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56話「真実」

要塞を抜けてスールン星系へとたどり着き敵艦隊が待ち構えていると思いきや一隻も存在していなかった。


俺達は呆気にとられつつも逃げるようにホールを後にする。


「変わった事はないか?」

「うむ。射撃艦船用の高周波レーダーにも反応がないようだ」


艦長席にロイドに明け渡している理由として艦指揮におけるスキルが発動するからだ。


しかし艦を実際に動かしているNALLシリーズ達は艦長席にロイドが座る事に難色を示した。


自分達が仕えているのは俺であってロイドではないと言う。


「ロイドの能力は今後のために役に立つ。俺がここに居ても座っている事しかできないからな」

「しかし・・・」


最後までゴネたのはペンドラゴンではなく付き合いが長いサンであったが何とか説得する。


ここ1週間はロイドの指揮の元で航行をしているが空気はあまり良いとは感じない。


「あまり、上手く行っていないみたいだな」

「まぁ、私は新参者だからね。キャメリア殿が羨ましいよ」


キャメリアは基本チャリオットの元で電子戦を師事しているが、他のNALLシリーズが担当している物にも興味があり良き関係を築いている。

リリィの防御魔法陣も艦にとって必要な防衛設備であり、リウイの作り出す武装も素晴らしい出来である。

スターニアの薬自体はNALLシリーズには効かないが俺の精神安定に貢献しているから関係が悪いとは言えない。


「NALLシリーズについて教えてくれまいか?私も未知のテクノロジーに困惑しているのだよ」

「俺も正直NALLシリーズはよく分かっていない。感覚を共有することは出来るんだが」

「感覚?」

「NALLシリーズの感情を読み取る程度だが」

「感情?アンドロイドにあるのかね?」

「一つ、訂正だな。NALLシリーズはアンドロイドではなく自律型魔導人形だ。1人1人感情があり自我がある」

「そんな・・・機械ではなく魔導具が擬人化した感じなのかね」

「カテゴリ的にはそういう事だな・・・まてよ、スターニアに手伝ってもらえば有機義体も作れるんじゃないか?」


・・・人の顔に似せられる仮面が作れるのだからな。


「まるで攻○機動隊だ」

「おっ、それを知っているって事はロイドは近い年代か」

「ん?」

「VRMMOって知っているか?」

「ライトノベルで出てくる空想上のゲーム機って事くらいは」

「一世代前の人か。俺の時代はVRMMOゲームは実在した2052年頃の事だ」

「未来の人物だったのか・・・そうか、VRMMOゲーム機は実現したのか」

「リウイは1940年、第二次世界大戦中にだそうだ。スターニアは教えてくれなかった」

「時代がバラバラの転生でもしたのだな」

「予想として地球で死んだ魂が別の世界に来る途中で時間軸が変動するらしい」

「リリィ殿は?」

「2012年だそうだ」

「私は2018年の事だったな」

「艦長、レーダーに反応がありました」


ジャンヌから報告が上がってくる。


「あ、・・・今は違ったな」


長年艦長と呼ばれていたから反応してしまった。


「何かね?」

「小型ですが脱出ポッドの様です」

「生命反応は?」

「1です。如何いたしましょうか?」

「回収してくれたまえ」

「はっ」


こんな感じか・・・俺の時と態度が違うが時間が解決してくれる事を願おう。


小型脱出ポッドを回収し医務室へと運ばれていった。


補給艦と小さな外見だが、内部拡張を施しており様々な区画が用意されている。


「バイオメトリックデータを」

「こちらです」

「うむ」



名前:不明

種族:ヒューマン

性別:女

血液:O

年齢:18歳程

状態:気絶


「なんでこんな所に?」

「周囲の探索をするように。あれが脱出ポッドなら宇宙船があるかも知れない」

「浮遊していた角度、速度から発射位置の割り出しを開始します」

「計算中・・・・50%・・・70%・・・・100%。計算完了、レーダー範囲外も含めますとこのエリアから発射されたかと思います」


メインモニターに映し出される。


「広いな」

「かなりの範囲だ」


予測でも広い範囲にわたっている。


「回収した脱出ポッドを確認した所、最低限の生命維持装置とコールドスリープ機能がありました」

「コールドスリープ機能・・・実在するのか!?」

「ロイドが驚く機能か」

「あれは実現不可能とされた技術なのだ」

「つまり、スールン星系はアラムド連邦よりも技術力が高いという事か」

「コールドスリープ機能が使われていた場合の範囲は」


ボワッ


何倍にも膨れ上がる探索範囲だ。


「これじゃ、探索のしようが無いぞ」

「なにかデータは残って居なかったのか?」

「脱出時の音声データが残っていました」

「再生してくれたまえ」


ピッ


ザァアアアア


『××××××××!××××!!××××××!!!』


高音域の少女の声が叫んでいる。


「なんて言っているか分からないな」


『××××××』

『××××××××××××』


今度は落ち着いた、男性と女性の声だ。


『××××××』

『×××』


ピッ


「以上が解析できたデータです。言語が全く違うのでしょう」

「スールン星系軍との通信は聞こえたぞ」

「軍はアラムド連邦標準語も習得しているようです」

『俺がなんて言っているか分かるか?』

「・・・・?」

「アオイ殿は「何て発言しているか分かるのか?」と言っている」

「申し訳ありません」

「ペンドラゴン達は日本語は分からない様だ」

「では、私からも。『ロイド艦長、アナタは艦長としては相応しくありません』」

「?」

「お前な、そこまで嫌っているのか」

「ペンドラゴン殿はなんと?」

「まだ、認められないってよ」

「日本語ではなかった様だが」

「俺たちが住んでいた惑星の言語だ。ヒメリア語という」

「私達の共通言語はアラムド連邦標準語のお陰のようだな」

「つまり、俺達の誰もが分からない言語か」


ピッ


「艦長さぁん。助けてくださぁい」


メインモニターにスターニアが映し出される。


「落ち着いて、ねぇ、落ち着いてって」

『××××××!!×××××××!!!』


キャメリアが助け出した少女に話しかけているが話自体が通じていない。


キャメリアやスターニアも話せない言語の様だ。


「痛っ!痛いですよぉ」


少女は果敢にもスターニアの腕を噛み付いている。


足はキャメリアの顔面を蹴り上げている。


「ほぅ。高レベルの2人を相手に」

「そんな評価要らないですよぉ」

「大したダメージじゃないだろう」

「痛いことには変わりないのですよぉ」

『×××××!×××××!!』


少女は画面を指して何か言っている。


『××××!!××××××!!!』


相変わらず何を言っているのかは分からない。


「俺が行ってくる。ここは任せた」

「あぁ」


ブリッジを出て医務室へと向かう。


プシュッ


扉を開けると酷い有様となっている。


スターニアやキャメリアには少なくともダメージの痕が残っている、ベッドや治療器具なども散乱しているといった具合だ。


『××××××!××××××!!』

「何を言っているのか分からん。解析」


とりあえず少女について少しでも欲しい為にスキルを発動する。


【解析】

 名前:フェリス

 レベル:38

 種族:ヒューマン

 性別:女

 年齢:18

 職業:合気道家(Lv70)

 体力:3,230/3,230

 魔力:760/760

 攻撃力:665

 防御力:352

 頭:リボン

 体:絹の服

 手:

 腰:絹のスカート

 脚:靴下

 アクセサリー①:ロケット

 アクセサリー②:

 アクセサリー③:

 職業スキル:合気道術、相半身片手取り一教、正面打ち一教、相半身片手取り二教、正面打ち二教、相半身片手取り三教、正面打ち三教、両手取り四方投げ、横面打ち四方投げ、入身投げ、正面打ち入身投げ、日本語、スールン星系標準語

 状態:健康


こっち側にも元日本人が転生してきたのか?


見た目は日本人ではない北欧系の外国人少女と言った印象だ。

レベルが軍人達よりも高い事から武術の心得があり実戦経験もあるという事だな。


『フェリス、少し落ち着いてくれ』

『え?日本語!?』

『元日本人なのですかぁ?』

『こっちも日本語!?』


俺とスターニアが日本語を使い始めて驚いているフェリス。


『俺はアオイ』

『スターニアなのですよぉ。そちらはキャメリアですが元日本人ではないのですよぉ』

『あ、御免なさい・・・人以外の種族を見て混乱しちゃって』

『君も転生者という認識で良いか?』

『う、うん。ルイールって惑星出身です。両親が宇宙科学者で・・・ねぇ、私は何年くらい寝ていたのですか?』

『何年?』

『コールドスリープに入ったところまで覚えています』


ウィイン


「艦長、脱出ポッドの検分が完了した」


チャリオットが医務室にやって来る。


『わっ!ロボット』


フェリスが驚きスターニアの影に隠れる。


『掌返しは嫌いですよぉ』

『う、ごめんなさい』

『許すのですよ』


サスサス


フェリスの頭を撫でるスターニア。


「3人で何話しているかわからないよ」

「後で話すからキャメリアは退室してくれ」

「後でちゃんと話してよね」


キャメリアは怒って医務室を出て行く。


「報告を聞こうか」

「あの脱出ポッドは何処から来たのかは未だに不明。中のコールドスリープシステムが故障したのは1週間前で発見が遅れていた場合は死亡していた可能性があった」

「故障か・・・どの位稼働していたか解析できたか?」

「調査中である。こちら側のシステムは未知故に使用言語の解析から始めなければならないのである」

「ふむ」

『ねぇ、何か分かったのですか?』

『あと少し発見が遅れていたらお前は死んでいたという事くらいだな』

『嘘っ・・・』


サッと顔色が悪くなる。


『スリープ時間は分かりましたか?』

『言語が違うから解析に時間が掛かるそうだ』

『言語が違うの?』

『俺達はアラムド連邦側から来たと言えば分かるか?』

『アラムド連邦!?あの極悪星系出身者!!』


クラっ


フェリスが気絶して倒れる。


『あらあら、私たちのことが極悪ですってぇ。アオイさんが怖い顔しているからですよぉ』

『それは関係ないだろう・・・』

『敵対国家の場合、敵について悪として教育することはごく自然のことなのですよ』

『たしかにアラムドの中には極悪と呼ばれる者たちは居るが全部とは言えんな』

『敵国=極悪という教育方針なのですよぉ』

『気絶したのであれば起きるまで待つしか無いな』


・・・


・・・・・・


それからフェリスを保護して1週間が過ぎても心は開かず最低限の食事しか摂らなくなった。


「まだ、ダンマリなのかしら?」

「リリィか。まぁな」

「ここに連れてきなさいよ」

「ここにか?」


たまに旅館の部屋で寛いでいる。


ここに来れば日本の事を思い出すのだ。


ロイドも絶賛する程の衝撃だったな。


「この日本旅館は元日本人の心を揺さぶるのよ。私もそうだった」

「そう言えば俺が強すぎて怖かったから怯えていたんだったな」

「あの時の会話を聞いていたの!?」

「数少ないイベントだったからな」

「ゲームオタク」

「しかし、あの時と違うのは敵国の船の中という事だ。辛うじて元日本人という事でスターニアの言う事は聞いてくれるようだが」

「なんだかんだ言ってスターニアはお姉さん気質があるからね」

「アレが?」

「この中で一番の歳上でしょう」

「あらあら、私のことをおばさん呼ばわりは頂けませんねぇ。合法ロリっ子」

「噂をすれば」


スターニアが怖い笑顔を貼り付けて部屋へとやってきた。


「ん~、この畳の匂いは落ち着きますねぇ」

「あの子はどうしたのよ?」

「肩が凝っちゃってですねえ」

「凝る程の物は持っていないくせに」

「何か言いましたかぁ?」

「なにも」

「体調面とかはどうだ?」

「体調は順調に回復していますよぉ。でも精神面が安定しないのですよぉ・・・やはり敵国の船だからでしょうねぇ」

「警戒しているという事か」

「誰だってそうなるのですよぉ。はぁ、この緑茶は心を温めてくれますねぇ」

「前々から思っていたけどなんで日本茶とかお茶菓子とか普通にあるわけ?」

「そうですねぇ」

「俺も知らない事だからな。ペンドラゴンに聞かないとな」

「一度、説明をして貰いたいですわぁ」

「この船って未知すぎて理解できない部分があるわよね」

「とんでもない秘密が隠されている感じがするのですよぉ」

「と言ってもな」

「第一NALLシリーズの方々は本当にアオイさんの命令に絶対服従なのですかぁ?」

「魔力パスも繋げてあるから問題ないだろう」

「自律型魔導人形って所で引っかかるのよね。動力は何で、何を考えて、何を判断して動かしているのかしら。アンドロイドと言われた方がマシだわ」

「ファンタジー世界の住人である私達でも理解できないのですよぉ。一言で魔法によるものでも原理は必ずあるのですから」


ピピッ


《マスター、保護対象が医務室を出ました。捕縛致しますか?》

「自由に泳がせておけ。重要な区画はロックしておけばいいだろう」

《ハッ》


ピッ


「あらあら」

「あの狭い医務室じゃ、流石に出たくなるわよね」

「ここにたどり着けるかしらぁ」

「噂をすればだな」


『×××××!××××××!!』


扉から入ってきたフェリスが草原に広がる青空、森や山の景色を見て歓喜の声を上げる。


あいにくスールン星系標準語で何を言っているのか分からないが・・・


しばらく、様子を伺っていれば当然日本旅館であるこの場所も目に止まるだろう。


『ねぇ、ここって日本の旅館ですか!』

『あぁ。俺達元日本人の憩いの場として作り出している』

『入ってもいいのですか?』

『招待しよう。リリィ案内してくれ』

『なんで私が!』

『同じ女性としてスターニアよりリリィが適任だからだな』

『ホビット族は背が小さいだけで人と変わりありませんものねぇ』

『ぐぬぬぅ。覚えていなさいよ!』


見た目少女なリリィが適任なのは誰も異論は出ないだろう。


『さてと』

『何処へ行くのかしらぁ?』

『風呂に入ってくる』

『お背中流しますよぉ』

『変な噂が立つから遠慮しておく』

『またまたぁ、私に遠慮するのですかぁ?』

『もうそんな歳じゃないんでね』

『イケズですねぇ』


スターニアを置いて男湯へと向かう。


「ふぅ。安らぐなぁ」


ガラガラガラ


『すっごぉい!本物の温泉見たぁい』


こんなシチュエーションが前にもあったな。


『リリィちゃん、早く早く』

『ちゃんって年じゃないわよ。貴方よりずっと長生きしているわ』

『え!?私より歳上なのですか!!全然見えないんですけど』

「それは、ホビット族だからよ」

『なんですか?』

『別にいいじゃない。アナタ、お風呂の入り方は忘れちゃったかしら』

『これでも日本人でした!覚えています』

『そぅ』

「昔を思い出すね~」

「貴女!いつから」

「最初から入っていたよ」

『ひぅ』

「言葉が通じないって壁だと言われていたけど結構辛いよねぇ」

『ね、猫の獣人?』

『えぇ。キャットピープルよ』

『そ、そうなのですか?』

「こんにちわって通じないかぁ。私もニホンジンだったら良かったのにね」

『こう見えてもキャメリアは職業レベルは70なのよ。ロイド艦長は38だったかしら』

『レベルなんてあるのですか!?』

『あら、ない世界だったのかしら?』


驚いた、レベルの無い世界か・・・


『ちなみに私のレベルは何ですか?』

『私には見れないの。アオイかスターニアしかね』

『あらあら、私の噂ですかぁ』

『出たわね』

『相変わらず貧相ですわねぇ』

『そっちもじゃない。石エルフ』

『私はハイエルフですわぁ』

『ハイエルフ?エルフじゃないのですか?』

『エルフの上位種ですわぁ』

『すごく綺麗です』

『うふふ。ありがとうねぇ』

『気を付けなさい。極度のサディストよ』

『え?』

『あらあら、私がサディストってイメージを勝手に植え付けないで頂戴』

『あ、あのスターニアさん。私のレベルって見えるのですか?』

『あらあら、さん付けは不要なのですよ。フェリスのレベルはですねぇ38になりますよぉ。一般的な軍人より高いですねぇ』

『そ、そうなんですか?でも、一般人ですよ?』

『合気道家がレベル70なのでぇ、達人クラスですよぉ』

『それはお父さんから無理やりって、合気道の事喋っていないのですけど!』

『それは私の解析のスキルですわぁ。相手の情報・・・ステータスを数値として表しますわぁ』

『解析って全部を見れるって事なのかしら?』

『大概はですねぇ』

『じゃ、じゃぁスリーサイズとかも』

『ん~それは秘密です!』


バシャバシャバシャッ


「フニャァ、のぼせてきたらからお先に出るよ」

「ハイなのですぅ」

「相変わらずね」

『お、大きい』


ペタペタペタペタ


『うふふ。それで壁越しに気配を隠して私たちの話を盗み聞きをしているウチのリーダーは何をしているのですかぁ?』

『なっ!?』

『え!?』


ここでバラすなよ。


『アオイ!アナタ、また聞いていたのね!!』

『往生際が悪いですよぉ』


ボンッ


『え?リリィちゃん、本を何処から』

『我が力の源よ、願いを晴らすために顕現せよ。ファイアーボール』


詠唱魔法陣魔法かよ。


『死ね』


ドシュゥウウ


「引き寄せ」

「ノワァアアアア!オレを盾にするでなぁあい」


ボォオオオン


「後で覚えていろよ」


ブクブクブクブク


湯に沈むリウイを見送る。


「リウイまで聞いていたのね!」

「2人してレディの話を聞いているなんて酷い人たちですねぇ」

『あの、2人共。それ以上は』

「ツインファイアーボール!」

「痛い目が必要ですね!」


バシャァ


ドシュゥウウウ


スターニアから何か液体が飛んできて、リリィからはツインファイアーボールを投げ込まれる。


「誘導!」


シュルウルルルッ


2つのファイアーボールは糸に絡め取られて旅館の外へと軌道を曲げる。


ジュワアァアアア


だが、スターニアの薬液は男湯に届かず壁に掛かり垂れる。


日本風を意識して男湯と女湯は竹と麻紐で編まれた壁で分かれている。その壁の麻紐が薬液で溶けて結合力を失い始める。


ブチブチブチブチ


当然、麻紐は溶けて結合力がなくなった竹はバラバラとなる。


バシャァアアアアン


男湯で女湯の壁が取り払われて互いに見える距離が出来上がる訳だ。


『きゃああああああ!』

『いやぁああああああ』


真っ先に反応したのはリリィとフェリスがタオルで体を隠して内湯へと退避していく。


「あらあら、まだまだお子様ですねぇ」

「ワザと仕掛けただろう?」

「何の事かしらぁ?」


こういう所がサディストと呼ばれる所以だ。


「邪魔な壁も取り払われた事ですしぃお背中を流しますわよぉ」

「その前に隠せ」

「そういうアナタもですわよぉ?」

「俺は紳士だからな」

「真の淑女たるものこの程度では動じないのが鉄則だと思いますわぁ」

「ふっ」


踵を返して男湯の洗い場に戻る。

堂々と付いてくるスターニアに背中を洗われる事となる。


パシィン


風呂から上がった所でリリィとフェリスに一発ずつ平手打ちが俺とリウイに飛んでいった事は言うまでもない。


先に上がったキャメリアは訳が分からずといった具合だ。


一番の被害者はリウイに違いないが・・・黙っておこう。


俺達を悪役として女性陣の結束力がなぜか固まった所で話が聞ける状態となった。


この一件でフェリスの心が開かれたという事だ。


・・・・


俺達は一度ブリッジに戻り集まった。


「まず、最初に説明するがフェリスは元日本人の転生者だ。そしてスールン星系標準語の2言語しか知らない。今世での故郷であるルイール惑星の言語も習得しているがこの際覚える気がないから無視する。よってフェリスとの会話は元日本人である俺、リリィ、リウイ、スターニア、ロイドの5人での会話が主となる。その間は艦の事は頼むぞ」

「はっ。今回の会話は音声録音させて頂きます。我々も日本語を習得致しますので」

「今回の会話の翻訳はロイドに一任する」

「任されたぞ」

「録音を開始してくれ」


ピッ


「録音開始しました」

『では、フェリス。君について教えてくれ』

『私の名前はフェリスです。元日本人なのは皆知っていると思います。出身惑星はルイールで両親が宇宙科学者でした』

『どの分野の研究をしてたのですかぁ?』

『私も良くは分かっていないんですけど、対消滅反応炉の実験をしていたと思う』

『対消滅反応炉だと!?』

『対消滅反応炉はたしか』

『アラムド連邦軍でも極秘で研究している炉の事だ』

『そんな事言っていいのか?』

『私は軍人ではなく戦死者だ。死人に口なしとはよく言ったものだが』

『それで、対消滅反応炉というのは何なんだ?』

『アラムド連邦の標準的な炉が原子炉なのだが』

『え?原子炉使ってるんですか!?』

『『『『え?』』』』


今度はフェリスの反応に俺達が呆けることとなった。


『あんな危険で時代遅れの炉なんて使っているんですか?』

『危険なのか?』

『原子炉は基本的には危険であるがちゃんとした管理下のもと運用すれば使える代物だ』

『じゃ、じゃあ、アラムド連邦は対消滅反応炉は作られていないんですか?どうやって航行しているんですか?』

『そりゃ、何ヶ月も掛けて地道にな』

『じゃ、じゃぁ、ワープドライブもないんですか!?』

『ゲートという長距離転移門はあるが小型化には成功していないのであるな』

『ぜ、全然文明が進んでないじゃないですか・・・だからスールン星系軍は取るに足らないという認識なんですね。不思議だと思っていました』

『アラムド連邦が取るに足らない軍だと?』


元軍人故の反応だろうが抑えてもらう。


『対消滅反応炉も無い、ワープドライブも無い、コールドスリープも無い・・・一般的な船ですら持っている装備なんですよ・・・』

『一般的に販売されている装備なのか』

『流石に軍艦に付けるような武装は売っていません』

『となるとアラムドの方が弱いのか?』

『そんな馬鹿な!?何十年も戦争を続けておいてか』

『でも、外壁門は突破された事ってありますか?私がコールドスリープに入る前には無かった筈です』

『たしかに我が軍は一度も要塞を超えたことが無い』

『その前に外壁門ってなんだ?』

『アラムド連邦とスールン星系の間にある電磁バリアの事です』

『あれって意図的に発生しているのか?』

『私の知っている限りだと要塞が発生装置だったと聞きましたが』

『あの規模の電磁バリアを張れるのか!?』


大体23,938光年分の広さを誇る電磁バリアってなんだよ・・・


『たったの2万5千光年程のバリアじゃないですかぁ』


・・・たったの?


『少し待て、落ち着いて話そうか。今、たったのと言ったか?』

『はい』

『ロイド艦長、2万5千光年は軍部最速で何年掛かる?』

『原子炉S型4基、高速推進器S型4基と仮定して1000年掛かる』

『1000年!?この艦はどうやってこの銀河を行くつもりなんですか?』

『この状態で進むだけだ』

『アナタ方馬鹿ですか!無謀にも程がありますよ!』


お、おう。

この歳になって年下の少女に馬鹿にされた。


『詳しく説明してくれ』


頭が痛くなってきた・・・


ガガガァアアアアア


『これがスールン星系の銀河図です。それで、この小さな部分がアラムド連邦の領土です。眠っている間に変わっていなければの話だけど・・・』


フェリスは大きな丸を描き、左下に小さな丸を描いた。


世界地図で表せば大陸と小さな島を描いたようだ。


・・・・


沈黙がブリッジを包む。


『・・・これはまた』

『勝てない訳ですねぇ』

『井の蛙とはこの事よなぁ』

『アラムドは本当に戦争しないほうが良いんじゃない?』

『長年戦ってきた意味が・・・』


一番のダメージが大きいのはロイドだろう。


『スールン星系の広さは分かるか?』

『大体21万9000光年ですよ』

『21万光年・・・・』

「ペンドラゴン、俺達が脱出したあの惑星からスールン星系までの距離は?」

「はっ、大体96光年かと」

「何年掛かってだ?」

「およそ19年です」

『俺達は19年で96光年しか進めなかったんだぞ』

『だから、無謀なんです。せめてワープドライブやコールドスリープがなければこの銀河は航行できません』

『これほど技術力の差が明らかにされるとは・・・』

『スールン星系はアラムド連邦を押さえ込む力を有しているのです。問題はサンズ帝国軍の連中です』

『銀河椀を渡ってくる魔族軍だと聞いているが?』

『その認識で間違いないです。魔族を中心とした軍だと教科書には書いてありました。種族も様々で厄介な連中だとか。一般人の私はここまでしか情報を持っていませんが』

『いや・・・貴重な情報を手に入れられて良かった。なるほど、門の内側に軍がいなかった理由が分かった』

『恐らく我々の戦力では要塞を越えられないと思っているのだな?』

『そう!それが私の不思議なんです。あの外壁門をどうやって超えたんですか!』


・・・


あの時の事を軽く説明してみる。


『アハハハハ!防御魔法陣であの虚空砲を逸らしたんですか!』

『何がおかしいのよ』


魔法陣の一任者であるリリィが不機嫌になる。


『魔法なんて・・・って魔法!?』


今頃になって驚くか。


『SFなのに魔法も存在しているんですか!?』

『さっき、風呂場で見ただろう』

『何かの手品かと』

『あれが魔法だ。ゲームのように魔力を消費して魔法を放つ』

『始めてみました・・・魔法ならってそれでも納得できませんよ!』

『人の力でアレを捻じ曲げるのは無理だ。古竜の魔石を2つ潰して逸らすのまでが限界だった』

『本当に虚空砲を防いだんですね。にわかに信じられませんがアラムドの艦をみすみす逃す訳ないと思いますし』

『逆にスールンの技術力の高さに脱帽なんだな』

『同意見よ』

『共感するわい』

『越えられないままの方が良いかもしれませんねぇ』

『元軍人としてはこの情報を持って帰りたい位だ』

『引き返したところで今度こそ虚空砲に沈められるぞ』

『すでに戦死状態の私が何を言っても無駄だがね』

『とりあえず、私の話は以上です』

『分かった・・・今日は疲れただろう。あの旅館で眠るといい』

『結局、この艦は誰がリーダーなのですか?』

『艦長はロイドだが、リーダーは俺だ』

『分かりました。よろしくお願いします』

『あぁ』


シュォオオ


シェリルは旅館のあるエリアへと去っていった。


「ペンドラゴン、会議は無事に終了した。録音は止めて良いぞ」

「はっ」


ピッ


「私はこのままペンドラゴン達に今の会話を翻訳しながら説明するとしよう」

「頼んだぞ。キャメリア、お前も日本語を少しでもいいから学んでくれ」

「分かったよ~」

「俺とチャリオットで話し合いたい。小会議室を使う」

「私も同席してもいいかしら」

「オレ達はオレ達で話し合うべきだろうよ」

「賛成なのですぅ」


今回参加した俺、リリィ、リウイ、スターニアに加え情報共有する為にチャリオットを呼び出す。


「ではマスター話を伺うのである」

「まず今回の会議で色々と隠れていた部分が見えてきた。シェリルの話が正しければ大きく分けて4つだ」

「1つずつ聞くのである」

「まず、このアンドロメダ銀河は全体で22万光年の広さがあるそうだ。その中で数%の96光年分がアラムドの領域だと判明した」

「それは誠であるか・・・」

「確証は今の所ないが信じるしか無いようだ。チャリオットの電子戦の腕は信用に値する、キャメリアも同じくな。だが話によればアラムドとスールンでは技術力が根本的に違っている可能性がある。安易に電子戦を仕掛けない方が良いだろう。バレる可能性があるからな」

「我のメモリに刻んでおこう」

「2つ目に対消滅反応炉という炉の存在が一般的に出回っているらしい。お前の情報で知っている事を話してくれ」

「我が持つ情報でもアラムドでは対消滅反応炉という炉は開発段階で頓挫したと掴んでいる。もし、開発が成功されているならばこの艦のスピードは劇的に上がるであろう」

「数値として」

「2倍ずつ上がると言われている」

「2倍も性能が上がるのか」

「うむ」

「3つ目はジャンプドライブの存在だ。短距離とはいえ数光年をジャンプ出来るらしいが情報を持っているか?」

「持ってはいない。ゲートの小型化は難しいと見たことがある」

「最後の4つ目はコールドスリープだ。こっちは解析中なんだろう?」

「まずは言語の解析からとなるのである」

「俺達が使う日本語を習得しシェリルからスールン星系標準語を習うと良い」

「以上であるか?」

「アオイのオッサン。オレも2つ目~4つ目について参加していいか?」

「そうだな。機械光学はリウイの分野だったな」

「おうよ。プログラムの事は分からないが周辺機械の部分だったら手伝えるだろう」

「よろしく頼むのである」

「頑張ろうな」

「私が手伝うような所はなさそうですねぇ」

「最近錬金術を覚え始めたんじゃないか?」

「・・・良く分かりましたねぇ」


あの溶解液はポーション作成過程から派生して錬金術のジョブになったかと思ったが当たっていた。


「レア金属を加工するにあたり溶解液は使えると思う。研究してくれないか?」

「最近、別の事にも興味が出てきたのでちょうど良かったのですよぉ。頑張るのですよぉ」

「私の魔法陣じゃ、手伝えそうにないわね」

「転移魔法陣を応用すればワープドライブの別物は作れないか?」

「馬鹿ね、転移魔法陣は転移先に設置しないと使えないのよ」

「であれば最近この艦の内装設備も増えた事だし転移魔法陣を敷いて行き来を楽にできないか?」


移動するのに広くなりすぎている。


「それなら可能ね。ただ、発動には魔力が必要になるわ。ダンジョンの転移トラップを設置した方が早いんじゃないかしら?」

「転移トラップはランダム性で指定した場所には行けないのである」


チャリオットがリリィの疑問に答えてくれた。


「ペンドラゴンしか知らないんじゃ?」

「我々NALLシリーズは共有システムがあり知識、情報は一部を除き同期しているのである。即座にペンドラゴンの情報を引き出したのだ」

「つまり」

「いま他のNALLシリーズが行っている日本語習得は我も同時進行で習得できて来ているのである」

「そんな機能があったとはな」

「質問などはNALLシリーズの誰かに聞けば今のような回答を得られるかもしれぬな」

「分かった」

「とりあえず、私は転移魔法陣で行き来しやすくするわ」

「頼んだぞ」

「我の仕事はリウイ殿と機械の解析と制作であるな」

「貴金属の精錬と制作はオレに任せな!」

「私はぁ、加工がしやくすく出来るような溶液を作るのですよぉ。それに当たってぇゴム手袋が欲しいのですよぉ」

「分かった・・・」

「ゴム手袋はダンジョンポイントで交換出来ないのである。ゴムの木なら交換出来るようであるが」

「うふふ。ではゴムの木からゴムを精製する所から始めますわぁ」

「頼んだ」


こうして、艦の方針が決まって行った。

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