51話「ユーランコロニー」
「アレがユーランコロニー」
「アラムド連邦辺境の中継地点となる場所です」
俺たちの目の前には直径50km程の巨大な機械の星が姿を表した。
驚異を退ける為の主砲等が幾つも顔を覗かせている。
「あの大き輪が」
「長距離跳躍門です」
ユーランコロニーの近くには直径1kmになる巨大な輪が宇宙空間に浮かんでいる。
ピカッ
輪の中が波紋を打って点滅した。
「ちょうど、ゲートを使った船か軍艦が居たのでしょう」
「リリアーナステーションから3年ちょっとかぁ、ずいぶん長かったよ」
グッと伸びをするキャメリア。
「ユーランコロニーに到着するまでいい経験にはなっただろう」
「まぁね。電子戦技能士なんて成れなかったから」
キャメリアは2年と少しチャリオットの元で電子戦の師事を受けていた。
時折襲ってくる宇宙海賊との戦いにおいてキャメリアを実践投入する形で何度もやってもらった。
最初のうちは失敗ばかりだったが海賊達の動きを覚えて今では電子戦技能士の職業を持っている。
【看破】
名前:キャメリア・クルン
レベル:1
種族:キャットピープル
職業①:電子戦技能士(Lv20)
職業②:機関整備士(Lv5)
体力:330/330
魔力:260/260
攻撃力:50
防御力:49
各種装備品:外宇宙ヘルメット、外宇宙スーツ、外宇宙ズボン、外宇宙ブーツ、エアボンベ
所有スキル:システム掌握術、機関調整、古代光通信、アラムド連邦標準語
「私は退屈だったわ」
「そんな事は無かっただろう?」
俺とリリィは魔法について研究を行っていた。
魔法陣での魔法と詠唱での魔法では威力は変らないが、両方を組み合わせると威力が桁違いに跳ね上がる事が判明した。
俺からは詠唱魔法を教え、リリィからは魔法陣魔法を教えてもらい俺達は魔導師の最上級職へと登り詰めた。
但し、火の魔法陣魔法と水の詠唱魔法を掛け合わせる事をすると大爆発が発生する事も検証され禁止となった。
「ペンドラゴン、俺達のギルドランクはなんだ?」
「我々方舟のギルドランクはCランクです」
「Aには程遠いな」
「たったの数年でCランクに駆け上がれたのは早いほうです」
「今では「金色の死神」「宇宙海賊狩り船」なんて呼ばれているわね」
「命までは奪っていないぞ」
「遭遇したが最後って意味合いでしょう」
「そんな海賊連中は今も牢に入れているわけだがな」
二つ名すら付けられている方舟を攻撃しようとする宇宙海賊は後を絶たない。
襲われる理由としてこの船を奪えれば金がかなり手に入る事、宇宙海賊狩り船を打ち倒せば有名になれるからという2つの理由だそうだ。
もちろん、俺達を見た瞬間に逃げる海賊船も多いのは確かである。
「ワープ金額は到達できたのか?」
「10億コルンまで残り2億8561万コルンです」
「7億コルンまでは溜まったか」
「必要と思わない素材、海賊狩りなどで荒稼ぎしましたからね」
「金とランクが足りないか・・・」
「ゲートでの移動は諦めて直接向かう事になるのかしら?」
「ここからスールン星系までは何年だ?」
「再計算しました所、現在の性能ですと約21年後です」
「やはり長旅だな」
「直接だと現実的じゃないね」
キャメリアにしては正論だ。
「ゲートを通った場合だとどの位になる」
「最前線中継地点フリゲートコロニーに行き、7光年進めば到着できる計算となります」
「ジャンプさえ出来れば1年7ヶ月後か」
「最前線って何よ?」
「現在アラムド連邦軍とスールン星系軍は戦争中です」
「同盟を組んでいたんじゃないのか?」
「サンズ帝国軍が攻めてこない限り両軍は戦争をして領土を奪い合っています」
「戦争真っ只中を行く気?」
「戦争宙域を行かなければいいだろう」
「両軍の間には宇宙嵐網と呼ばれる現象があり、特定の宙域でしか行き来が出来ないのです」
「聞いてないぞ?」
「知っているものだと思っていました」
「聞かなかったのが悪いな」
「それで結論は」
「2つの道が出来たな。時間短縮をする為に10億とランクAを目指すが戦争に巻き込まれる可能性。金もランクも気にせず21年掛けて進む。その頃には戦争も収束しているだろう」
「前者のデメリットは戦争に巻き込まれた時、無事に通過できるかがキーポイントだ」
「後者のデメリットは時間が掛かりすぎる事ですね」
「21年後なんて立派なオバさんだよ?」
「私もよ」
「俺は55歳だぞ」
「そこからスールン星系を航行し、銀河を超えなければならない事を加味すると寿命が尽きてしまいますね」
「お前らの寿命って何歳までなんだ?」
「キャットピープル族は70歳くらいまでだよ」
「ホビット族は120歳までね」
「ヒューマンは80歳程度か?」
「リリィ様が耐えられそうですね」
「一人なんて嫌よ」
「艦長が死んでしまいますと私たちの機能も停止してしまいますので途中で断念せざるを得ないかと」
「それも初耳なんだが」
「我々NALLシリーズの起動条件と停止条件はマスターの存命によって行われます。艦長の死は私たちの停止と同義なのです」
「艦長、ユーランコロニーから誘導赤外線を受信。着港シーケンスに入ります」
「入ってくれ」
俺達の船がゆっくりとユーランコロニーへと入っていく。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
『資材の確認、強奪物資の確認、宇宙海賊達の引渡し完了。全て確認が終えました。報奨金として280万コルン振り込まさせて頂きます』
クエストを受けずに海賊討伐を行った場合は依頼金は支払われないが強奪品や海賊達を引き渡す事で金が手に入る。
「ここら辺で貢献度が高いクエストは無いのか?」
金は海賊狩りをしていれば貯まるが貢献度はクエストを数多くこなすか高い依頼をクリアしなければ成らない。
『Cランク内での高貢献度の依頼は3件しかありません』
「詳しく」
『1件目はの要人護衛依頼です。20の傭兵団護衛船が必要だそうです。報酬金は平均的ですが貢献度が通常より1.5割増です。目的地は10光年先のイリア惑星で速度300コイル以上の条件があります』
「もう1件は?」
『2件目は希少鉱石の発掘ですね。ミスリル、オリハルコンを10t単位で欲しいそうです。どれか1種類または合計で10t納品できればクエストクリアです』
「場所とかは判明しているのか?」
『場所は2光年先の小惑星にミスリル鉱石、7光年先にオリハルコンの鉱脈を持つ小惑星郡があります』
「往復で1年と3ヶ月か4年半ちょっとの場所か」
『3件目は通常の宇宙海賊討伐とは違う貢献度も特別な海賊討伐クエストがあります』
「なんだソレは?」
『ここから1光年先に船の墓場と呼ばれている宙域があります。ソコに宇宙海賊達が根城にしているので討伐する内容となります』
「宇宙海賊達・・・という事は一隻や二隻じゃないって事だな」
『確認されているだけで、五十隻以上、戦艦が一隻、重巡洋艦が二隻、巡洋艦四隻、軽巡洋艦八隻で構成された宇宙海賊船団です』
「そんなの軍が出るレベルだろう」
『軍が出る時は襲われた時です。ユーランコロニーを襲う事は現在一度もありません』
「報酬は?」
『戦績によって変動します。全滅させれば基本報酬額は1億2000万コルンです。主力艦のどれか一隻を潰せばクラス毎によって+2000万~追加報酬が入ります。途中断念したとしても海賊船一隻分として通常クエストとして処理いたします』
「ふむ」
1件目は貢献度は旨いが往復6年半。2件目は報酬も貢献度は旨いが往復で1年と3ヶ月の場所か4年半ちょっとの場所。3件目は往復8ヶ月の場所だがその代わり敵が尋常じゃない数が出てくると。
「3件目だな」
「ちょっと、正気」
「そうだよ!多勢に無勢すぎるよ」
「艦長、なにかお考えが?」
「Cランク制度を使う。確かCランク傭兵団から船は大きく出来るんだったよな?」
「はい。Cランクからは200m級の軽巡洋艦までを所持する事が許されます」
「今から変更申請をして貰えるか?」
「一度、コロニーを出て戻ってきます」
「頼んだぞ」
「「?」」
キャメリアとリリィは首を捻る中ペンドラゴンは一度艦へと戻っていった。
「とりあえず宇宙海賊船団クエストを受ける」
『承りました。合同クエスト宇宙海賊船団の受理を致します』
「合同クエスト?」
『他のギルド団員を誘ってコチラも船団を作り出して攻め入るクエストの事です』
「レイドパーティの様な物か」
懐かしい感じだ。
『初めてでしたらコチラで募集をお掛けします』
「報酬等はどうなるんだ?」
『全てそちらで決めて頂いて結構です。公平になるように我々が仲介人を務めさせて頂きます』
「なるほど・・・別に数に減らす場合は船団を組まなくても良いんだな?」
『その代わり報酬も貢献度も低くなります』
「例えば敵の軽巡洋艦だけを潰した場合は?」
『追加報酬分が上乗せされます。もちろんその分の貢献度も付加されますが、たった1隻ではたどり着けないかと』
「ペンドラゴン、方舟の性能的に何処まで行けそうか?」
《通常の海賊船ならば無視しても構わないかと、軽巡洋艦から注意が必要です》
「向こうの情報は開示されないのか?」
『現在、手に入っている情報は其方の船に送られています』
「コレか」
・戦艦
□基本性能
艦名:NoName
艦種:戦艦
艦体:全長1km(船型)
主機:原子炉A型2基 高速推進機A型2基
補機:サブブースター10基
最高速度:397コイル
兵装:主砲 戦艦級レーザー砲(荷電粒子砲)単装1基1門
副砲 なし
対宙砲A型レーザー単装2基40門
ミサイル発射管 A型単装2基80門
防御:耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜A型
電子兵装:光学観測装置A型 広域通信機A型 火器管制システムA型
特殊兵装:なし
・重巡洋艦(準戦艦)
□基本性能
艦名:NoName
艦種:重巡洋艦
艦体:全長300m(船型)
主機:原子炉C型2基 高速推進機C型2基
補機:サブブースター8基
最高速度:191コイル
兵装:主砲 大容量レーザー砲1基1門
副砲 なし
対宙砲B型レーザー単装2基20門
ミサイル発射管 A型単装2基40門
防御:耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜C型
電子兵装:光学観測装置B型 広域通信機B型 火器管制システムB型
特殊兵装:なし
・巡洋艦
□基本性能
艦名:NoName
艦種:巡洋艦
艦体:全長250m(船型)
主機:原子炉D型2基 高速推進機D型2基
補機:サブブースター4基
最高速度:133コイル
兵装:主砲 プラズマイオン粒子砲単装1基1門
副砲 なし
対宙砲C型レーザー単装2基10門
ミサイル発射管 B型単装2基10門
防御:耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜C型
電子兵装:光学観測装置C型 広域通信機C型 火器管制システムC型
特殊兵装:なし
・軽巡洋艦
□基本性能
艦名:NoName
艦種:軽巡洋艦
艦体:全長200m(船型)
主機:原子炉D型2基 高速推進機C型2基
補機:サブブースター6基
最高速度:160コイル
兵装:主砲 レールガン単装1基1門
副砲 なし
対宙砲D型レーザー単装2基4門
ミサイル発射管 C型単装4基4門
防御:耐ビームコーティング特殊鋼装甲板
対光学兵器防御膜C型
電子兵装:光学観測装置E型 広域通信機C型 火器管制システムE型
特殊兵装:なし
数種類にカテゴリーに分けられた性能が表示された。
確かに軽巡洋艦からは注意が必要な性能である。
「ジャミング性能が得意な軽巡洋艦クラスとイオン粒子砲を持った巡洋艦の団員は居るか?」
『少々お待ち下さい・・・1件ずつ該当しました。ドチラともBランクの傭兵団「カナタ」と「ロンギ」がこのコロニーを中心に活動中です。その内「カナタ」は10光年先にて別クエスト中で帰還予定時刻は7ヶ月後です』
「7ヶ月も待たされるのか・・・」
『「ロンギ」の方はこのコロニー内におります。コンタクトを致しますか?』
「頼む」
『畏まりました。一応「カナタ」にも連絡致します』
「あぁ」
一旦、受付を離れてハブリックスペースへで小休憩をする。
「説明が欲しいよ?」
「納得いかないわね。戦闘民間船じゃ太刀打ちできないし、Cランク制度を使ったところで軽巡洋艦なんて貯めたお金で買えるものなのかしら?」
「軽巡洋艦が7億な訳ないだろう。ペンドラゴンが登録情報を変更手続きしているから待っていろ」
1時間もしないうちにペンドラゴンが戻ってきた。
「艦長、変更手続きが完了いたしました」
「問題は無かったか?」
「やはり驚かれていました」
「ま、そうだろうな。金の装甲はどうした?」
「あの外装は我々のシンボルになっていましたので更に金を使って覆いました」
「200m級の金で覆われた戦艦か・・・悪趣味だな」
「説明して」
「見えてこないよ?」
「これが俺達が今後乗る戦艦だ」
□基本性能
艦名:方舟
艦種:軽巡洋艦
艦体:全長200m(船型)
主機:原子炉D型4基 高速推進機C型2基
補機:サブブースター8基
兵装:主砲 オリハルコンストリング砲10門
副砲 なし
対宙砲 30cmレーザー単装2基2門
ミサイル発射管 なし
防御:アダマンタイト装甲板
対光学兵器防御膜D型
電子兵装:光学観測装置C型、広域通信機C型、高性能アンテナC型
特殊兵装:戦闘用・回収用ドローン×500機、亜空間停滞収納C型、クラス5戦闘機・CTL-40165リィンカーン
特記事項:物資5000トン程。収容人数200名(MAX400)、牢屋500名
「一体何処に軽巡洋艦なんて隠し持っていたのかしら?」
「ここにあった訳じゃないよね?」
「ずっと乗ってきただろう。戦闘民間船自体が軽巡洋艦を縮小させた姿だ。本来の性能はコッチだ」
「・・・なるほど。さすがダンジョン船って訳ね」
「どういう事?」
「後で説明してあげる」
「俺達の戦力は整った」
ピーピー
ギルドカードから電子音が鳴る。
ウィン
ホログラムが出現してあの時の受付嬢が表示された。
『方舟のアオイ様、ロンギのヌス艦長がお会いになられるそうです。第15会議室までお越し下さい』
「分かった」
俺達は席を立ち、第15会議室へと向かった。
シュンッ
扉が開き中に入ると2人の獣人が座っていた。
1人は歴戦の戦士と言われそうな貫禄を持った犬の獣人。
もう1人はメガネを掛けて理知的な猫の獣人。
『若いな』
『艦長・・・失礼ですよ』
『率直な意見だろ』
『ゴホンッ。この度はお声を掛けていただいてありがとう御座います。私は「ロンギ」の副艦長を務めさせていただいていますルーンと言います。こちらがヌス艦長です』
「よろしくな。若い艦長さんよ」
「さっそく本題に入ってもいいですか?」
「あぁ」
ギギィ
俺が椅子に座り左右にキャメリアとリリィが座り。ペンドラゴンが後ろに立っている。
「そちらは?』
「俺が方舟の艦長アオイだ。後ろのが副艦長のペンドラゴン、右のが電子戦技能士キャメリア、左のが魔導師リリィだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いいたします」
「よ、よろしくです」
「よろしく」
「確認しますが、船団は幾つ集まりましたか?」
「そちらが一隻目だ」
「つまり、アナタ以外の艦は誰も居ないと?」
「まだな。もう一組みにも声を掛ける予定だが7ヶ月後に帰ってくるそうだ」
「なるほど。何時に出発する予定で何隻のレイド艦隊を組んで挑むおつもりですか?」
「できるだけ早くだな。俺達とソチラ、もう一組の三隻で挑もうと思う」
「え?」
「ブハハハハハッ!」
バンバンバンッ
俺の発言にルーンが呆け、ヌスが大声で笑う。
「たったの三隻で挑むつもりかよ!アホかやってられる訳ねぇだろう」
ガタタッ
ヌスは乱暴に立ち上がり出口へと向かう。
スッ
「あ?アンドロイド風情が邪魔をするのか?」
ペンドラゴンが出口を背にヌスと対峙する。
「話は終わっていませんよ」
「俺達ぁ、アホな話に付き合う時間は無ぇんだよ。ソコを退け!」
「艦長・・・」
「行かせてやれ」
スッ
「ルーンも馬鹿話に付き合うことはねぇぞ」
シュンッ
ヌスが部屋を出て行った。
「私からも言わせて頂きますと。勇敢と無謀を履き違えていると思います。情報によれば五十隻以上の海賊船に主力戦艦も居る中で三隻は少なすぎます。もっと仲間を増やしてからでないと話は進みませんよ。それではこれで」
ルーンもズレたメガネを掛け戻して部屋を出て行く。
「駄目だったか」
「当たり前でしょ?」
「アオイ、無茶だよ?」
「勝算の無い戦いに誰も着いて来ないわ」
「もっと人を集めないと駄目だって言っていたよ?」
「まぁ、駄目で元々だったしな。とりあえず偵察がてらその宙域を行ってみるか。そこで人を集めるか判断しないとな」
俺達はコロニーを出るために軽巡洋艦「方舟」の停泊しているドックへと向かった。
「なんて悪趣味なのかしら」
「すんごい金ピカだね」
「金の装甲版で作り上げた外装だからな。海賊にとっちゃいい鴨に見えるだろう」
「これが本来の大きさなのね」
「幾ら掛かったの?」
「金は元から持っている分を鋳潰して作ったからな」
「それでも莫大な量の金を使ったはずね。50m級の方も驚いたけど200級も迫力が違うわ」
「これで戦うつもりなの?」
「偵察するだけだ。相手の戦力を見極めないとな。怖ければここに残っていてくれてもいいぞ。これだけ広いコロニーだしな」
「大丈夫」
「この艦の力が見たいわ。なぜ艦長と呼ばれていたのかも分かったしね」
「そうだね」
艦に乗り込み発進準備をする。
『方舟発進許可が出ました。良い航行を』
コロニーの管制室から通信が入り艦を固定しているロックが外されていく。
「方舟、発進」
ズゥウウウ
目の前のドック出入り口の門が開き宇宙空間へと出て行く。
お疲れ様でした。




