】
名前:スターニア
レベル:21
種族:ハイエルフ
職業①:薬剤師(Lv70)
体力:705/705
魔力:785/785
攻撃力:154
防御力:134
各種装備品:白衣、上着、ズボン、タイツ、サンダル、試験管、注射器、聴診器
所有スキル:観察、注視、鑑定、看破、解析、体力回復ポーション(下級/中級/上級)、エリクサー作成、状態異常回復薬作成、毒薬作成、麻痺薬作成、火炎瓶作成、爆薬作成、閃光丸作成、煙玉作成、怪力薬作成、対衝撃薬作成、俊足薬作成、日本語、アラムド連邦標準語
状態:健康
事情を話すと彼女は旅の同行を承諾してくれた。
「私は前世の良い思い出は無いけれどぉ、アナタに付いていけば面白い事がありそうですものぉ」
獲物を狩るような目で見つめないで貰いたかったな・・・
「おい、クソエルフ。オレは艦長と話してるんじゃ」
「何度も言いますが私はハイエルフですよぉ。駄鉱夫」
「オレだってエルダードワーフじゃぞ」
2人はこうして出会うたびに衝突を繰り返す・・・が、完全に仲が悪いわけじゃない。
「艦長、ユーラシア惑星へ近づいています」
「あれが最前線惑星ユーラシアか」
メインモニターに映し出されたのは青く海の面積が多い美しい惑星だ。
「結構船や艦が多いな」
「戦争中なので軍艦が集まってきているのです」
レーダーに見える光点の数が異常に多い。
「輸送船等で軍事物資等が運び込まれている模様である」
「そんな俺達の場違い感があるな」
「ガハハ、それは言わねぇ約束じゃぞ」
「そんな事より。私達をすんなり通してくれるのかしら?」
「これから敵国に行きたいって言う重巡洋艦が通してくれると思うか?」
「無理じゃないかな?」
「絶対に無理なのですよぅ。戦争中に敵国に行く事は亡命と思われるのですぅ」
ブリッジ内でそんな会話してこれからを考えている。
「艦長・・・アラムド連邦軍所属最前線艦隊総司令から通信が入っております」
「唐突に総司令官から来たな」
「如何しますか?」
「繋げろ」
ピッ
出たのは意外にも50代位のヒューマンであった。
『私はアラムド連邦軍所属最前線艦隊総司令のロイド准将と言う。ここは戦時中故に一般の立ち入りを禁止している宙域である。ただちに引き帰したまえ』
「自分は傭兵団ギルドAランク団員方舟の艦長アオイと言う。以後、お見知りおきを」
「傭兵団ギルドには協力要請を出した覚えがないが、戦争に参加する意思があると見える」
勝手に解釈しないでくれ。
「データによれば重巡洋艦の様だな。戦争の経験があるか?」
「船団戦の経験ならばある」
「ほぅ・・・これか?ふむ。旗艦を勤め海賊船団を撃破したか」
「俺たちの目的を話したほうがいいか?」
「戦争に参加しに来た訳じゃないのか?」
「俺たちの目的はスールン星系に行く為だ」
「ほぅ」
ロイドの雰囲気が変った。
アレは敵を見る目である。
「それはアラムド連邦を裏切り亡命をするという解釈で良いか?」
返答次第では厳しい状況になりかねない。
「ンンッ!」
咳払いを2回行い、モニターに写ったロイドを見る。
「我々は亡命目的で来たつもりはない」
「では、何だと言うのかね?」
「【地球】の情報を向こうで集めようと思っているからだ」
「【地球】だと・・・」
ロイドの顔色が少し変化を見せた。
「【地球】については私も少しだけ知っているが人類発祥の地だけしかない筈だが」
「我々も【地球】について調べ上げたが、実在も怪しい惑星とだけしか分からなかった。であれば別の場所を探しに行くのが必然ではないか?」
「クッククク。総司令の私に一歩も引けを取らない度胸は買おう。だが、通すわけには行かない。この戦争時敵国にこちら側のデータをみすみす渡すわけには行かないのでね」
「艦長、惑星の影から戦艦級、重巡洋艦級、巡洋艦級、軽巡洋艦級が出現しました!」
「数は!」
「11万5,649隻です!」
「11万!?」
どう考えても俺たちの艦でどうにか出来る相手ではなかった。
「ただちに去りたまえ。コレは忠告ではなく命令である。もし去ろうとしなければ艦砲射撃によって宇宙の塵になって貰うが宜しいか?」
これは、本気で俺達を潰す気だ。
「艦首180度回せ!」
「ハッ!」
「今回は退かせて頂く」
「次は忠告も無く容赦なくさせて貰う」
ピッ
通信が途絶えて俺達はユーラシア惑星から一時離れる事となった。
アラムド連邦軍所属最前線部隊総司令戦艦ブリッジ内----------------------------
『方舟、レーダー外からロストしました。かなり早い艦です』
「ふぅ」
『総司令、逃がして良かったのですか?』
「あぁ。アレは我々では手に負えない化け物艦であるからな」
『どういう事で?』
「【軍の恥】を知っているか?」
『たしか、西部に位置するステーションの出来事でしたか?』
「17年前に戦艦一隻、巡洋艦一隻、軽巡洋艦三隻を相手に大立ち回りした艦がアレなのだ」
『重巡洋艦がですか』
「当時、軽巡洋艦だった筈だ」
『軍の主力戦艦五隻と渡り合ったという事ですか・・・しかし、我が軍は何千倍という数ですよ』
「先ほど、私が見ていた資料には一機の戦闘機で重巡洋艦一隻、軽巡洋艦二隻、海賊船六隻を10分程度で撃破している事が載っていた」
『戦闘機だけで、ですか?にわかには信じられない情報ですね』
「そのパイロットがあの艦長だと言う訳だ。彼等が本気で敵対するとしたら此方にも多大な被害が出てもおかしくなかった。ちゃんと戦闘合図も出していたからな」
『合図は無かったと思いますが』
「君もまだまだであるな。咳払いを2回した時には戦闘態勢に入っていたよ」
『以後気をつけます』
「できれば、この戦争に参加して欲しかった位だ。この報告書によればアノ艦は戦艦級レーザー砲をも弾き返すと言われている」
『戦艦級レーザー砲をですか?当たれば戦艦でも沈むといわれているレーザー砲がですよ』
「もし、その情報が正しければ。あの要塞のレーザーですら弾けると思っている」
『そういう理由があった為に総司令が対応したのですか』
「あぁ。部下に任せていたら大惨事になっていたかもしれないからな」
『謎多き艦ですか。なんだかミステリアスな艦ですね』
「君は昔からミステリアスが好きだね」
『えぇ。アノ艦は戻ってくるのでしょうか?』
「戻ってくる。私の軍人としての勘がそう言っているのだからな」
『敵側に渡る許可を出す代わりに攻略の手伝いをさせるのはどうでしょう?』
「それは愚策という物だよ。軍として敵側に行こうとする船は撃墜命令が下っているのだからね」
『失礼いたしました』
「聞かなかった事にする」
『愚考いたしました』
「だが、あるいは・・・」
この時、ロイドの頭の中に一つの妙案が上がった。
味方として引き込むのではなく、使えるだけ使うのはどうだろうかと・・・
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「ふ~、冷や冷やだったよ」
「無茶しないでよ」
「寿命が縮んだわい」
「精神安定剤が必要ですよぉ」
「あの顔、何か知っていそうだ」
「で、これからどうするの?軍が道を塞いで居るんじゃ行けないじゃない」
「ペンドラゴン、スールン星系に向かうには本当にあのホールを通り抜けないと行けないんだな?」
「一般的にはあの巨大な穴こそがスールン星系への道です」
宇宙空間に大きく渦巻く穴がメインモニターに映し出される。
「周囲の宇宙空間に見えるものは特殊な電磁波で戦艦ですら無事に通り抜けるのは至難の業と太古より言われています。例え入れたとしても計器・機器は全滅します。巨大な電子レンジとお考え下さい」
「中に居る生物も?」
「脳が破裂します」
「お前たちは?」
「艦長の生命活動が終了と同時に停止します。私たちの中にあるコアも破壊され二度と起動できないでしょう」
「北か南に進み、別のルートは無いんだな?」
「記録上、アラムドとスールンの間にある巨大な電磁場はずっと有り続けております」
「一から探索するのに何年を要する?」
「2万3,938光年という面積を探すのに我々の艦の速度で計算致しますか?」
「もう出ているんだろう?全員が死亡した後となる計算だぞ」
6,000年はいくら長命種であるエルダードワーフ、ハイエルフでも生きていられない。
それこそ不死にならないと駄目だ。
「因みに不老長寿薬なんてものは?」
「作れる訳ないのですよぉ」
「だよな」
「アオイ・・・ソコまでして」
「聞いてみただけだ。俺の時間も半分を切っちまったからな・・・」
今年で48を超えた・・・人の寿命からしてみて残りの年数は半分を切った。
「アオイさんわぁ、未開拓惑星出身とお聞きしましたが寿命は既に尽きているのでわぁ?」
「どういう事だ?」
「その寿命計算だとぉ【地球】の先進国家による平均寿命なのですよぉ。でもぉですね中世時代の人類の寿命は40までだと思うんですよねぇ」
「ペンドラゴン、あの星の人について平均寿命とか算出できるか?」
「申し訳ありません。千年前のデータしか残っておりません」
「老化遅延薬とか無いのか?」
「無いのですよぉ。でも、作り出す事は可能だと思いますよぉ」
「作り出せるのか?」
「はいなのです。ですけれどぉ、与えてもらった森だけでは材料が圧倒的に足りないのですよぉ」
スターニアには森を作り出し与えて薬の材料などを調達してもらっている。
「ペンドラゴン」
「森に分類されるのは残り3つです」
「エリクサーの材料が摂れる様な森じゃないと駄目だと思うのですよぉ」
「湖畔の森、迷いの森、神聖の森」
「どう考えても神聖の森だろ」
「3つ全部作り出しましょう。ポイントには大分余裕がありますから」
「空間拡張もしておいてくれ」
「はい」
「ついでで悪いが鉱山の種類も増やせねぇかのぉ?」
「どうしてだ?」
「アダマンタイトまでなら摂れるじゃが、オリハルコンとヒヒイロガネになると全く採れねぇんじゃ」
「確かにな」
スターニアの住まう森の隣に鉱山地帯(銅・鉄・銀・金の鉱石が取れる一般的なの鉱山とミスリル、アダマンタイトが取れる霊峰)を作り上げてリウイに与えている
「神山も作りましょう」
「助かるぜ。ザクザク掘れるのは楽しいが高みを目指すには材料が必要じゃからな」
「と、話が逸れたな。スターニアは老化遅延薬の研究をしてくれ。リウイはアレの復元を引き続き頼む」
「分かりましたのですよ」
「任せておけ」
「話を戻そう。軍のレーダー網を潜ってホールに突入する事は可能か?」
「アレだけの監視網を潜るのは困難です」
「できない事は無いんだな?」
「重巡洋艦の形を捨て、レーダー上でも光学観測上でもデブリに偽装すれば通れるかと」
「見つかった場合は?」
「戦艦級レーザー砲の集中砲火で爆撒の未来です。一発は耐えられても集中砲火では無理ですね」
「それこそヒヒイロガネじゃないと防げないわな」
「ヒヒイロガネを見た事ないんだがそんなに凄いのか?」
「おうよ。アレはオリハルコンの上を行く金属だぜ。たったの数グラムでうん千万って価値だ。オレは運よく鉱脈を発見できたから何十年も打ち込んだぜぇ。当時持っている炉ですら溶けねぇってんだからじゃじゃ馬でお転婆な金属よぉ」
「何度で溶けたんだ?」
「50万度よ。戦艦級レーザー砲は確か」
「2万5,000度です」
「集中砲火を喰らってもソレ以上の耐久力をもつヒヒイロガネを溶かすには延々と当て続けなきゃならん。戦艦クラスが何十隻でローテーションを組んでやっても溶かせねぇじゃろう。時間とエネルギーの無駄だぜ」
「ソレを溶かす炉を作り出したって事か」
「滅茶苦茶危険な炉だぜ。原子炉B型を10基用意し、作り出された熱エネルギーを逃がさないように1つの密閉した炉に集めた中にヒヒイロガネ原石を放り込んむんじゃからよ。対放射能スーツが無きゃ死んでるところよ。溶けるまでに1年間当て続けなければならねぇ。つまりオリハルコンなんて目じゃねぇ金属じゃな」
「戦艦級レーザー砲で融解したからな。アダマンタイトの融解温度は?」
「2万7,000です」
「あの時は2,000度差で耐えれたのか・・・それより、あの惑星で良く2万7,000度なんか出せたな」
「墜落時に原子炉E型が残っていたのでガンジ様が使用してました」
「放射能スーツとか、制御とか大変だっただろう」
「『死ぬときゃ、被爆死だな』と仰っておりました」
「そのガンジって奴ぁ糞度胸のあるドワーフだったんじゃな。一度くらい会ってみたかったぜ」
「偉大な方でした」
「お前さん等を生み出す腕前だ。そりゃ腕の良いドワーフだっただろうよ。装備品をみりゃ分かるぜ」
「また、話が逸れたな。ヒヒイロガネを手にしたとして50万度なんてこの艦で出せるか?」
「原子炉A型二基だけでは出力不足ですね」
「艦を丸ごと覆うなんて夢のまた夢だわな」
「戦争自体に参加して頃合を見計らってスールンに強行突破すれば?」
「敵前逃亡は重罪だよ?」
「突っ込むんだから逃亡じゃねぇだろぉよ」
「敵側に撃たれて爆散ですよぉ」
「別ルート、偽装、強化、潜入でも駄目そうか。あと思いつくのは」
「ひょっとして彼も元【地球】出身かも知れないわね」
「彼?」
「総司令官よ」
「確かに顔色が変化したな」
「え?分からなかったよ」
「だが、俺たちの目的を伝えても通さない構えだった」
「軍総司令にまで登り詰めた人ですからねぇ」
「だとして通してもらえるのか?」
「仲間に取り込んだらいいんじゃないかしら?」
「勧誘か・・・しかし、軍総司令の立場の人を引っこ抜けないだろう。それこそ敵前逃亡になっちまうだろ?」
「この後で話そうかと思っていた事が一点あります」
「なんだ?」
「まずはコチラをご覧ください」
ウィン
メインモニターに立体映像が映し出される。
「今、私達の居る宙域データを立体化した物です」
「あれがホールだな」
「たとえ、軍の監視網を潜り抜けてホールに突入したとして第二の関門が待ち構えています」
視点が移動を開始してホールの中へ入っていく。
「ホールの中心部にて要塞が待ち構えているのです」
「要塞・・・見た事が無いがコレが」
「直径約5,000kmの要塞です。スールン星系軍の最前線基地となっています」
「つまり、アラムド連邦はこの要塞を落とす為に集結している訳か」
「この要塞には射程距離500kmの虚空砲と呼ばれる兵器があります」
「虚空砲・・・なんだソレは?」
「戦艦級レーザー砲の数十倍の威力を持ち広範囲にわたる不可避な砲撃です」
「アラムド連邦軍は何回挑んだんだ?」
「はいはい、軍の極秘資料によると」
キャメリアがタブレット片手に元気よく言う。
「なんで極秘文書を持ってるんだよ」
「あの通信中にこそこそっとね」
「チャリオット」
「逆探知どころか感知すらされていない手腕だった。案ずることはない」
「それならいいが・・・続けろ」
「ここ数十年で突入した回数は27回。虚空砲によって損失した戦艦、重巡洋艦、巡洋艦、軽巡洋艦は累積で876万147隻。軍人の数はなんと26億2804万4175人だよ」
「もう侵略とかしないほうがいい状況だろう。軍は馬鹿の集まりか?」
「馬鹿げた損失に私もビックリ」
キャメリアに言われたら終わりだな。
「つまり、今回の戦争も負ける可能性が低いと」
「虚空砲の射程距離内に入ったが最後です」
「ホールから虚空砲の砲撃は出てこないのか?」
「要塞までの距離が大体1万7,000kmなので届きません。ホールも直線ではないので電磁空間に飲み込まれて威力は分散されます」
「軍も俺達も要塞に邪魔されている訳か」
「そうなります」
「第1の関門は軍に見つからずホールへ入る事、次に要塞を突破しスールン星系に突入する事だな」
「突入後の対策も必要です。アラムド連邦が戦の準備をしている事はスールン星系軍もキャッチしているでしょう」
「第1、第2の後に第3のスールン星系軍との対峙か・・・」
「亡命という形でアラムドの情報を渡せばスールン星系に行けますね」
「それは最終手段だな。どちらの軍にも目をつけられたくは無い」
「あと取れる手段なんてあるかな?」
「オレは正直小難しい事は分からん。リーダーの意見に従うまでだし必要な物があれば作るぜ」
「私もぉ、大きなぁ話過ぎてついていけなくなりましたぁ」
「話を戻しますが、勧誘の件になります」
「その話だったな」
「普通に軍からあの人を勧誘する事は出来ません。軍に所属する人ですから」
「敵前逃亡は重罪だろ?」
「アラムド連邦軍の軍法には書かれています」
「なんで、この艦は軍の機密情報がポンポン出てくるんじゃ?」
「クルーが優秀だからだな」
「お褒めの言葉ありがたき幸せ」
「えへへ~、照れるなぁ」
「敵前逃亡で失くせば問題解決だと愚考いたします」
「具体的に?」
「戦死です」
「ストレートに言うな。真意は?」
「敵前逃亡ではなく戦死であれば有耶無耶にできます」
「だが、総司令官が最前線に立って動くわけじゃないだろう?」
「それをあの方の命令権を使い戦死に見せかける動きをするのです」
「流石に戦死コースの動きとか不自然すぎるだろう」
「例えば歴戦の司令官が死に直面し錯乱した挙句、敵に単独で突撃し死亡という筋書きはどうでしょう?」
「他のクルー達は巻き添えだろう?」
「であれば、脱出ポットにて一人で」
「敵前逃亡に見えるだろう」
「司令官が一人の時を見計らって拉致を」
「AI的思考は何処に行ったんだ?」
「これは失礼しました」
「あの司令官だけを引っ張り込んで、戦死に見せかけるだけじゃろ?なんならこの艦を司令官専用艦に改造しちまって乗せればいいんじゃろうが?後は爆散したように見せかけるだけじゃろ?」
「なるほどな」
「現司令官専用艦のクルーも着いて来るだろ?」
「この艦内に入らせてしまえば勝ちは確定ですよ。クルー達は牢に入れて頃合を見計らってユーラシア惑星に向けてポットを投げ込めば問題ありません」
「案外理に適っているな・・・チャリオット、新艦の投入情報を偽装して最前線へ送る事は可能か?」
「可能である。一通りの書類フォーマットは確保済みであるからな」
「本当にこの艦は驚きが絶えないですねぇ」
「承認印などの偽装はできるという事か?」
「可能である。現軍部上層部の印も揃っているのである」
「第一の関門は総司令官を抱きかかえて突破する方向で確定で良いか?」
「異議無いよ」
「選択肢が無いならね」
「クルー達を詰め込むポッドはオレが制作してやるぞい」
「いいと思うのですよ!」
「「「「「私達は艦長の意志に従います」」」」」
「書類の偽装はチャリオットとキャメリアに任せる。専用艦と思わせるような偽装はペンドラゴンとリウイに一任する。最低でも戦艦クラスじゃないと騙されないぞ」
「お任せを」
「おうよ。最新鋭艦に仕立て直して見せるぜ」
「分かったよ」
「私達は何をしていればいいの?」
リリィとスターニアが羨望のまなざしで見てくる。
「俺達は第二フェーズを考える。戦死に見せかける方法は何だと」
「一番は敵に撃たれて死んだ事にする方法ですよぉ」
「総司令が敵に撃たれる場面って何だと思う?」
「そりゃ、味方の全滅じゃないかしら?」
「そう。味方が全滅し壁がなくなれば死ぬしかなくなるな。それだと被害が甚大だ」
「私的にはまどろっこしいのは嫌なのでぇそれで良いと思いますよぉ」
「最小限に抑えるやり方なんて思いつかないわ」
「さっき出してくれただろ。錯乱した挙句突撃をする総司令の話」
「確かにソレならば少なく済むわね」
「でもですよぉ。そんな場面は何処で生ませれば良いのでしょうか?」
「錯乱を狂ったという言い方に変えても良いんじゃないか?重責に絶えられなかった総司令官は狂ってしまって暴走。先陣を切って突撃を開始した挙句戦死というのはどうだ」
「どのシナリオでもあの方には狂人を演じてもらわないと駄目なんですねぇ」
「立場が高いとそういう場面で無い限り突飛な話じゃないとドロップアウト出来ないからな」
「そういう物なのね」
「じゃぁ、私達はぁ艦長の狂人エピソードを考えるわぁ」
「俺は抜きでやるのか?」
「任せてくださいのですぅ」
「フフフッ。あの司令官には悪いけど遠慮してられない事情があるものね」
第二フェーズはあの2人に任せておくか
・・・
2週間後、第一フェーズと第二フェーズの案が固まって来た。
「あぁ、コレで問題ないだろう」
軍の極秘で作られた対要塞攻略最新鋭艦の捏造と第一~第二フェーズのシナリオが完成した。
「まず、対要塞攻略最新鋭艦が何処から出発したのか履歴を書き換えることは出来るか?」
「軍の中でも日の目を見ていない、ドックから出たという記憶を仕込み済みである」
「あの最新鋭艦についての情報は向こうに渡っているのか?」
「軍幹部のホログラフィック映像を作成して、軍の通信回線に介入してあたかも中央司令部から通信している物だと思わせつつ最新鋭艦の情報を開示済みである」
「なにか感づかれなかったか?」
「問題無いかと」
「後は総司令官の引き込みだけか」
「総司令官の行動記録について報告するよ」
「なんで持ってるんだ」
「総司令艦にハッキングして監視カメラ映像を見ていたからね」
「お前達本当に優秀だな。そんな命令すら出していないのにな」
「勝手な行動に対して怒らないのであるか?」
「もし、バレて計画がつぶれた場合は罰とか与えるからな。出来れば俺に一言、それかペンドラゴンに相談をするべきだったな」
「申し訳」
「ゴメンよ」
「次からは気をつけろ。それでどんな行動をしているんだ?」
「殆ど同じルーチンだよ。朝起きて、身支度を整えて、ブリッジで仕事をして。残業が無い限り自室に戻って寝るまで何かしている動き。艦から一歩もでない所を見ると突入間近かもね」
「ソコまで見ていたなら突入予定とか拾えただろう」
「最新鋭艦の存在が明らかとなり、到着待ちである」
「俺達が遅らせた原因か」
「そろそろ最新鋭艦の紹介をしたいのですが」
「そうだな」
「では、コチラを」
ホログラム映像で艦の全体像が浮かび上がった。
「重巡洋艦の姿がコチラになります。そしてコチラが現方舟の姿にしています」
グニャァアアア
従来の艦の形は長方形の箱型であったが形そのものが変わり曲線を描いた斬新的な姿となった。
巨大な石鹸が宇宙を飛んでいるイメージである。
「思い切ったデザインだな」
「形にもちゃんとした理由があるんじゃ」
「まず、敵艦のレーザー砲を弾く効果を持っております」
「形だけでか?」
「この曲線がレーザーの直撃を和らぎ逸らす効果があるのです。なぜ、今まで箱型だったのかが分からなかったのです」
「たしかにレーザー砲の威力を少しでも抑えられるならソッチの方がいい・・・昔からの歴史って奴なんだろうな」
「箱型を廃止した為に加速荷電粒子砲は艦体の下に取り付ける事となりました」
「加速荷電粒子砲とは聞いた事がないな?」
「戦艦級レーザー砲(荷電粒子砲)を進化させた姿です加速荷電粒子砲。およそ2kmからなる加速装置によって加速された粒子をぶつけ合わせ続けた爆発的エネルギーを発射いたします」
「なるほど」
「プラズマイオン粒子砲は多数所持をしていたので取り付けて有ります。艦首の左右に小さな隙間から撃つ形となります」
「10門もか」
「この12年でたくさん手に入りましたからね」
戦艦級を持つ海賊船は非常に少なく、最高でも巡洋艦までが殆どだった。
そいつ等からプラズマイオン粒子砲を頂いていた過去がある。
「さらに艦体横には40cmレーザー単装2基25門を設置し横からに備えます」
「俺達が今まで集めてきた武装を詰め込んでるな」
「戦略型ミサイルポッドも艦体上部の面積をフルに活用しております」
「戦略型ミサイルポッド500門って飽和攻撃でもするのか?」
「要塞は対光学兵器防御膜S型を持っている為、戦艦級レーザー砲(荷電粒子砲)の威力ですら殆どダメージが通りません」
「物量で押し通すしかないのか・・・あ~と、以前アイツがやっていた・・・あの時の海賊が魔法陣でレーザー砲を強化していたな」
「船の墓場、海賊船船長のカシムの事ですね。彼は元々付与術士で光属性のレーザーに対して光属性の強化魔法を付与していた攻撃をした様です」
「付与術士か・・・レーザーも属性とかあるんだな」
「元をたどればレーザーは光の塊ですからね。魔法か科学かの違いだけです」
「魔力での攻撃より、科学での攻撃や防御の方が遥かに高いからな」
俺が全力でトリプルファイアーボールを海賊船に当てたとしても焦げるとは思うが破壊できる威力はない。
それこそ大爆発を起こすエクスプロージョンのような魔法が必要だ。
□基本性能
艦名:対要塞攻略艦
艦種:戦艦
艦体:全長1km(石鹸型)
主機:原子炉A型2基 高速推進機A型2基
補機:サブブースター8基
最高速度:397.5コイル
兵装:主砲 加速荷電粒子砲 1門
副砲 プラズマイオン粒子砲 10門
対宙砲 40cmレーザー単装2基25門
ミサイル発射管 戦略型ミサイルポッド500門
防御:アダマンタイト装甲板(伏字)
耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜S型
電子兵装:光学観測装置B型、広域通信機B型、高性能アンテナB型
特殊兵装:亜空間停滞収納C型(伏字)、クラス5戦闘機・CTL-40165リィンカーン(伏字)
特記事項:物資500万トン程。収容人数7,000名(MAX14,000)、牢屋5000名、モール街
「よくコレだけのアダマンタイトを集めたな。艦隊1km分の装甲板だと相当量だぞ?」
「コツコツと集めていた分を全て使い切りました」
「アダマンタイトを鉱石からインゴットにするのは骨が折れる作業じゃわい」
「今まで使用していない区画はアダマンタイトで埋めていた部分を各ブロック毎に分けてソレらしい物に仕上げました」
「特記事項のモール街ってのはなんだ?」
「この大きさの艦になりますと運用するクルーに対するアフターケアが必要となる為に娯楽施設などを含んだモールが必要と書かれていた為に増やしました」
「戦艦というのはそう言う所にも気を配らないと駄目な艦なんだな」
「そう見たいですね。今の所使う予定はありませんが」
「良くてオレの鍛冶工房か」
「私の薬屋くらいですねぇ」
「うちは圧倒的に人員が居ないからな」
たった5人と5機の自立型魔道人形達だけしか入っていない。
「もしかして、スールンには転生者が一杯居て地球に帰りたい人だっていると思うからその為の前準備って考えればいいんじゃない?」
「キャメリアがまともな事を」
「私だって成長してるよ!」
「それにしても年齢と言動の一致が」
「キャットピープルは精神的に成熟が遅いの!」
「エルダードワーフも実は遅いぜ」
「あらぁ、ハイエルフも100歳位にならないと成人した事にはなりませんよぉ」
「長命種は仕方ないだろう・・・短命種はかなり早いからな」
「それって私のことを指しているのかしら?」
「リリィは精神的じゃなくて身体的の方が遅いんじゃないか?」
「コレでも一人前のレディよ!」
「子供にしか見えんがな」
「子ども扱いしないでよね」
「リリィちゃんは何時までも可愛いままでいいよぉ」
年上のリリィ(42歳)を抱き上げるキャメリア(32歳)だった。
「アオイ、失礼な事考えていた」
「私も感づいたわ」
「そんな事ないぞ」
他愛のない会話も混じらせつつ作戦のすり合わせを入念にする。
「あとはこの事をあの司令官に伝え引き込むだけか」
「通信では記録が残ってしまう故に無理かと」
「直接会って話をするべきか」
「あの司令官はずっと戦艦内にいるんだよ?」
「潜入するしか無いだろう」
「あの監視網を突破して潜入することは至難の業ですよ」
「レーダーを吸収する素材とか無いか?」
「・・・ステルス素材は希少で中々手に入りません。これまでの旅で手に入った物でも極わずか・・・1人分の外宇宙スーツを作るまで限度です」
「作れるんだな?」
「しかし、潜入に送れるのは1人だけです。更に通信機器の類は使えないのでたった一人だけで行くしかありません。戦艦内にも監視網、武器探知、セキュリティも十全に整っており容易には進む事が出来ません。その中を進むのは危険かと」
「あぁ、俺が行く」
!!?
「アッサリと行くとか驚きじゃわい」
「アナタはぁ、ここの艦長なのですよぉ」
「艦長自ら行くなんて馬鹿げているわ」
「私等の誰かに頼みなよ」
「マスターが死地に向かうのは一同了承しかねます」
全員から否定の声を上げた。
「彼はこの戦争の総司令官だ。俺が出向かなければ相手はどんな提案でも受け入れてくれないだろう」
「それは、そうだけれど」
「・・・ダメよ。アオイのこの顔は決意をした目だわ」
「ここ数年で何度も見た顔じゃしな」
「なにを言ってもダメなのですぅ」
「俺のことを心配してくれるお前らが仲間で良かった。心配しなくても対人戦ならこの中でも随一だと自負している」
「だったら、その武器は頂けないのぉ」
ずっと付けているアダマンタイト製のペンディラムガントレットを指差すリウイ。
「潜入には向いていねぇぜ。オレが潜入向きを拵えてやらぁな」
「頼む」
「威力は落ちちまうがオッサンのスキルに合わせた小型化を期待してくれ」
「あぁ」
総司令に合う為の潜入作戦を練り準備に取り掛かる。
お疲れ様でした。




