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55話「スールン星系へ②」

「準備完了」


ステルス機能がある外宇宙スーツを着込み、俺は小型ポッドに乗り込む。


《小型ポット射出》


ボシュッ


目的地到着の間に復習しておくか・・・


潜入までの行動は・・・


①軍のレーダー網の外から小型ポッドを射出。←いまここだな

②ある程度の位置に付いたらポッドを出て離れる。

③起爆装置にてポッドを破壊。

④不審な爆発を検知した軍の偵察艦などが確認しに来る。

⑤レーダーに映らない俺はその艦に張り付く。

⑥問題ないことを確認し終えた艦は元の配置に戻る。

⑦そこからは宇宙を浮遊して戦艦へ徐々に近づく。

⑧戦艦の排気口から内部へと侵入する。

⑨内部へ侵入したら司令官の私室を目指す。

⑩司令官と直接対峙し勧誘を開始。上手く行ったら撤退とする。

 途中で駄目だった場合は無理なく脱出を最優先させる。


ある程度の潜入ルートはキャメリアとチャリオットから教えられて頭に叩き込んだ。

戦艦の内部設計書まで手に入れているとは恐れいる。


問題となってくるのは機密エリア内部への侵入でセキュリティが厳重である。


同じ軍人でも専門分野のエリアで区分けされている。

機関士専門の軍人ならば機関部に近いエリア、砲撃手専門の軍人ならば各砲のエリアと細かく分かれている。

つまり軍人に変装しても場違いな軍人が居たら怪しまれるレベルと考えていいだろう。


「どこでも開けるマスター認証キーも用意済みである」

「これはぁ、私が作り出した生体認証用の指紋、静脈、声紋、網膜,掌紋なのですよぉ。認証機械に対して当てるだけで誤認証するのですぅ」


幾つかブヨブヨとした物が渡されて装着する。


「サラッと凄い物を作り出したな」

「生体に似せる事はできるのですよぉ。うふふふふふ。間違っても違うエリアの人や登録パターンが違うと一発でバレますよぉ」

「これを」

「コレは?」


仮面の様な物が渡される。


「外宇宙での活動が出来る最小のヘルメットです」

「メットにしては薄すぎないか?」

「装着しますと頭全体を覆います」

「更に、登録した人の顔にも変形する優れものですよぉ」

「お前を仲間にして良かった」


こんな潜入向きなアイテムをこの短期間で作り出せるなんてな。


「なんだかスパイ映画を見ている感じで胸が高鳴りますねぇ」

「ま、実際はあんな感じにはいかないと思うがな」


・・・


《小型ポット予定座標に到着。艦長、ご武運を祈ります》

「あぁ」


パシュッ


扉が開き俺は外宇宙へと出る。


スゥウウウ


無重力空間を移動しながらポッドから離れる。


ここら辺か


ポッド破壊スイッチを握り、ボタンを押す。


カチッ


ボッ


小型ポッドが閃光を上げ爆散する。


後は異常を検知した軍を待つばかり・・・


・・・


・・・・・・


数十分という時を待ちようやく異常を確認しに来た軍艦が現れた。


大きさからて強襲揚陸艦クラスだな。


軍艦の中でも小さい船体だがスピードもあり惑星への大気圏突入および脱出も可能な物だ。



プシュッ


レーダーに写っていない事を祈り俺は背面にあるエアスラスターで移動を開始する。


船外カメラに映らない様に注意を払いつつコッソリと船体下部へと張り付く。


十数分間、強襲揚陸艦は周囲を確認し異常をないことを再確認を終えて惑星へ向けて動き始める。


「糸拘束術三式」


ガッ


よもや、スキルを自分に使うとは思わなかったな。


艦の中だったから感じられなかったが、宇宙船のスピードは人体に負荷が掛かりすぎる。


たかだか移動をしているだけなのにダメージを受けているのだ。


数十分の高速航行の衝撃に耐え強襲揚陸艦は所属する軍艦へと着艦しようと動き始めた。


パッ


拘束術を外して揚陸艦離れていく。


シュルッ


「引き寄せ」


軽巡洋艦の一部に糸を巻きつけて張り付く。


「問題はここからだ」


何万という軍艦が待機している中から総司令の艦を探し出さなければならない。

戦艦だけでも何十隻とあるのだからな。


小型レーダー機を提案したが敵のレーダーに引っかかる可能性を加味して却下された。


目視にも限界がある・・・さて、どうした物か


ジジッ


《こちらアラムド連合国最前線第27艦隊軽巡洋艦艦長のアレックス中佐です》

《こちらアラムド連合国最前線総司令戦艦のオペレータのルルイ大尉です。状況の報告を》

《1時間前、40キロ離れた場所で発生した異常についての調査が終わりました。高密度レーダー確認、熱検知確認、放射能汚染確認全て異常なし。おそらく浮遊していた不発弾の類が爆発したと思われます》

《不発弾の爆発ですか・・・。今は大事な時です。爆発周辺に浮かんでいるものの回収は?》

《周辺の浮遊物を回収し、一つずつ検分中です》

《回収物を私共へ送るようにして下さい。解析はコチラが行います》

《よろしいので?》

《周囲警戒の任務を優先させる為です。データの送信と回収物の輸送の承認を致します》

《了解いたしました。これよりデータの送信と回収物を乗せた艦を向かわせます》


ピッ


無線傍受してみれば渡に船とはこの事だ。


ゴゴゴゴゴゴッ


再びハッチが開き、先ほどの強襲揚陸艦が出てきた。


俺は同じ所へ張り付き総司令戦艦まで運んで貰うとする。


・・・


暫くして、周囲の艦と比べて巨大な戦艦が宇宙に浮かんでいる。


これが総司令戦艦か・・・


パッ


強襲揚陸艦と一緒に中に入る訳には行かず一度離れる。


「引き寄せ」


糸を使い移動をして当初からの潜入口へと向かう。


戦艦の中で最も入りやすいのは先程の強襲揚陸艦と一緒に入って行く格納庫のパターンだろう。

だが、全ての艦の格納庫出入り口には高密度レーダーが入ってくる艦に向けて発射されている。

つまり、船体に張り付いての潜入がバレやすい。


だから別の出口から潜入する事にする。


17年前キャメリアが俺達に感づかれる事なく潜入した手口を使わせてもらう。


本人は若気の至りとかで顔を赤くしていた黒歴史の様だ。


「アソコか」


プシュッ


戦艦のとある空間に浮遊物がたくさん浮いている。


「いくら広いとはいえ宇宙まで汚しているんだからな」


俺たちもしているから強くは言えないが大量の生活ゴミがそこら辺に浮かんでいる。


戦艦クラスともなれば焼却施設もあるのだろうが出来ない物等は一箇所に圧縮して宇宙へ廃棄しているのだろう。


スッ


廃棄口から中へと滑り込ませる。


ピッ


赤外線センサー等は流石に無いか・・・ここでセンサーがあった場合はこの作戦は中止だった。


廃棄物の通る道が幾つも分かれているのは数箇所に廃棄するエリアがあるのだろう。


シュォオオ


ボッ


別の道から廃棄物を入れた鉄の缶が高速で通り過ぎていく。


あの大きさとスピード・・・この狭い中で避けられず激突して死ぬな。


廃棄物がこない事を祈り先へ進む。


・・・


何とか廃棄物がこない内に廃棄物をセットする扉前まで来た。


「盗聴糸」


糸を扉の隙間から通し、周囲の音を聞く。


周囲には人は居ない・・・


「操糸」


サササッ


扉の周りに糸を這わせて開閉ボタンを捜す。


ピッ


「これか」


グググッ


カチッ


バシュッ


開閉扉が開き暗い所から明るい場所へ出る。


どうやら、廃棄室というエリアだ。


週に一度ルーチンで廃棄しているようだ。


壁に貼られている一覧表を見て此処が安全だと判断する。


圧縮する機械や鉄の缶を形成する機械などが狭い部屋の中に置かれている。


扉に糸を差込み周囲の音を聞く。


「流石に人の気配はあるか」


微かに足音が聞こえる。


まずは服装を如何するかだ・・・伸縮性は抜群で動きやすくレーダーにも反応しない優れものだが、こんな全身真っ黒な男が居たら怪しまれるだろう。


キィイ


扉を開き廊下の奥を伺う。


人の気配は感じるが遠くに向かうようだ。


スッ


なるべく音を立てずに廊下へ出る。


前後に糸を張り巡らせ音を頼りに足を進める。


「おっ」


途中の扉には【更衣室】と書かれている扉があった。


潜入時の定番中の定番だな。


ガチャッ


中に入るとロッカーが立ち並んでいる。


ピーピーピー


む・・・


どうやら扉が閉まりきっていないロッカーがあり警告音がなっている。


「なんだか怖いな」


トントン拍子で事が進む。


ロッカーには軍服とかでは無く全身を隠すエプロンが入っていた。


着てみると全身真っ白くなる。


食品工場とかで作業をするときに極力髪の毛等が入らない格好だ。


マスクも入っており顔の殆どが隠せる。


現状、顔は俺がメット越しに写っているだけだ。


スーツ姿よりマシとなり更衣室を出る。


ロッカーを閉め忘れたのはジョンソンって奴だ・・・更衣室に張ってあったシフト勤務表によると非番らしいがバレなければ幾らかは進むだろう。


早めに軍服などを手に入れたいものだ。


艦内マップで言う所の後部最下層の位置に居るらしいな。

全80階層から成り立つ戦艦だからな。


現在位置は居住エリアの食品工場ラインらしい。


『おい、お前。とっくに始業時間が過ぎているぞ!さっさと持ち場に向かえ』


ビクッ


急に大声で怒鳴られる。


「すみません!」

『ジョンソン、またテメェか!』

「直ぐに向かいます」

『そっちじゃねぇ。コッチだろうが』


全部を把握し切れていないがゆえに逆に向かおうとする。


『ったく、不真面目な奴は雇いたくなかったんだよ。人手不足だからってよ~』


どうやら、上司の立場らしい。


『ん?お前、そんなに背が高かったか?』

「気のせいでは?」

『まぁ、いい。お前はD-2区画の担当だっただろう。早く場所くらいは覚えておけ』

「はい」

『また、サボっている所を見かけたら減給だからな!』

「はい!」


足早に去っていく。


『ん?あいつ、今日は仕事だったか?』


上司が振り返る時には人の姿はその場には無かった。


食品加工工場はA-1~G-8という強大な区画であった。


さすが1万人規模が乗る艦だけある訳だな。


なんとか、加工工場からモールエリアへとたどり着いた。


バァ


扉を開くと中央をぶち抜いた巨大な空間が広がる。


狭い廊下を歩き続けた感覚からすれば広いと感じる。


各階層には何十、何百という店舗が立ち並んでいる。


車でも通れそうな通路には様々な服装をした者達が行きかう。


ここでも場違い感が出てくる。


流石に一般的なエリアに加工工場服では目立つ。


一般的な服装に変えないとな・・・


足早に加工工場へ急いでいるように装いながら進む。


周囲を見ると服などを売っている店舗すらあるがこの格好では入れない。


タッ


おあつらえ向きな施設が姿を現した。


公共プール施設。


「さすが、戦艦だ」


プール施設まで完備しているなんてな。


もはや移動するショッピングモールと言われても過言じゃないぞ・・・本当に戦争に行く気なのか?


中へと入ろうとするが出入り口の門が邪魔をする。


「ここでもカード式か」


有人での出入り口ならば強行突破も出来るがこんな所で問題は起こしたくない。


マスター認証キーを当ててみる。


ピッ


ゲートが開き中へと入る。


【男子更衣室】

【女子更衣室】


2つの扉が設置されて女子・・男子更衣室へと入る。


中はかなり広くロッカーが立ち並ぶ。奥にはシャワールームが幾つも設置されている。


『おいおい、食品工場の奴が迷ってるぞ』

『ばか、ここで泳ぎに来たんだぜきっと』


人気の無いロッカーへと移動する。


ここはどうやら鍵式のようだ。


「操糸」


カチャカチャカチャッ


鍵穴に2本の糸を入れてピッキングを開始する。


盗賊スキル持ちじゃないが長年糸を操り感覚を鋭敏にされた俺なら出来る。


カチッ


僅か数秒で開錠に成功する。


ギィイイ


扉を開けると服などの貴重品が入っている。


ババッ


素早く食品加工工場服を脱ぎ中に入っている服を着る。


少しキツイがあの服よりマシだろう。


ブチッ


名札の部分を引きちぎって代わりに入れておいてやる。


ガチャッ


扉を閉めて足早にプール施設を去る。


ブリッジ内部------------------------------------------------------


『ターゲットプール施設から出てきました』

「ここまで手際がいいな」

『戦艦に潜入してくるなんて度胸がありますね』

「潜入ルートもアソコからとは恐れいる。今後の課題であるな」

『次回の定例会に上げておきます』

「すでにバレているとは思わない動きの様だ」

『よく、潜入されたと分かりましたね』

「クックック。不審な爆発の報告が上がってから警戒をしていたさ。で、破片等の内容をみれば誰かが乗ってきた事は明白であろう」

『我が軍に欲しい人材ですね・・・非常に惜しいです』

「このまま監視を続けるのだ。何かあれば報告を直接私にする様に」

『了解いたしました。他のクルーには警戒して貰いますか?』

「良い機会だ。もし彼を捕縛したら1つ階級をあげようとする。それまでは侵入については伏せておけ」

『はっ!』


--------------------------


モール街を抜け戦艦の軍事区画へと目指す。


近づけば一般人や非番の軍人よりも制服を着込んだ軍人の率が多くなり始める。


そろそろ軍服が欲しくなってきた頃だ。


すれ違う軍人たちの視線が強くなってきている。


スッ


大きな通路から細い通路へと方向転換し一旦身を隠す。


「ここは何処だ?」


艦内マップを見て現在位置を探る。


『貴様!此処で何をしている!!』


背後から怒鳴り声のような大声で話しかけられる。


「はっ!更衣室を探しているのであります!」


アラムド連邦軍式敬礼して振り返る。


『所属は何処だ!』

「艦砲砲撃課であります」

『今日は非番だったのか?』

「本日は非番であります。最近配属されたばかりで更衣室の場所が分からなくなりました」

『名前は』

「ショーンであります」

『ヒューマンの砲撃手とは珍しいな。俺はあのエリアには入れないが途中まで送ろう』

「有難うございます!」


とても親切な軍人に出会って一安心だ。


怪しまれなかった理由として実在する艦砲砲撃課のショーンの顔に変え、認証カードも偽造した写真で胸に付けているからだ。

実際の声色も本人と変わりない。身近にいる者だったらバレたかもしれない。


『ショーンと言ったか?』

「ハッ」

『そんなに畏まれなくても良い。俺はこの艦に10年勤務しているが一般兵と変わりないからな』

「大先輩でありましたか・・・これは失礼な態度を」

『構わない。俺も新人の頃はこの広い艦内を彷徨ったものだ』

「はぁ」

『たまにお前のような迷子を見かけては声をかけ案内してやってるんだ。昔、おれが迷子の時に助けてもらったようにな』

「助かります」

『艦砲砲撃課は辛いか?』

「いえ、やりがいのある仕事だと感じているのであります」

『そうか。実弾を人力で装填するのは力仕事と聞く』

「いえ」

『良く食べて鍛えないとダメだぞ』

「肝に銘じておきます!」

『そうか。で、お前は誰だ?』


急に雰囲気が変わった。


何か、ドジッたか?


『艦砲砲撃課はレーザー砲撃を主とした課でな。実弾を装填することは無いんだ。それを否定するなんて変だろ?』

「気遣った言葉かと思い否定しました」

『それに俺も艦砲砲撃課なんだ。確かにショーンは部下だが、そんな気持ち悪い敬語は使わねぇんだ』

「・・・」


チャッ


レーザーガンを向けられる。


『貴様を拘束する!両手を挙げて後ろを向け!!』

「・・・」


スッ


両手を挙げて壁の方を向く。


『艦砲砲撃課のローソンだ。ブリッジに報告。怪しい人物を発見。拘束しだい独房にブチ込む』

《ブリッジ了解》

「さて、貴様が誰だかじっくりと聞かせてもらうぞ」


チャリッ


無線で報告したローソンは軍用の手錠が取り出す。


「糸防御術一式」


グイッ


「うぉっ!?」


バウゥウン


その勢いでレーザーガンからピンクのレーザーが発射され壁に穴が開く。


「その観察眼は恐れ入るが近接戦闘は慣れていないようだな」


ガンッ


ローソンの顎にフックを叩き込み脳震盪を起こさせる。


ガクンッ


ダァアアン


巨体が地面に沈む。


軍服は手に入るがローソンの体格ではダボダボで合わない。


ダダダダダッ


至るところから駆け寄る足音が聞こえ始める。


銃声で周囲の軍人たちが集まりつつあるようだ。


足早に俺は立ち去る事にする。


ブリッジ内部---------------------------------


『ターゲットが軍事区画まで侵入しました。艦砲砲撃課のローソンを倒し姿を隠しました』

「監視カメラでは追跡できないのか?」

『ただいま、追跡しておりますが足が速くて確認が追いついておりません』

「警戒態勢を敷き、包囲網を築け」

『気絶したローソンから無線です』

「繋げ」

《砲撃課のローソン軍曹です。この度はとんだ失態を見せてしまいました》

「君には落ち度は無い。よく怪しい者を見つけ出してくれた」

《侵入者は軍内部の人間に化けます。見た限りでは顔と声はソックリでした》

「報告ご苦労だ。知人でも怪しい動きをしたら侵入者の可能性があると全クルーに伝える」

《では、私も包囲陣に加わります》

「期待している」

『惜しかったですね』

「これで全クルーにも緊張感が伝わであろうな」

『誰が捕まえるかですね』

「侵入者は凄腕の近接戦闘術を保有しているのだ」

『なぜ?』

「砲撃課のローソンは砲撃技術軍曹の地位を持っているからだ」

『軍曹を倒す侵入者ですか』

「白兵戦に特化した部隊を送るしかないな。ラウンド陸軍中尉を呼べ」

『はっ!』

--------------------------


ギシギシ


ドタバタドタバタ


ギシギシ


『そっちには居たか!』

『いません』


ギシギシ


『西側通路、発見できず』

『北側通路、発見できません』


ギシギシ


『侵入者は何処へ消えた!』

『南通路異常を発見しました』

『なんだ!』

『通気口の出入り口が切り裂かれていました』


ギシギシ


『全クルーに通達。侵入者はダクト内に居る!』


早くもバレたか。


ガンガンガンッ


ダクト内の至る箇所から軍人の入ってくる音が響いてくる。


ギシギシギシギシ


狭い通気口内部を通って進むしかない。


『おい、侵入者だってよ』

『この戦艦に侵入者?どうやって入り込んだんだ?』

『知るかよ』

『俺達も参加するべきじゃね?』

『この状況じゃ無理だろ。生理現象の最中だぞ?』

『全くだ』


通気口の網目から声のするほうを見るとトイレの真上に来たようだ。


個室に軍人の頭が見える。


『何時になったら侵攻作戦は始まるんだ?数ヶ月も待ちっぱなしだぞ?』

『最新鋭艦の到着待ちだとよ』

『なに?初耳だぞ?』

『対要塞攻略戦艦っていう戦艦だ』

『どんな性能なんだ?』

『なんでも今までの戦艦を覆すような作りらしい。俺も詳しくは知らない』

『くそっ、中々でねぇ』

『ふぅ、俺は先に出るぜ』

『なに!?』

『次合うときは戦場でな』


ジャァアアアア


2人のうち1人はトイレを出て行った。


『裏切りものめ』


ガコッ


『ん?』


ガシャァン


『ガハッ』


物音に気付き軍人が真上を向くのと同時に俺は通気口から脱出する。


押しつぶされた奴は気の毒に気絶をした。


「さてと、貰っていくぜ」


気絶中の軍人から着ている服を脱がせ軍服を奪う。


ほほぅ、ブリッジオペレーターか。


ブリッジのオペレーターなら中央を堂々と歩いても気にされないだろう。


ガチャッ


ブリッジオペレーターに変装している事を遅らせる為に奴は用具室に入れて口を塞ぎ身動きが出来ないようにしてトイレを後にする。


戦艦ブリッジオペレータのルルイ大尉か。


顔と声紋を変えてブリッジへと足早に向かう。


既に最上層近くまで登っていたようだ。


ブリッジまで目と鼻の先の様だ。


ピッ


ウィイイン


ブリッジの扉が開き中へと入る。


『ルルイ大尉、遅いぞ』

「すまねぇ、腹を下していたんだ」

『こんな糞忙しいときにトイレに行っていただと!持ち場に着け』

「あいよぉ」

『侵入者だ。お前は捜索隊第12班~15班のナビゲーションを担当しろ』

「へいへい」


ギィ


『下痢大尉』


背後のオペレーターからボソッと呟かれる。


「こちら、ブリッジオペレーターのルルイ大尉だ。状況の報告を」

《捜索隊12班、現在軍事区画の72階層を捜索中》

《捜索隊13班、現在軍事区画の73階層を捜索中》

《捜索隊14班、現在軍事区画の74階層を捜索中》

《捜索隊15班、現在軍事区画の75階層を捜索中》

「引き続き捜索をしろ。不審な点等を見つけたら随時報告を」

《捜索隊12班、了解》

《捜索隊13班、了解》

《捜索隊14班、了解》

《捜索隊15班、了解》


・・・


・・・・・・


目の前のコンソールに映し出された各区画を捜索し異常がない場合は青く塗りつぶされる。

捜索班は第1班~第278班という班体勢で行われている。


トイレに気絶させた奴の発見も遅くはないだろう。


状況報告を聞きながら俺は裏で総司令官の自室を確認している。


ブリッジ上層では総司令本人が働いているのをチラチラと見えるが接触は後に回す。


時間が経つにつれて捜索範囲が狭まる。


《捜索隊14班、84階層のトイレにて不審点を発見》

「状況は?」

《個室上部のダクトが崩れています》

「真新しいか?」

《壊れて数時間前かと》

「侵入者はソコから出て行った可能性がある」

《少しお待ちください・・・》


途中で報告が途切れる。


『なに?』


背後のオペレーターが声を上げる。


『あぁ、そうだ』


小声で何を言っているのか聞き取れない。


《周囲を捜索致します》

「他の班を向かわせる」

《はっ!》


・・・


《捜索隊12班、84階層の廊下にて不審点を発見》

「状況は?」

《ダクトのネジが外れております》

「その場所のダクトは侵入できそうか?」

《無理でしょう》

「ネジをはめ直しておけ」

《はっ!》

《捜索隊14班、84階層西側連絡路にて破壊工作の痕跡を発見》

「具体的な状況を説明しろ」

《壁に亀裂が入っています》

「修理班にでも報告しておけ」

《はっ!》


なんだかくだらない内容の報告が多く入ってくる。


周囲のオペレータは徐々に探索が終わりきって席を立っていく。


『ルルイ大尉』


肩を叩かれて振り向く。


チャッ


『侵入者よ。ここまでだな』


いつの間にか至る所にいる軍人からレーザーガンを向けられる。


『この数に勝てる自信はあるか?』

「ハハハッ、俺が侵入者だと?」

『かなり前にルルイ大尉は発見されたよ。君の担当した捜索隊は君をデスクに貼り付ける為に誤報告で惹きつけてくれたお陰で私達は準備が容易に出来たよ』


チラッ


視線を総司令官の方に向けるとニヤリと笑っていた。


つまり、数十分前から俺はロックされていた訳だ。


軍人の連携を甘く見ていた。


『言い残す事はあるかね?』

「侵入者に優しいことで」

『この後たっぷり吐いてもらうからな』

「では、総司令官殿に一言」

『ほぅ』

「言わせたまえ」

『ホレ、お許しが出たぞ』


ゴホンッ


咳払いを一つして意識を変える。


数十年ぶりで発音ができるか心配だ。


『ロイド総司令に伝える。お前が元日本人、または元地球出身者なら。俺達は迎えに来た!お前の心に故郷に帰りたいという希望があれば迎え入れる準備を万全にしてきた!』


日本語で大声を出して伝える。


「以上だ」

『何を伝えようとしたが分からなぬが拘束しろ』


「糸防御術一式」


ブワッ


10の糸が四方八方へ伸びて銃を構えている軍人のトリガーに糸を通し奪い去る。


『うわぁああ!』


至る所で銃を手放さなかった軍人が宙を浮かび地面に落ちるという事が発生した。


「人質になってもらう」

『なに!?』


ガッ


ガクンッ


俺と真っ直ぐ対峙していた軍人の背後に回りこみ気絶させる。


グイッ


片手でその巨体を浮かび上がらせて脇腹に奪ったレーザーガンを当てる。


『バカめ、レーザーガンは個別認証』


ガウゥン


「それがどうした?こいつの命が惜しければソコを退け!!」


『連邦軍人魂をなめっ』


ガゥウン


問答無用に邪魔をする軍人の足を撃ち抜く。


『グアァアアア』

「そこを退け!!」


ザッ


様子を伺っていた軍人たちが道を開ける。


宙に浮かぶレーザーガンの銃口が自分たちを狙っているのだから尚更だ。


・・・


「魔力強化四段階!斬鋼線!!」


ギャリィイイイイイン


半径50m程の範囲を360度回転し切り裂く。


戦艦の全高は250m、全幅は120mに対し直径100mの範囲攻撃が通っても痛手とは感じられないだろう。


内部からじゃなければな。


ドォオオオオオン


配管の一つがガス管だったらしく至る所で爆発音が聞こえ始める。


「逃げるか」


内部爆発を止める術が無い場合宇宙船はどうなるか?


爆散する結果しか待っていないだろう。


ブロック毎の隔壁で防ごうにも広範囲爆発には対応が難しくなる。


格納庫へと走る。


アソコには脱出する戦闘機くらいある筈だからな。


途中でパイロットスーツを着た軍人からスーツを奪い成りすまして戦闘機に乗り込む。


カチッ


緊急脱出用にハッキング用の小型MSB端子を差し込む。


《搭乗を確認。クラス1戦闘機・ATL-74958ヨルンサポートAIシステム起動》

「緊急発進」

《緊急発進するには目の前のハッチが開かなければなりません》

「レーザー砲で戦闘機が飛び出せる穴を開けろ」

《10cm旋回式レーザー砲を準備、発射》


ビィイイイイイイイイ


カァアアン


戦闘機が抜けられる穴が空き空気が外宇宙へと飛び出していく。


《緊急発進します》


ゴォオオオオオ


ボッ


超加速し戦闘機は穴から外宇宙へと出る。


「マニュアルモード」

《マニュアルモードに変更》


操縦桿を握り、加速ペダルを踏み込む。


ゴォオオオオ


背後の原子炉が唸り声を上げる。


ドドォン


脱出してきた戦艦内部で連鎖爆発が起こり続け中から脱出ポッドや小型艇で逃げる者たちが続出する。


総司令戦艦内および周囲に点在する艦隊が大混乱している。


至る所から来る無線の内容だけで聞き取れる。


カッ!


収集がつかなくなった総司令戦艦は遂に閃光と共に消え去った。


さすがに総司令官は脱出しただろう。


・・・


・・・・・・


数時間の航行を終えて軍の尾行や追跡すらなく目的の宙域へと戻ってくる。


白銀に輝く流線型を描く方舟が姿を現す。


《こちらアラムド連邦軍所属対要塞攻略戦艦ブリッジ。所属と名前を願います》

「連邦軍所属対要塞攻略戦艦、艦長のアオイ中佐だ」

《艦長、無事でしたか。中へお入りください》

《着艦モードに入ります》


ゴゥンゴゥンゴゥン


船体下部のハッチが開き格納庫へと戦闘機が入る。


パシュッ


中がスカスカなだけに通路も複雑ではなく迷わずブリッジに到着できる。


「艦長、何をしたのですか?」

「軍の無線を傍受してましたら、総司令戦艦がなにやら大騒ぎになったと」

「とりあえず総司令の目の前までは行けた」

「それで、どうなったの?」

「俺の変装がバレたらしくブリッジ内で包囲が完了していた」

「ほぅほぅ」

「あの総司令官に日本語で言いたいことを伝え逃げた」

「で?」

「逃げ切るために注意を逸らそうと内部を破壊してしてから逃げたが予想以上に深刻なダメージを与えていたらしい」

「それからそれから!」

「連鎖爆発に耐えられなかった総司令戦艦が爆散の道を辿った」

「うふふぅ。潜入から破壊工作じゃないですかぁ。これでアオイさんはアラムド連邦の敵に回りましたよぉ」

「素顔は見られていない」

「監視カメラにバッチリと映ってるんだなぁこれが」

「見てたのか?」

「あの総司令官、アオイが侵入したことに気が付いていたよ」

「どの時点で?」

「最初から警戒していたみたい。確信したのは戦艦に廃棄物排気口から入った所からだね」

「顔バレはしているか・・・」

「計画は如何いたしますか?」

「続行だ。総司令戦艦がなくなった総司令は他の艦に乗るのは嫌がられるだろうしな。ちょうど最新鋭艦が到着するならコレに乗ってくるだろう」

「畏まりました。予定通りに軍内部の宙域へと航行します」


・・・


ゆっくりと進み数時間で軍の内部へと進む。


見たこともない艦体に軍は警戒をするが全艦に対して全域通信で対要塞攻略戦艦を名乗り問い合わせの通信を封じ込める。


案内役の軍艦についていき停艦して指示を待つ事とする。


《こちら、アラムド連邦最前線第8艦隊司令官のクエリ中佐だ》

「こちら、アラムド連邦対要塞攻略戦艦ブリッジ」

《貴艦の到着、こころより待っていた》

「総司令官殿は?」

《現在、手が離せない状態となり私が代理として話している》

「我々はこの後の指示を待っています」

《総司令官殿からの命令で、現時刻をもって対要塞攻略戦艦は総司令の乗る旗艦となった。君たちはただちに艦を引き継げ》

「この艦は最前線で虚空砲に対抗する為の艦です。総司令官が乗るような艦では御座いませんが」

《いいから、君たちは引き継ぎをすれば良い。後は我々が処理する》


なんだか、最前線内部で隠したい事がある感じだな。


「引渡しには総司令と直接あい互の承認印をもって引き継ぎが完了します」

《わかった。直ぐに総司令と繋げる》


ここまでは顔を変えてブリッジオペレータとして対応する。


ピッ


《アラムド連邦軍所属最前線部隊総司令のロイド准将だ》

「こちら、アラムド連邦対要塞攻略戦艦ブリッジ。予定通り到着致しました」

《ご苦労。互の承認印が必要と聞いたが今は戦争準備中でね代理の者でも構わないかね?》

「中央司令部からの厳命で総司令に確実に引き継げと仰せつかっております。代理の者は引き継ぎできかねます」

《・・・分かった。直ぐに向かうからそのまま待機しておいてくれ》


あの様子だと少人数で来そうだな。


数十分後、小型艇に乗った総司令と護衛数名が中へと入ってきた。


ウィイン


「これが最新鋭艦のブリッジか。中々に広いな」


ロイドと武装した軍人が入ってくる。


キィイ


「先程振りだな。ロイド総司令官殿」


艦長席に座り、態々背を向けた状態からロイドの方に向き直る。


「貴様は!?」


チャッ


「おぉっと!そうは行かねぇぞい」

「うふふぅ、無粋ですよ」

「撃たせないよ!」

「抵抗しないでね」



キャメリア、リリィ、リウイ、スターニアが護衛の軍人たちを押さえ込む。


さすが、レベル70の職人たちだ。

平均レベル30程度の軍人では到底適わないだろう。


「そいつらは牢に入れておけ」


ウィイン


護衛兵たちは連れて行かれロイドと相対する。


「これで話しやすくなったんじゃないか?」

「まさか、最新鋭艦に君に乗っ取られていたなんてな」

「まだ、そう思っているのか・・・ペンドラゴン、説明してやれ」

「はっ!」


カンカンカンカンッ


階下にいたペンドラゴンが階段を上りロイドの前に姿を現す。


「アンドロイド?」

「私をそんな物と一緒にしないで貰えますか。私はこの艦の副艦長を務めさせてもらっているペンドラゴンと申します。ロイド総司令官殿」

「まさか」


チラッ


階下では他のNALLシリーズが操作をしている。


「この艦はアンドロイドが動かしているのか」

「最新鋭艦といっただろう。艦の航行、機関部の制御、火気管制は全てここで操作できる」

「馬鹿な。では艦内部には」

「誰もいないさ。このブリッジだけでこの艦を動かしているんだからな」


・・・・


「たったの数名だけでここまでやって来たのか。恐れ入るな」

「チャリオット、いまの把握度はなんだ?」

「現在、11万5,649隻中5,243隻の把握は完了。準備出来次第主導権を切り替えている」

「なにを?」

「今もこうして最前線艦隊のシステムを乗っ取っているんだ。いらぬ戦いはしたくなくてね」

「この短時間で五千という艦隊を乗っ取っただと」

「話がズレたな。ペンドラゴン」

「では、コチラの資料を」


ペンドラゴンはロイドにタブレットを渡して説明を開始する。


・・・


・・・・・・


「以上が我々のプランです」

「ハッハハッ。私が狂人と化し戦死か」

「あくまで偽装ですがね」

「1年も前から準備されていたシナリオであったか」

「ロイド総司令官」

「私はもう総司令官の任を外されるだろう」

「なに?」

「総司令戦艦を戦争前に潰してしまったのだからな。降格は必須だろう・・・」

「それはすまない事をしたな」

「破壊をした張本人を前にして怒りを通り越して落ち着きがあるのは何故だろうな」

「次の総司令官は誰になると思う?」

「さぁな。第1艦隊~第57艦隊の司令官から選ばれるだろう」

「そうか」

「次の総司令官が決まったらソイツを狙うのか?」

「いや。俺達の目的は」

『地球に帰るだったな』


やはり・・・日本語が


【鑑定】

 名前:ロイド

 レベル:32

 種族:ヒューマン

 メイン職業:司令官(Lv38)

 体力:1,150/1,150

 魔力:1,038/1,038

 攻撃力:169

 防御力:175

 各種装備品:司令官帽、司令官の軍服、ズボン、革靴

 所有スキル:アラムド軍式格闘術、アラムド軍式銃術、アラムド式操縦術(戦闘機、軍艦)、軍団指揮、艦隊指揮、部隊指揮、リーダーシップ、日本語、アラムド連邦標準語

 状態:健康


「元日本人だったか」

『久しぶりに聞いた日本語に驚いた。そして確信したよ。君達がなぜ地球を探しているのがね』

「望むならば連れて行く。ここに残ると言うならば残ればいい」

「・・・くっ」


ポタポタッ


ロイドの目から涙が溢れる。


「俺は、この日をどんなに待ち望んだ事か。地球を探したく軍学校に入り一兵卒から総司令官まで登りつめた・・・だが地球を探しにいける立場じゃなくなってしまった」

「そうか」

「アオイ!いや、アオイ艦長。俺を地球に連れて行ってくれ」

「歓迎する。仲間を紹介しよう」


ガァアア


キャメリア、リリィ、リウイ、スターニアが戻ってくる。


ガシャガシャガシャッ


階下からNALLシリーズが上がってくる。


「新たに仲間に加わったロイド元総司令官だ」

「ロイドだ。よろしく頼む」

「キャメリア・クルンだよ。アオイ艦長の騎士なんだけど今は電子戦技能士で頑張っている所。私はニホンジンじゃないからね」

「リリィよ。こう見えても成人しているからレディとして扱って頂戴。魔導師で元日本人よ」

「オレぁ、リウイってんだ。見ての通りでエルダードワーフじゃよ。生粋の鍛冶職人で元日本人よぉ」

「うふふ。スターニアって言うのです。ハイエルフの薬剤師をしているのです。同じく元日本人なのですよぉ」

「砲撃手(火器管制システム)担当のアルテミスです」

「操舵士・機関制御担当のサンです」

「通信・レーダー系担当のジャンヌです」

「電子戦担当のチャリオットである。以後お見知りおきを」

「改めて副艦長(戦闘指揮)のペンドラゴンです」

「以上が俺達の仲間だ」

「本当にこの人数だけで運用しているのか・・・」

「艦長、アラムド連邦軍中央司令部から通信である」

「繋げ」

「こちら、アラム度連邦軍中央司令部のイアン大将だ」

「これはイアン大将」

「ロイド元総司令もそこに居たか。この度は惜しいことをしたな」

「いえ、私の失態であります。当然の結果かと」

「緊急会議を開きロイド元司令官は降格処分の沙汰を言い渡す。准将から大佐とする」

「謹んでお受けいたします」

「でだ、そちらに届いている筈の最新鋭艦の艦長を誰に就任させるかで揉めておってな」

「決まっていなかったのですか?」

「それがいつの間にか建造されていた超極秘事項だったらしく。私ですら知らなかった事態だ」

「なんと」

「性能をみれば戦艦としては十分に基準を満たしておる。資料によれば対光学兵器防御膜シールドS型、戦略型ミサイルポッド500門という馬鹿げた武装を持っている」

対光学兵器防御膜シールドS型に500門ですか」

「この際、対要塞攻略艦の出処は後回しにして計画を進めようと決まった。そこで対要塞攻略艦の艦長を君に任せたいのだよ」


チラッ


コクッ


「謹んでお受けいたします」

『第48艦隊として配属し直す。最前線に立ち汚名返上をすると良い。君の乗っていた戦艦のクルーも同乗させるよう指示をだしておる。一般人達は惑星へ降下準備を開始しておる』

「はっ!」

『戻ってくることを期待している。君、ロイド艦長に引き継ぎをしたまえ』


ピッ


「小型艇の接近を確認」

「元総司令戦艦のクルー達だと思われます」

「モールにでも入れておけ」

「はっ!」

「私が艦長として動いていいのだろうか?」

「その方が動きやすい。最前線とは戦死にもってこいな場所配置だろう」

「第48艦隊の司令官から通信入りました」

「繋いでくれ」


俺が言う前にロイドが制服を正し艦長席に座る。


『第48艦隊司令のアルン大佐だ』

「この度、新鋭艦艦長に任命されたロイド大佐だ」

「貴艦は第48艦隊最前線に立ち対要塞攻略の役に立ってもらう事となった。精々我々の盾になってくれたまえ。指示はおって出す以上だ」


ピッ


「ずいぶん嫌われているようだな」

「この若さで准将にまで登り詰めたのでな。連中は疎ましく思っていたのであろう。あの失態で調子付かせてしまったようだ」

「有能者を嫉妬するのは世の常だな」

「まぁ、潮時だったのかも知れぬな。今回も敗退が色濃く私の地位も何処かで剥奪されていただろうし」

「第一フェーズは完了した。第二フェーズに移行する」


「「「「「ハッ!」」」」」

「第二フェーズか」


・・・


・・・・・・


『これより、第28回侵攻作戦を開始する。全艦発進せよ!』


全体通信で新総司令官の指示で全艦隊が動き出す。


捉えていた元総司令戦艦のクルーは強制的に脱出ポットで惑星に落としてきた。


「射撃艦船用の高周波レーダー発射」


ピピピピピピピピ


レーダー内に半径500km以内に居るのはアラムド軍の艦隊のマークが映し出される。


電磁波の壁にはレーダーが通らず真っ黒く塗りつぶされて通路のように宇宙空間が狭く表示される。


「スールン星系軍は居ませんねぇ」

「サテライトドローンの存在もないよ~」

「罠かもしれんな」

「それが敵の戦略でしょ。虚空砲でドカンってやつ。一気にカタが付くから余計な真似はしないんじゃない?」


ブリッジ艦長席の後ろでメインモニターを見ているキャメリア、リリィ、リウイ、スターニアが感想を述べる。


「旅館でくつろいでいてもいいぞ」

「いやはや、こんな大イベントを見ないと損だよ」

「そうね。これだけの艦隊運用を間近で見れるんですもの」

「数少ない娯楽じゃからな採掘している訳なかろう」

「研究ぅもぉ、順調ですからねぇ」


コイツ等からして見れば侵攻作戦は娯楽と言う事だ。


「クハハハハッ!アオイ艦長、こう言ってはなんだか愉快な仲間達であるな」

「元日本魂だからな。アニメやゲームがないこの宇宙では数少ない娯楽だ。ゲームを観戦する感じだろう」


地球からしてみればSFの域に達している高科学技術を持つ時代なのに娯楽が少なく元日本人からしてみれば宇宙航行中は退屈なのだ。


「私は毎日が訓練漬けでそんな余裕もなかったな。気がついたらこの歳で総司令官に成っていたよ」

「要塞が見えてきました」


残り750kmまで近づく。


直径5,000kmを超える要塞は威圧感を放っている。


「スールン星系軍が要塞内より出てきました」

「パターンは同じだな」

「こちらが警戒している内に重役出勤か」

「まぁ、その通りだ。虚空砲の射程距離に入ってくれば撃たれるからだけ」

「敵軍が虚空砲の射程内に居なければ戦いにすらならないか」

「要塞攻略には虚空砲を撃たせずに近づけるかだな」

「アレが虚空砲の砲口か・・・大きいな」

「直径でも50kmの口径だ」


1km程度のこの艦が耐えられるなんて夢だろう。


「スールン星系軍の配置が完了した模様」


ピッ


『愚かなアラムドの畜生兵士たちよ何度も何度も侵略しに来るとはな。だが、このタイガ要塞の前では無力な事を今一度思い知るが良い!』


ピッ


全域放送だったらしく一方的に通信し切ったようだ。


ピッピッ


「対要塞攻略戦艦前に出ろと指示が出ました」

「たった一隻で突っ込めと言うのか」


ロイドが険しい顔をする。


「前進しろ」

「何を!?これは戦争だ!数には数で応戦しなければ集中砲火を浴びて撃沈されてしまう」

「第二フェーズはロイドの戦死が目的だ。周りを巻き込まずに済むならお前も良いと感じるだろう?」

「確かに、あの無能どもの命令で他の兵士の命すら散らす必要はないな。冷静さを欠いてしまった様だ」

「スールン星系軍攻撃準備に入りました」

「こちらも一発お見舞いしてやれ。加速荷電粒子砲の準備」

「加速荷電粒子砲を起動」


キィイイイイイイン


船体下部で円形の光が漏れ始める。


「エネルギーチャージ量20%・・・30%・・・40%」

「敵戦艦複数から戦艦級レーザー砲が来ます」

「私は負けないぞ。私の判断が間違っていないと証明して見せる」

「着弾まで3、2、1」


キュィイイン


キュィイイイン


「戦艦級レーザー砲を逸らす事に成功。無傷です」

「無傷だと!?」

「この艦が流線型なのはレーザーを逸らす目的だからだ。今までの戦艦はレーザーの進入角度を直角で受けていた。だから沈められる」

「なんて発想なんだ」


コレくらいは誰でも思いつきそうなんだがな。思いついても頭の固い連中は竣工させてくれないか・・・


「加速荷電粒子砲100%まで到達」

「撃て!」


ドシュゥウウウ


ピンク色を帯びた光線が発射される。


「螺旋を描いているのか?」

「口径に螺旋を描くライフルリングを刻んでいるからのぉ。光線は回転しながらドリルのように進むんじゃ。アダマンタイトをあの形にしたのは苦労したがのぅ」

「戦艦一隻に直撃、後方に控えている重巡洋艦にも貫通しております」

「砲塔、回転を開始!薙ぎ払え!!!」

「回転を開始します」


ビュゥウウウウウン


螺旋を描くレーザー砲が曲線を描きながら横一列に並ぶ戦艦、重巡洋艦の艦隊を一撃で粉砕し爆散させる。


「砲撃完了。砲身の冷却完了は10分後です」

「外宇宙の冷気で10分か」

「融解しなかっただけで儲け物だぜぃ」

「戦艦、重巡洋艦、巡洋艦、軽巡洋艦複数の破壊を確認」


ビュィイン


俺たちの一撃で混乱した瞬間を狙って後ろに控えている重巡洋艦の大容量レーザー砲が幾千と重なり発射される。


「敵最前線艦隊の壊滅を確認。後方に控えている艦隊が慌てて艦首を要塞に戻しています」

「虚空砲、発射圏内に入りました」

「奴らはまだ撃たない。ある程度の侵入を許してから殲滅するのが定石だからな」

「船体下部サブブースター作動」

「サブブースターを可動します」

「原子炉A型4基をフルスロットル。突っ込むぞ」


総司令戦艦の残骸から回収した原子炉A型2基と高速推進機A型2基を取り込み俺達の戦艦は2倍の速度を得る。


ピッピッピッ


前線艦隊から急速に離れる変わりに要塞との距離が250km圏内まで縮める。


「虚空砲にてエネルギー集約を感知」

「防御魔法陣展開!」


グワッ


戦艦上部を敵に晒す形で艦隊を傾ける。


「防御魔法陣展開。古竜魔石から魔力を送信」

「防御魔法陣発動を確認!防御障壁を展開します」

「展開開始」


ブワッ


俺達の艦を中心に青色の防御障壁が周囲数百キロに渡って展開される。


「虚空砲発射されました」

「出力最大で防御しろ」

「古竜魔石に亀裂を確認」

「空っぽになるまで送り続けろ」

「虚空砲着弾!」


ギャァアアアイィインインンン


防御障壁と虚空砲が衝突し数瞬間せめぎ合う。


「角度調整!」

「ブースター出力抑えます」


グググッ


艦体下部サブブースターの出力を抑えて角度を浅くする。


ビッィイイイン


「虚空砲、逸れて電磁空間に飲み込まれていきます」


ォオオオオオオ


後ろで見ていたリウイが歓声を上げる。


「虚空砲出力低下を確認」

「古龍魔石が2つとも自壊しました」


シュウウウ


「虚空砲のエネルギー切れを確認。再充填に幾ばくかの時間を要するかと」


「黒煙幕を噴出」

「等間隔での自己爆発を開始」


ドドォン


ドォオン


艦体上部から振動が伝わってくる。


ザザァ


メインモニターに映像が乱れた第48艦隊司令のアルン大佐から通信が入る。


「ご苦労であった。貴艦の役目は終わり後退の指示が下された」


ドガァアアン


「大丈夫なのか?」

「本艦は甚大なダメージを負った。あと数分も持たないであろう」

「そうか・・・英雄ロイド殿。無事を祈る」


バッ


乱れた映像ながらアラムド連邦軍式敬礼が行われる。


「艦体の縮小を開始いたします」

「俺たちの艦がここで沈められるわけ無いからな」


バキバキバキバキバキ


艦体の至る所から軋む音が聞こえ黒煙の中で質量を縮ませていく。


「補給艦モードに切り替え完了しました」


 □基本性能

  艦名:方舟

  艦種:補給艦

  艦体:全長10m(箱型) 

  主機:原子炉A型4基 高速推進機A型4基

  補機:サブブースター8基

最高速度:1589.9コイル

  兵装:主砲 なし

     副砲 なし

     対宙砲 40cmレーザー単装2基5門

     ミサイル発射管 戦略型ミサイルポッド5門 

  防御:アダマンタイト装甲板

     耐ビームコーティング特殊鋼装甲板

     対光学兵器防御膜シールドA型

電子兵装:光学観測装置B型、広域通信機B型、高性能アンテナB型

特殊兵装:亜空間停滞収納C型

特記事項:なし


「補給艦の性能には見えないのは私の目の錯覚かね?」

「こんな小さな艦であれば敵の砲撃も避けるだろうな。全速力で要塞下をくぐり抜けろ」

「原子炉A型の出力をあげます」


ゴッ


「モーションキャンセラーの許容範囲外を検知」

「前にもあったな」

「修正完了しました」


敵艦ですら追いつけない速度で俺達は出口に向けて発進する。


「ほかの艦隊からの緊急通信入りました」

「無線封鎖だ。銀河ネットワーク機器も取り外しておけ」

「はっ」


さらば、アラムド連邦・・・・か

お疲れ様でした。

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